子どもが中学生になって「急に朝起きられなくなった」「寝坊や遅刻が増えた」などで困っている保護者の方もいるのではないでしょうか?

毎日起こすなどの対応で解消できない場合は、朝起きられない背景にある要因を探り適切な対処法をおこなうことが大事です。

今回は中学生など思春期の子どもが朝起きられない要因や対処法、LITALICOジュニアでの指導事例を紹介します。

この記事を書いている会社:株式会社LITALICO

朝起きれないことの影響

中学生の子どもが最近朝起きられなくて困っている、という方もいらっしゃるかと思います。ここでは、朝起きられない状態が続くと、学校生活などにどのような影響が出てくるのか紹介します。

学校生活への影響

朝起きられないことで学校生活に影響が出ることが考えられます。睡眠が足りていないと集中力が低下することがわかっており、それによって授業への取り組み方や成績に影響が出ることがあります。集中力だけでなく体力も低下するため、体育の授業にも支障が出ることがあります。

 

また、朝起きられないことでだんだんと学校に行きたくなくなり、不登校につながることもあると言われています。

学校生活以外の影響

学校生活以外でも、放課後の友だちとの交流や塾などの習い事に集中できないといった影響が出る可能性があります。ほかにも、食事の時間など日中の活動が安定しなくなり健康への影響や夜更かしにつながることも考えられます。

 

また、身体的な健康だけでなく抑うつ気分になりやすくなるといった、精神的な面での影響も出ることがあると言われています。

 

無理に起こさずに要因を探る

子どもが朝起きられない様子を見ていると、「甘えではないか」と感じてついイライラしてしまうこともあると思います。しかし、子ども本人も「理由がわからない」「前までは起きられていたのに」と苦しんでいるかもしれません。

 

思春期の子どもの夜更かしや寝坊は一過性の場合も多いですが、起きる時間に声をかけたり、目覚ましを増やしたりといった一般的な対策をしても改善しない場合には、無理に起こさずに朝起きられない要因を探っていき適切な対応をすることが大切です。例えば朝起きられない背景に学校生活でのストレスや、家族との関係性、学校後の塾などで悩みがあるかもしれません。

 

また、生活習慣の変化などが要因となっている可能性があります。思い当たることがないか子どもに聞いてみるといいでしょう。

 

本人の口からは言いづらい場合や自覚がない可能性も考えられるため、学校の先生など周りの人に確認してみるのもいいかもしれません。

 

朝起きられない要因として考えられること

子どもが朝起きられないことの背景にはさまざまな要因が考えられます。要因は一つだけのこともあれば、複数の要因が関係しあっている場合もあります。ここでは中学生など思春期の子どもが朝起きられないことの要因として考えられることを紹介します。

 

睡眠の質と量が足りていない

睡眠の質や量が足りていないことが要因となり、朝起きられない状態になっている可能性があります。必要な睡眠時間は年齢によって異なり、中学生は8~10時間程度といわれています。中学生になると夜更かしするようになる子どもも多く、睡眠時間が足りていないかもしれません。

そして、睡眠では時間とともに質も大切になってきます。睡眠の質は就寝環境における光や音、温度などが関わってきます。また、寝る前にスマートフォンやゲームの画面を見ることで睡眠の質が低下することもわかっています。

中学生になり自分の部屋を持つようになるなど就寝環境が変わったことで睡眠の質が低下したことで急に寝坊が増えるということも考えられます。

 

生活習慣が乱れている

生活習慣の乱れも、朝起きられない要因となり得ます。一般的に中学生ごろはそれまでと比べて睡眠に関するホルモンであるメラトニンの分泌時刻が遅くなる傾向がありますが、それに加えて土日に夜更かししたり太陽の光を浴びないと、さらにメラトニンの分泌が遅れることになり、夜眠れず朝起きられないという悪循環に陥る可能性があります。

 

また、朝食を摂らないことも睡眠に悪影響があり、寝坊して朝食を摂らないことがさらに夜更かしや朝寝坊につながっていくこともあります。ほかにも、体型を気にして過度のダイエットをするなど食習慣の乱れも睡眠に支障をきたすことがあります。

 

適度な運動も睡眠には大切ですが、進級や進学によって運動習慣が変わったことも睡眠に影響を与えているかもしれません。

ストレスなど心理的な要因がある

心理的なストレスも睡眠に影響を与えることがわかっています。

ストレスを強く感じている状態では、「寝つきが悪くなる」「途中で起きる」「悪夢を見る」などが起こる可能性があり、睡眠の質や時間が下がることで朝起きられない状態になっているかもしれません。

 

あるいは、学校生活に関するストレスにより「登校したくない」という気持ちが強くなり、そのことが朝起きられないことにつながっている可能性もあります。

 

中学生など思春期の子どものストレスとしては、以下のものが多いと言われています。

  • 学習の悩み
  • 部活の悩み
  • クラスメイトとの関係
  • 家族との関係
  • 習い事など学校外での活動の悩み
  • 進路の悩み

そのほか、転校などの環境の変化、災害・事故に遭遇した経験もストレスとなることがあります。ストレスの感じ方は個人差が大きく、ほかの人はそれほど気にならないことでも、本人にとっては大きな負担となっていることもあります。思い当たるものがないか本人や周りの人に聞いてみてもいいでしょう。

 

起立性調節障害など疾患の可能性

睡眠に関係する疾患が朝起きられない要因になっている可能性もあります。主な疾患として、朝起きるのが難しくなる「起立性調節障害」や眠れなくなる「不眠症」などが挙げられます。

 

また、女性の場合は中学生ごろに生理が始まることも睡眠への影響が指摘されています。例えば生理による体調変化や周期がつかめず、対処法がわからないため生活リズムが乱れることがあります。さらに、月経困難症(いわゆる生理痛)や貧血、PMS(月経前症候群)などの月経関連疾患がある場合も、睡眠の量や質に影響が出ることが考えられます。

朝起きられないときの家庭でできる対策

ここでは、主に家庭でできる睡眠への対策を紹介していきます。子どもが朝起きられない要因を考慮したうえで、できることから取り組んでみるといいでしょう。

 

就寝環境を整える

子どもにとって心地よい就寝環境に整えていくことで、睡眠の質を向上させる方法があります。引っ越しや子ども部屋を変えたことで、睡眠に影響が出ている際に試してみるといいでしょう。

 

対策としては以下のようなものがあります。

  • 就寝する部屋を変える
  • まくらなどの寝具を変える
  • パジャマを変える
  • 照明を変える(照度を変更できる照明や間接照明にする)
  • アイマスクや耳栓を使う
  • 加湿器や除湿器を使う
  • 遮光カーテンや防音カーテンをつける
  • スマートカーテン(時間になったら開閉するカーテン)をつける

いきなり部屋を変えるなどは難しいと思いますので、何が睡眠を妨げているのか子どもに確認したうえで、取り組みやすいものから実行するといいでしょう。

生活習慣を見直す

生活習慣を見直すことも睡眠の質と量を高めるために大切です。

 

以下のようなことが大事だとされています。

  • 中学生・高校生は8~10時間睡眠
  • 一定の時間に就寝、起床する(休日も)
  • 朝太陽の光を浴びる
  • 朝食を摂る
  • 日中に運動をする
  • 就寝2~3時間前にぬるめのお風呂につかる
  • 夜更かししない

夜更かしをしないためには、夜はコーヒーやエナジードリンクなどカフェインを摂取しない、就寝2時間前はスマートフォンなどの画面を見ないことが大事になります。

 

ただ、スマートフォンを見ないというのは子どもに限らず、大人にとっても難しいことだと思います。そのため、単にスマートフォンを禁止とするのではなく、家族で夜の過ごし方を話し合って納得がいくようにルールを決めていくといいでしょう。平日と休日で使用していい時間を分けるなど、柔軟に設定していくことが大切です。

 

また、子どもにとって必要な睡眠時間を探るのも重要です。中学生に必要な睡眠時間は8~10時間と言われていますが、個人差も大きいため数字にとらわれずに本人が「すっきり寝た」と思える時間を把握しておくといいでしょう。

ストレスへのケアをおこなう

ストレスが睡眠に影響している場合は、ストレスケアを行っていくといいでしょう。

すぐにできるストレス解消法としては、以下のようなものがあります。

  • 趣味に没頭する時間を作る
  • 仲のいい人と話す
  • 紙などに悩みを書き出す
  • 自然に触れる
  • 好きな音楽を聴く
  • 好きな香りをかぐ
  • 軽い運動をする

ストレスが解消すると睡眠が安定するほか、睡眠が安定することでさらにストレスが緩和されるといういい影響も期待できます。

 

こういった対処法を試しても解消が難しい場合は、カウンセリングルームなどに相談してみる方法もあります。

あるいは、学校生活で明確な原因がある場合などは担任の先生やスクールカウンセラーなどに相談してみるといいでしょう。

 

医療機関を受診する

ここまで紹介してきた対処法をおこなっても、朝起きられない状態が解消しない場合や、ほかに気になる様子がある時は医療機関の受診を検討してみてもいいでしょう。

 

睡眠に関してはかかりつけの小児科、睡眠障害を診ている病院、睡眠外来のある病院などがあります。月経関連疾患の場合は婦人科を受診してみるといいでしょう。

 

朝起きられない場合の指導事例

ここでは、LITALICOジュニアでの朝起きられない思春期の子どもへの指導事例を紹介します。

Aさんの事例

高校2年生のAさんは、ある時から急に朝起きられなくなり、学校にも行けない日が続いていました。そのことで悩み保護者がLITALICOジュニアに相談して利用することに。

 

LITALICOジュニアではまず本人や保護者からのお話や本人の様子を見て、要因を探っていきました。その結果、

  • 視覚的な把握が得意
  • もともと過敏なところがあってストレスコントロールが苦手
  • 自身の行動を振り返るのが苦手

ということがわかってきました。Aさんは気になる刺激があったり、うまくいかないことがあった際にストレスをためてしまっていたことと、それを把握できていなかったことが、朝起きられない状態につながっていたようです。

 

そこで、LITALICOジュニアでは「自分の傾向を把握する」「できたこと/できなかったこと振り返って改善していく」ことを目標として指導を行っていきました。できたことも振り返るのは、できなかったことだけに注目するのは辛いため、本人が前向きに取り組めるようにという工夫です。

使用した教材

Aさんは視覚的な把握が得意だったため、プリントを使って自分の行動を可視化することから始めました。

使用した教材は「1日の過ごし方について考える」と「1日の計画表を作ろう」というプリントです。

まず過ごし方のプリントをAさん自身に書いてもらうと、「夜遅くにゲームをしたり動画を見たりしている」ことが判明。本人は意識していませんでしたが、目に見える形にしたことで夜更かしの要因を自覚することができました。

要因がわかったので今後は対策も可視化することに。計画表に「ゲームの時間」「動画の時間」をあらかじめ記入しておくことで、Aさんの中で見通しが立ちその通りに行動しやすくなりました。

 

また、ストレスを感じるとついゲームをしてしまうこともわかったので、ゲーム以外のストレス解消方法も探っていくことに。これも、いろいろ試してみて効果があった方法を紙に書いていきました。

AさんはLITALICOジュニアに通って、自身を振り返るスキルが身につき、生活リズムの整え方やストレス解消方法も把握できてきました。また、無理がないように通信制の高校への転校を自身で決め、その後は卒業まで通うことができました。

 

LITALICOジュニアの指導

LITALICOジュニアでは「朝起きられない」などの困りごとに対して、保護者のお話や本人の様子、得意苦手などを踏まえてオーダーメイドで指導をおこなっています。

困りごとは同じでも、子ども一人ひとり要因も対処法も異なっています。LITALICOジュニアではさまざまな状況に対応するための教材が豊富にあると共に、指導員が自作することもあります。

 

LITALICOジュニアでは通所受給者証をお持ちの方が利用できる「児童発達支援」と「放課後等デイサービス」と、どなたでも利用できる「幼児教室」と「学習塾」があります。まずはご相談ください。

 

まとめ

中学生など思春期の子どもが「朝起きられない」「急に寝坊するようになった」と困っている人もいると思います。朝起きられないことで、成績など学校生活に影響が出て、不登校につながる可能性もあるとされています。

ただ、朝起きられないことに子どもも苦しんでいます。甘えだと思って無理に起こすのではなく、朝起きられない背景にどのような要因があるかを探ったうえで、適切な対応をしていくことが大事です。

 

家庭でできる対策もありますが、それで解消しない場合は専門機関を頼ってみる方法もあります。LITALICOジュニアでは朝起きられないで困っている子どもの指導事例もあります。「朝起きられない」「不登校になるのでは」と心配な方は一度お問い合わせください。