子どもが反抗的な態度をとるようになってきたとき、反抗期に入ったのか、またどのように関わればいいのかが分からず、悩む保護者の方もいるかもしれません。
この記事では、反抗期とはどのような時期なのか、反抗期の特徴や反抗期がない場合、また反抗期が終わるきっかけや反抗期の子どもへの対処法について解説します。反抗期の子どもについて悩んだときに利用できる相談機関も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
反抗期とは
人は、成長の過程で「反抗期」と呼ばれる時期を経験することがあります。
最初の反抗期「第一反抗期」は1歳半頃から3歳頃までの、俗に「イヤイヤ期」と呼ばれる時期のことです。
子どもはこの時期に保護者の言うことに従わず、強く自己主張するようになりますが、これは「自分という感覚」である「自我」が芽生えるためであると考えられています。
2回目の反抗期は「第二反抗期」と呼ばれ、10~12歳頃から保護者や周囲の大人の価値観に対して激しく反発したり、否定したりする状態が続く時期を指します。
また人だけでなく、社会的な権威や制度、通念などに対しても反抗的な態度をとることがあります。
これらのうち、この記事では「第二反抗期」について解説します。
これ以降、この記事では第二反抗期のことを「反抗期」と表記して説明していきます。
第一反抗期については以下の記事で詳しく説明していますので、参考にしてください。
反抗期の時期が訪れる年代は、個人差が大きいとされています。
統一された基準はありませんが、子どもが保護者から精神的に自立し、自我を確立するまでの5~6年間を指すと考えられています。
子どもにより幅がありますが、およそ小学校高学年から高校生の年代にあたると考えることができるでしょう。
またこの時期は、「思春期」と呼ばれる時期とも重複します。
反抗期は成長段階の一過程
この時期は、子どもが従来とは異なり、保護者や周囲の大人の価値観に必ずしも従わなくなることが多いことから「反抗期」と呼ばれています。
「反抗」という単語にはネガティブなニュアンスがあるため、反抗期そのものを否定的に捉える方もいるかもしれません。
しかしながら反抗期は、子どもの心の成長にとって大事なプロセスになることがあります。
この時期に大人に対して批判的な目を持つことは、子どもが自我を確立するために重要であると考えられているためです。
反抗期の特徴
反抗期と呼ばれる時期の子どもは多くの場合、保護者との心理的な距離をとろうとします。
保護者を「絶対的な存在である」と感じなくなり、小さい頃のように学校での出来事や友人との出来事を何でも話すことは少なくなることが多いです。
これは、自我を確立するために「保護者から精神的に独立しなければならない」と無意識に感じているためだと考えられます。
従来とは関係性が大きく変わるため、保護者と子どもとの間に摩擦が生じることもあるかもしれませんが、子どものこのような変化は成長の証でもあるといえます。
反抗期の女の子と男の子の特徴は?
反抗期の子どもは、同性の保護者に対して反抗的な態度をとることがあります。
これは、子どもが同性の保護者のことを「成長した先のモデル」として捉えているために起こると考えることができます。
モデルの姿をそのまま真似ると「自分自身の個性」が生じなくなってしまうため、反発や反抗を繰り返すことで距離をとりながら、自分なりの個性を見出そうとしていることの表れである場合があります。
一方で、異性の保護者に対しても反抗をしないわけではありません。
とくに、従来のように「子ども扱い」をされることが自立の妨げになる場合には、異性の保護者に対しても反発することがあります。
反抗期がないこともある
子どもによっては、反抗期がみられない場合もあります。
いくつかの調査では、反抗期を経験せずに大人になる人も珍しくないことが分かっています。
従来は、「反抗期は保護者からの精神的自立を果たすための重要な段階である」という考え方が主流でした。
そのため、「反抗期を経ず、精神的自立を果たさないまま社会に出ると問題が起こることがある」といわれることもありました。
一方、近年ではこの考え方も少しずつ変化しているとされます。
反抗期が生じなかった理由は人によって異なるため、そのことがどのように影響するかも人によってさまざまです。
反抗期がないことの影響についての研究はまだ数が多くないため、今後の研究の進展が待たれます。
反抗期が終わるきっかけは?
反抗期がいつまで続くのかは、子どもにより異なります。
一般には、反抗期は子どもの自我が確立されれば終わるとされています。
「自我の確立」とは「アイデンティティの確立」とも呼ばれ、「自分とは何者であるか」を理解し、社会の中で自分らしくいられるよう自分の立ち位置を見出すことであるといわれています。
しかし、子どもの自我が確立されるのをただ待つしかないわけではありません。
保護者の方が「子ども」として接するのではなく、「一人の大人」として関わる関係性へ移行することも、反抗期が終わる要素の一つとなることがあります。
反抗期の子どもへの対処法
反抗期の子どもと保護者との関係性は家族ごとに異なりますが、反抗期の子どもへの関わり方では、一般には以下の点に留意するといいとされています。
子どものプライベートな領域に入らない
反抗期に子どもとの会話が減ると、子どもの様子を知りたくなるかもしれません。
しかし、子どもの日記やスマートフォンを見るなど、子どものプライベートな領域に入る行為は控えましょう。
子どもが「自分のことを秘密にしておきたい」と感じるのは、保護者からの精神的自立を果たそうとしているからだと考えられるためです。
子どもの言い分に耳を傾ける
子どもが主張してきたときは、子どもの意見を最後まで聞きます。
そのうえで、感情的になることなく論理的に対応しましょう。子どもの指示に一方的に従うのではなく、一緒に考える機会を設けることも大切です。
また子どもの言い分が正しく、「大人の方が間違っている」と感じたときは、素直に間違いを認めましょう。
そういった誠実な態度が、子どもの信頼を得ることにつながるでしょう。
信頼して見守る
保護者が優しすぎる接し方をしてしまうと、子どもは精神的な自立を果たしにくくなってしまうことがあります。
反対に厳しすぎる接し方では、反抗をさらに激しくしてしまう可能性もあります。
そのため保護者は、子どもと「つかず離れず」の距離を保ちながら、子どもを信頼して見守ることが大切です。
反抗期の子どもに悩んだときの相談先
反抗期の子どもにどのように接していいか分からないときや、「反抗が過度なのではないか」と思うような場合は、以下の相談先を利用することができます。
担任や養護教諭、スクールカウンセラー
反抗期の子どもが自分の気持ちを保護者に話してくれず、子どもの様子が心配に思える場合があるかもしれません。
このような場合は、担任や養護教諭に相談してみる方法もあります。
子どもの学校での様子をそっとみて知らせてもらうなど、協力を求めてみてください。
また、スクールカウンセラーに相談してもいいでしょう。
スクールカウンセラーとは、心理についての専門的な知識や技術を持ち、学校現場で児童・生徒などに相談・支援を行う人のことです。
すべての学校に配置されているわけではありませんが、配置されている場合は、面談の申し込み方法を確認してみてください。
医療機関
反抗期は、思春期とも時期が重なっています。
思春期は心身共に大きな変化が起こり、体調面でも精神面でも不安定になりやすいとされている時期です。
子どもの様子をみていて「ストレスや不安などによる症状が出ているのではないか」と感じる場合は、医療機関に相談してみるのも一つの方法です。
この場合は精神科や心療内科、神経内科を受診するといいでしょう。
また、「思春期外来」という診療科を設置している医療機関もあります。
児童相談所
児童相談所では、0歳から18歳未満までの子どもについてのさまざまな相談に応じています。
児童福祉司や児童心理司、医師などが相談と指導に対応しています。
自治体の相談窓口
思春期の子どもについての相談窓口を設けている自治体もあります。
電話や面談による相談のほか、子どもへの関わり方についての家族教室や公開講座などを開催している自治体もあります。
お住まいの自治体の情報を確認してみてください。
少年センター
子どもの反抗が過度なとき、また非行などの問題が強い場合などには、少年センターに相談することができます。
少年センターは、青少年の健全な育成や非行防止などのための指導などを行っている関係機関です。
無料で相談でき、秘密は厳守されます。
LITALICOジュニア
LITALICOジュニアでは、発達が気になる高校生までの子どもを対象とする放課後等デイサービスや学習塾を運営しています。
思春期や反抗期に入り、友人や保護者との関係が変化し始めて悩んだり、学習面での課題が目立ち始めたりするような場合も人間関係の築き方や学習のフォロー、進路や将来についてなどの幅広い課題に対応しています。
また、保護者の方がお子さまへの関わり方を学ぶプログラム「ペアレントトレーニング」ではご家庭での実践方法を専門指導員が一緒に考え、実際の関わり方を授業ごとに振り返ります。
また、無料オンライン相談も行っています。
子どもへの接し方について悩みや迷いがある場合は、お気軽にご利用ください。
反抗期についてまとめ
およそ小学校高学年から高校生の年代に訪れることのある反抗期は、子どもが保護者から精神的に独立し、一人の大人として自我を確立するための成長過程であると考えられています。
この時期には、保護者は子どもと適度な距離を保ちながら、子どもを信頼して見守ることが大事です。
子どもとの関わり方について悩む場合は、相談機関を利用して専門家のアドバイスを受けるのも一つの方法です。
LITALICOジュニアでも無料オンライン相談を行っていますので、ぜひご利用ください。
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監修者
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員
井上 雅彦
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。