喃語とは、「ばばば」「だだだ」など、赤ちゃんが発する子音+母音の連続する音からなる声のことを指します。
赤ちゃんが喃語でおしゃべりする姿はとても可愛いですが、「喃語が少ない…」、「まだ喃語で話しているけど大丈夫かな…」というような不安をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事ではそういった不安をお持ちの方に向けて、喃語がみられる時期の目安や子どもへの接し方のポイントなどをご紹介します。
※この記事では、この子音+母音が連続する規準喃語を喃語として解説します。
喃語(なんご)とは
喃語は赤ちゃんが発する特有の音声です。喃語は徐々に意味のある言葉に移行していきます。
喃語は意味のある言葉を話すための発声練習と言われています。最初は決まった短い喃語や不明瞭な喃語を話しますが、月齢があがるにつれて徐々に喃語のバリエーションも増えていきます。
赤ちゃんの喃語に意味はあるの?
赤ちゃんの喃語は、必ずしも何かの意図を伝えようとするものばかりではないようです。
しかし、喃語を多く話すほど舌や口、声帯や横隔膜の使い方が上達し、声の高低や長さ、音の種類に変化をつけられるようになります。そして、赤ちゃんは保護者や周りの大人の反応を受けて、さらに発声が増えたり、やりとりにもつながっていきます。
つまり、赤ちゃんにとって喃語は大切なコミュニケーションの1つだと考えられています。
喃語はいつからいつまで見られる?
ここでは、喃語がどれくらいの時期に見られるのかご紹介します。
ただし、子どもの言葉の発達は、個人差が大きいため、必ずしもこの時期に見られると言うわけではありません。
以下でご紹介している通りではないことも多いので、参考程度にご覧ください。
喃語は、一般的に生後5~6ヶ月前後から始まり、1歳頃まで見られます。月齢の喃語の段階をご紹介します。
生後5~6ヶ月頃
「あー」という母音だけの音から、「ばばば」「ままま」「だだだ」など子音が混じってきます。
生後8~9ヶ月頃
「ばぶばぶ」など、出せる音のパターンが増え、発音もはっきりしてきます。
これは、音の調節や肺から出る空気の調整ができるようになり、出せる音のパターンが増えるためです。
1歳~1歳半頃
この時期になると喃語の時期が終わり、言葉を話せるようになっていきます。
参考文献:『初めてママの妊娠・出産・育児ブック』、池川明監修、日東書院、2010年
赤ちゃんが話せるようになるまでの流れ
赤ちゃんが、言葉を使って話せるようになるまでの流れについてご紹介します。
ただし、赤ちゃんの発達は個人差が大きいので、あくまで参考程度にご覧ください。
泣いて声をあげる
生まれてきてすぐの頃には、赤ちゃんはお腹がすいた、眠たい、不安、不快などの自分の状態を表すために泣いて声をあげます。
この時期の赤ちゃんにとっては、泣くことが唯一のコミュニケーション手段です。
ただし、この時期は誰かに自分の感情を訴えている訳ではないと言われています。
クーイング
やがて赤ちゃんは、「うー」や「あー」などの、柔らかい母音の発声をするようになります。これは、身体の成長に伴って、のどや口の中に音を調整するスペースができてくることで、泣き声以外の声が出るようになってくるからです。
赤ちゃんは、耳から聞いた自分の声をおもしろがって、クーイングを繰り返すこともあります。
クーイングについては後ほど詳しくご紹介します。
子音が混じった音声
生後4ヶ月ごろになると、身体の成長にともなって、「ぶー」など、子音を含む音を発するようになります。
身体の成長が進むとともに、手足の動きと連動して笑ったり、音を出したりするようになります。
喃語
5〜6か月以降には、この子音+母音が連続する「ばばば」「ままま」などの音声が見られるようになり、これらは規準喃語と呼ばれています。
やがて、8〜9ヶ月頃を過ぎると、音の調節や肺から出る空気の調節ができるようになり、発音もはっきりしてきます。この時期になると、身振りや表情などと併せて、大人との間でのやり取りも生じてきます。
「声遊び」として始まる喃語ですが、この時期になると、発声や発話が何らかのコミュニケーションの働きをもつようになってきます。
指さし
人差し指を立てるという動きは、生後間もなくから見られますが、9か月以降ぐらいから指さしや表情、身ぶり手振りなどで「うれしい」「楽しい」など自分の気持ちを伝えることができるようになります。
また、この時期には、大人の話し声や周囲の音を真似し始めます。これは周りのものに興味を持ち出したサインです。この時点では、言葉の意味までは理解できていませんが、赤ちゃんが興味を持ったものの発音を教えることで、言葉や知識を身に付けることを促すことができるでしょう。
一語文・二語文
1歳を過ぎる頃になると、「ぶーぶ」(車)や「わんわん」(犬)といった、意味を持つ単語を口にするようになります。
喃語の時点では、意味を持たない言葉として発していましたが、一語文を話すころには、赤ちゃんは言葉の意味を理解し始めています。一語文と喃語と異なるのは、意味を持つ言葉かどうかという点です。
1歳半頃〜2歳半頃には、「まんま、ちょうだい」「わんわん、いる」のように、意味のある言葉が2つ続く二語文を話し始めます。
赤ちゃんが伝えたいことに対して、大人がその物の名前を教えていくことにより、言葉が獲得されていきます。赤ちゃんとたくさん会話をすることで、赤ちゃんにコミュニケーションの楽しさを教えてあげると良いでしょう。
クーイングと喃語の違いは?
クーイングは、口腔内が発達したことで出る音のことで、喃語より前の時期にみられます。
赤ちゃんの機嫌が良い時やリラックスしている時に出やすいと言われています。
ここでは、クーイングがみられる時期や音の出し方、喃語との違いについてご紹介します。
クーイングと喃語の違いは、音の出し方にあります。
クーイングは「あー」「うー」というような母音を中心とした音のことを言います。喃語の前の2〜3ヶ月頃に出すといわれています。
一方、喃語は「ばばば」というような子音+母音の連続する音からなる声のことを言います。
クーイングは成長とともに喃語へと移行すると考えられています。
赤ちゃんの喃語が多いとき・少ないときの接し方は?
喃語がでると言われている時期になっても、喃語が出なかったり、周りの子と比べて喃語が少なかったり、反対に多いと感じて不安になる保護者の方もいるのではないでしょうか。
喃語が少ないもしくは多いからと言って、必ずしも問題があるということではありません。とはいえ、何かできることはないのか知りたいという方に向けて、赤ちゃんに接する上で大切なポイントについてご紹介します。
赤ちゃんの喃語が少ないと感じるときの接し方
周囲が赤ちゃんの声に反応する
ある研究結果では、赤ちゃんが喃語を話せるようになるためには、周りからの働きかけが重要だと言われています。周りの声や自分の声を聞くことで、声の出し方を学んでいきます。
たとえ意味がない言葉であっても、赤ちゃんにとってはコミュニケーションを経験する機会になります。
また、反応が返ってくることに喜びを感じて、赤ちゃんが自発的にコミュニケーションを取ろうと喃語を出すようになるといわれています。
参考文献:『0歳児がことばを獲得するとき』 正高信男、中央公論社、1993年
赤ちゃんを笑わせる
赤ちゃんを笑わせることは、喃語を話すための準備になるといわれています。ポイントはほほ笑みではなく、「キャッキャ」と声をあげて笑うように促すことです。これにより、喃語を話すために必要な息のコントロールをする練習になります。
つまり、赤ちゃんの笑い声を促すことで、喃語を発しやすくなるような赤ちゃんの体づくりをすることができます。
「いないいないばあ」をする、スキンシップをとるなど、赤ちゃんが喜びそうなことをして笑わせてあげましょう。
話しかける回数を増やす
喃語を引き出すためには、赤ちゃんにたくさん話しかけることが大事です。
同じ音を真似たり、赤ちゃんが発声したときには「楽しいね」「そうだね」などと声をかけてみましょう。
赤ちゃんは、マザリーズと呼ばれるゆっくりした音や抑揚のついた音、高い音に反応しやすいので、そのような声で話しかけると良いでしょう。
参考文献:『ことばの発達入門』、秦野悦子、大修館書店、2001年
赤ちゃんの喃語が多いと感じるときの接し方
赤ちゃんの中には、喃語でよくしゃべる子もいます。
そんな赤ちゃんの言葉の発達をより促すためのポイントをいくつかご紹介します。
赤ちゃんの声に反応する
喃語が少ない時と同様、赤ちゃんの声に反応することは喃語が多い赤ちゃんと接するうえでも大切です。逆模倣といって赤ちゃんの出す声をそのまま真似することも有効です。
反応があることで赤ちゃんは「ちゃんと聞いてくれているんだな」と思って安心します。また、「お話しするのは楽しいことなんだ」と感じるようになり、より話すことへのやる気がでてきます。
赤ちゃんの気持ちを代弁する
赤ちゃんの気持ちを代わりに言葉にしてあげることで、赤ちゃんは言葉やその感覚を覚えます。
例えば、ぶつけたときに「痛かったね」、お食事の時に「おいしいね」など、赤ちゃんの様子を見ながら声をかけてあげると、赤ちゃんは「これが痛いということなんだな」「これがおいしいということなんだな」と学習をします。
赤ちゃんの喃語に疲れてしまったときには
赤ちゃんの喃語はとても可愛いですが、ずっと話しかけられているとそれに答えなくてはと疲れてしまうこともあるのではないでしょうか。
そんなときの対応の仕方についてもご紹介します。
一旦距離をあけてみる
疲れたと感じたときは、赤ちゃんが安全な場所にいることを確認し、「ちょっとトイレ行ってくるね」など声をかけて、トイレや別の部屋に数分だけこもって気持ちを落ち着けましょう。短い時間ですが、意外と気持ちをリセットできることがあります。
1人の時間がどうしても作れないときは、地域子育て支援センターなど人と交流できる場所へ行ってみるのも良いでしょう。
散歩をする
抱っこ紐やベビーカーに乗せてお散歩をすると寝てしまう子もいます。また、外に出ると落ち着く赤ちゃんは多いようです。保護者の気分転換にもなるので外に出て散歩してみるのも良いでしょう。
おもちゃで遊ぶことを促す
保護者が赤ちゃんの相手をできないときは、少しの間おもちゃやぬいぐるみなどで遊んでもらいましょう。ぬいぐるみやおもちゃを相手に1人でおしゃべりしてくれる場合もあるので、その間に保護者は休憩をとって気分転換をしましょう。
たくさん喃語を話す赤ちゃんの相手をするのはとても大変なことですが、息抜きの時間をとれるように工夫して、子どもの成長を見守ってあげられると良いでしょう。
子育てで悩むことがあれば、後ほど相談先についてもご紹介しているので、ひとりで抱え込まず相談してみてください。
LITALICOジュニアでの言葉の発達を促す指導事例
LITALICOジュニアでは、言葉の発達を促す指導もおこなっています。
言葉を話せるようになるまでには、たくさんの言葉を聞いて学ぶ必要があります。
まずはお子さまが興味を持てる内容で、コミュニケーションをとることが楽しいと思えるような経験を積み重ねていくことが大切です。
子どもの興味が強いおもちゃを使って、おもちゃを動かしたり、音を鳴らしたりしながらそれに関連する言葉を指導員が発します。例えば電車が好きな子どもに対してプラレールのおもちゃを使いながら、「ガタンゴトン」「びゅーん」など、子どもが興味を持って真似をしてくれそうな言葉を探しながら、言葉の数を少しずつ増やしていきます。
こうしたLITALICOジュニアでの指導とご家庭での働きかけで、次第に言葉の数が増えていったという成長事例もあります。通い始めて半年たつ頃には、自分の要求を言葉で伝えることが増え、かんしゃくを起こすことも少なくなり、行動面でも大きく成長されています。
LITALICOジュニアでは実際の授業を体験することもできます。気になった方はぜひ一度お問い合わせください。
赤ちゃんの発育に関する相談先
赤ちゃんの喃語についてお悩みがある方は、一人で抱え込まず、専門機関などで相談すると良いでしょう。
赤ちゃんの発育に関して、悩みがある場合に相談できる機関についていくつかご紹介します。
小児科
小児科では、子どもの発達に関する悩みごとの相談にも乗ってくれます。より子どもの発達に詳しい専門機関などの情報も持っているので、専門機関を紹介してくれる場合もあります。
地域子育て支援センター
行政や自治体が実施主体となって行っている事業です。身近な場所に親子で集まって相談や交流ができるようにと各地域に設置されています。
子育ての不安・悩みを無料で相談をすることができます。
一例として東京都の子育てひろば(地域子育て支援拠点)一覧を載せておきます。
保健所
保健所は、市民生活に密接にかかわりがある行政窓口で、医師、保健師、精神保健福祉相談員、理学療法士、作業療法士、聴覚言語専門職などが配置されています。
最近は、保健所内に子育て支援の担当を配置しているところもあり、子育てに関する相談にのってもらうこともできます。
乳幼児健康診査
乳幼児健診は、各市町村の保健センターなどで行われているもので、発育状態の確認、病気の有無や早期発見など、赤ちゃんの健康保持・増進を図ることを目的としています。
また、保護者が普段の子育てで気になっていることや、なかなか話す機会がない不安などを小児科医や保健師など専門家に相談することができます。
児童相談所・児童家庭支援センター
児童相談所は、育児の相談、健康の相談、発達の相談など、18歳未満の子どもに関するさまざまな相談を受け付けています。
基本的には、事前に電話などで申し込みが必要なので、あらかじめお住まいの市町村のHPなどを見て確認しましょう。
児童家庭支援センターは、地域の子どもの福祉に関する問題の中でより専門的な知識や技術を必要とするものに対して、必要な助言やその他必要な援助を行なっています。
市町村によって名称が異なるので、相談を希望される場合は、まずお住まいの市町村の窓口でご確認ください。
喃語のまとめ
赤ちゃんの喃語は、個人差もありますが、一般的に生後5~6ヶ月前後から始まり、1歳頃までといわれています。喃語を話すようになったら、ゆっくりわかりやすい言葉で赤ちゃんに話しかけ、赤ちゃんの喃語に反応してあげると良いでしょう。
赤ちゃんは、あっという間に成長していきます。喃語を話す時期も限られています。喃語を話すようになったと思ったら、いつの間にかおしゃべりできるようになっていたりします。
限られた期間ならではの言葉やコミュニケーションを、赤ちゃんと一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか。
気になることがあれば、支援機関で相談することを検討してみてください。
LITALICOジュニアでは、各地で児童発達支援・放課後等デイサービス・幼児教室・学習塾を運営しており、一人ひとりの特性に合わせた指導をおこない、お子さまの成長をサポートをしています。
LITALICOジュニアでは言葉の発達がゆっくりな子どもの指導実績も豊富にあります。
「言葉がなかなか出ない」「子どもの発達が遅い気がする」などお悩みのある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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監修者
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員
井上 雅彦
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。