ICD-11(国際疾病分類第11版)は日本ではいつから導入される?内容やICD-10からの改訂点も解説します

ICD-11をご存知ですか?

 

病院からもらった診断書にICD-10コードという項目を見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

ICDとは世界保健機関(WHO)が作成する病気の分類のことを言い、そのICDが約30年ぶりに改訂され、2018年に「ICD-11」として公表されました。

 

そこで本記事では、ICD-11とはどういったものなのか、ICD-10との違い、日本ではいつから導入されるか?などを紹介していきます。

ICD-11とは?

ICD-11とは?

ICDは、世界保健機関(WHO)が作成している病気の分類のことです。

分類された病気は、その名称とともに、アルファベットと数字を用いたコードで表されています。

 

ICD-11は、2018年6月に世界保健機関(WHO)が国際疾病分類第11版(ICD-11)として公表し、2019年5月に世界保健機関(WHO)の総会で承認されました。

 

ICD-11では、最新の医学的知見も反映され、変更・追加された箇所が多数あります。ICD-10から改定された点は、後ほど詳しくご紹介しますが、まずは、ICDとは何かを紹介したいと思います。

ICD(国際疾病分類)とは?

ICDというのは略称で、正式名称は「International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)」といいます。日本語では「国際疾病分類」と呼ばれることもあります。

 

たとえば、診断書などで以下のようなコードを見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。

 

  • ICD-10コード
  • F84:広汎性発達障害
  • F90:多動性障害
  • F95:チック障害

 

ICDが作成される目的は、異なる国や地域で集計された死亡や疾病のデータを体系的に記録して、分析や比較を行うためです。

ICD-10からICD-11へ、改訂点は?

約30年ぶりにICDの最新版への全面改訂が行なわれ、2018年6月に国際疾病分類の第11回改訂版が公表され、2019年5月にWHOの総会で、ICD-11が承認されました。

 

ICDの改訂では、多くの医療従事者から提案を受け、最新の医学的・科学的知見が反映されています。

 

伝統医学の導入、電子環境での活用を前提としたシステムが今回の改訂の特徴といえます。

また、ICDの内容にも大きな改訂があり、死亡・疾病統計の国際比較に加え、臨床現場や研究など様々な場面での使用を想定し、より多様な病態を表現できるようコード体系が整備されています。

 

追加・変更項目も多数あり、分類項目数はICD-10で約14,000だったのが、ICD-11では約18,000まで増加しました。

 

ICD-11で追加された章は以下の通りです。

 

  • 第4 章 免疫系の疾患
  • 第7 章 睡眠・覚醒障害
  • 第17 章 性保健健康関連の病態
  • 第26 章 伝統医学の病態-モジュールI
  • 第V 章 生活機能評価に関する補助セクション
  • 第X 章 エクステンションコード

 

追加された項目として注目されているのが、「ゲーム症/ゲーム障害」です。

これは、やめたいと思っていても、自分の意志でゲームをやめることができない状態のことで、ICD-11では、中毒性疾患に関する「嗜癖行動による障害」の中に含まれます。

 

また、分類の変更としては、これまで「精神・行動・神経発達障害」に分類されていた性同一性障害が、新たに新設された「第17章 性の健康に関する状態」に含まれることになりました。

名称も「性別不合」に変更され、精神疾患でも身体疾患でもない分類としてまとめられています。

ICD-11は日本ではいつから導入される?

ICD-11は、WHOで承認された後に、日本で翻訳などの作業をする必要があり、まだ導入されていません。ここでは日本国内で導入されるまでの流れを紹介します。

 

  • 2018年6月 WHOがICD-11を公表
  • 2019年5月 WHOが年次総会でICD-11を承認
  • 2019年〜2021年頃 日本では厚生労働省や総務省などがICD-11の国内適用の作業を実施
  • 2022年1月 WHOがICD-11を正式に発効

 

改訂から導入までに時間がかかるのは、以下のような作業を進める必要があるからです。

 

  • 翻訳(変更・追加された疾患名を日本でどう呼ぶか)
  • ICD-10/11 変換表の作成
  • 疾病分類表の作成・見直し
  • 死因分類表の作成・見直し

 

このような作業を行い、審議、周知などを経て施行されます。

 

現時点では、WHOでの発効は終わっており、アップデートも行われていますが、日本での作業進捗は、2019年5月から1〜2年以内とされていた社会保障審議会は答申まで完了していないようです。

 

厚生労働省が、ICD-11に関する情報を随時発表しているので、日本国内での導入については、厚生労働省の発表を確認すると良いでしょう。

ICD-11の日本語版はある?

ICD-11が実際にどんなものなのか見てみたいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし残念ながら、現在ICD-11を日本語で確認することはできません。

 

ICD自体は、オンライン上のサイトから検索することができ、日本語には対応していませんが、現時点では、英語、アラビア語、スペイン語、フランス語、中国語であれば確認することができます。

 

ICD-11を見てみたい方は以下のサイトよりご確認ください。

ICDコードとは?

ICDコードとは?

ICDで分類された病気は、アルファベットと数字を用いたコードでそれぞれ表されています。それを「ICDコード」と呼びます。

 

ICDコードがあることで、言語が異なっても、共通するICDコードを参照することで、各国の統計などを比較することができます。

 

医師が使用する以外に、わたしたちがICDコードを目にするのは、障害年金や障害者手帳の申請の際に提出する診断書です。

 

ICDコードの記入漏れや誤った表記があった場合、不支給になることがあります。

診断書は医師が記入するものですが、受け取ったら記入漏れがないか確認するようにしましょう。

 

以下は、ICD-10のICDコードと分類の見出しです。

 

  • A00-B99:感染症および寄生虫症
  • C00-D48:新生物
  • D50-D89:血液および造血器の疾患ならびに免疫機構の障害
  • E00-E90:内分泌、栄養および代謝疾患
  • F00-F99:精神および行動の障害
  • G00-G99:神経系の疾患
  • H00-H59:眼および付属器の疾患
  • H60-H95:耳および乳様突起の疾患
  • I00-I99:循環器系の疾患
  • J00-J99:呼吸器系の疾患
  • K00-K93:消化器系の疾患
  • L00-L99:皮膚および皮下組織の疾患
  • M00-M99:筋骨格系および結合組織の疾患
  • N00-N99:尿路性器系の疾患
  • O00-O99:妊娠、分娩および産じょく<褥>
  • P00-P96:周産期に発生した病態
  • Q00-Q99:先天奇形、変形および染色体異常
  • R00-R99:症状、徴候および異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの
  • S00-T98:損傷、中毒およびその他の外因の影響
  • V00-Y98:傷病および死亡の外因
  • Z00-Z99:健康状態に影響をおよぼす要因および保健サービスの利用
  • U00-U99:特殊目的用コード

ICDとDSMの違いは?

ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)などの発達障害について調べていると、ICDの他にDSMという名称も目にすることがあるかもしれません。

 

DSMも病気の分類をおこなうものです。

ではICDとDSMはなにが違うのか、ここでは、両者の違いについて解説します。

 

ICDはWHOが作成していますが、DSMはアメリカ精神医学会が作成する、精神疾患の診断・統計マニュアルです。現在は第5版の「DSM-5」が最新版となっています。

 

ICDとDSMの違いとしては、ICDはすべての疾病の分類をしていますが、DSMは精神疾患のみを分類しているという点です。

 

ICDの精神疾患の内容は、近年DSMと連動して作成されていますが、最終一致に至っていない部分もあります。

 

日本では、医学的な場面ではどちらも使用されていますが、行政の場面では、基本的にICDが使用されています。

 

ICDとDSMの違いは?

ICDはどのように使われる?

ICDはどのように使われる?

ICDがどういった場面でどのように使用されるのか、医療機関で使用される場合と行政機関で使用される場合に分けて解説します。

 

ICDは、医療機関や行政機関で、健康状態や病気、けがなどの診断や分類、統計などに使用されています。

医療機関で使用される場合

医療機関では、医師が患者の病気を診断する際に、問診や各種検査の結果とあわせて、ICDを参考にすることがあります。

 

とくに精神疾患の場合、生物学的な検査だけでは確定診断が難しいため、ICDや先程ご紹介したDSMが参考にされることがあります。

 

ただし、必ずしもすべての医師がICDの診断基準を使用しているわけではありません。

ICDではなくDSMが使用される場合もあれば、どちらも使用されない場合もあります。

 

診断は、総合的に判断されるものであり専門性が必要なので、自己診断するのは避け、必ず専門の医療機関で診断を受け、適切な治療やアドバイスを受けるようにしましょう。

行政機関で使用される場合

行政機関でICDが使用されるのは、厚生労働省の「人口動態調査」などがあります。

 

人口動態調査では、合計特殊出生率や死因別死亡数、年齢別婚姻・離婚件数などの統計がとられています。その中で、死因となった病気の統計にICDが使用されます。

 

ICDの分類に基づく統計結果は、WHOの基礎資料として利用され、国際的な研究などに役立てられています。

ICD-11のまとめ

ICD-11のまとめ

ICDとは、世界保健機関(WHO)が作成する病気の分類のことを言い、医療機関での診断時や国の統計調査で用いられています。

 

日本でもICD-10からICD-11に移行するために、厚生労働省や各学会によって疾病名や翻訳、ガイドラインなどが整えられています。

 

ICDは医師が診断基準として使用することがありますが、医師ではない方がICDを参照して病気を自己判断することはできません。

 

「子どもが発達障害かもしれない」、「他の子と比べて発達がゆっくり」という場合は、自己診断するのは避け、必ず専門の医療機関で適切な診断や治療を受けるようにしましょう。

 

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