「 PDD(広汎性発達障害)と診断される特徴が出はじめるのはいつ? 」
PDD(広汎性発達障害)は社会性やコミュニケーション能力など、人間の基本的な機能の発達遅滞の総称です。医学的にPDDと診断される特徴や条件とはどのようなものなのでしょうか。また、それらの特徴は何歳くらいからどのような形で見られるようになるのでしょうか。「どうも気になる兆候が見られる。うちの子はひょっとしてPDDでは?」と不安を感じられている保護者さまに参考にしていただければと思います。
PDD(広汎性発達障害)の兆候と相談・診断の時期

公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会が、厚生労働科学研究・研究推進事業として2010年におこなった「発達障害児の家族支援:基本的な支援のアルゴリズムとパッケージの確立について」という研究発表のなかに「医療ケアにおける診断と告知をめぐって」という興味深いテーマが含まれていました(*1)。
この調査は、浜松医科大学子どものこころの発達研究センター助教授の宮地泰士医学博士(小児科医)が、広汎性発達障害児をもつ保護者120人に対して行ったものです。
この調査によれば、保護者が最初に「何か発達の問題があるのではないか」と疑いをもった時の子どもの平均月例は27.8ヶ月(2歳4ヶ月ころ)で、何らかの相談機関に相談に行ったのは47.5ヶ月(ほぼ4歳)、診断が確定したのは80.5ヶ月(6歳弱)となっています。
なお、保護者が最初に気になった発達上の問題は、
・18ヶ月未満……運動機能の問題、抱きづらさ、視線の合いづらさ、表情の乏しさ
・18~36ヶ月……言葉の遅れ、呼応反応の弱さ、視線の合いづらさ、多動傾向
・36~72ヶ月……言葉の遅れ、集団活動での不適応、他児との交流困難、多動傾向
・72ヶ月以降……集団活動での不適応、指示理解の弱さ、友だちとのトラブル、パニック
となっています。
診断の適正な時期
この調査によれば70%以上の保護者が、子どもが3歳未満から子どもに発達上の問題があることを疑っていたとのことで、このうち20%は1歳未満から何らかの疑いを感じていたようです。
また高機能自閉症の場合、ほとんどの親が3歳未満のうちに何らかの疑いをもっており、アスペルガー障害の場合は3~4歳で気づくことが最も多いという結果になっています。
なお、親の最初の気づきから初回の相談までのタイムラグについては、宮地博士は「親が子育てのなかで試行錯誤をしながら葛藤している期間」と考えています。
医学的にいろいろな試みもでき、新たな問題の発現を防ぐという意味では診断時期は基本的には早い方がいいとされています。葛藤の期間が長すぎると親子関係や問題がこじれ、親の精神的な負担も大きくなります。しかしその反面、あまり葛藤の期間が短すぎて唐突に診断を受けると、親が「頭では受け入れられても感情的な受け入れに課題が残る」という可能性を宮地博士は指摘しています。
この調査では多くの親が「3歳以下の時期で診断の内容を知りたい」ということでしたが、診断の適正な時期についてはどういった過程で、どのようなタイミングで理解を進めていけばいいのか、今後も研究が必要であるとされています。
診断は「レッテル貼り」ではない
広汎性発達障害児に気づくためのポイントは「広汎性発達障害によく見られる行動リスト (https://junior.litalico.jp/about/hattatsu/pdd/)
にまとめてありますが、「リストの項目に何個あてはまったらPDD(広汎性発達障害)だ」と断定できるわけではありません。気になる項目が多ければ専門医の診断をお勧めするという、ひとつの目安としてお使いください。
また、診断はお子さまに「病名という名のレッテルを貼る」ためのものではありません。診断は、お子さまにどのような障害が見られるのか、また、見られた場合にはどのような支援をしていくことが最もお子さまのために適切なのかを知るためにあります。
診断の結果を恐れずに、「PDDだと診断されたらどうしよう?」などと悩む前に「いま、子どものためにしてあげられる最大のことは何なのか?」を考え、現実を受け入れる心構えをすることが大切ではないでしょうか。
*1 発達障害児の家族支援:基本的な支援のアルゴリズムとパッケージの確立について(下記ページ 目次の5)
>平成21年度厚生労働科学研究費補助金障害保健福祉総合研究成果発表会報告書:日本障害者リハビリテーション協会
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/kousei/h21happyo2/index.html
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/kousei/h21happyo2/siryou5_01.html
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/kousei/h21happyo2/siryou5_02.html
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/kousei/h21happyo2/siryou5_03.html
※「自閉症(自閉性障害)」「広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」は、2013年に改訂された『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)で、「自閉症スペクトラム障害/自閉スペクトラム症」という診断名に統合されました。
文責:博士(障害科学) 野口晃菜
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