
学校や園、公共の場で「あの人臭い!」「太ってる!」「このお話つまんない」「あの子嫌い!」など、思ったことをすぐ口に言う子どもの対応に悩んでいませんか。
その場で叱ってもまた同じことを繰り返したり、本人に悪気がない場合などはどうすべきか悩ましいものですよね。保護者の方の中には「相手の気持ちがわからないの?」と戸惑ったり、「もしかして発達障害?」と不安に思う方もいるのではないでしょうか。
この記事では、子どもが思ったことをすぐ言う場合の背景要因や対処法について解説します。

子どもが思ったことをすぐ言う要因

子どもが思ったことをすぐ言うのには、さまざまな要因が考えられます。ここでは子どもが思ったことをすぐ言う要因についてご紹介します。
子どもにどの要因があてはまりそうか思い浮かべながらご覧ください。
発達段階の途中にあり、「言ってよいこと」「言ってはいけないこと」を区別が難しい
発達段階によっては「言ってよいこと」「言ってはいけないこと」の判断がまだ難しいこともあり、特に年齢が低いうちは、内容にかかわらず、思ったことをすぐ言う子どもが多くいます。
これは、自分の言葉で見たことや感じたことを表現できるということでもあるため、年齢によっては必ずしも悪いことではありません。
性格や特性によるもの(相手の気持ちの理解が苦手、衝動性が強い、正義感が強い、など)
言ってよいことや言ってはいけないことの区別がつく年齢(小学校低学年ごろ)になっても、思ったことをすぐに言う傾向がある場合は、性格や特性によるものかもしれません。
ここでは考えられる性格や特性をいくつかご紹介します。
なお、年齢はあくまで目安であり、発達には個人差があります。また、特性があるからといって発達障害であるというわけではありません。ですが、思ったことをすぐ言う傾向が長く続き、日常生活や学校生活に支障が出ている場合は、相談機関に相談をしてみるのがいいでしょう。
相手の立場に立って考えたり、発言することが苦手
相手の気持ちを想像したり、相手の立場を考慮した声掛けが難しい子どもの場合、思ったことをストレートに口に出してしまうことがあります。
正義感が強い
正義感が強い場合、「言ってよいかどうか」という基準より、「自分の善悪の基準」に照らし合わせた言動をとることがあるため、思ったことをすぐ言ってしまう場合があります。
例えば、正義感が強く他人のルール違反が許せない場合、頭のなかで「あの人はルールに反している」と考えるだけならよいのですが、実際にその人に対して直接行動を起こす(「それはダメ!」と直接伝えるなど)とトラブルの原因になることがあります。
衝動性が強い
衝動性が強い場合、言ってよい内容かどうか、また言ってよいタイミングかどうかなどを考える前に、咄嗟に思ったことを口に出してしまうことがあります。
また、衝動性に伴って感情や欲求のコントロールが苦手な子どももいるため、「黙れ!」「触るな!」など攻撃的にとらえられかねない言葉が出てしまう場合もあります。
好奇心が強い
例えば好奇心が旺盛な子どもは、「知りたい」という欲求が強いため、内容の善悪にかかわらず、疑問に思ったことをすぐ言う可能性が考えられます。
子どもが思ったことをすぐ言う場合の具体的な対処法

上述の通り、状況によっては「思ったことをすぐ言う」という行動が必ずしも悪ではなく、むしろ「素直」「表裏のない人」など長所としてとらえられる場合もあります。
また、保護者の視点で子どもの行動が気になる場合でも、本人や周囲にとってはそこまで問題にはなっていない可能性もあります。
これらの前提を踏まえた上で、お子様の様子や状況に合わせて、下記の対処法を参考にしてみてください。
「言っていいこと」「言わないほうがいいこと」を区別する方法やルールを伝える
「言っていいこと」と「言わないほうがいいこと」は状況や相手によって判断が分かれたり、言ってよいかどうかを気にしすぎるあまり「言いたいことが言えない」というリスクもあるため、ルールはシンプルなものが望ましいです。
例えば、「相手が30秒以内に変えられないことは言わない」というルールや、「家ではOKだが、公共の場や学校ではNGな言葉」など場所によって区別するルールなどがあげられます。
相手の状況や気持ちを汲み取る練習をする
年齢が上がるにつれて、「冗談」や「親しいからこそのツッコミ」など、「言っていいこと」「言わないほうがいいこと」の区別が難しい場面に遭遇することもあります。
成長や実際の体験を通して、相手の状況や気持ちを理解するスキルは自然に身についていくこともありますが、それが難しい場合は、ロールプレイングや事例を通して、相手の状況を理解したり、気持ちを汲み取る練習をすることができます。
練習してもなかなか実践できない、注意しても気づいていない、頻繁に友だちとトラブルになってしまうなどの場合は、発達障害が背景にある可能性もあるため、専門機関に相談することをおすすめします。
言ってはいけないことを言いたくなった時の対処法を準備しておく
言ってはいけないと頭ではわかっていても、言いたい衝動に駆られる場合には「別の場所に移動する」「言いたいことを紙に書いておく」など、「発言する」以外の対処法を準備しておくと本人も気持ちが楽になることがあります。
他にも、どうしても「発言する」欲求が抑えづらい場合は、相手に直接伝えず、本当は言いたかったことを先生や大人に伝えることで「発言したい」という欲求を解消する方法もあります。
言ってはいけないことを言ってしまった場合に、どうすべきか話し合う
上記のように、発言しないようにすることが大前提ではあるものの、子どもによっては、どうしてもそれが難しい場面もあります。
そのような場面に備え、対処法を事前に話し合っておくことも大切です。例えば、「すぐに謝る」「先生や大人に報告する」など、本人の状況に合わせて実践できる方法を話し合うとよいでしょう。
思ったことをすぐ言うお子様への指導事例

思ったことをすぐ言う子どもに対する、LITALICOジュニアの指導事例を紹介します。
正義感が強く、思ったことをすぐに言ってしまうことでトラブルが多かったAさん(小5)
衝動性の強さと正義感の強さもあいまって、悪気なく、思ったことを相手にすぐに伝えてしまう傾向があったAさん。
ストレートな物言いのために相手が傷つき、トラブルになることも多くありました。その結果、学校の先生に怒られる経験も増え、悪気がないゆえに、悲しい思いをしていました。
支援の内容と成長の過程
アセスメントの結果、衝動性や正義感の強さの他に、相手の表情や様子の変化を読み取ることが難しいことや、伝えてしまった後の行動のレパートリーが少ないことがわかりました。
保護者との面談の結果、「衝動性の強さ」と「正義感の強さ」は長所としても活かせると判断し、授業では「相手の表情や状況を読み取るスキル」と「相手を傷つける行動をしてしまった後の対処法」の2つに集中してアプローチすることを決めました。
実際の授業では、「コミック会話」やロールプレイング動画を用いて、状況や相手の表情を説明することから始めました。
その後、その場面での望ましい行動を「選択肢から選ぶ」、「望ましい行動を自分で考える」と少しづつハードルを上げて練習を重ねました。実際に使ったのは下記の教材です。
授業の工夫・ポイント
Aさんは「間違える」「指摘される」という状況になると、とてもネガティブな気持ちになる傾向があったため、はじめは正解しやすい選択肢を準備するなど、成功体験を積み重ねることができる環境づくりを心掛けました。
また、ロールプレイに関しても、決められたお題ではなく、Aさんが大好きな恐竜や拳銃などを題材に、実際に段ボール工作をしながら、指導員と自然なやり取りの練習をおこないました。
具体的には、事前に必要なパーツや道具や段取りを決める話し合いの中で、あえて指導員が効率の悪い方法を提案したり、決めていた段取りをわざと間違えて失敗する場面を作りました。
Aさんは「違うってば!」「なんでできないの!!!」と強い言葉が出やすい傾向があったため、工作に取り組む前に、「先生、工作があまり得意じゃないから間違えてしまうかもしれない」「もし間違っていたり、違ったことをしていたら優しく教えてね」と伝えることで、「僕がここ手伝ってあげる」「ここはこうやってやるんだよ」と相手を気遣う声掛けが増え、良い行動でほめられる場面を増やすことを意識しました。
これにより、Aさんもモチベーションを保ちながら練習ができるだけでなく、より実際の場面に近い状況で相手の表情に目を向ける機会を作ることができました。
支援の成果
最終的には普段の生活の中で相手の表情に目を向けることができるようになり、学校でも少しずつトラブルが減っていきました。
家庭内でも、お母さまに攻撃的な発言をしてしまったあとに、自分でクールダウンをし、「さっきはママにきつく当たってごめんね」と自分の行動を振り返り、謝罪することができるようになりました。
まとめ

子どもに「思ったことをすぐ言う」という様子が見られた場合、咄嗟によくないことのように感じてしまうこともありますが、状況や環境によっては必ずしも「悪」というわけではなく、事例にあるAさんのように「長所」としてとらえられる場合もあります。
一方で、思ったことをすぐ言うことが原因で、園や学校でトラブルが続いたり、本人が過ごしづらいと感じている場合には、言っていいことと言ってはいけないことの区別の仕方を伝える、言いたいことがある時の代替法を考える、言ってしまった後の行動を決める、などの方法を試してみるのもよいでしょう。
場合によっては、相手の気持ちの理解が難しい、衝動性が強いなど発達障害を背景にした特性が影響している可能性もありますが、年齢が低いうちは自然な発達段階の途中であることも考えられるため、まずはお子様の様子を観察し、本人が園や学校生活で困っていたり、トラブルが頻発する場合は、専門機関を受診することをおすすめします。
LITALICOジュニアでは、保護者からのヒアリング、本人の様子や好きなことを踏まえて、オーダーメイドの指導をおこなっています。子どもに合わせて指導員がオリジナルの教材を作成する場合もあり、子どもの意欲を引き出しながら指導を実施しています。子供が思ったことをすぐ言うことで悩んでいる方はぜひ一度お問い合わせください。