「子どもが不登校になった」「学校に行かないと勉強が遅れるのではないか」「卒業はできるのか」といったことで悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
そのようなときは、家庭だけでなんとかしようとせず、子どもに合ったサポート体制を模索してみるといいかもしれません。選択肢の一つとして、民間の教育機関のフリースクールを活用する方法があります。フリースクールは、個々に合わせた居場所として、学校と併用しながら通うことができます。
この記事では、フリースクールの概要、授業内容、かかる費用、在籍校の出席扱いとなるのかなどを紹介します。
フリースクールとは?
フリースクールという言葉は耳にしたことはあるけど、何をする場所かはわからないという方も多いのではないでしょうか。
フリースクールとは、不登校の状態にある子どもが、ある一定の期間、学校の代わりとして過ごす居場所です。
フリースクールについて、文部科学省の定義では、
「一般に、不登校の子供に対し、学習活動、教育相談、体験活動などの活動をおこなっている民間の施設。規模や活動内容は多種多様であり、民間の自主性・主体性の下に設置・運営されている」
とされています。
文部科学省は、不登校などの子どもたちが、それぞれの可能性を伸ばせるようにフリースクールなどを活用し、社会的自立への支援をおこなうことを勧めています。
フリースクールの運営団体はNPO法人(特定非営利活動法人)が最も多くなっており、その他には任意団体などがあります。
どのような子どもが通っているの?
フリースクールは、学校に行かない、もしくは行けない状況で、不登校の状態にある小学生〜高校生までの幅広い年齢層の子どもが多く在籍しています。
入学の条件は?
フリースクールは基本的には、入学資格を設けていないことが多く、特徴や受けられる支援内容で子どもと相性の合う団体・施設を選択されることが多いです。
フリースクールの開所日数は?
フリースクールの開所日数は、週5日が最も多く、全体の5割強となります。平均開所日数は、週4. 6日です。
フリースクールは、最初は週1回から様子を見ることや、生活リズムの状態に合わせて、午前中のみ、午後からのみ通うことも可能です。また、学校と併用しながら、息抜きとして活用することもできます。その他、訪問型のフリースクールや宿泊型のフリースクールもあります。
フリースクールのタイプ
フリースクールにはいろいろなタイプがあるので、子どもの性格や希望に合わせて選択していくといいでしょう。ここではフリースクールのタイプの例を一部ご紹介します。
安心できる居場所を作り、心のケアを重視するスクール
学校復帰を前提とせず、先生やスタッフ、仲間と一緒に過ごすなかで、自信や学ぶ意欲を取り戻すことを基本方針にしているフリースクールもあります。
まずは安心できる場所をつくりたいという場合には合っているかもしれません。
学校に復帰したときに備えて、勉強のサポートがあるスクール
居場所作りに加えて、学校の授業の進度に合わせて、個別に学習指導をおこなうフリースクールもあります。中には通信制高校やサポート校が小中等部として開設している場合もあります。
専門家が社会生活を円滑に送るためのトレーニングが受けられるスクール
医療機関と連携しながら、適切な援助をできるような体制を整えているフリースクールもあります。専門家が個々の状況に応じた学習支援や、社会生活を円滑に送るためのトレーニングをおこないます。
学習障害や発達障害、心身の不調がある子どもの場合には、こういったフリースクールも検討するといいでしょう。
自宅でサポートを受けられるスクール
外出や通学することへのハードルが高い場合には、自宅でサポートを受けられるフリースクールも検討してみるのがいいでしょう。
スタッフが自宅まで来て、子どもの希望・状況に応じて、興味を示したことや自主的におこなっていることを共にし、意欲を取り戻すことを目標としています。
ほかにも、自然豊かな立地環境で、健康的な生活習慣を身につけたり、子どもの自主性を育てることを目指すフリースクールや、特定の知識・専門スキルを学べるフリースクールや、独自の教育方針を取り入れているフリースクールもあります。
子どもの興味関心や状況に合わせて検討してみるといいでしょう。
フリースクールの授業内容は?
フリースクールに通うとなっても、「勉強はどのくらい教えてもらうことができるのか」、「進学や就職に必要な学びを身につけることは可能なのか」と不安に思われる方もいるのではないでしょうか?
フリースクールは、基本的には学校のように決まったプログラムやカリキュラムがなく、授業内容は団体・施設によって異なります。
文部科学省の調査によると、授業の形態はさまざまですが、個別での学習をおこなっているフリースクールが約9割とほとんどです。集団での授業形式を実施している場合や、個別・集団どちらも実施している場所もあります。
そのほか、以下のような内容を実施しているフリースクールも多くあります。
- 相談・カウンセリング
- 自然に触れ合ったり、社会経験を積むなどの体験活動
- 家庭訪問
また、近年はICTを利用した家庭学習に注目が集まっており、全国どこからでも参加ができるバーチャル空間を活用したオンラインフリースクールもあります。
このように授業の内容や形態はフリースクールによってさまざまです。気になるフリースクールがあれば自分の希望する授業内容が受けられるのかなど気になることについて問い合わせてみるといいでしょう。
フリースクールの費用の平均は?
フリースクールの費用は一律ではなく、団体・施設によって異なります。以下は、費用の平均です。
- 入会金の平均額:約5万3千円
- 授業料の平均額(月額):約3万3千円
入会金・授業料は施設や運営団体によっても異なるので、気になるフリースクールがある場合には一度問い合わせてみるといいでしょう。
また、地方自治体によっては補助金制度がある場合があるので、入学する前に一度確認をしてみてください。
フリースクールと出席認定について
フリースクールを活用することになったとしても、スムーズに学校へ戻ることができるのか、無事に学校を卒業することはできるのか、懸念されている方も多いのではないでしょうか?
実は、フリースクールへ通うことで、学校に出席したこととして認定されるケースもあります。出席扱いとなるパターンや準備について詳しく解説します。
不登校の小学生~中学生を対象として、文部科学省が定めた「出席扱い制度」というものがあります。これは、児童・生徒が、円滑に学校復帰が可能となるようなサポートとして、再び登校するための意欲促進や内申点の対策を目的としています。
学校外の教育機関を利用をした際に、出席として認定される条件としては、一定要件を満たし、校長先生が指導要録上認めた場合にできることとしています。
出席認定のための具体的な流れとしては、学校復帰も視野に入れて、通う予定のフリースクールの授業内容やカリキュラムなどが、在籍している学校の出席として相応しいか、担任の先生を通して、教頭先生や校長先生も交えて、校内で協議がされます。そのうえで、ICTの利用を含めた、学習教材や学習設計内容、学習履歴の提出方法に関して、学校と連携をするためのルールを決めます。
また、高校生に関しては、高等学校の全日制・定時制課程において、不登校の生徒を対象に、通信の方法を用いた教育カリキュラムにより、36単位を上限として単位認定をおこなうことを可能としています。
フリースクール卒業後の進路について
ここでは、フリースクールを長期間利用することになった場合の、卒業後の進路についてご紹介します。
以下は、フリースクール卒業後の進路の一例です。
- 元々在籍していた学校に復帰・復学する
- 転校・編入をして、全日制の中学・高校・大学・短期大学・専門学校などへ進学する
- 通信制・定時制の学校へ進学する
- 職業訓練校に通ったり、就職をする
- ホームスクーリングや留学をする
上記の通り、卒業後の進路はひとつではありません。また、日本の不登校児童・生徒への支援の考え方は、「学校に復帰すること」だけではなく、「社会的な自立を目指すこと」に変化しています。
全日制の学校への通学は負担になるという場合には、通信制や定時制の学校への進学という選択肢もありますし、学校に通うことよりも社会に出てチャレンジしたいという気持ちがある場合には、職業校に通ったり就職するという選択肢もあります。
また、海外文化への興味が強く、語学や技術を学びたいという気持ちがある場合には、ホームスクーリングや留学も視野にいれるといいでしょう。
このようにさまざまな選択肢があるので、子どもの希望を聞きながら卒業後の進路を検討するといいでしょう。
フリースクールを検討する場合に大切なこと
フリースクールの活用を考えているが、何を基準に選べばいいかわからない、子どもに合うかスクールをどう見極めればいいかわからないという方もいらっしゃると思います。
そこで、フリースクールを検討する際のポイントについて解説します。
通学のしやすさ
実際にフリースクールに通う場合には通学のしやすさも重要です。
フリースクールまでの通学時間や通学距離、利用する交通機関の混み具合や交通費、通学経路の街並みなど、実際に見学に行きながら確認してみましょう。
授業や活動内容
授業や活動内容はフリースクールによってさまざまです。
フリースクールの1日の過ごし方やカリキュラムなど、入学後のギャップを少なくするためにも、実際に体験をしてみましょう。
サポート体制
フリースクールが、子どもの状況に合わせて、個別での相談やフォローをどういった形で実施してくれるか、出席認定の可能性を含め所属している学校と連携ができそうか、自宅学習を取り入れているかなどにも着目してみましょう。
居心地
何より重要なのは、本人がリラックスして安心して過ごせるかです。
環境が整えば、自分の存在意義を肯定することができるので、強みを発揮しやすくなり、自信が生まれやすいです。
子どもの不登校に関する支援や相談先について
フリースクールを活用するかどうか、その他にどういった不登校に関するサポートがあるかなど、まずは誰かに相談してみたいという方もいると思います。
そこで、子どもの不登校について教育支援をおこなっている専門家や相談先をいくつかご案内します。
スクールソーシャルワーカー
スクールソーシャルワーカーは、教育分野に関する知識に加えて、社会福祉などの専門的な知識や技術を有しており、関係機関と連携して、課題解決へ向けた対応をしています。
スクールソーシャルワーカーは、小学校や中学校に配置されていたり、要請があった学校に随時派遣されます。所属する学校にスクールソーシャルワーカーが派遣されているかどうかは、担任の先生にお聞きいただくか、市町村の教育委員会に確認してみましょう。
スクールカウンセラー
児童生徒に対する相談のほか、保護者および教職員に対する相談、教職員への研修、事件・事故などの緊急対応における被害児童生徒の心のケアなどをおこなっています。
平成25年時点で、スクールカウンセラーが派遣または配置されている学校数は、20,310か所であります。都道府県によって活用の状況はさまざまなので、所属する学校で配置されているかどうかは担任の先生に聞いてみるといいでしょう。
特別支援教育コーディネーター
学校内の関係者や関係機関との連絡や調整、および、保護者に対する学校の窓口として機能しており、障害のある児童生徒などに対する教育実践の充実を担っています。
特別支援教育コーディネーターは各学校や園に配置され、先生がその役割を兼ねています。小学校・中学校の場合は担任をしている先生、養護教諭の先生、特別支援学級の先生が役割を担う場合が多いようです。
所属する学校の特別支援教育コーディネーターがわからない場合は、学校に問い合わせてみましょう。
教育相談センター
幼児から高校生相当年齢までの友人関係、いじめ、家族関係、学校生活、不登校、進級・進路などの相談や、子どもの性格や行動、しつけ、発達障害、自傷行為、家庭内暴力、ヤングケアラーに起因する相談も受け付けています。
教育支援センター(適応指導教室)
不登校児童・生徒指導や学校生活へ復帰を支援することを目的に、教育委員会および首長部局によって学校以外の場所などに設置された施設のことです。
保護者から子育てに関する悩み相談も受け付けています。
不登校相談会
市区町村の教育委員会とフリースクールやフリースペースが一体となり、不登校で悩む児童・生徒や保護者を対象に相談会を行い、社会的自立や学校生活の再開に向けた支援をおこなっています。
例として、神奈川県の不登校相談会のWebサイトをご紹介します。
フリースクールについてのまとめ
今回は、フリースクールについて解説しました。コロナ禍における環境の変化によりストレスが増幅し、生活リズムが乱れやすい状況や、制限がある中での学校生活で交友関係を築きにくいなど、不登校になる子どもは年々増えています。
フリースクールのような学校や自宅以外の居場所について考えることは、子どもの将来にとって大変有益だと言われています。子どものSOSをしっかり受け止め、子どもに合った支援を活用することも是非検討してみてください。
幼児教室・学習塾を運営しているLITALICOジュニアでも不登校の子どもの支援をおこなっています。LITALICOジュニアでは子ども一人ひとりの得意不得意に合わせた指導をおこない、困りごとを解決できるようサポートします。
「学校に行けなくて勉強が遅れていて心配」「子どもが不登校だけどどう接していいかわからない」などご心配やお悩みを無料で相談することもできますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。