子どもが自分の要求を表現するとき、一般的に「クレーン現象」と呼ばれる行動をとることがあります。

この記事ではクレーン現象とはどのような行動なのか、クレーン現象は問題ないのか、いつからいつまでみられるのか、そしてクレーン現象がみられた場合の対処法などについて説明します。

クレーン現象とは

クレーン現象とは、子どもが自分の要求を表現するときに指さしや言葉で伝えるのではなく、大人の手を持って対象物のところへ誘導して、指さしをさせたり触らせることで要求を表現する現象のことです。

 

たとえば子どもが「ドアを開けてほしい」と大人に伝えたいとき、大人の手を取ってドアのそばに引っ張っていくような行為があてはまります。

 

「クレーン現象」という言葉は俗称ですが、クレーンのアームを動かすように見えることからこのように呼ばれており、ほかにも「クレーン行動」「クレーン反応」などのさまざまな呼び方があります。

クレーン現象がみられても問題ない?

クレーン現象は、子どもが自分の意思を伝える方法の一つであるとされます。

 

クレーン現象はASD(自閉スペクトラム症)のある子どもにみられる現象の一つとして挙げられることがありますが、ASD(自閉スペクトラム症)のない子どもにもみられる場合があることが分かっています。

 

このため、子どもにクレーン現象がみられることが、すぐさまASD(自閉スペクトラム症)の疑いに結びつくわけではありません。

 

クレーン現象は、言葉を獲得する前の時期にある子どもが用いる一過性の表現手段であると考えられています。

 

子どもが指さしや言葉を使わずにクレーン現象のような行動をとると、心配になる保護者の方もいるかもしれません。

 

しかしクレーン現象は、子どもが自分の持つ手段を上手に使って、自分の要求やしたいことを相手に伝えているものです。

このため、「なくしたほうがいいのではないか」と考える必要はないでしょう。

クレーン現象はいつから?

個人差がありますが、クレーン現象は、生後10ヶ月頃からみられるようになることが報告されています。

ただし、すべての子どもにみられるわけではありません。

 

また、指さしをしていたり、発語がある1~2歳の子どもがおこなう場合もあります。

クレーン現象はいつまである?

クレーン現象がみられなくなる時期についても個人差があります。

 

一般には、クレーン現象は音声やジェスチャー、絵カードなどのほかのコミュニケーション手段を用いて自分の意思を表現する力が発達してくるにつれて、徐々に減ってくるとされています。

クレーン現象がみられたら

クレーン現象は、子どもが使うコミュニケーションの手段の一つです。

したがって子どもにクレーン現象がみられたら、「あなたの言いたいことは伝わったよ」ということを示すといいでしょう。

 

たとえば、子どもが大人の手を取ってドアのそばに引っ張っていった場合は、大人はドアを指さしながら「『ドアを開けて』だね」と言って、ドアを開けます。

 

ここで実際にドアを開けながら適切なモデルを見せることで、「ドアを開けてほしいんだね、あなたの意思は伝わったよ」と子どもに伝えると同時に、「ドアを指さすか『開けて』と言うと、より伝わりやすい」ということも教えることができます。

 

あるいは、子どもが水筒の蓋を開けられず、大人の手を取って水筒の上に乗せたような場合は「『お水ちょうだい』だね」と言いながら蓋を開けて、子どもに水筒を渡します。

 

こうすることで、子どもに「この場合は『お水ちょうだい』と言えばいい」ということを伝えることができます。

子どもの意思を受け止める

クレーン現象による子どもの意思表示を受け止めるときのポイントは、前述の例であれば、子どもがドアを指さす、または「ドアを開けて」と言うまでドアを開けずに待つようなことは避けることです。

 

クレーン現象により子どもの意思は大人に伝わり、コミュニケーションは成立しているため、「伝わったよ」ということを子どもに示すことが大切です。

子どもが何かを伝えてきたとき、大人が肯定的な態度で応じることで、子どもと大人の間に情緒的な絆ができていくとされているためです。

 

情緒的な絆は「伝えたい」という気持ちをはぐくみ、子どもの言葉の獲得において重要な役割を果たすと考えられています。

1〜3歳頃までの子どもとのかかわり方

1歳前後から3歳頃までは、子どもが言葉を獲得していく時期だとされています。

 

クレーン現象の有無にかかわらず、この時期には、周囲の大人の以下のような関わりが子どもの言葉の獲得に役に立つと考えられています。

 

ただし幼児期の発達では個人差が大きいため、子どもの様子に応じた対応をおこなうことが大切です。

 

・話しかける

普段から大人が子どもに話しかけることが、子どもの言葉の発達によい影響を与えるという研究があります。

 

このとき、子どもが注意を向けているものについて、注意を向けているうちに話しかけることが効果的だと考えられています。

 

たとえば子どもが砂場で山をつくっている最中に、「高いお山ができたね」などと肯定的な言葉をかけます。

肯定的な言葉をかけることで、子どもの「伝えたい」という気持ちがはぐくまれていくとされます。

 

・絵本を読み聞かせる

絵本の読み聞かせは、語彙を豊かにしたり、感動する心や想像力などをはぐくむこと、文字に関心を持つことなどにつながると考えられています。

 

読み聞かせるときは、指さしをして登場人物の名前などを言ったり、「わんわんだね」「ばあばのおうちにも、わんわんいるね」のように言葉を教えながら子ども自身になじみのあるものと結び付けたり、一緒に歌を歌ったりして、子どもが言葉に関心を持つことを促してみましょう。

 

・ものまねあそび

子どもは身近な大人の動作を見て「どの動作を、どの場面で使うのか」「どの音声を、どの動作と組み合わせるのか」などということを学んでいくとされています。

 

たとえば、大人が誰かに「バイバイ」と言いながら手を振っているところを見て、子どもも同じ相手に「バイバイ」をする場合は、大人の動作をまねることから「さよならの場面では、バイバイをする」ということを覚えていくと考えられます。

 

子どもの月齢に合わせて、「パチパチ」と言いながら両手をパチパチと合わせたり、自分の頭を「ポンポン」と言いながら軽く叩いたりして、子どもが真似をするよう促してみましょう。

子育てについて相談できる機関

クレーン現象はとくに対処が必要な現象ではありませんが、子育てについて悩むことがある場合や、発達について気になる様子がある場合には、以下の機関に相談することができます。

  • 小児科
  • 児童家庭支援センター(子ども家庭支援センター)
  • 保健センター
  • 児童相談所
  • 自治体の子育て相談窓口

LITALICOジュニアの児童発達支援

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対象年齢は0歳からで、発達が気になる0歳からの赤ちゃんや子ども一人ひとりの特性や成長のステップなどに合わせた最適な学びを提供しています。

 

無料オンライン相談もおこなっていますので、子育てや発達について心配なことがある場合はお気軽にご相談ください。

クレーン現象についてまとめ

クレーン現象は子どもが使うコミュニケーションの手段の一つで、多くの場合は意思を表現する力が発達してくるにつれてみられなくなると考えられています。

 

クレーン現象がみられることのある時期は、子どもが言葉を獲得していく時期であるとされます。

日常生活に、子どもの「伝えたい」という気持ちをはぐくむような関わりを取り入れるといいでしょう。

 

クレーン現象への対応に迷う場合や、子育てについて相談したいことがある場合は、この記事で挙げている相談先を利用することができます。

また、LITALICOジュニアの無料オンライン相談もぜひご利用ください。