障害者手帳とは、障害のある方が取得できる手帳の総称です。発達障害や知的障害(知的発達症)のある子どもでも申請することができます。
障害者手帳を取得すると、さまざまな支援やサービスを受けることができます。とはいえ、「手続きの仕方がわからない」、「子どもが対象になるのかわからない」など障害者手帳を申請することを迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事では障害者手帳の種類や申請方法、障害者手帳を取得することで受けられるサービスについてご紹介します。
障害者手帳の種類
障害者手帳には、「療育手帳」、「精神障害者保健福祉手帳」、「身体障害者手帳」の3種類があります。
知的障害(知的発達症)のある方は療育手帳が対象になります。療育手帳は、「愛の手帳」、「みどりの手帳」などと名称が異なる場合があります。
発達障害がある子どもの場合は、療育手帳、または精神障害者保健福祉手帳が対象となることがあります。
それぞれの手帳について詳しくご紹介します。
療育手帳とは?
療育手帳は、知的障害者または知的障害児に交付される手帳のことを言います。
独自の名称で交付する自治体もあります。以下その一例です。
- 青森県…愛護手帳
- 東京都…愛の手帳
- さいたま市…みどりの手帳
- 横浜市…愛の手帳
- 名古屋市…愛護手帳
療育手帳は、法律で定められているわけではなく、都道府県・指定都市が独自に判定基準などの運用方法を決めて実施しています。そのため、各自治体ごとで受けられるサービスも異なります。
精神障害者保健福祉手帳とは?
精神障害者保健福祉手帳は、精神保健福祉法に基づき、何らかの精神疾患があるために、長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある方に対して交付される手帳のことを言います。
精神障害者保健福祉手帳は、全ての精神障害が対象となります。
精神障害には、代表として次のようなものがあります。
ただし、手帳を受けるためには、その精神障害について初診を受けた日から6ヶ月以上経過していることが必要になります。
- 統合失調症
- うつ病、そううつ病などの気分障害
- てんかん
- 薬物依存症
- 高次脳機能障害
- 発達障害(自閉スペクトラム症、限局性学習症、注意欠如多動症等)
- そのほかの精神疾患(ストレス関連障害等)
発達障害やてんかんのある場合も、精神障害者保健福祉手帳の対象となります。
また、発達障害のある方の中で知的障害(知的発達症)も伴う場合には、療育手帳も対象となることがあります。
身体障害者手帳とは?
身体障害者手帳は、身体障害者福祉法に基づき、身体の機能に一定以上の障害があると認められた方に交付される手帳のことを言います。
対象
以下の障害が身体障害者手帳の対象として定められています。
ただし、いずれの場合もその障害が永続することが要件とされています。
- 視覚障害
- 聴覚又は平衡機能の障害
- 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
- 肢体不自由
- 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害
- ぼうこう又は直腸の機能の障害
- 小腸の機能の障害
- ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
- 肝臓の機能の障害
障害者手帳の等級とは?
障害者手帳には、「療育手帳」、「精神障害者保健福祉手帳」、「身体障害者手帳」の3種類があり、それぞれの概要についてお伝えしました。
これらの手帳には、それぞれに障害の程度などに応じた等級が定められており、その等級に応じて受けられる支援やサービスの内容が異なります。
ここでは、各手帳の等級について解説します。
療育手帳の等級
療育手帳の等級は、基本的には、重度「A」と重度以外の中軽度「B」の2種類で区分されています。ただし、自治体によってはさらに細分化しているところもあります。
以下その一例です。
- 東京都:1度(最重度)、2度(重度)、3度(中度)、4度(軽度)
- 埼玉県:Ⓐ(最重度)、A(重度)、B(中度)、C(軽度)
- 神奈川県:A1(最重度)、A2(重度)、B1(中度)、B2(軽度)
- 愛知県(名古屋市):1度(最重度)、2度(重度)、3度(中度)、4度(軽度)
- 大阪府:A(重度)、B1(中度)、B2(軽度)
精神障害者保健福祉手帳の等級
身体障害者手帳の等級
身体障害者手帳には、1級から7級までの等級に分類されています。等級は、1級に近いほど障害の程度が重く、7級に近いほど障害の程度が軽くなります。
身体障害者手帳は、6級以上の障害に交付され、7級の障害のみでは、交付対象になりません。7級の障害が2つ以上ある場合などには、交付対象として認められる場合があります。
身体障害の等級は、各障害ごとに細かく定められています。詳しくは、身体障害者程度等級表にてご確認ください。
障害者手帳の等級による違いは?
各種障害者手帳の等級によって、受けられる支援やサービスの内容が異なります。
受けられるサービスについては後ほど詳しくご紹介します。
障害者手帳の申請方法は?
障害者手帳の申請の流れは共通している部分があるため、まずは基本的な流れを紹介した後に、それぞれの手帳ごとの違いを紹介します。
共通している手続きの流れは以下のようになっています。
- 申請書を入手する
- ほかの必要書類とともに窓口へ提出する
- 申請が認められると交付される
まずは、それぞれの障害者手帳の申請書類を入手します。ほとんどの場合はお住いの自治体の障害福祉窓口で入手することが可能です。また、インターネットでダウンロードできる場合もありますので、自治体のホームページを確認してみるといいでしょう。
次に、記載した申請書、医師の診断書、マイナンバーカード、本人の顔写真などの書類をそろえて、同じ障害福祉窓口へ申請をします。
申請した後は自治体の審査を経て、1~2か月後に発行されます。
以上が大まかな流れです。この後は障害者手帳の種類ごとに必要な手続きを紹介します。
また、手続きに必要な書類や手続きの流れについては、自治体ごとで異なる場合がありますので、詳しくはお住まいの市町村の担当窓口にお問い合わせください。
療育手帳の申請方法
療育手帳の手続きに必要な手続きとして、窓口で申請をした後に判定を受けることが挙げられます。
判定は18歳未満の場合は児童相談所、18歳以上の場合は知的障害者更生相談所で判定を受ける必要があります。ヒアリングや検査の結果を踏まえて、精神科医、心理判定員等の協議により総合判定が行われます。
この結果が療育手帳の判断材料になります。そのため、療育手帳の申請には医師の診断書を求められない自治体もあります。
療育手帳には通常有効期限があり、期限が切れる前に更新申請をする必要があります。
更新の頻度は自治体によって異なり、東京都では3歳、6歳、12歳、18歳になったとき、または障害の程度が変化したと思った際に更新が必要とされています。
療育手帳の更新に必要なものやタイミングなどの詳細は各自治体によって異なりますので、詳しくお住まいの福祉福祉窓口にお問い合わせください。
精神障害者保健福祉手帳の申請方法
精神障害者保健福祉手帳の申請では医師の診断書が必要となりますが、最初に診察を受けたときから6か月以上経過した後に作成されたものであることが条件となります。
そのほかの大まかな流れは身体障害者手帳など、ほかの手帳と同様です。
精神障害者保健福祉手帳の有効期限は基本的に決まっていて、交付日から2年が経過する日の月の末日となっています。
この有効期限が切れる前に更新の申請をおこなう必要があり、その際には新たな診断書が必要になります。
詳細は自治体により異なることがありますので、障害福祉窓口などでご確認ください。
身体障害者手帳の申請方法
身体障害者手帳の申請にも医師の診断書が必要となります。診断書は1年以内に作成されたものなど、自治体によって期間の指定がある場合もあります。
そのほかは精神障害者保健福祉手帳など、ほかの手帳と同様の手続きとなります。
また、身体障害者手帳は原則として更新は必要ありません。ただ、障害の状態が軽くなるなどの変化が予想される場合には、再認定を実施することがあります。
身体障害者手帳についても、詳しいことはお住いの自治体の障害福祉窓口などへお問い合わせください。
障害者手帳を提示することで受けられる支援やサービスは?
障害者手帳を取得すると、さまざまな支援やサービスを受けることができます。
障害者手帳を提示することで受けられる支援やサービスについて、それぞれの手帳ごとにご紹介します。
先程もお伝えしたように、障害の等級や種類によっても受けられる支援やサービスの内容が異なるので詳しくは各自治体の窓口へお問い合わせください。
障害者手帳を取得することのメリット
障害者手帳を取得すると、さまざまな支援やサービスを受けることができるなどのメリットがあります。
ここでは、障害者手帳を提示することで受けられる支援やサービスについて、それぞれの手帳ごとにご紹介します。
障害の等級や種類によっても受けられる支援やサービスの内容が異なるので詳しくは各自治体の窓口へお問い合わせください。
医療費の助成
障害者手帳を持っている方は、医療費の負担が軽減されます。
医療機関での医療費の自己負担が、原則1割になります。ただし等級によっては対象外となることもあります。
例えば、東京都内にお住まいで障害者手帳の等級が以下に該当する場合は、医療機関での医療費の自己負担が原則1割になります。
- 身体障害者手帳1級・2級の方
※心臓・じん臓・呼吸器・ぼうこう・直腸・小腸・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫・肝臓機能障害の内部障害については3級も含む。- 愛の手帳1度・2度の方
- 精神障害者保健福祉手帳1級の方
引用:心身障害者医療費助成制度(マル障)
補装具の助成
補装具とは、補聴器・盲人安全杖・義肢・歩行器・車いすなどのことで、補装具を購入・修理の際にかかる費用の助成が受けられます。原則1割の自己負担で済み、9割を市区町村が助成してくれます。
リフォーム費用の助成
たとえば、スロープ・手すりの取り付けや段差の解消などの住宅リフォーム費用の給付が受けられます。こちらも障害の種類や等級によって受けられるサービス内容や、上限金額が変わります。
障害者雇用での就労ができる
障害者手帳を持っていると、一般雇用だけではなく、障害者雇用にも応募でき、就職・転職することができます。障害者雇用として就職や転職をすると、障害に応じて必要な配慮を受けられたり、周囲の理解が得やすいことなどがメリットとなります。
障害者雇用とは、「障害者の職業の安定を図ること」を目的として、障害のある方が一人ひとりの能力や特性に応じて障害のない方と同じように働けるよう、自治体や企業が中心となって障害のある方を積極的に雇用することです。
各種税金の軽減
所得税・住民税・相続税・贈与税・自動車税などの軽減が受けられます。等級によって変わりますが、一定の金額の所得控除が受けられます。障害のある本人だけでなく、扶養している方が対象になる場合もあります。
※特別障害者とは、障害者のうち、次の特に重度の障害のある方のことを言います。
- 身体障害者手帳に身体上の障害の程度が一級又は二級と記載されている方
- 精神障害者保健福祉手帳に障害等級が一級と記載されている方
- 重度の知的障害者と判定された方
- いつも病床にいて、複雑な介護を受けなければならない方 など
公共交通機関の割引
障害者手帳を提示することで鉄道やバスなどの公共交通機関の運賃の割引を受けることができます。手帳の種類によって受けられる内容などが異なるため、利用したい交通機関のホームページで事前に確認が必要です。
例えば、JRでは身体障害者手帳や療育手帳を持っていると、本人と介護者の運賃が半額になります。
また、タクシーや飛行機、高速道路の料金も割引を受けることができます。
その他のメリット
他にも以下のような割引や補助が受けられるなどのメリットがあります。
- 補聴器などの補装具購入・修理時の助成
- スロープを付けるなどリフォーム代の助成
- NHK放送受信料の割引
- 携帯電話会社の料金の割引
- 美術館・博物館・動物園などの入場料の割引
障害者手帳のデメリットはある?
障害者手帳には、以上のようなメリットがありますが、デメリットはあるのかと気になる方もいると思います。
基本的に障害者手帳を所持していることのデメリットはないといえるでしょう。自ら言い出さない限り障害者手帳を持っていることが、周りの人に伝わるということもありません。
しいてデメリットと感じる可能性のあることとしては、申請や更新の手続きに労力や時間がかかることがあります。
ほかにも、医師の診断書にお金がかかることや、引っ越しをした際や紛失した際などに手続きが必要になるといった面をデメリットと感じることもあるようです。
障害のある子どものための支援やサービスは?
障害者手帳を取得して受けられるサービス以外にも、障害のある子どもが対象となる支援やサービスがあります。ここでは、障害のある子どものための支援やサービスについてご紹介します。
児童発達支援
障害児通所支援は、主に施設などに通所して、日常生活における基本的な動作のトレーニング、生活能力の向上のために必要な訓練、集団生活への適応訓練などの支援を行うサービスのことです。
障害児通所支援は、利用する子どもの状態像や年齢によって、「児童発達支援」、「放課後等デイサービス」、「保育所等訪問支援」などのサービスに分かれています。
児童発達支援は、障害のある未就学の子どもを対象とした児童福祉法に基づく通所支援のひとつです。
児童発達支援センターなどの施設に通い、日常生活における基本的な動作のトレーニングや、集団生活への適応訓練などの支援を受けることができます。
児童発達支援に通うことで困りごとを軽減することができ、必要なスキルを早期に獲得することで、社会生活における困難さが起こりにくくなるといわれています。
児童発達支援の利用を希望する場合には、自治体の福祉担当窓口や障害児相談支援事業所などに、サービスを利用したい旨を相談する必要があります。
放課後等デイサービス
放課後等デーサービスは、障害のある小学校に入学する6歳から18歳までの就学児の子どもを対象とした児童福祉法に基づく通所支援のひとつです。
放課後等デイサービスは児童発達支援と行われる内容に大きな違いはありません。
児童発達支援と同様、放課後等デーサービスの利用を希望する場合には、自治体の福祉担当窓口や障害児相談支援事業所などに、サービスを利用したい旨を相談する必要があります。
保育所等訪問支援
障害のある子どもが集団生活に適応することができるように、専門のスタッフが子どもが通う保育所、幼稚園、小学校などを訪問し、子どもの集団生活への適応のための支援や、訪問先施設のスタッフに対して支援方法等の助言などを行います。
障害児入所支援
障害のある子どもを施設に入所させて、日常生活の指導及び生活をおくる上で必要な知識や技能を身に付けるための訓練を行う施設です。福祉サービスを行う「福祉型」と、福祉サービスに併せて治療を行う「医療型」があります。
障害のある子どもの学習塾LITALICOジュニア
LITALICOジュニアでは、各地で障害のある子どもを対象とした学習塾を運営しています。
「友達とうまくコミュニケーションが取れない」「勉強で遅れが出ている」などの困りごとに対して、子ども一人ひとりの興味関心に合わせて最適な授業を提供していきます。
障害者手帳を持っていなくても利用することができることがありますので、気になる方はぜひ一度お問い合わせください。
障害者手帳のまとめ
障害者手帳とは発達障害や知的障害(知的発達症)のある子どもが取得できる手帳の総称です。
手帳の種類によって対象が異なったり、手続きにはさまざまな準備が必要ではありますが、障害のある方にとって、障害者手帳を取得することは、日常生活でさまざまな支援やサービスを受けることができるなどの大きなメリットもあります。
障害者手帳の取得を検討してみようかなと思ったら、お住まいの福祉担当窓口に相談に行ってみてください。
LITALICOジュニアでは、障害者手帳の対象となる子どもの支援をおこなっています。
障害のある子どもへの支援の場として、各地で児童発達支援事業所、放課後等デイサービス、幼児教室・学習塾を展開し、一人ひとりのニーズや特性に合わせて学習やソーシャルスキルアップをメインとした授業で子どもの成長をサポートをしています。
子どもの発達についてのお悩みがありましたら、お気軽にLITALICOジュニアにご相談ください。