赤ちゃんはハイハイができるようになるころから、保護者の方が離れようとすると不安になって追いかけてくる「後追い」をするようになります。
後追いが激しい場合は保護者の方が自由に動くことができず、困ってしまうことがあるかもしれません。
そこでこの記事では、赤ちゃんの後追いがいつからいつまで続くのか、また後追いしない場合の理由、後追いへの対応方法や、後追い以外にも子育てに悩んだときの相談窓口について紹介します。
赤ちゃんの後追いとは?
後追いとは、赤ちゃんに保護者の方の姿が見えなくなると、不安になって追いかけてくる赤ちゃんの行動のことです。
例えば、赤ちゃんのそばにいた保護者の方がトイレに行こうとすると、赤ちゃんが激しく泣いてハイハイしながら追いかけてきたりするなどの現象を指します。
後追いは、赤ちゃんが保護者など愛着をもっている人から離れるときに強く不安を感じる「分離不安」が理由となって起こると考えられています。
愛着とは、保護者などの養育者と赤ちゃんとの間に生まれる強い情緒的な結びつきのことです。
愛着は赤ちゃんの安心感や信頼感の基礎となり、それらを土台として興味や関心を広げていくことで認知機能や情緒が発達するとされています。
このため、愛着形成は赤ちゃんの発達における重要な過程であると考えられています。
愛着は、新生児期から3歳頃まで、いくつかの段階を経て形成されていくと考えられています。
したがって後追いがみられるのは、赤ちゃんの愛着が順調に形成されていることの証であるといえるでしょう。
赤ちゃんの愛着形成にともなって起こるもう一つの現象に「人見知り」があります。
個人差はありますが、後追いと人見知りは同時期に起こることが多いとされています。
後追いのために保護者の方が疲れてきたり、赤ちゃんから離れることを心苦しく思うかもしれませんが、後追いは一時的な現象であり、成長とともに自然に終わるとされています。
後追いはいつからいつまでする?
赤ちゃんの後追いが始まる時期や終わる時期についての統一された基準はないため、育児書や機関などにより「後追いが始まる時期」として示されている月齢が異なるのを目にした方も多いかもしれません。
赤ちゃんの発達では個人差が大きいことが知られているため、一概に月齢を示すことは難しいのですが、ここでは赤ちゃんの後追いについて、一般的に「目安」とされている時期について説明します。
後追いはいつからする?
一般には、赤ちゃんがハイハイを始めることが多いとされる生後7~8ヶ月頃から後追いも始まることが多いとされています。
生後7ヶ月頃までは、赤ちゃんの愛着の対象は不特定であり、誰でも愛着の対象となると考えられています。
しかし7ヶ月頃からは人の識別ができるようになってくるため、保護者など特定の人に対して愛着を示すようになります。
このため、保護者の方など愛着が形成されている人に対しては後追い、また知らない人に対しては人見知りなどの現象がみられるようになります。
後追いはいつまでする?
後追いが終わる時期についても統一された見解はありませんが、愛着の形成段階が進んでいくと、後追いも終わると考えられています。
愛着形成は、3歳頃に最終段階を迎えることが多いとされています。
この時期には、一時的に物事などを覚えておく「短期記憶」が発達してくることなどから、「見えなくなっても隠れているだけで、存在している」ということが分かるようになり、不安を感じることが少なくなっていきます。
「見えなくなっても隠れているだけで、存在している」という概念は「対象の永続性」と呼ばれます。
後追いしない理由は?
目安とされている時期になっても、後追いをしない赤ちゃんもいます。
前述のように後追いは赤ちゃんの愛着形成の証だと考えられていますが、後追いをしない赤ちゃんが必ずしも愛着に問題があるわけではありません。
赤ちゃんにもさまざまな個性があるため、不安を感じにくい性格の赤ちゃんであれば、後追いがほとんどみられないこともあるかもしれません。
また、普段から多くの人が家に出入りしているような場合や、赤ちゃんのお世話をする人が多い大家族の家庭などでは、赤ちゃんの後追いが少ない場合もあるとされています。
後追いと発達障害との関係は?
赤ちゃんの後追いがない場合、「発達障害なのでは?」と心配になる保護者の方もいるかもしれません。
しかし後追いの有無だけでは、発達障害との関連を推測することはできません。
前述のように、後追いがないことは赤ちゃんの性格や環境などの要因による場合もあるためです。
後追いがみられないことのほかにも発達について気がかりな点がいくつかあり、保護者の方が心配になっているような場合であれば、この記事の後の章で紹介する相談機関に相談してみてもいいかもしれません。
後追いへの対応方法
赤ちゃんの後追いは成長とともに自然に終わるとされていますが、後追いの時期の最中にも、赤ちゃんを安心させるために以下のような工夫をすることができます。
離れる前に声かけをする
「赤ちゃんに気づかれずにそっと離れれば、後追いしないのではないか」と考える方もいるかもしれません。
しかし、これは逆効果になるといわれています。
赤ちゃんは「目の前から、愛着の対象となっている人がいなくなること」に不安を感じます。
このため、保護者の方がいつの間にかいなくなっていることに気づいたとき、赤ちゃんはいっそう大きな不安を感じるかもしれません。
赤ちゃんのそばから離れるときは、「ちょっとトイレに行ってくるけど、すぐ戻るよ」などと伝えて、赤ちゃんを安心させるようにしましょう。
いないいないばあをして遊ぶ
前述のように後追いは、赤ちゃんが「対象の永続性」を学習することでなくなっていくと考えられています。
「対象の永続性」の学習に役立つとされているのが、「いないいないばあ」という遊びです。
大人が「いないいない」と顔を手で覆ったり、姿を隠したりしているとき、赤ちゃんは短期記憶をはたらかせて、「一時的にいないけれど、また会える」と予測しています。
そして「ばあ」と大人が姿を現したとき、赤ちゃんは予測通りにまた会えたことに喜んで、興奮していると考えられます。
預ける際のポイント
どうしても必要な外出などで、赤ちゃんや子どもを誰かに預ける機会があるかもしれません。
この場合には、赤ちゃんの分離不安に対する工夫として、以下の点に気を配ってみてください。
預ける前には授乳し、お昼寝もしておく
赤ちゃんは空腹時や疲れているとき、機嫌が悪いときなどに分離不安をより強く感じやすいとされているため、これらの要素を取り除いておきます。
赤ちゃんが慣れている人に預ける
赤ちゃんを預ける相手は、赤ちゃんが知らない人よりも慣れている人の方が、赤ちゃんの不安が少なくなると考えられます。
預ける際は決まった手順で、別れ際を短く
赤ちゃんを誰かに預けて別れる際の手順をいつも同じにすることで、赤ちゃんの不安を少なくします。
別れ際に赤ちゃんが泣いていても長くあやしたりせず、いつも決まっている手順通りに別れるようにします。
後追いの時期に気をつけたいこと
赤ちゃんが後追いを始める時期は多くの場合、ハイハイやつかまり立ちをするようになる時期と一致しています。
赤ちゃんの行動範囲が一気に広がり、好奇心も高まるため、安全対策にいま一度気を配ってみてください。
具体的には、以下のような工夫が考えられます。
- 赤ちゃんが触ると危ないもの、椅子やテーブルから落ちてきそうなもの、誤飲しそうなものなどは遠ざけておく
- ぶつかってもケガをしないように、椅子やテーブルなどの角にクッションになるテープなどを貼る
- 階段を昇らないよう、階段への通路に柵を取りつける
後追いなど子育てに悩んだ時の相談窓口
後追いは赤ちゃんの愛着が順調に形成されている証であり、時期が来れば自然になくなる行動です。
保護者の方は対応に困ることもあるかもしれませんが、後追いをやめさせたりする必要はありません。
また後追いをしない場合も、それ自体は心配する必要はないと考えられます。
このため、後追い自体は相談が必要な現象ではありません。
しかし、後追い以外にも発達について気になる点がいくつもあり、子育てについて保護者の方が悩んでいる場合は、以下のような機関に相談してみることができます。
- 小児科
- 児童家庭支援センター
- 子育て支援センター
- 児童相談所
- 児童発達支援センター
- 自治体の子育て相談窓口
発達が気になる子どもの学習塾
LITALICOジュニアでは、発達が気になる0歳からの子どもを対象として、児童発達支援や放課後等デイサービス、幼児教室や学習塾を運営しています。
0~2歳の子どもを対象とするコースには、以下の2種類があります。
- 「教室授業」と「家庭での発達支援のフォローアップ」が含まれる「パーソナルコース」
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また無料オンライン相談もおこなっていますので、お気軽にご相談ください。
赤ちゃんの後追いまとめ
保護者の方の姿が見えなくなると、赤ちゃんが不安になって追いかけてくる「後追い」は、赤ちゃんの愛着が順調に形成されていることの証だとされています。
このため後追いが激しい場合も、心配したり、やめさせたりする必要はないとされています。
もし何らかの対応をしたい場合は、この記事で紹介している対応方法などの赤ちゃんの不安をやわらげる方法を試してみてください。
また、後追い以外にも子育てについての悩みがある場合は、相談機関を利用するのも一つの方法です。
LITALICOジュニアでも相談を受け付けていますので、ぜひお問い合わせください。