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相手の気持ちをくみとることが難しく、意図せず相手を傷つけてしまったり、友だちや家族、周囲の人とのトラブルが起こるなどの困りごとをもつ保護者の中には、「もしかして発達障害?」と考える方もいます。
前提として、発達障害がある子どもが必ずしも人の気持ちが分からないわけではありませんし、人の気持ちに興味がないわけではありません。しかし、発達障害の特性が要因の一つになっている可能性は考えられます。
人の気持ちをくみとりづらい特性ゆえに、周囲とのコミュニケーションがうまく取れなかったり、「わがまま」「空気が読めない」などとネガティブな印象をもたれてしまうこともあります。
発達特性の有無にかかわらず、必ずしも相手の気持ちをすべて理解できる必要はありませんが、状況に応じて相手の気持ちを想像し、その場面に応じた行動が取れるようになることで、コミュニケーションを楽しんだり、行動の幅も広がる可能性があります。
今回は、人の気持ちが分からない要因や対応方法、実際の指導内容を紹介します。
発達障害のある子どもが人の気持ちが分からない要因
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人の気持ちが分からないことの要因の中には、発達障害の特性が関係していることもあります。
中には、「相手の気持ちをくみとることはできているが、その場に応じて行動のコントロールが苦手」など、必ずしも相手の気持ちが分からないわけではないといった場合もあります。
ここでは、考えられる要因を4つ紹介しますが、一人の人が4つすべてに該当するというわけでなく、人によっては1つだけが該当する場合や、ここであげた以外の要因も考えられるということにご留意ください。
感情を読み取ることが苦手
相手の表情や声のトーンから、気持ちを推測することが難しい場合や、相手の表情の読み取りに時間がかかる場合があります。特にコミュニケーションの場面では、即時的に推測する必要があるため、困りごとが発生しやすい可能性があります。
抽象的な言葉やあいまいな表現を理解することが苦手
発達障害のある子どもの中には、言葉の表面的な意味だけをとらえてしまい、その背景にある相手の真意まではくみとれていない場合もあります。
そのため、相手が本当は嫌がっている場面でも、直接的に嫌だと言われていないがために、同じ行動や発言を繰り返してしまうなどの困りごとが起きる可能性があります。
行動のコントロールが苦手
状況に応じて自分の行動を選択することを「行動のコントロール」といいます。発達障害のある子どもの中には、このコントロールが難しい場合もあります。
そのため、自分の欲求を抑えて行動を制限する必要がある場面でも、その場において控えるほうが望ましいとされる行動をしてしまうケースもあります。このケースでは、相手の気持ちは理解できているのですが、行動にはあらわれないため、結果的に、周囲からは「人の気持ちを分かっていない」と判断されてしまいます。
興味が限定的
発達障害の子どもの特性の1つに、興味が限定的であることがあげられます。そのため、自分の興味の範疇にない他人に対して、その人の気持ちを知りたい、理解したいという欲求が少ないということも考えられます。
人の気持ちが分からない子どもへの対応
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ここでは、子どもが人の気持ちが分からないことで、困りごとがある場合の対応方法を紹介します。
「人の気持ちが分からない」と決めつけず、まずは状況を詳しく観察する
まず大切にしたいのは、「人の気持ちが分からない」と決めつけるのではなく、本人とも話し合いながら、どの部分で子どもが困りごとを感じているのか、要因を探ることです。
そのうえで、本人の希望も確認しながら、どんな練習やサポートが現実的か相談して決めましょう。
注意したい点としては、近年ASD(自閉スペクトラム症) のメンタルヘルスに関わる要因として、「カモフラージュ」などの行動が指摘されていることです。(日本では「過剰適応」という言葉が馴染み深いですが、類似する概念です。)
周囲に適応しようと練習すること自体は悪いことではありませんが、本人が望んでいない振る舞いを強制したり、その人らしい他者との関わり方を大きく変えさせたり、本人にとって負荷が大きすぎると、メンタルヘルスにも影響する可能性があるため、定期的に本人と話し合いながら進めることが大切です。
また、本人が練習するという視点だけでなく、周囲の大人や一緒に生活する人も、子どもの特性に合わせた関わり方を学び、一緒に過ごしやすい環境をつくっていく意識も大切です。
感情や相手の真意を読み取る練習をする
実際の会話の場面を想定して、ロールプレイングをおこなって相手の感情を見極める練習や、「この場面では相手はどう思ったと思う?」と自分の行動を振り返る習慣をつける方法があります。
本人にあった行動をコントロールする方法を学ぶ
自分の欲求を優先していい場面と、そうでない場面が具体的にどんな時なのかを対話することで、状況に応じた適切な行動を学ぶことができます。
また、欲求を制御することが難しい場面での対処法を子どもと一緒に考えておくことで、実際の生活での困りごとを少なくすることができます。例えば、「発言の前に、5秒数える」など、子どもが実践しやすい方法を考えてみましょう。
一方で、自分のやりたいことを表現できることは、生きていくうえで大切なスキルの1つです。そのため、必ずしも自分の気持ちを優先することが「悪」ではないことを伝えられるとよいでしょう。
人の気持ちが分からない子どもへの指導例
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ここでは人の気持ちが分からずに困ることがあった子どもに対する、LITALICOジュニアの指導事例を2つ紹介します。
Aさん(小6)の事例
自分のやりたいことを優先してしまい、学年が上がるにつれてお友だちとの関係性をうまく築けず、親子喧嘩も絶えなかったため、LITALICOジュニアに通い始めました。
Aさんは状況判断が苦手だったため、大好きなアニメの登場人物を用いて、クイズ形式で「こういう時はどうすることがお互いにとっていいと思う?」などイメージしやすい事例で状況判断をするスキルを学習しました。
また、声のトーンや表情の変化の読み取り練習にも、アニメのエピソードを用いることで、Aさんも前向きに取り組める工夫
徐々に相手の気持ちや、状況を判断したうえで行動をすることができるようになっていきました。
Bさん(小6)の事例
周囲の状況に応じて自分の振る舞いを変えることや、「本音と建て前」、「冗談と本気」など、ニュアンスの違いを理解することが難しかったBさん。それゆえ、学校でのトラブルや親子間の衝突が増え、LITALICOジュニアの利用を開始しました。
Bさんには、選択肢の中から状況に合う行動を選ぶという練習がフィットし、練習を重ねていくうちに実際の場面でも実践できるようになりました。
また、言葉のニュアンスの違いについては、LITALICOジュニアのオリジナル教材を用いてさまざまな事例を知ることで、少しずつとらえ方のバリエーションが増えていきました。
保護者もLITALICOジュニアでペアレント・トレ-ニングを受け、子どもとの関わり方を習得したことにより、親子関係も改善されました。
まとめ
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発達障害のある子どもやその保護者の中には、人の気持ちが分からないことで困りごとを感じる人もいます。
その背景には、感情の読み取りが難しい、抽象的な言葉の理解が苦手、行動のコントロール方法を知らない、などの困難さが考えられます。
一方で、いきなり「どうにかしないと」と考えるのではなく、そもそも本人が困っているのか、どんな状態を望んでいるのかをしっかり把握することが大切です。
LITALICOジュニアでは困りごとは本人だけに起因するものではなく、本人と環境の相互作用によって生まれるものだと考えています。そのため、子どもに合わせたオーダーメイドの指導だけでなく、園や学校、周囲の人にも特性について伝え、過ごしやすい環境をつくる方法も一緒に考えています。
保護者も一緒に学べるペアレントトレーニングという機会もあるため、まずはお気軽にご相談ください。