構音障害とは?原因や相談先、支援について

「構音障害」とは、同じ発達年齢の子どもが正しく発音できる音を、習慣的に誤って発音している状態を指します。

 

同じくらいの年齢の周りの子どもと比べて、自分の子どもの発音に不明瞭さが感じられ、不安になっている方もいるかもしれません。

 

この記事では、構音障害の原因や、検査や治療について、相談先や受けられる支援などについて解説します。

構音障害とは?

構音障害とは?

「構音障害」とは言語障害の一つで、概ね一般的に獲得すると言われている年齢を過ぎても特定の音を誤って発音することが持続されている状態を指します。

 

もちろん、幼い子どもの言い間違えや発音の不明瞭さは、正常な発達の過程でも見られることです。「誤って発音している=構音障害」ではありません。しかし、発音がうまくいかない背景には、発音に関わる器官に課題が隠れている可能性もあります。

 

発音の誤りや不明瞭さの原因は一人ひとり異なるため、背景を丁寧に探る必要があります。そして、適切なアドバイスや治療、指導を受けることで改善する可能性が広がります。早期に専門機関に相談し、専門家のサポートを受けることが大切です。

構音障害の症状は?

人は、下顎(したあご)・舌・唇・軟口蓋(なんこうがい)などを動かし、声の通る道の形を変えることで話しことばを生み出します。それらの器官をうまく動かすことが出来ずうまく発音できないのが、構音障害の症状です。

 

例えば、発声、発音、リズムや速さ、アクセントやイントネーションがうまくいかなかったり、音が不明瞭で聞きづらかったり、いわゆる「赤ちゃん言葉」(「せんせい→てんてい」など)のように、ある音がほかの音におきかわってしまうことなどがあります。

 

また、成長するとともに、発音がうまくいかないことで周囲とのコミュニケーションに支障が出たり、本人が自信を無くしてしまうことがあります。

構音障害の原因と種類

構音障害の原因と種類

構音障害の原因はさまざまです。原因別に大きく4つに分類されます。

器質性構音障害

生まれつき、あるいは事故や病気など後天的な理由により、唇・舌・口蓋(こうがい)・顔面などの発声発語器官が欠損していたり、形に特徴があり、うまく発音ができない場合をいいます。(※口蓋とは口腔内の上の部分を指します)

 

口蓋裂・口唇裂・口唇口蓋裂

先天的に口唇(くちびる)、口蓋(くちの中の天井)、上顎(はぐき)に裂があることをいい、日本では500人に1人程度の頻度で生まれるとされています。

 

乳幼児から就学時までの期間中に何度か手術を施し、同時にことばの指導をおこなうことで、現在では80%以上が正常な構音を獲得できると言われています。

 

その他の器質性構音障害

器質性構音障害には、鼻咽腔閉鎖不全症(びいんくうへいさふぜん)や口腔腫瘍などによる発語器官の切除後に生じるものなどもあります。

「鼻咽腔閉鎖不全症」とは口腔と鼻腔の間にある筋肉が完全に閉鎖しなくなった状態で、開鼻声を引き起こすもの、「口腔腫瘍」とは口の中や顎の骨、唾液腺などにできる腫瘍のうち、悪性のものをいいます。

運動性構音障害

疾患によって神経や筋に病変が生じ、話すことに必要な運動機能が制限がでることをいいます。具体的には、脳卒中や頭部外傷、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ジストニアなどが該当します。

発音のほか、声やリズム・速さ・アクセント・イントネーションがうまくいかないこともあります。

聴覚性構音障害

聴覚障害(音が聞こえにくい、言葉が聞き取りにくい、あるいはまったく聞こえないといった症状)により、手本となる正しい発音や自分の発音を聞き取れず、正しい発音を学習できないために発音に障害が生じる状態をいいます。

機能性構音障害

原因が明らかではない構音障害です。

 

いわゆる赤ちゃん言葉(例:せんせい→てんてい)のように、ほかの音に置き換わる場合や、正常とは異なる発音の癖を身につけてしまい独特な音の“ひずみ”を現れる場合があります。

 

主に幼児期にみられ、早期に指導・訓練を受けることで改善する可能性が広がります。

構音障害の検査と治療について

構音障害の検査と治療について

構音障害の原因はさまざまであり、医師や言語聴覚士などが検査をおこない一人ひとりの背景を探ることで、それに応じた治療法がみつかることもあります。

 

受診できる病院の科は以下の通りです。

  • 小児科
  • 耳鼻咽喉科
  • 脳神経外科
  • 神経内科
  • リハビリテーション科
  • 形成外科

ほかにも、言語外来や構音障害外来がある病院もあります。

構音障害の検査の内容

構音障害の検査では主に、以下のようなことをおこないます。そのうえで、構音障害といえるのかどうか、構音障害である場合、何が原因にあるのか、どのような治療方法がいいかを判断します。

 

生育歴などの聞き取り

これまでの身体やことば・発音の発達、コミュニケーションの様子や、構音障害の原因となる疾患があるかどうかなどを聞き取ります。

 

構音検査

会話の観察、1音ずつの発音などを通して、正確に発音できていないと思われる音そのものについて検査します。構音障害の種類と程度および治療法を判断します。

 

その他の検査

聴力検査のほか、構音に関わる器官(鼻・唇・舌・歯・顎・喉など)の形や動きを見る検査をおこないます。また、発達検査や知能検査の言語性課題をおこなうこともあります。

構音障害の治療とは

構音障害の治療には、大きくわけて、「外科的治療」「発音補助装置の装着」「構音訓練」の3つがあります。

 

構音障害の原因によって、治療方法は異なります。器質的な原因の場合は、まずその治療をおこないますが、ほかにも言語聴覚士のアドバイスのもと言語療法をおこなうことがあります。

 

外科的治療

発音に関与する器官(下顎・舌・唇・軟口蓋など)の形を整え、発音しやすい状態にするために医師や歯科医師が手術をおこないます。

 

発音補助装置の適用

舌と上顎を接触しやすくする装置、位置がずれた下顎を元の位置に誘導する装置など、患者の状態に合わせて発音を補助する装置を装着します。装置は歯科医師が作製しますが、歯科医師と言語聴覚士が協同して、発音がより改善するよう形態を調整する場合もあります。

 

構音訓練

構音訓練は言語聴覚士が担当します。舌など発音に関与する器官の運動能力を高め、正しい発音が行えるよう練習します。

構音障害に関する相談先や支援について

構音障害に関する相談先や支援について

構音障害は、成長とともに自然に治る場合もありますが、気になる場合は園や学校の先生、子育て支援センターや児童発達支援センターなどの専門機関に相談してみましょう。

 

専門機関では、言語聴覚士(ST)などの専門家に相談できる場合があります。言語聴覚士は、一人ひとりに合わせたやり方で、ことばや構音の育ちをサポートしてくれます。家庭での接し方や、本人の気持ちを尊重しながら楽しくできる練習方法へのアドバイスも期待できます。

言語聴覚士のいる相談先

言語聴覚士に相談したいときは、以下の施設を探してみてください。ただし、必ず言語聴覚士が相談に乗ることができるとは限らないので、気になる場合は、直接施設に問い合わせてみてください。

 

教育・療育施設

「ことばの教室」などと呼ばれる小学校の通級指導教室や特別支援学級、特別支援学校、児童発達支援などの療育機関などで支援を受けられる場合もあります。

 

園や学校に相談するか、自治体に問い合わせましょう。健診や就学前健診で個別に相談できる場合もあるようです。

医療機関

主治医の指示により言語聴覚士のアドバイスや指導を受ける際、健康保険が適用される場合があります。医療機関に問い合わせてみましょう。

 

福祉施設

子どもの発達に関して支援を受けられる「児童発達支援」「放課後等デイサービス」などがあります。利用するには、各施設や自治体の定める手続きをとります。

民間の教室など

ことばに関する指導をおこなう民間の教室もあります。利用する場合は、施設に直接申し込みをおこないます。

 

言語聴覚士協会のホームページから言語聴覚士のいる施設を検索することもできるので、参考にしてみてください。

子育て全般に関する相談先

以下の施設では、発声の発達に関することや子育て全般についての相談をすることができます。

 

市町村保健センター

保健センターは、地域住民に対し、総合的な保健サービスを提供する施設です。乳幼児健診で保健センターを利用する方が多いようですが、そのほかにも子育てに役立つさまざまなサービスを受けられます。

 

児童相談所

児童相談所は、子育ての悩みや障害児福祉といった、子どもに関わるあらゆる相談に応じる機関です。

 

子育て支援センター

子育て支援センターは、主に乳幼児の子どもと子どもを持つ保護者が交流を深める場です。気軽に遊びに行くことができ、子育てについての不安や悩みも相談することができます。

 

各自治体のWebサイトには、子育て相談窓口がまとめられていることがあるので、お住まいの自治体のWebサイトを確認してみるといいでしょう。

子どもの発達に関する相談先

以下の施設では、発声の発達に関することや子どもの発達について気になる場合に相談をすることができます。

 

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターとは発達障害のある子ども、大人、またその関係者をサポートするための専門機関です。

 

保健・医療・教育・福祉などの機関と連携を取りながら、発達障害のある方やご家族からの相談に応じています。

 

児童発達支援・放課後等デイサービス

全国各地にある施設に直接通うことで、発達障害のある子どもが必要なサポートを受けることができます。

 

原則として、小学生未満の未就学の子どもが通うことができるのが児童発達支援、小学生~高校生の就学児童が通うことができるのが放課後等デイサービスです。

 

また、民間の幼児教室や学習教室で、発達障害やその傾向のある子ども向けの療育をおこなう場所もあります。

発達が気になる場合のサポートについて

LITALICOジュニアでは、発達の気になる子どもへの指導をおこなう児童発達支援・放課後等デイサービス、幼児教室を運営しています。

 

どのような指導を受けることができるか知りたいという方は、無料で資料請求ができますのでお気軽にお問い合わせください。

構音障害についてまとめ

構音障害についてまとめ

発音の誤りや不明瞭さの原因は一人ひとり異なるため、背景を丁寧に探る必要があります。

 

適切なアドバイスや治療、指導を受けることで改善する可能性が広がります。ひとりで抱え込まず、気になる場合には専門機関に問い合わせ、言語聴覚士などの専門家に相談してみてください。