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メルマガバックナンバー

LeafMagazine vol.11
2016.6.24

(この内容は2016年2月29日配信メールマガジン「Leafマガジン」のバックナンバーになります。)

インクルーシブ教育に関する最新の事例・情報をお伝えします

いよいよ年度末が近付き、春のお訪れを感じる日もありますね。本稿では具体的な支援例と成長のストーリーに合わせ、インクルーシブ教育の考え方に関して問いかけています。ぜひご感想をお寄せください。

【連載】今日からできるインクルーシブ教育実践―Leafの実践共有―

本連載ではLeafにおける事例をもとに、具体的なアプローチ方法をご紹介します。
※個人情報保護のため、一部情報を加工しています。

●子どもの様子・困り感
・小学校2年生 男子
・授業が始まっても学校を歩き回っている。
(要因:授業が分からない、自由なタイミングで発言をしてしまい叱られるため)
・納得いかないことがあると爆発し、真っ赤な顔をして周りに怒鳴るなどの行動が見られる。

●長期目標
・授業中話したい時に手をあげて発言をすることができる。
・感情の理解と行動のコントロールができる。

●具体的な手立てと指導の様子
【授業中席に座る】ことを短期的な目標としました。更にスモールステップに分け、【授業開始後から3分座る】
ことを本児と約束しました。本児は当時ポケモンがとても好きだったため、ポケモンのシール台紙を作り、そこにできたことが視覚的にも分かるようにシールを貼っていくようにしました。また、タイマーを設定し、3分座れていたらシールを貼りました。一週間シールが溜まると、次の台紙のポケモンを選ぶことができます。ここで注意したポイントは、急に目標を高く設定しすぎないことです。子どもが一つのハードルをクリアできると、どうしても周りの大人は急にハードルを高く設定しがちですが、急にハードルを高くするのではなく、ある目標が達成できたらそれが定着するまでしばらく同じ目標を実行した後にステップを少し上げてみます。また、本児の場合は授業中に座ること以外に、並行して個別指導の中で学校の授業の予習と感情理解の練習をしました。授業の予習をすることにより、事前につまづきポイントを確認し、練習をしておくことができます。そのようにして、本児は「席に座る」という学習のためのレディネスの形成と、授業自体に参加することの両方をスモールステップで徐々に達成することができました。このように「ご褒美」を使うことに対して抵抗を感じられる方もいらっしゃいますが、大切なポイントは「ご褒美」をきっかけとして、学び自体が楽しくなるような工夫を周りがしていくことです。学びそのものが楽しくなれば、学び自体が「ご褒美」になっていくかもしれません。

【連載】先生のインクルーシブ教育実践ストーリー

株式会社LITALICO 野口 晃菜

今回はある中学校の通級指導教室のM先生の実践をご紹介します。M先生はとある中学校における通級指導教室の担任の先生であり、その中学校の特別支援教育コーディネーターです。M先生からご連絡をいただき、学校見学に行った時にたくさんのことに驚きました。まず一つ目に驚いたことは、たいてい学校に見学に行くと「うちの学校はまだまだここがダメで・・・」という形でダメだしから入ることが多いのですが、M先生ははじめから「うちの通常学級の先生たち、すごいのよ!」と私に言ってきてくださったのです。そして、その後次々と通常学級の先生方を連れてきてくださりました。通常学級の先生方は「いや、M先生のおかげで…」とおっしゃるのです。その関係性を見るだけでも、この学校の「インクルーシブ」な点が見えてきました。特別支援教育を担当されている先生の中には、「通常学級の先生はなかなか分かってくれない」とおっしゃる方もいらっしゃいます。そうかもしれません。特別支援教育に関する知識やスキルはあまりないかもしれません。そこに対して「あまり分かっていない」という態度で接するのと、その先生の素敵なところを見出して、そこを尊重するのでは、大きく違います。子どもに対しては「お互いの良いところを見つけよう」なんて伝えますが、大人同士はなかなか難しいです。ですが、M先生はそれを当然にようにやってらっしゃいます。お互いに信頼し合っている関係性がそこに見えます。そして、それは子どもたちにもおそらく伝わっているのでしょう。そして、逆に先生たちが対立していたり、お互いの嫌な部分ばかり見ている学校は、それはそれで子どもたちにも伝わっているのでしょう。インクルーシブな学校の根底には、教員同士が互いを尊重し合っている関係性が必要、と改めてM先生の学校を見て思いました。二点目におどろいた点は、M先生の学校では、校長先生が年度初めに、「この中学校は特別支援教育ではなく、支援教育です」といったお話をされるそうです。教職員全体に対してインクルーシブなマインドを持ってもらうために校長先生が毎年リーダーシップを取っておられる様子がうかがえます。そしてその後に具体的な仕組みの話(通級や校内委員会)を特別支援教育コーディネーターがされるとのことでした。たとえば他の学校では、校長先生のビジョンに全員が共感していなかったり、ビジョンはあっても仕組みはなかったりしない場合があります。インクルーシブな学校を作っていくにあたっては、校長先生のリーダーシップのもと、明確なビジョンとそれを実行するための仕組みが必要であることをM先生の学校から学びました。三点目は、M先生の学校では、全校生徒に対して通級指導教室の説明を年度初めにされるそうです。その際に子どもたちに対して「通級は学びの保健室」と説明するとのことです。学びに困り感のある人は誰でもお越しください、と伝えるそうです。他の学校では通級指導教室に誰も入れないようにし切りを置いたり、出入り禁止にしたりしている場合がありますが、誰もが休み時間にちょっと寄れる通級指導教室の文化をつくることにより、誰もが学びに困難さのある時は支援を受けられる文化を作っておられました。M先生とM先生の学校のインクルーシブ教育実践はまだまだあります。またご紹介したいと思います。
※本メルマガでは先生方のインクルーシブ教育実践ストーリーを募集しています!執筆したい方はぜひご一報を。

【連載】インクルーシブ教育を考える ―「差異のジレンマ」とは―

インクルーシブ教育について考える時、「障害者」や「障害名」について考えざるをえません。障害者や障害名があることによって、その人を一人の人として見る前に、カテゴリーのラベルによってその人を見てしまうのではないか。一方で、障害名があることによって、その人にとって必要な支援を受けられる。そこで陥るのが「差異のジレンマ」です。「差異のジレンマ」とは、「「障害者」というラベルを貼ることの功罪という問題で確かに核心に触れる論点である。つまり、差異に注目することが格差の拡大をもたらす場合がある反面、差異を無視することが格差の拡大につながる場合もある。ミノウはこれを「差異のジレンマ」と名付けている。差異、障害者分野でいえば、障害(disability)、つまり、身体的・感覚的・知的機能の制約を持ち、社会的に不利益を受けてきた集団や個人に対して、その不利益の是正を行おうとする場合に、差異、すなわち障害に着目せざるを得ない。しかし、それは逆に差異を強調、固定化することにもつながる。日本での障害者の雇用率や米国のアファーマティブアクションと呼ばれる積極的差別是正措置には常に、差異(障害や人権)を法律や行政措置が制度化してしまう危険性がつきまとう。それを避ける1つの方法は確かに、北欧やILOが述べたように、万人を対象にするという普遍化である。例えば、A Society for all(全員参加の社会)は普遍化指向の発想である。
しかし、差異のジレンマにはミノウが述べているように、反対の一面もあり、それは、差異を無視することにより、かえって平等が実現されないことである。例えば、視覚障害者に対して音声、電子情報や点字での情報の提供を拒むことは、その差異を無視することで、差別的となる。のっぺらぼうの「普遍」が一部の人間、例えば障害のない、健康なある年齢層の有職男性だけを意味する時に、その弊害は明らかである。」http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n176/n176_009.htmlより
おそらく社会が当然のように多様性を受け入れ、その人のニーズに合わせて支援が当然のように受けられるようになったら、障害名があろうがなかろうが障害名ファーストで語るが語らまいが、「差異のジレンマ」は解消されるのでしょう。インクルーシブ教育では、すべての子どもを対象としながら、「差異」と捉えられやすい、固定化されやすい子どもの層を無視しないことが求められます。
一方で、全ての子どもが学びにアクセスできる教育の形を考えた時、どうしてもその「全て」から抜け落ちてしまう子どもたちもいるでしょう。
そんな時に大事なことは自分が想定できる範囲には限界があることを自覚しておくことと、その上で、自分は何の、どこの役割を担いたいのか、を決断するために自分と向き合うことだと考えます。
誰もが幸せになるためには、どんな教育の形がいいのか。これからの社会を考えた時に、どれだけラベル必要になるのか。必要ないのでしょうか。もしかしたら、今の「障害」のラベルはより細分化されるかもしれません。もしかしたら、全ての人に何らかの「障害」があるというラベルが付けられる時代が来るかもしれません。

※本稿はブログ「あたし論」をリライトしたものです。
http://theoryofakina.blogspot.jp/2014/04/blog-post_11.html

(この内容は2016年2月29日配信メールマガジン「Leafマガジン」のバックナンバーになります。)

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