「他の子に比べて、発達がゆっくりな気がする…」「得意なことと苦手なことの差が激しい」など、子どもの発達が気になるという保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
子どもの得意・不得意などの発達のバランスを知るための検査の1つとしてWISC(ウィスク)検査があります。
WISC検査は、子どもの知能を測定するための検査で、客観的な数値で子どもの状態を知ることができます。
本記事では、WISC検査の内容や対象の年齢、受けられる場所や費用についてご紹介します。
WISC(ウィスク)検査とは?
WISCはウェクスラー式知能検査の1つです。
現在日本ではWISC-Ⅴが一番新しい検査になりますが、一番普及して使用されているのがWISC-Ⅳになりますので、こちらを中心にご紹介します。
WISC-Ⅳでは、全体的な認知能力を表す全検査IQと「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の4つの指標をそれぞれ数値化した結果が見られる検査です。
検査は、60〜90分程度の時間で、公認心理師や臨床心理士などの専門家が受検者と1対1で行われます。
WISC検査の目的は、子どもの得意なことと苦手なことを把握し、子どもに合った関わり方やより伸ばすと良いポイントを知ることです。
WISC検査は、子どもの発達状況や、得意なこと・苦手なことを把握する上で、とても役立ちますが、発達障害かどうかについては、あくまで専門の医師による総合的な判断になります。
ウェクスラー式知能検査とは?
WISC検査は、ウェクスラー式知能検査の1つとお伝えしましたが、ウェクスラー式知能検査とはどんなものなのでしょうか?
ここではウェクスラー式知能検査について解説します。
ウェクスラー式知能検査は、年齢に応じた以下の3種類があります。
- 幼児用:WPPSI
- 児童用:WISC
- 成人用:WAIS
ウェクスラー式知能検査は、ウェクスラーが個人の知能構造を診断する目的で開発した知能検査で、70年以上の歴史があります。
現在は世界各地で使用されており、日本においても最もよく使われる知能検査の1つです。
WISC(ウィスク)検査の内容は?
WISC-IV知能検査は、10種類の基本検査と、必要があれば行う5種類の補助検査の合計15種類の検査で構成されています。
検査を行うことで、全検査IQと4つの指標得点を合わせた5つの合成得点を知ることができます。
合成得点とは、評価点の平均を100とし、その上下のばらつきを割り出したものです。
5つの合成得点の差が大きければ大きいほど、生きづらさも大きくなると言われており、合成得点からは、子どもの知的発達の状態をより多方面から把握することができます。
ここからは、5つの合成得点の詳細について見てみましょう。
1.全検査IQ(FSIQ)
全体的な認知能力を表します。5種類の補助検査を除いた10種類の基本検査の合計から算出されます。
2.指標得点
言語理解(VCI)
言語による理解・推理・思考力についての指標です。
言葉でコミュニケーションをとったり、そこから推論するための力がこれに当てはまります。
- 基本検査項目:類似、単語、理解
- 補助検査項目:知識、語の推理
知覚推理(PRI)
視覚的な情報を把握し理解する力や、視覚的情報にあわせて体を動かす力についての指標です。
これは、新しい情報に対応する力にも影響すると考えられています。
基本検査項目:積木模様、絵の概念、行列推理
補助検査項目:絵の完成
ワーキングメモリー(WMI)
情報を一時的に記憶して、処理する能力に関する指標です。
これは、読み書きや算数といった学習の能力や、集中力に大きく関わってきます。
基本検査項目:数唱、語音整列
補助検査項目:算数
処理速度(PSI)
視覚からの情報を処理する速さについての指標です。
マイペースで切り替えが苦手な場合は、この指標得点が低くなることがあります。
基本検査項目:符号、記号探し
補助検査項目:絵の抹消
WISC(ウィスク)検査の対象年齢は?何歳から?
WISC-Ⅳは、児童用の知能検査で、5歳0ヶ月〜16歳11ヶ月の子どもを対象としています。
現在使用されている他のウェクスラー式知能検査の対象年齢は、以下の通りです。
- 幼児用:WPPSI-ⅢⅣ 2歳6ヵ月~7歳3ヵ月
- 成人用:WAIS-Ⅳ 16歳0ヵ月~90歳11ヵ月
WISC(ウィスク)検査はどこで受けられる?費用は?
WISC検査は、さまざまな場所で受けることができますが、それぞれ特徴があるので、目的に合わせて受ける場所を選ぶと良いでしょう。
検査費用や検査結果発行費用については、施設ごとに異なります。
保険適用されるかどうかもさまざまなので、気になる場合は個別に問い合わせてみてください。
ここでは、WISC検査を受けられる場所とそれぞれの特徴をご紹介します。
医療機関(児童精神科、小児科)
医療機関では子どもに生じている困難さが一体どのようなことから生じているのかを調べるために検査を施行することがあります。
その検査のひとつとしてWISC検査を受けることがありますが、主治医が検査の必要があると判断した場合のみ実施されますので、WISC検査を受けたいと思って受診しても、必ずしも検査が受けられるわけではありません。
また、病院によっては紹介状が必要な場合もあるので、事前に問い合わせて確認できると良いでしょう。
教育支援センター
市町村の教育支援センターでは、今後子どもがどういった支援を受けるのが良いかの参考とするために検査が行われます。
市町村の教育委員会や福祉部局と連携している場合が多いので、必要な支援にスムーズにつながることができるというメリットがあります。
民間施設(カウンセリングルーム、心理相談室など)
病院や教育支援センターでWISC検査を受ける場合、待ち時間が長く1ヶ月以上の予約待ちとなることがありますが、民間施設では比較的予約が取りやすいとされています。
LITALICOジュニアでも心理検査を実施しております
LITALICOジュニアでも、WISC-IVをはじめ、心理検査をおこなっています。
LITALICOジュニアの心理検査では、検査の結果から考えられる子どもに合ったご家庭での関わり方や得意不得意や課題となることなどを含めた報告書をお渡しします。また、読み解くことの難しい結果を具体的にわかりやすくご説明します。
LITALICOジュニアをご利用いただいている場合は、保護者さまからご利用教室へ検査結果を共有いただくと、その後の指導に活用していくことができます。
※ 保護者さまの了承なく学校などの関係機関にLITALICOジュニアから共有することはありませんのでご安心ください。
LITALICOジュニアでは、発達が気になる子どもをサポートする場として、児童発達支援教室や放課後等デイサービスを運営しています。
学校の勉強についていけない、集団行動が苦手、言葉が遅い、手先が不器用など一人ひとりの困りごとに合わせて、子どもに合った学び方で楽しく学びながら課題にアプローチしていきます。
WISC(ウィスク)検査のまとめ
WISC検査を受けることは、子どもの得意なこと苦手なことや今後の関わり方のポイントが分かるという点で非常に役立ちます。
また、今まで子どもの発達について不安に思っていたことの要因が分かって、気持ちがすっきりしたという保護者の方もいらっしゃいます。
「今の子どもの状態を把握したい」「子どもに適した関わり方や環境を知りたい」という方は、まずは専門家に相談の上で、検査を有効活用できると良いでしょう。
LITALICOジュニアでは、子どもの課題や興味関心に合わせたマンツーマンでの指導を体験いただけます。
体験授業を通じて、子どもの得意不得意をアセスメント(分析)し、今後どのように授業を進めていくと課題解決に繋がるのかなどをお伝えします。
困っていることはあるけど、LITALICOジュニアが合うのか分からない、どんな授業が受けられるのかイメージできないという方におすすめです。
まずはお気軽にお問い合わせください。
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監修者
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員
井上 雅彦
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。