癇癪とは、激しい感情の爆発のことを指し、大きな声を出したり、泣いたり、手足を動かしたり、床に転がったり、物を投げたりと、癇癪の表し方は子どもによってそれぞれです。
癇癪は発達の過程においてどんな子どもにも起こりうるものですが、対応や対処に悩む保護者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、小学生の癇癪における対応や原因、発達障害との関連性などについて解説します。
小学生の癇癪とは?
癇癪とは、激しい感情の爆発のことを指し、大きな声を出したり、泣いたり、手足を動かしたり、床に転がったり、物を投げたりと、癇癪の表し方は子どもによってそれぞれです。
癇癪は発達の過程において誰にでも起こりうるものなので、子どもの発達のスピードによって治まる時期は異なります。
小学生の癇癪の原因
小学生の癇癪の原因のひとつに、感情のコントロールの困難や自分の意思を適切に言葉にすることが困難であることが挙げられます。
大人であれば、疲れていたら休息を確保したり、お腹が空いていたら料理をしたりデリバリーを注文したりと、解決に向けた行動をとることや、それを言葉にして他者に伝えることが可能です。しかし、子どもの場合は、感情のコントロールが困難であり、このような解決やコミュニケーションも困難なため、癇癪という形で表れることがあります。
また、癇癪の背景には、保護者にかまってほしいという「注目」、自分がやりたいことを周りに求める「要求」、ある状況やものなどを避けたい「拒否」などの気持ちがある場合もあります。
癇癪は子どもの性格や環境、言葉の発達のスピードなど、さまざまな要因が関係して起こります。そのため、癇癪を起こす背景もそれぞれ異なるので、子ども一人ひとりに合った対応をしていくことが大切です。
発達障害の特性が影響することがある
小学生に上がっても癇癪があるから発達障害がある、というわけではありませんが、発達障害の特性が癇癪の原因の一つになることもあります。
発達障害の特性には「行動や興味の偏り」「社会性や対人関係の困難さ」「衝動性」「言葉の発達の遅れ」などがあります。これらの特性により、感情を表現したり要求をする際に癇癪として表に出てしまう場合もあります。
小学生の癇癪への対応と対策
小学生の癇癪が起きたときの対応方法と対策について紹介します。
癇癪を防ぐ対応
どんなときに癇癪が起こりやすいかを知る
子どもがどんなときに癇癪が起こりやすいかを知ることで、不必要に癇癪を起こさないで済むことがあります。
たとえば、聴覚過敏があり、スーパーの騒音や赤ちゃんの泣き声が苦手で癇癪になってしまうという場合には、耳栓やイヤーマフを用意したり、不快な刺激から離れることができる場所を作っておくことで癇癪を防ぐことができることもあります。
見通しを立てる
子どもは自分が楽しんでいる遊びをいきなり中断させられたり、したくないことを強要されたと感じると感情が高ぶることがあります。そのため事前に遊ぶ時間を決めるなど見通しを立てることで、心に余裕ができて癇癪を起こしにくくすることにつながります。
見通しは、子どもが把握できる仕方で見通しを伝えることが大事です。
例えば、「3時になったらゲームはおしまいね」と言葉で伝えることで見通しが立つ子どももいれば、時計を見せて「短い針が3になったらおしまい」と視覚的にわかりやすく伝えたほうが理解しやすい子どももいます。
ほかにもスマートフォンのタイマー機能を使って伝えるなど、子どもに合った方法で見通しを立てていき、「うまく切り替えられた」といった経験を繰り返すことで、安定してできるようになっていきます。
気持ちの切り替え方法を決めておく
怒りの真っただ中にいるときには、冷静さを取り戻すのは難しいものです。
穏やかな状態のときに「イライラしたときにはどうするのがいいかな?」と子どもと話し合っておくと備えることができます。
例えば「深呼吸をする」「水を飲む」「一人になれる場所に移動する」などがあります。
癇癪を起こさずに、気持ちを切り替えることができた時はその場で褒めるようにしましょう。そうすることによって、「癇癪を起こさなくていいことがあった」と子どもが認識できるようになります。
癇癪が起こったときの対応
安全を確保する
子どもが癇癪を起こしたときは、周りにほかの子どもがいたり割れやすい物などがあったりするときは、まずはそれらを避け安全を確保するようにしましょう。
癇癪を起こして暴れてしまった場合、ほかの子どもを傷つけたり、物にぶつかったりしてしまう可能性があるため、ケガをしないよう安全を確保し対策することが大切です。
落ち着くのを待つ
安全の確保が確認できたら、子どもが落ち着くのを待つようにしてください。
癇癪を起こしている最中に、執拗に声をかけたり行動を抑えたりしてしまうと、反動でより興奮してしまう可能性があります。干渉せず、落ち着くのを待つようにしましょう。
一人になれる場所に連れて行く
癇癪がなかなか落ち着かないときは、一人になれる場所に連れて行きましょう。
とくに外出先の場合は、人混みで騒がしかったり物音が大きかったりと、落ち着きたくても落ち着けない環境の可能性があります。なるべく一人になれるような場所を探し、クールダウンするのを待つようにしましょう。
癇癪後気持ちが落ち着いたときにする対応
落ち着けたことを褒める
落ち着くことができたら、子どものことを褒めるようにしましょう。
褒めるときは「物を投げなかったね」「一人で落ち着けたね」「大きな声を出さなかったね」などと、どのような点がよかったのかを具体的に伝えるようにしてください。そうすることで、子どもは安心感を抱き「癇癪よりもいい方法がある」と学ぶことができます。
褒めるときは時間を空けるのではなく、癇癪が落ち着いたタイミングで、その場で伝えるようにしましょう。
イライラしてしまった要因を一緒に振り返る
癇癪を起こしてしまった要因について、一緒に振り返るようにしましょう。
何に対して不満を抱いたのか、どのような環境だと不満を抱きやすいかなど、要因を振り返り認識することで、保護者は環境の調整をしやすくなったり、子ども本人も対処を実践しやすくなります。
癇癪が起こっていない(落ち着いている)ときにできる対策
イライラしてしまったらどうするかを一緒に考える
何かにイライラしてしまったときにどんな行動をとるか、いくつかの手立てを考えておきましょう。
例えば「深呼吸する」「水を飲む」「人がいない部屋に行く」など、子どもの性格や特性に寄り添った内容にするようにしてください。
どんな場面でイライラするのか把握する
どんな場面で不満を抱きやすいのか把握しておくようにしましょう。
例えば「感情の温度計」を活用する方法があります。
温度を5〜6段階などに設定し、どんなときに自分の気持ちが高まるのか、今の気持ちはどれくらいの温度なのかを繰り返し確認することで、自分の気持ちや感情を客観的に捉えやすくなります。
学校とも共有する
子どもの様子や傾向について、担任の先生や学年主任、スクールカウンセラーなどにも情報共有するようにしましょう。事前に共有しておくことで、学校で癇癪を起こしてしまった場合にも、子どもに必要な対応をしてもらうことができます。
また、学校での様子を先生からも共有してもらうことで、子どもの新たな一面を知ることができたり、手立ての参考になったりするでしょう。
小学生の発達について気になる場合は?
子どもの癇癪や発達に関する相談先について紹介します。
子育てについての相談先
子ども家庭支援センター
子ども家庭支援センターは、児童福祉法に基づいて設けられた相談機関です。子育てや家庭に関するあらゆる相談を受け付けており、ショートステイやボランティア育成などもおこなっているほか、地域の子育てに関する情報を共有してもらうことも可能です。
児童相談所
児童相談所では、18歳未満の子どもを対象に家庭や学校でのこと、心やからだのことなどあらゆる相談を受け付けています。児童相談所には、児童福祉司や医師、児童心理司、保健師などの専門スタッフが在籍しています。
発達が気になる場合の相談先
かかりつけの小児科
発達障害の診断は医師のみがおこなえるため、子どもの発達が気になる場合は、かかりつけの小児科に相談してみるといいでしょう。発達に関する内容以外にも、子どもの心身にまつわる相談も可能です。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターでは、発達障害のある人やその家族に対して、安心した暮らしができるよう総合的な支援をおこなっています。社会福祉士や臨床心理士など、専門知識のある相談員が在籍しています。
児童発達支援センター
児童発達支援センターとは、児童福祉法に基づいて設けられた、障害のある子どもに日常生活での動作やコミュニケーションなどの支援をおこなう機関です。「児童発達支援事業所」と「放課後等デイサービス」のサービスを提供しています。
LITALICOジュニアでは、「児童発達支援事業所」「放課後等デイサービス」のほか、幼児教室や学習塾も運営しています。
気持ちのコントロールなど癇癪への対応や対策を一緒に考える指導もおこなっています。
保護者の方へのサポート環境も充実しているので、子どもの発達や成長が気になる方は、ぜひ一度気軽にお問い合わせください。
小学生の癇癪についてまとめ
癇癪は、発達の過程においてどんな子どもにも起こりうるものです。子ども一人ひとりの発達のスピードは異なるため、癇癪が治まるタイミングも人それぞれ異なります。
癇癪を落ち着かせるためには、子ども一人ひとりに合った対応をおこない、癇癪の要因や背景を把握することが大切です。
子どもの発達が気になる場合は、一人で抱えこまず、かかりつけ医や専門機関に相談するようにしましょう。
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監修者
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員
井上 雅彦
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。