障害のある子どもへの支援として、「児童発達支援」と「放課後等デイサービス」があります。一見すると役割が似ていて、「どんな違いがあるのだろう」「うちの子はどっちが対象?」と思われている方も多くいるでしょう。
児童発達支援と放課後等デイサービスは共通点もありますが、対象年齢など一部に違いもあります。
この記事では児童発達支援と放課後等デイサービスそれぞれの説明、両者の違い、指導事例を紹介します。
児童発達支援と放課後等デイサービスとは?
障害のある子どもの支援の中に、「児童発達支援」と「放課後等デイサービス」というサービスがあります。
児童発達支援と放課後等デイサービスは支援内容に共通点が多かったり、施設によっては両方提供している場合もあったりと、なかなか違いがわからないという方もいると思います。
大まかな共通点としては、どちらも「児童福祉法」に定められた障害のある子どもを対象とした福祉サービスであることが挙げられます。
以前は「児童デイ」という名称だったサービスが、2012年の児童福祉法改正によって児童発達支援と放課後等デイサービスに分かれて成立しました。
障害のある子どもが対象ですが、基本的には診断や障害者手帳の取得は必須ではなく、自治体から発行される「通所受給者証」があれば利用できる点も共通しています。
ではどこが違うのかというと、大きなところでは「対象年齢」が挙げられ、児童発達支援は「未就学児」が対象で、放課後等デイサービスは「就学児」が対象となっています。
そのほかにも細かい違いがありますので、それぞれのサービスの概要を紹介したあとに詳しく見ていきましょう。
児童発達支援とは?
児童発達支援とは障害やその可能性のある未就学児が利用できる、児童福祉法に基づく福祉サービスの一つです。
児童発達支援センターや児童発達支援の事業所で、子ども一人ひとりに合わせた個別支援計画を作成し、日常生活や集団生活に必要なスキル取得に向けたプログラムや、地域や園、過程と連携した支援を提供しています。
詳しいことは以下の記事をご覧ください。
放課後等デイサービスとは?
放課後等デイサービスも児童福祉法に基づく福祉サービスの一つです。
障害やその可能性のある小学生から高校生までの就学児(大学生は除く)が対象で、主に放課後や休日、長期休暇に利用できます。
子ども一人ひとりに合わせて計画を作成し、日常生活や学校生活で必要となるスキル取得の訓練や、地域や学校、家庭と連携した支援を提供しています。
詳しいことは以下の記事をご覧ください。
児童発達支援と放課後等デイサービスの違いとは?
児童発達支援と放課後等デイサービスでは、共通している点も多くありますが、対象年齢や役割、支援内容などに一部違いもあります。
ここではそれぞれ違いについて紹介していきます。
対象年齢の違い
児童発達支援と放課後等デイサービスの大きな違いとして、対象年齢が挙げられます。
児童発達支援では小学校に入学前の「未就学児」が対象となっていて、放課後等デイサービスでは学校に通う18歳までの「就学児(大学生は除く)」が対象です。
また、放課後等デイサービスでは、自治体によって必要が認められた場合に20歳まで利用が可能となる場合があります。
支援内容の違い
児童発達支援と放課後等デイサービスでの支援内容では、日常生活や社会生活での困りごとに対して計画を作成し、一人ひとりに合わせた支援をおこなっていくという点で共通しています。
子どもの性格や特性、周りの環境などによって困りごとの表れ方も適切なアプローチ方法も異なるため、ガイドラインには具体的な支援の中身までは定められていません。
実際の支援内容として、対人関係やコミュニケーションなどの「社会性」に関するものが児童発達支援と放課後等デイサービスに共通して多くなっています。
2つのサービスで違う点としては、児童発達支援では着替えや片付け、食事など身の回りのことへの「自立訓練」や、歩く走る複雑な動作をするなどの「身体機能の向上」が多い傾向があります。
対して放課後等デイサービスでは、学校生活における「対人関係」や「自己管理のスキル」を身につけられるよう支援計画を立て、支援することが多くなっています。
また、児童発達支援と比較すると学校の勉強などの「学習」への支援も一部見られることや、高学年になると「働くこと」に関する支援も出てくるという違いもあります。
また、学年によっても支援内容は違ってきて、中学生になったら「定期テストのために、見通しを立てて勉強をする練習をする」など、その時の困っている状況に合わせた支援を提供しています。
利用料金の違い
利用料金は9割が国や自治体によって賄われて、実際に家庭では「利用者負担」として1割支払うことになっています。また、以下の表のように、所得によって支払う金額(利用者負担額)の上限も定められています。
※2023年5月8日現在
児童発達支援と放課後等デイサービスで、この自己負担の考え方に違いはありません。
しかし、現在では3歳から5歳まで(満3歳になって初めての4月1日から3年間)の子どもの利用者負担が無償化されていることやサービスごとに助成などがあり、一部に違いがあります。
児童発達支援と放課後等デイサービス指導事例
ここでは、児童発達支援と放課後等デイサービスの実際の児童事例を紹介します。
児童発達支援の指導事例
まず児童発達支援に通う子どもの指導事例から紹介します。
【困りごと】
3歳になっても言葉数が少なく、保護者ともあまり話そうとしない。
【指導事例】
子どもの興味をひきやすいおもちゃを使って、発語の練習をしていきました。
子どもが好きなおもちゃを前に置き、子どもが手を伸ばしたら最初はそのまま渡します。
そのうちに、渡す前に指導員が「あ」など声を出し、子どもが真似したら渡すように変えていきます。
こうして、「声を出したら好きなおもちゃがもらえる」ということを学んでいき、次第に自分からおもちゃが欲しいときに声を出すように促していきます。
放課後等デイサービスの指導事例
つづいて、放課後等デイサービスの指導事例を紹介します。
【困りごと】
小学4年生で感情コントロールが苦手で困っている
【指導事例】
ちょっとしたことで怒りだして物に当たったり、ときには友達をたたいてしまうこともありました。
指導としては、ゲームを通して怒りや興奮状態のときどうするかを学んでいくという方法を取りました。
勝ち負けのあるゲームをする前に、「負けそうになったら深呼吸をする」とルールを決めておき、その状況になったら実行する練習をおこないました。
また、ゲームに負けても交渉をすれば再度挑戦できることを伝えて、気持ちの切り替え方法を学んでいきました。そして、ルールを守れた時は指導員が子どもをしっかり褒めていきます。
こういった形で、勝ち負けのあるゲームを通して感情のコントロールや切り替え方法を知り、繰り返していくことで段々を身についていきました。
児童発達支援と放課後等デイサービスのまとめ
児童発達支援と放課後等デイサービスは、どちらも障害のある子どもを対象とした福祉サービスです。
日常生活や社会生活で必要となるスキル取得のための訓練をおこなうことなど、共通している点も多くあります。
大きな違いとしては、児童発達支援では「未就学児」が対象となり、放課後等デイサービスでは「就学児」が対象となる点が挙げられます。
子どもの支援を検討している方は、年齢に合わせて利用するサービスを選んでいくといいでしょう。