2歳〜3歳ごろになると、情緒や言葉の発達も顕著になり、自分の意志を伝えることができるようになっていきます。そのため「保育園(幼稚園)行きたくない!」「ママ、パパといたい!」と登園しぶりをする子どももいます。

 

一言で「登園しぶり」といっても、登園時のみ行きしぶりの様子があるものの、登園後は楽しめているという場合や、登園後も活動に参加しない、泣き続けるなど園生活でも困りごとが起きている場合など、さまざまなケースがあります。

この記事では、各タイプの登園しぶりの具体的な行動や心理的要因、指導事例について解説します。

この記事を書いている会社:株式会社LITALICO

登園しぶりの具体的な行動とは?

登園しぶりといっても、朝だけ行き渋る様子があるのか園に到着後も嫌がる様子があるのか、お子さまによってもさまざまです。ここではそれぞれのタイプでみられる具体的な行動を紹介します。

「朝だけ」保育園・幼稚園に行きたくない

家を出る前に「行きたくない」と泣いたり、出発を遅らせる行動(わざと食べ物をこぼす・ゆっくり支度するなど)をする、その場から動こうとしないなど、朝に登園することに抵抗する場合などがあります。

 

一方で、登園後に仲良しのお友だちや好きな先生、お気に入りのおもちゃを見つけるなど、きっかけさえあればスムーズに園に入れる場合や、ママ、パパが見えなくなれば集団行動に馴染める、など朝の特定のタイミングだけ切り替えが難しいことがあります。

 

「登園後も」保育園・幼稚園で活動に参加したくない

上述の朝の登園しぶりに加え、登園後も引き続き気持ちを切り替えられない場合もあります。具体的には、ママ、パパが見えなくなっても長時間泣き続ける、園から逃げようとする、活動への参加や昼食などを拒む場合などがあります。

 

「週明け」「長期休み明け」に保育園・幼稚園に行きたくない

普段は登園しぶりをする様子はなくても、週明けや、夏休みやお正月などの長期休暇明けだけ登園をしぶる場合もあります。

 

上記2つのケースのような行動が見られるものの、数日登園して、園の様子を思い出したり、園に慣れると普段のリズムに戻ることができます。

子どもが登園しぶりをする要因

子どもが登園しぶりをする要因はさまざまなことが考えられます。ここでは子どもが登園しぶりをする要因について紹介します。

 

体調不良

特に小さい子どもは自分の体調について具体的に表現することが難しいため、「行きたくない」という表現で体調不良を訴えている可能性があります。

 

園へ通い始める最初の時期は、他の子どもと接する機会が一段と増え、感染症にかかりやすいタイミングでもあるので、より注意が必要です。

 

他にも、子どもは気圧や気候、寒暖差などの影響で体調を崩すこともあるので、そのような視点でも外部要因がないか気に留めておくとよいでしょう。

 

環境への不安やストレス

環境への不安やストレスが原因で登園しぶりをするケースがあります。

引っ越しによる転園や、クラスの進級など、環境が大きく変わるタイミングでは、一見普段と変わらない様子に見えていても、内面は不安を抱えている可能性もあります。

 

物理的な環境だけでなく、お遊戯会・運動会など行事の前に通常の保育時間にはなかった「練習の時間」が入るなど、時間の使い方が変わる、掲示物など雰囲気が変わる、なども環境の変化として不安を感じる子どももいます。

 

他にも、感覚過敏などが原因で、園の設備(色合い、匂い、大きさなど)や園の活動(粘土、水遊び、お砂場遊びなど)を苦痛に感じている場合も考えられます。感覚の過敏さやその種類(触覚、嗅覚、聴覚、視覚など)は個人差があり、誰もが持ちうる特性ではありますが、その背景には発達障害の可能性もあるため、気になる場合は専門機関を受診することをおすすめします。

人間関係の不安やストレス

 

人間関係の不安やストレスが原因で登園しぶりをするケースもあります。

 

特定の先生やお友だちが苦手という場合や、特定の人物ではなくても、コミュニケーションの苦手さゆえ、集団の輪の中に入れないなどがストレスになっている可能性も考えられます。

 

他にも衝動性が強く、順番を待てない、すぐに手が出てしまうなどの特性が原因で、お友だちとうまく関われずストレスを感じることもあります。

 

特に幼い子どもは、コミュニケーションスキルを確立していなかったり、ルールの理解や自分の欲求を抑える練習が十分ではなく、このような行動に出る場合もあります。一方で、その程度が強かったり、4歳、5歳と社会性が発達してくる時期になっても引き続き先生やお友だちの関わりが難しい場合は、発達障害が背景にある可能性も考えられます。

 

お子さまの発達の様子が気になる場合には、専門機関に相談するといいでしょう。

母子分離不安

「母子分離不安」とは、主に幼児期に子どもが母親から離れることに対して不安を覚え、泣いたり、嫌がったりすることを指します。多くの子どもに見られる通常の発達の一過程であり、その程度には個人差があります。

 

具体的には、母子分離の場面でなかなか泣き止まない、母にしがみついて離れられない、家庭で一人でいることができないといった症状が代表的です。これらの症状が4週間以上続くと、「分離不安症」と診断されます。

 

子どもが登園しぶりをした際の具体的な対処法

特に子どもが小さいうちは要因が特定しづらい場合もあるので、長期間登園しぶりが見られる場合には、園や専門機関に相談しながら対応することが望ましいでしょう。

 

子どもの気持ちに寄り添い、行きたくない理由を確認する

「行きたくない!」と登園をしぶる様子があった場合、まずは「そうだよね、行きたくないよね」と子どもの発言を繰り返したり、「ママ、パパもお仕事行きたくない日もあるよ」と保護者の実体験を交えながら共感することからはじめましょう。

 

子どもによっては、理由をうまく言えないケースもあるので、その場合は無理に聞き出そうとせず、下記いずれかの方法を試してみてください。

登園してほしい理由を説明する

頭ごなしに「行かなきゃダメでしょ!」と伝えるのではなく、「どうして登園をしてほしいのか」という理由もしっかりと伝えましょう。あくまで一方的ではなく、「お仕事があるから、家にいると会社に遅れてしまう」など親目線の理由と、「園に行くことで、お友だちと一緒に活動する練習や、家ではできない経験ができる」など子ども目線の理由を伝えることが大切です。

きっかけ・行きたくなる仕組みを作る

子どもは、たとえ理由が腑に落ちたとしてもすぐに気持ちを切り替えることが難しい場合もあります。そういった際には、きっかけや仕組みを作ることが効果的です。

 

具体的には、好きな靴を履く、好きなおもちゃを持っていく、園に行ったらごほうびシールを貼る、など子どもの喜ぶちょっとした仕組みを取り入れるとよいでしょう。

 

家を出るまでだけでなく、通園途中にも、お気に入りスポットを見つけたり、しりとりをしながら歩くなど、道中を楽しい時間にすることもできます。

時間や活動内容を共有し、見通しを持たせる

具体的なスケジュールや見通しが見えないままでは不安を感じる子どもや、行動がしづらい子どももいます。そのため、絶対に出発しなければいけない時間を伝えたり、「必ずお迎えに来るよ」「短い針がこの場所にきたらお迎えに行くからね」など帰りの時間を意識させるといった方法もとれます。

 

他にも時間軸だけでなく、「今日のお昼はカレーだよ」「今日は〜っていう場所にお散歩にいくんだって」「絵の具の時間があるんだって」など、わかる範囲で具体的な活動を共有することも大切です。

園に活動や環境の調整をお願いする

環境、人間関係の不安やストレスが要因になっている場合、子ども自身がそれに適応するための練習をしたり、対策することも大切ですが、一方で、園側にも協力をしてもらうという視点も大切です。

 

具体的には、感覚過敏で参加が難しい活動は代替案を用意してもらったり、見学を許可してもらう、人間関係が要因の場合は、様子を見て別の先生に介入してもらう、苦手なお友だちとの関わりのサポートをお願いする、などが考えられます。

 

園の人員配置や、教育方針も関わってくるため、まずは具体的な困りごとを相談した上で、園と一緒にサポートの仕組みを考えていけるとよいでしょう。

 

休む、時間をずらす

いずれの方法も効果がなく、どうしても登園できそうにない場合には、休む、もしくは時間をずらして登園する、早迎えをするなど、子どもの様子や状態に合わせて対応することが望ましいです。体調不良で登園しぶりがある場合は、早めに休ませた方がその分回復も早い場合もあります。

 

仕事や家庭状況など、どうしても休ませることが難しい場合に備え、シッターサービスに事前に登録し、心理的に安心できる存在を家族以外にも確保するのも1つの対策方法です。シッターサービスの中には病児保育を専門にしている団体もあるため、いざという時のために様々な場合に備えたサービスに登録しておくことをおすすめします。

できれば避けたいNG行動

ここでは、できれば保護者に避けてほしいNG行動をお伝えします。あくまでこれは事例であり、NG行動をしたからといって必ずしも子どもに悪影響があるわけではありません。

 

保護者自身も多忙な日々の中で、「登園しぶり」に対して常に冷静に対処できるわけではない場合もあります。ここに当てはまる場合は、まずはご自身の心身の健康をチェックし、必要に応じてカウンセリングなどの機会を作ることも大切です。

 

怒る、無理やり連れていく

 

怒る、無理矢理引っ張って連れていく、などの行動を繰り返すと、子どもの不安が増幅されたり、親に気持ちが伝わらないといった不信感につながるリスクがあります。

 

他のことに気を取られている間に逃げるようにして預ける

 

おもちゃや先生に気を取られている間にサッと姿を消すという行動をし続けると「知らないうちに行ってしまうかもしれない」という不安を抱えつづけ、登園しぶりが長引く可能性もあります。子どもが泣いてしまうとしても、「今から行くね」と区切りをつけることも大切です。

 

親の基準がブレる

 

「行く約束をしたけれど、やっぱり休ませる」など、保護者の基準がブレると、子どもにもそれが伝わり、子ども自身も気持ちが不安定になることがあります。親の主張は一貫させることが望ましいです。

一方で、一律で基準を設定することは難しい場合も多々あります。パートナーや園の先生などご自身が信頼できる人に相談し、お子さまにとっても、保護者にとっても適切な基準が設定できるとよいでしょう。

登園しぶりをするお子さまへの指導事例

Aちゃん(年長)

園の活動がうまくできない場面が多かったAちゃん。活動に対してネガティブな気持ちになり「幼稚園やだ」と言ったり、登園はできても活動には参加しないなどの困りごとがあり、LITALICOジュニアに通い始めました。

指導員によるアセスメントの結果、背景には「できない」「知らない」ことがあったときの頼り方(ヘルプ発信)が分からないことと、触覚の過敏さがあることがわかりました。具体的には、感覚の過敏さのために指で塗るタイプの糊が触れなかったり、園庭での遊びが苦手などの難しさがありました。

 

Aちゃんには、(切る貼る折る塗るなど)工程が多い工作の教材を使い、本人にとって少しだけハードルの高い作業を取り入れることで、自然と「できない」「教えて」など、ヘルプ発信がしやすい状況を作りました。具体的には下記の教材を利用しました。

 

感覚の過敏さに対しては、使う糊をスティックのりにするなど、感覚に配慮した別のものに置き換えました。

 

このような練習や環境の調整を行うことで、徐々にヘルプ発信の方法が分かり、園でも先生に対してお願いができたり、仲のいいお友だちなら「教えて」と聞くことができるようになりました。その結果、「幼稚園やだ」という発言も減り、楽しく園に通えるようになりました。

まとめ

登園しぶりの期間や行動、要因は子どもによって様々で、場合によっては感覚過敏やコミュニケーションの不安、衝動性など発達障害を背景にした特性が影響している可能性もあります。

特に幼児期は要因の見極めが難しい場合もあるため、登園しぶりが長く続く場合は、専門機関を受診することをおすすめします。

 

LITALICOジュニアでは子どもに合わせたオーダーメイドの指導だけでなく、園や学校、周囲の人にも特性について伝え、過ごしやすい環境をつくる方法も一緒に考えています。

 

保護者も一緒に学べるペアレントトレーニングというプログラムもあるため、まずはお気軽にご相談ください。