赤ちゃんがよつんばいになって進んでいく「ハイハイ」。赤ちゃんの行動範囲が広がって、腕や脚の筋肉も鍛えられる効果がある動作です。
そろそろハイハイする頃かと思っていたけど、なかなかしないので「うちの子はいつするのだろう?」と心配な保護者の方もいると思います。
赤ちゃんの発達は個人差が大きく、ハイハイが早い子もゆっくりな子もいるほか、中にはハイハイをしないで立ち上がる子どももいます。
この記事では、ハイハイ前後の成長過程や、ハイハイをする目安の時期、練習方法、発達が気になる子どもの相談先などを紹介していきます。
ハイハイはいつからする?
ハイハイは、赤ちゃんがよつんばいの状態から手足を使って前に進んでいく動作です。ハイハイを始めるとぐっと行動範囲も広がってくるほか、身体が鍛えられるなどの効果もあります。
「うちの子は生後8か月過ぎてもハイハイしない」「ハイハイは何か月でする子が多いの?」と、いつハイハイをするのか心配な保護者もいると思います。しかし、赤ちゃんの発達の仕方は一人ひとり異なっていて、ハイハイが早い赤ちゃんもいれば遅い赤ちゃんもいます。確実にいつすると言い切ることはできません。また、中にはハイハイをしないという赤ちゃんもいます。
といっても、統計的に多くの赤ちゃんがいつハイハイを始めるかという目安はありますので、まずは赤ちゃんがハイハイを始める目安の時期から見ていきましょう。
ハイハイの目安は8か月ごろ
赤ちゃんがハイハイを始める時期は、基本的には生後8か月ごろとされています。
厚生労働省の資料によると、早い子どもでは生後5~6か月前後からハイハイを始めることがあるようです。ですが、その時期にハイハイをはじめる赤ちゃんは5.5%で、20人に1人の割合です。
その後は月齢に応じてハイハイをする割合が高くなり、生後7~8か月では、約半数の赤ちゃんがハイハイをしはじめます。
そして、生後10か月になるころには約9割の赤ちゃんがハイハイを始めるようになります。
このことを総合すると、おおむね生後8ヶ月前後でハイハイをする赤ちゃんが多いといえるでしょう。
- 時期(か月):ハイハイをする子ども(%)
- 4~ 5か月 : 0.9%
- 5~ 6か月 : 5.5%
- 6~ 7か月 : 22.6%
- 7~ 8か月 :51.1%
- 8~ 9か月 :75.4%
- 9~ 10か月: 90.3%
ただし、この数値はあくまで目安でその後も100%の赤ちゃんがハイハイを始めるわけではなく、中にはハイハイをしないで立ち上がる赤ちゃんもいます。
赤ちゃんの発達には大きな個人差がありますので、一つの目安としてとらえておくといいでしょう。
ハイハイの効果
ハイハイをすることでどのような効果があるかというと、まずは赤ちゃんの行動範囲が広がることが挙げられます。ハイハイができるようになると赤ちゃんは興味のあるものに自分から近づいていくことができるようになります。
ほかにも、ハイハイをすることで腰や手足の筋肉の発達を促すことができます。これは、その後立って歩くようになった時にバランスを取るためにも役に立ちます。
ただ、ハイハイは成長していく中で必ずしなくてはいけない動作ではなく、「ハイハイをなかなかしない」「ハイハイをしないで歩くようになった」という場合も、過度に心配する必要はないといえるでしょう。
もし、ハイハイをしないこと以外にも子どもの発達で気になることがあれば、専門の窓口などに相談してみるといいでしょう。相談先は後ほど紹介します。
ハイハイまでの子どもの運動発達
ここでは、寝返りからハイハイまでの赤ちゃんの運動発達の過程を紹介していきます。
子どもの運動発達にはいつごろし始めるかなどある程度共通の流れがありますが、同時に個人差も大きいため時期や順番は前後することがあります。こちらも目安としてとらえておくといいでしょう。
寝返り
寝返りは赤ちゃんがあおむけから身体をひねってうつぶせへと姿勢を変える動作です。寝返りをする目安時期は生後6か月頃といわれています。
寝返りは赤ちゃんの首がすわって、自分で腰などを動かせるようになったのちにできる動きといわれています。
おすわり
おすわりは「ひとりすわり」とも呼ばれていて、赤ちゃんが手をつかわずにおおよそ1分以上座ることができる状態のことです。
おすわりができるようになると、目線が高くなり、両手を使った遊びができるようになるなどの変化があります。
おすわりの目安の時期は生後9〜10か月ごろといわれて、ハイハイとおよそ同時期といわれています。
ずりばい
ずりばいとは、赤ちゃんがうつぶせでお腹をつけたまま手足を使って移動する動作のことです。
ずりばいを始める時期は7か月ごろといわれていて、ずりばいから徐々にお腹を上げることができるようになりハイハイへと移行していきます。
ハイハイ
これまで紹介してきたような運動発達と前後して、生後8か月辺りで手のひらと膝をついたよつんばいの状態で進んでいくハイハイができるようになります。
といっても、いつするかは決まっているわけではなく、ずりばいをしないでハイハイを始める赤ちゃんもいるため、こういった運動発達の時期はあくまで目安として捉えるといいでしょう。
ハイハイはいつまでする?
ここではハイハイをした後の赤ちゃんの運動発達について紹介していきます。
つかまり立ち
ハイハイで行動範囲が広がった後は、椅子や低いテーブルなどに手でつかまって一人で立ち上がる「つかまり立ち」をするようになります。つかまり立ちを始める時期は、生後10か月前後といわれています。
また、つかまり立ちしたまま移動する「伝い歩き」もするようになります。
つかまらずに歩く
伝い歩きのあとは、つかまっていたものから手を放して一人で歩くことができるようになります。一人歩きとも呼ばれていて、物につかまらない状態で2~3歩歩くことをいいます。
つかまらずに歩くことができるようになる時期は、1歳を過ぎたころといわれています。
紹介したように、ハイハイの後はつかまり立ちや伝い歩きを経て、一人で歩くことができるようになります。
このような運動発達によって、赤ちゃんはいろいろなものから刺激を受けながら、生活範囲を広げていきます。
ただ、ハイハイはいつまでと明確に決まっているわけではなく、立って歩けるようになったあともハイハイをする赤ちゃんもいます。
ハイハイをしない原因は?
「生後10か月でもハイハイをしない」「ハイハイをしないまま立ち上がった」など、ハイハイをしない赤ちゃんも多くいるといわれています。
ではなぜハイハイをしないのか、その原因として考えられることをいくつか紹介します。
筋力の不足
ハイハイをしない理由として、赤ちゃんの筋力が不足している可能性があります。
うつ伏せを嫌がるなど両手をつく機会が少なかった赤ちゃんは、ハイハイをするのに必要な筋肉が足りていない場合があります。
環境が整っていない
赤ちゃんがハイハイをしない原因として、ハイハイをする環境が整っていないことも考えられます。
例えば部屋に十分な広さがなかったり、赤ちゃんの進路に物がたくさん置いてある状態では、ハイハイをしようと思っても出来ない場合があります。
物を片付けるなどして、ハイハイができるスペースを空けておくようにするといいでしょう。
移動することに意欲が低い
赤ちゃんがハイハイをしない原因として、移動したいという意欲が低い可能性もあります。
赤ちゃんがハイハイをするのは、保護者のもとに行きたい、あっちにあるおもちゃを取りたいなど何かしら興味のあるものへ近づくためにしている面もあります。
そのため、そもそも興味がわかないといった場合は移動しようという意欲もわかないということが考えられます。
発達障害との関係はある?
ハイハイが遅いことで、「発達障害があるのでは?」と考える方もいると思います。現在のところ、ハイハイと発達障害の直接的な関係は明らかになっていません。
ただ、発達障害のある子どもは興味関心の偏りがある場合があり、そのことで移動しようという意欲がわかないということが、ハイハイをしない要因の一つになることも考えられるでしょう。
とはいえ、ハイハイをする時期が目安と異なっていても、それだけで発達障害と関連付けはできません。ハイハイをしないで立ち上がる赤ちゃんも珍しくはありません。
過度に心配する必要はありませんが、ハイハイを含め子どもの発達について心配がある方は、後ほど紹介する専門機関に相談をしてみることも方法としてあります。
ハイハイの練習方法
ハイハイをしないからといって特別何か練習しなくてはいけないということはありません。
とはいえ、同じくらいの月例の赤ちゃんがハイハイを始めた様子を目にした時や、ハイハイする目安の時期を過ぎてもしない場合などに、不安になることもあると思います。
また、ハイハイをすることで歩行を開始した後にも役立つ筋肉が発達するなどメリットもありますので、ここではハイハイを促すための練習方法を紹介していきます。
絶対にしなくてはいけないものではないため、赤ちゃんの様子も見ながら無理のない範囲でおこないましょう。
うつぶせの状態で遊ぶ
ハイハイの練習方法として、うつぶせ状態で遊ぶことが挙げられます。
うつぶせ状態で遊ぶことで、自然とハイハイをするのに必要な筋肉が鍛えられてきます。
うつぶせ状態が苦手な赤ちゃんには、まず保護者が下になって赤ちゃんをお腹の上に乗せて遊ぶことから始めてみるといいでしょう。
興味をひくものを見せる
ハイハイを促すための練習方法として、興味の引くものを前方に見せるのもいいでしょう。
ハイハイなど赤ちゃんが移動するには、「何かを取りたい」「誰かの元に行きたい」など興味が関係していることがあります。
そのため赤ちゃんがうつぶせ状態のときに、おもちゃなど赤ちゃんが好きなものを少し先に置くことで、自分で動きたいという意欲を引き出します。
ハイハイの練習では安全を確保する
ハイハイができるようになると赤ちゃんの行動範囲は大きく広がります。そのため、ハイハイの練習をするときには、赤ちゃんの安全を確保することが大事です。
ハイハイと同時期につかまり立ちや伝い歩きなどもできるようになることも考慮して、赤ちゃんがケガをしたり誤飲をする可能性のあるものは片づけておくようにしましょう。
例えば床に電池やガラス、ハサミなどが誤飲の危険性がある物や、触るとケガにつながる物が転がっていないかを確認するとともに、つかまり立ちしたときのためにテーブルの角やテーブルの上に置いてあるものなども気を付けているといいでしょう。
ほかにも、行動範囲が広がることを考えて、階段につながる通路には柵を置いて進めないようにするといった対策が重要です。
広くて安全なスペースを確保したうえで、いつ赤ちゃんがハイハイをしてもいい環境を整えていきましょう。
発達が気になる場合の相談先
ハイハイをしないことで不安な気持ちを抱いている保護者もいると思います。ハイハイをしないからといって、疾患や障害の可能性が高いわけではありません。
ただ、ハイハイ以外にも赤ちゃんの発達や子育てについて悩みがある方はひとりで抱え込まずに、地域のさまざまな窓口で相談をすることも大事です。
専門家によるアドバイスや適した支援機関の紹介などを受けることができますので、不安がある方はお近くの相談窓口を頼ってみるのもいいでしょう。
かかりつけの小児科
赤ちゃんの発達で気になることがあったら、かかりつけの小児科に相談することができます。
小児科では子どもの発達全般について気になることがあったときに、アドバイスや支援機関などの紹介を受けることが可能です。
児童家庭支援センター(子ども家庭支援センター)
児童家庭支援センターでは、子どもの発達についてなど、子育て全般について相談をすることができます。
児童家庭支援センターは自治体によっては名称が異なる場合があり、東京都では子ども家庭支援センターと呼ばれることが多くなっています。
相談に対してのアドバイスや支援機関の紹介などを受けることができます。
保健センター
赤ちゃんの定期健診などもおこなっている保健センターでも、子どもの発達について相談をすることができます。保健センターでは地域の保健衛生全般についてさまざまな取り組みをしており、その中で赤ちゃんの健康や発達に関する相談受付もおこなっています。
保健師などの専門的なスタッフがいて、アドバイスや支援機関の紹介などを受けることができます。また、9か月健診や1歳6か月健診の際にも発達で気になることを相談することが可能です。
児童相談所
児童相談所でも発達など子育てで気になることを相談することが可能です。児童相談所では18歳未満の子どもに関する相談を、本人、家族、周りの人などさまざまな人から受けつけています。
児童相談所には児童福祉司・児童心理司・医師・保健師などの専門的なスタッフがいて、アドバイスや他の機関の紹介などを受けることができます。
児童発達支援センター
児童発達支援センターとは、地域の障害や発達の気になる子どもに対して支援を提供している機関のことです。
日常生活の困りごとへの対応方法や、集団での過ごし方のプログラムなどの児童発達支援を提供するほか、子どもに対するさまざまな悩みを相談できる児童発達相談もおこなっています。
児童発達支援を利用するには、自治体に申請をして「通所受給者証」を取得する必要があります。児童発達相談自体は受給者証がなくてもできますので、気になる方はお近くのセンターへ問い合わせてみるといいでしょう。
発達の気になる子どもの学習塾
LITALICOジュニアは発達の気になる子どもをサポートする事業所を運営しています。
通所受給者証が必要な児童発達支援を提供するほか、どなたでも通うことができる学習塾形式の支援も提供しています。
LITALICOジュニアの対象は0歳からとなっており、運動発達に関するお悩みから、言葉の遅れなどに関しても、子ども一人ひとりの状態に合わせた計画を立てて必要な支援をおこなっています。
ハイハイ以外にも、運動や言葉の遅れがあるなど子どもの発達で気になることがある方は、ぜひ一度お問い合わせください。
ハイハイはいつからする?のまとめ
ハイハイは、赤ちゃんがよつんばいの状態から手足を使って移動していく動きのことです。
ハイハイができるようになることで、赤ちゃんの行動範囲が広がることや、歩くことができるようになった後も役に立つ筋肉が鍛えられるなど、さまざまな効果があります。
ハイハイをする時期は生後8か月ごろといわれていますが、早くて6か月でする赤ちゃんや、生後10か月でもしない赤ちゃんもいるなど個人差が大きくあります。
また、ハイハイは必ずしなくてはならない動作ではなく、ハイハイをしないまま歩きはじめる赤ちゃんもいます。
赤ちゃんの発達は一人ひとり大きく異なるため、ハイハイをしないからといって過度に心配する必要はありません。
ただ、ハイハイを含めて発達について不安がある方は、専門機関に相談することで原因がわかることや、アドバイスをもらえること、あるいは支援につながることもありますので検討してみてもいいでしょう。