忘れ物が多い子どもへの対策のポイントや具体例などを紹介します

「学校に持っていくものを忘れてしまう」「何度言っても繰り返してしまう」と子どもの忘れ物が多くて悩んでいる方もいるのではないでしょうか?

 

子どもが忘れ物をするにはさまざまな理由があり、子ども自身もどうしたらいいのか困っているかもしれません。

 

そこでこの記事では、忘れ物が多くなる理由や対策のポイント、具体例などを紹介します。

子どもの忘れ物が多くなる理由は?

子どもの忘れ物が多くなる理由は?

子どもの忘れ物に悩んでいる保護者の方も多いと思います。「学校に教科書を持っていくのを忘れた」「宿題を忘れた」など、忘れ物をすること自体は誰しも経験があるのではないでしょうか?

 

忘れ物をすること自体は珍しいことではありません。ごくまれにうっかり忘れたり、たまたま体調が悪くて忘れるなど一時的なものであればあまり気にする必要はないかもしれません。

 

しかし「何度も繰り返す」「毎日忘れ物をする」と頻度が多く、生活に影響が出ているような場合は、その理由を考えて対策をとっていくことが大事です。

忘れ物をする理由とは?

子どもが忘れ物をする理由は一つだけでなく、さまざまな要因が絡み合って忘れ物につながっています。

 

ほかの子はできていると聞くと、子ども自身に理由を探してしまうかもしれませんが、同じ学校に通っている子どもであっても細かい状況はそれぞれ異なっています。

 

子ども自身の性格や特性とともに、忘れ物をしやすい環境になっていないかということを考えていく必要があります。

 

子どもが何度も忘れ物をすると、親も感情的になり「どうしてそんなにわすれ物するの?」と叱ってしまいがちになります。しかし、忘れ物が多いときは子ども自身も困っています。

わざと忘れ物をしようとしているのではないため、理由を探す場合にも「対策を立てるため」といったスタンスで考えていくようにするといいでしょう。

 

ここでは学校へ忘れ物をする場合の理由をいくつか紹介します。

  • 持ち物を把握していない
  • 把握はしているが抜けてしまう
  • 時間に余裕がない
  • 持ち物が多すぎる
  • 整理整頓が苦手
  • ものを置く場所が決まっていない

持ち物を把握していない

そもそもいつ何を持っていくのか子どもが把握していない、という可能性があります。

 

把握していない場合にさらに、「先生が持ち物を口頭だけで説明していて、子どもがうまく把握できない」

「プリントをもらっているが、あいまいな書き方で理解が難しい」「先生は説明しているが、聞き逃してしまう」「プリントをなくしてしまう」といったことが考えられます。

 

把握はしているが抜けてしまう

持ち物を把握はしていても忘れ物が多くなっている場合は、どこかで抜けてしまっているのかもしれません。

 

例えば、「口頭で説明されたときは覚えていても、メモを残していないため当日までに忘れてしまっている」「プリントを普段目にしない場所にしまっていて、忘れてしまう」といったことが考えられます。

 

時間に余裕がない

持ち物を覚えていたとしても、朝学校へ行く準備しているときに慌てていてランドセルに入れ忘れているという場合もあります。

 

朝慌ててしまうのには、「朝起きるのが苦手」「学校までが遠くて朝早く出なければならない」「そもそも前日に準備するのを忘れてしまう」といったことが考えられます。

 

整理整頓が苦手

持ち物は覚えていても、その物を見つけられないということも忘れ物が多くなる理由として考えられます。

 

物の場所がわからない場合は、「整理整頓が苦手で探すのに時間がかかってしまう」「物を無くしてしまうことが多い」などが考えられます。

 

ものを置く場所が決まっていない

ランドセルや連絡帳などを置く場所が決まっていないと、必要なものがどこに行ったかわからなくなりものを探し回ることが多くなります。

 

持ち物が多すぎる

一つ一つの持ち物は覚えていても、持ち物が多すぎるためにランドセルに入れたつもりが入っていなかったということもあり得ます。

 

ほかにも子どもにとって持ち物が多すぎることで、整理整頓がしづらくなったり、準備に時間がかかるなど、上に挙げたような理由が起きやすくなることも考えられます。

ADHD(注意欠如多動症)との関係

忘れ物が多くなる理由として、ADHD(注意欠如多動症)との関連を考えている方もいるかもしれません。

 

ADHDとは、「不注意」や「多動-衝動性」という特性がある発達障害の一つです。

 

不注意特性では、「一つのことに注意を向けるのが難しい」という傾向があります。

多動-衝動性特性では、「じっとしていることが苦手」「思いついたことをすぐ行動や言葉に移す」といった傾向があります。

 

実際に厚生労働省のWebサイトにもADHDの特徴として、忘れ物が多いことが挙げられています。しかし、それは特徴の一つにすぎず、忘れ物が多いからADHDだと判断することはできません。

 

また、ADHDの診断をおこなえるのは医師のみのため、ほかにも当てはまることがあるなどで不安がある方は、まずはかかりつけ医や保健センターなどに相談してみるといいでしょう。

忘れ物が多い子どもへの対策のポイント

忘れ物が多い子どもへの対策のポイント

ここでは忘れ物が多い子どもへの対策のポイントを紹介します。

 

子ども自身もどうしていいかわからず困っている状態なので、「しっかりしなさい」など叱るだけだと、子どもも何をしていいかわからずに改善することは難しいでしょう。

 

忘れ物が多くなっている理由の見当をつけて、それに合わせた対策を取っていくことが大事です。

 

対策のポイントとしては

  • 何が理由か見当をつける
  • 対策を子どもと一緒に考える
  • ツールやアプリなどを利用する

といったことが挙げられます。

何が理由か見当をつける

忘れ物が多くなる理由によって、対策も変わってきます。そのため、まずは理由の見当をつけることが大事です。

 

理由の見当をつけるには、忘れ物が多くなった時に何か変化がなかったかを探るのも一つの方法です。

 

学年が上がって、「プリントではなく口頭での説明が増えた」「教科が増えて持ち物も多くなった」といったことがあれば、それが理由となっている可能性があります。

対策を子どもと一緒に考える

忘れ物が多い理由の見当がついたら対策を立てていきますが、一方的に保護者が決めるのではなく子どもと一緒に考えていくようにしましょう。

 

子どもが自分自身で考えたことだと納得して行動することができますし、今後の受験や学生生活、仕事での持ち物管理をする際に、自身で対策を立てていくことにもつながっていきます。

 

子どもの性格や年齢などを踏まえて、適時保護者がサポートしながら対策を立てていくといいでしょう。

ツールやアプリなどを利用する

対策といっても、すべて努力で何とかするのではなく、忘れ物を減らせるようなツールやアプリなどをうまく活用していくといいでしょう。

 

よく使われるものとして「TODOリスト」や「リマインダーアプリ」などがあります。詳細は後ほど紹介します。

忘れ物が多い子どもへの対策の例

忘れ物が多い子どもへの対策の例

ここでは忘れ物が多い場合の具体的な対策例を紹介します。

 

対策をするうえで大事なのは、忘れ物を完全になくすことを目指すのではなく、「少なくする」という考え方です。

 

忘れ物自体は誰でもしたことがあると思いますし、大人になってからもゼロにはなっていないでしょう。完全になくすことを目指すとそれがプレッシャーになることもあるため、あくまで「少なくする」という心がまえでいるといいでしょう。

  • 持ち物を把握する
  • ツールを活用する
  • 準備する時間を決める
  • 整理整頓をする
  • 忘れ物をしたときの対応を考えておく

持ち物を把握する

そもそも持っていくものがわからないという場合は、メモを取ることやプリントを保護者と一緒に確認するという方法があります。

 

メモを取る場合は「いつ」「何を」持っていくかを書いておくことが大事です。

プリントの内容があいまいな場合は、「家に帰ったら保護者と一緒に確認する」といった対策もあります。

ツールを活用する

持っていくものを把握したら、ツールなどを活用して忘れないための対策をおこなっていきましょう。

 

よく使われるものとしては「付箋」「TODOリスト」「リマインダーアプリ」などがあります。

 

付箋はどこにでも貼っておけるという特徴を生かし、玄関に「体操服と給食袋を持ったか」といったように必ず目にする場所に貼って忘れ物を防止するために使用します。

 

TODOリストは持ち物をリスト化し、ランドセルやバッグに入れたらその項目にチェックをつけていくという形で使用します。入れたかどうかが視覚化されるため抜け漏れ防止に役立ちます。

 

リマインダーアプリは、設定した時間にアラームとともにメモが表示される機能があり、毎日準備する時間に鳴るように登録したり、数日先の持ち物を忘れないように登録しておくといった使い方をします。

準備する時間を決める

準備をする時間を決めておくことも、忘れ物を予防する方法の一つです。

朝に準備をすると、どうしてもあわただしくなってしまったり、持ち物が見つからないときに探している時間がないということもあり得ます。

 

そこで、「準備は前日のうちにしておく」などを決めておき、その時間になったらリマインダーで知らせて、TODOリストなどを使いながらランドセルに持ち物を入れていくといった方法があります。

整理整頓をする

物の場所がわからなくなると忘れ物にもつながるため、日頃から整理整頓を習慣化していくことも対策としてあります。

整理整頓をするうえで大切なのは「片付ける場所を明確にする」ことと「タイミングを決めておく」ことです。

 

まず、片付ける場所は「何をしまう場所か目立つ文字で書いておく」「教科書は赤いボックスなど、色で分かるようにしておく」など視覚的にわかりやすくすると、片付ける際に間違える可能性を下げることができます。

 

ほかにも、よく出し入れする物を入れる場所を決めておくことも方法の一つです。「定期券はカバンの手前のポケットに入れる」「家の鍵は財布の中に入れる」「スマホは上着の内ポケットに入れる」などと決めておくと、ないときにすぐ気づけるため忘れ物の防止につながります。

 

また、タイミングも「学校から帰宅したら、まず片付ける」「物を使い終わったら別のものをとる前に戻す」とルールを決めておくと、抜けもれをすくなくすることにつながります。

忘れ物をしたときの対応を考えておく

どのようにに対策をしても、忘れ物をすることはあると思います。そういったときのために、忘れ物をしたときの対応もあらかじめ決めておくといいでしょう。

 

忘れ物に気づいたときは、なるべく早く担任の先生に伝えることが大事です。しかし、怒られるかもしれないと考えて言い出しづらい子どももいるでしょう。なので、「誰に」「どういった言葉で」言うかといったことを決めておくと、伝えやすくなります。

 

学校ごとに忘れ物をした際のルールが決まっていることもあるので、そちらも確認した上で対応方法を考えていくといいでしょう。

 

また、使う頻度の多いものは予備をもっておいたり学校に置いておく方法もあります。

子どもの発達に関する相談先について

子どもの発達に関する相談先について

忘れ物が多いことのほかにも子どもの発達に関して気になる場合の相談先を紹介します。

 

忘れ物が多いといったといった教育の悩みに関しては

  • 子ども家庭支援センター
  • 児童相談所
  • 教育相談機関

などの相談先があります。

 

市町村のホームページには、地域で教育相談ができる窓口の一覧が掲載されていることがあります。参考までに横浜市のホームページを掲載します。

忘れ物以外にも発達が気になる場合

忘れ物以外にも、子どもの発達で気になることがある場合は、以下のような相談先があります。

市町村保健センター

市町村保健センターは市町村を中心に設置されている行政機関です。子どもの発達に関しての相談も受け付けており、必要に応じて医療機関・支援機関の紹介などもおこないます

 

児童発達支援センター

児童発達支援センターは発達相談の受けつけや、障害のある子どもに対して日常生活・集団生活への適応のためのプログラムの実施などをおこなっている支援機関です。

 

就学前の子どもは「児童発達支援」が、小学校入学から18歳までの子どもは「放課後等デイサービス」が対象となり、利用するには自治体に申請して「通所受給者証」の交付を受ける必要があります。

 

LITALICOジュニアでは、発達が気になる子どもに発達支援を提供している教室です。

 

「忘れ物が多い」「よく物をなくす」といった困りごとがある場合に、その子ども一人ひとりの特性や環境などを踏まえて、成長のための最適なサポートをおこなっていきます。

 

子どもの発達に関するお悩みの相談も受け付けていますので、気になることがある方はお気軽にお問い合わせください。

子どもの忘れ物についてまとめ

子どもの忘れ物についてまとめ

子どもの忘れ物が多くて悩んでいる保護者の方も多いと思います。

 

忘れ物が多くなる理由はさまざまで、子どもの性格や特性、環境など多くのことが影響していると考えられます。

 

忘れ物が多いことで子ども自身も困っているので、理由に検討をつけて、それに合った対策を立てていくことが大事です。

 

とはいえ、忘れ物自体は大人も含めて誰にでもあることなので、完全になくそうと思わずに「減らしていく」という観点で対策を考えていけるといいでしょう。

  • 監修者

    鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員

    井上 雅彦

    応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。