スクールカウンセラーとは?役割や相談事例などを解説します

「子どもの学校生活において気がかりなことがあるときには、スクールカウンセラーに相談できる」ということを聞いたことがある方は多いでしょう。

 

しかし、担任の教員に相談せずにスクールカウンセラーに相談していいのか、迷っている方もいるかもしれません。

 

そこでこの記事では、スクールカウンセラーとはどんな存在なのか、スクールカウンセラーの役割と相談できること、実際の相談事例に加え、スクールカウンセラーへの相談方法や、子どもの学校生活についてのその他の相談先についても解説します。

スクールカウンセラーとは?

スクールカウンセラーとは?

スクールカウンセラーとは、心理についての専門性を持ち、学校において、児童・生徒が抱えるさまざまな課題について解決のための助言や指導などをおこなう者のことです。

 

助言や指導の対象は、児童・生徒や保護者のみでなく、教職員も含まれます。

 

スクールカウンセラーは小学校と中学校、近年新設されている義務教育学校(小中一貫校)や高等学校、中等教育学校や特別支援学校などに配置されています。

 

しかし学校がスクールカウンセラーを採用するのではなく、各都道府県または政令指定都市の教育委員会が採用し、派遣先の学校を決める仕組みになっています。

このため、スクールカウンセラーは学校と児童・生徒、保護者にとっては「第三者」という立場になります。

 

スクールカウンセラーは、全ての学校に配置されているわけではありません。文部科学省の資料によると、2020年度の配置状況は全国で29,939人となっています。

スクールカウンセラーの資格は?

文部科学省は、スクールカウンセラーの資格を「心理に関して専門的な知識・技術を有する者」としており、具体的には以下のように定めています。

 

(1) スクールカウンセラーの選考

次の各号のいずれかに該当する者から、実績も踏まえ、都道府県又は指定都市が選考し、スクールカウンセラーとして認めた者とする。

  1. 公認心理師
  2. 公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の認定に係る臨床心理士
  3. 精神科医
  4. 児童生徒の心理に関して高度に専門的な知識及び経験を有し、学校教育法第1条に規定する大学の学長、副学長、学部長、教授、准教授、講師(常時勤務をする者に限る)又は助教の職にある者又はあった者
  5. 都道府県又は指定都市が上記の各者と同等以上の知識及び経験を有すると認めた者

引用元:文部科学省「スクールカウンセラー等活用事業実施要領」

 

実際には、その多くが臨床心理士の資格を持つ人であるようです。

スクールカウンセラー制度ができた理由

日本におけるスクールカウンセラーの制度は、文部科学省により1995年度に始まりました。

 

スクールカウンセラー制度ができた背景には、当時の学校をめぐる状況が関係しています。

不登校やいじめ、暴力事象などの数が年々増えて報道でも取り上げられ、社会問題化していました。

これらの問題は複雑で、教員だけでは対応しきれないという声が現場で挙がるようになりました。

 

また、教員は児童・生徒に対し「指導し、統率する」という役割があるため、「気持ちに寄り添い、不安や苦悩を理解しようとする」という関わりが難しい場合があります。

 

このため、「学校現場でのカウンセリングは、外部の専門家が行った方がいいのではないか」という考え方から導入されたのが、スクールカウンセラー制度です。

スクールカウンセラーの役割・相談できることは?

スクールカウンセラーの役割・相談できることは?

スクールカウンセラーにはどのような役割があり、どのようなことを相談できるのでしょうか?

 

文部科学省は、スクールカウンセラーの業務を以下のように定めています。

  • 児童生徒へのカウンセリング
  • 教職員に対する助言・研修
  • 保護者に対する助言・援助
  • ストレスチェックや授業観察等の予防的対応
  • 事件・事故等の緊急対応における児童生徒等の心のケア など

スクールカウンセラーが扱う課題は、いじめ、暴力や不登校のほか、発達の課題や精神科領域の課題、家庭環境や親子関係の課題など、多岐にわたります。

 

つまりスクールカウンセラーには、子どもの生活にまつわること全般について相談することができると言えます。

子ども自身が相談するだけでなく、子どもと保護者が一緒に相談したり、保護者のみがスクールカウンセラーに相談することも可能です。

 

またスクールカウンセラーは、自主的に相談を申し込んでくる児童・生徒や保護者の相談に応じるだけでなく、すべての児童・生徒に対しても支援をおこなっています。

 

普段から休み時間などにも子どもたちの様子を観察し、「配慮が必要だ」と判断した場合には教員に対応を提案するなど、課題の早期発見と早期対応にも務めています。

スクールカウンセラーに相談するメリットとは?

子どものことで気がかりなことがある場合、担任の教員に相談する場合とスクールカウンセラーに相談する場合とでは、どのような違いがあるのでしょうか?

 

スクールカウンセラーは、心理についての専門家です。このため、教員に相談した場合とはまた異なる視点からの助言がもらえるかもしれません。

 

また、スクールカウンセラーは外部から派遣される専門家であるため、相談する児童・生徒や保護者などにとって、まったくの第三者であるということもメリットの一つです。

 

普段の人間関係の枠組みから離れた場の方が、心を許して相談しやすいという場合もあるでしょう。

 

このような場合は、ぜひスクールカウンセラーに相談してみてください。

スクールカウンセラーへの相談事例にはどんなものがある?

スクールカウンセラーへの相談事例にはどんなものがある?

スクールカウンセラーに相談した場合、具体的にはどのような対応がおこなわれるのでしょうか?

 

ここでは、実際の事例を2つ紹介します。

事例1:教室に入れなくなった小1男子児童の例

スクールカウンセラーが長期にわたり、関係者全員と情報を共有しながらきめ細やかに支援をおこなった事例です。

 

小学校1年生の男の子は、入学後は順調に登校していましたが、運動会の後から教室に入れなくなりました。遅刻したりしながら登校するものの、保健室で過ごすようになりました。

 

スクールカウンセラーが男の子と話したところ、「怒られたらどうしよう」「失敗したらどうしよう」と思うと体が固まってしまい、教室にいくことができないことがわかりました。

 

スクールカウンセラーの対応

スクールカウンセラーは男の子のつらい気持ちを受け止め、「まずは保健室や相談室で安心して過ごすことを目標にしよう」と提案しました。

 

保護者とも面談をおこない、保護者の不安な気持ちにも寄り添いながら、子どもへの接し方や言葉かけについて具体的な助言をおこないました。

 

経過

スクールカウンセラーは男の子や保護者と定期的に面談をおこないました。

約3ヶ月後、男の子は保健室に安定して登校できるようになりました。

 

そこでスクールカウンセラーは教員と協力して、男の子が興味を示した学校行事をきっかけに、少しずつ教室に入るためのサポートを開始。

男の子の不安な気持ちに寄り添いつつ、保護者や教員とも情報を共有して対応していきました。

 

結果

7ヶ月後には、男の子は教室に完全に復帰しました。

スクールカウンセラーはその後も男の子の教室での様子を見守り、放課後に本人と話してがんばりをねぎらうなど、不安や緊張をやわらげるための関わりを続けました。

 

これらの経験を通して、男の子は我慢しすぎないことを学び、つらい気持ちを言葉で表現することができるようになりました。

 

また保護者は、男の子がつらい気持ちを伝えた際に穏やかに受け止め、支えることができるようになりました。

事例2:登校しにくくなった中1女子生徒の例

スクールカウンセラーが教員や保護者、関係する支援機関などとも連携して支援をおこなった事例です。

 

中学1年生の女の子は、2学期のはじめから朝目覚めづらくなり、登校しにくくなりました。その後、教室へ入ることも苦痛になったため、担任と養護教諭が女の子と保護者にスクールカウンセラーとの面談をすすめました。

 

スクールカウンセラーの対応

スクールカウンセラーは面談の結果、「女の子に起立性調節障害があるのではないか」と感じたため、小児科の受診をすすめました。

 

また女の子が対人関係を苦手とし、急な予定変更にうまく対応できない傾向があったり、音に対して過敏であることなどがわかったため、発達障害がある可能性も考えました。

 

経過

女の子は医療機関を受診した結果、医師から1ヶ月の休養をすすめられたため、学校を休むことになりました。

 

しかし1ヶ月の休養後も依然として登校しづらい状況であったため、市の教育支援センターへ相談した結果、女の子は教育支援センターに通うことになりました。

 

結果

担任とスクールカウンセラーは家庭訪問などをおこなうほか、医療機関や教育支援センターとも情報交換をおこない、役割分担をして女の子と保護者への支援を続けています。

スクールカウンセラーへ相談したい場合は?

スクールカウンセラーへ相談したい場合は?

スクールカウンセラーに相談したい場合は、あらかじめスクールカウンセラーとの面談を申し込み、日程を決めることになります。

 

これは、スクールカウンセラーが常駐している学校も一部ありますが、多くの場合は非常勤として配置され、週1回程度の勤務となっているためです。

 

スクールカウンセラーへの相談の申し込み方法は、学校により異なります。子どもの学校のスクールカウンセラーへの申し込み方法を確認してみてください。

 

担任、または養護教諭経由でスクールカウンセラーへの相談を申し込む手順になっている場合が多いようです。

 

また、スクールカウンセラーが「スクールカウンセラーだより」という配布物を発行している場合もあります。

 

「スクールカウンセラーだより」には、スクールカウンセラーの来校日や相談の申し込み方法、カウンセリングルーム直通の電話番号などが記載されています。この場合は、スクールカウンセラーに直接、相談を申し込むことも可能です。

子どもの学校生活に関する相談先

子どもの学校生活に関する相談先

スクールカウンセラーは、学校で相談を受け付けてはいますが、外部から派遣された専門家です。このため、教員には話しにくいような悩みについても、安心して相談することができます。

 

しかし悩みごとによっては、学校の枠を離れたところで相談できる場もあると心強いかもしれません。

学校生活に関する悩みは、以下の機関にも相談することができます。

教育支援センター(適応指導教室)

市区町村や都道府県の教育委員会が設置している機関で、主に不登校の状態にある子どもの支援をおこなっていますが、学校生活全般に関することも相談できます。

 

自治体によっては、「教育相談所」「教育相談室」「教育相談センター」などの名称になっている場合もあります。

児童相談所

都道府県や政令指定都市などが設置している機関で、18歳未満の子どもの心や体のこと、家庭や学校での問題などについての相談を受けつけています。

医療機関

子どもに心身の不調が出ていたり、気がかりな様子がある場合は、小児科や児童精神科などの医療機関に相談しても良いかもしれません。

スクールカウンセラーについてまとめ

スクールカウンセラーについてまとめ

スクールカウンセラーは心理の専門的知識と技術を持つ者で、教育委員会から学校に派遣されています。

児童や生徒が抱えるさまざまな課題について、解決のための助言や指導をおこないます。

 

スクールカウンセラーには子ども自身が相談するだけでなく、子どもと保護者が一緒に相談したり、保護者のみが相談することも可能です。

 

スクールカウンセラーには、子どもの生活全般に関する課題を相談できます。課題がスクールカウンセラーの専門外であった場合は、必要に応じて専門の支援機関などとも連携して対応がおこなわれます。

 

子どもの学校生活や家庭において何か困っていることがあれば、まずはスクールカウンセラーに面談を申し込んでみてください。

 

各地で児童発達支援・放課後等デイサービスを運営しているLITALICOジュニアでも子どもの不登校などご心配なことについて無料相談をおこなっています。

 

不登校をはじめ、さまざまな困りごとを抱える子どもの指導実績が豊富にございますので、「このままで大丈夫かな」「子どものことで悩んでいる」という方はお気軽にご相談ください。

  • 監修者

    鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員

    井上 雅彦

    応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。