この記事では、発達障害のある中学生のお子さまをもつ保護者さまから寄せられたお悩みについて、鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授である井上雅彦先生にご回答いただきました。
発達障害のある中学生の特徴
子どもが中学校に進学してから、「勉強についていけなくなった」「忘れ物や遅刻などが多い」「友だちとうまく関係性を築けない」といった状態がみられるようになり、「発達障害なのかも?」と気になっている保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
中学生になり環境が変化することで、小学生の頃は気にならなかったことに困難を感じることもあります。このような変化にお子さま自身もつらい思いをしていることがあります。
ここでは発達障害のある中学生のよくある困りごとをご紹介します。
たとえば学習面の困りごととして以下のようなものがあります。
- 勉強についていけなくなる
- 授業に集中し続けることが困難になる
- テストのために計画をたてることが難しい
人間関係の困りごととしては以下のようなものがあります。
- 暗黙のルールが分からない、冗談が通じないなどコミュニケーションのずれを感じる
- 新しい人間関係がなかなか築けない
上記では、よくある困りごとをご紹介しましたが、特性や子どもの成長は発達障害の有無に限らず人それぞれ異なるため、困りごともひとそれぞれ異なります。
まずは、お子さまの気持ちに寄り添って、一緒に対応方法を考えていけるといいでしょう。
発達障害のある中学生のよくある困りごとの対処法は?どんな支援が受けられる?発達障害のある中学生にまつわる相談について専門家が回答!
ここからは子どもの発達に詳しい鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授である井上雅彦先生に、発達障害のある中学生にまつわる質問にお答えいただきます。
Q:通常の学級に通う中学生の息子は、テスト勉強になかなか取り組まず心配しています。やらないといけないことは理解しているようなのですが、どこから手をつけたらいいのか分からないようです……。親ができることはありますか?
A.
テスト勉強においては、まずはテスト範囲を把握して、計画をたてることが重要です。
しかし、テスト勉強になかなか取り組めないということは、スケジュールを組むことが苦手ということが考えられます。
スケジュールを組むことが苦手なお子さまの場合は、テスト範囲を復習するには、どれくらいのペースで勉強を進める必要があるかを、まずは保護者が一緒に考えてあげるといいでしょう。そのうえで無理なく取り組めるスケジュールを一緒に考えられると、どのようにテスト勉強を進めるといいのか分かってきます。
また、お子さまがひとりでできるところ、ひとりでできないところが明確になれば、ひとりでできないところは、家庭教師に勉強を教えてもらったり、インターネットを使って勉強する方法を保護者が教えたりすることもできるでしょう。
そして、学習に苦手意識がある場合には、まずは得意分野を中心に取り組み、成功体験を積んで自信をつけていくと、今後お子さまが学習への意欲をなくさず取り組んでいけるかもしれません。
Q:中学生の息子は発達障害の診断を受けています。学校に行き渋る様子もあるのですが、思春期もあり、行きたくない理由や学校での出来事を話してくれません。どのように接するのがいいでしょうか?
A.
学校に行き渋りがあると保護者として心配になるかと思いますが、無理に本人から聞き出そうとせず、本人からの聞き取りが難しい場合は、担任の先生に相談したり、友だちの保護者からクラスの様子を聞き、いじめなど深刻な問題が生じていないかを確認することが大切です。
思春期には、困っていても親に話しづらいこともでてきます。そのときは、カウンセリング機関や主治医やその病院のカウンセラー、学校のスクールカウンセラーなど、本人が相談できる機会や環境をつくってあげるといいでしょう。
Q:来年高校生になる通常の学級に通う娘がいます。発達障害の診断はなく、いわゆるグレーゾーンに該当します。忘れ物が多かったり、スケジュールを組むことが苦手です。娘の進路選択や受験に不安があるのですが、親が今から準備できることはありますか?
A.
特性があっても、発達障害の診断基準に満たないお子さまもたくさんいらっしゃいます。そのようないわゆるグレーゾーンのお子さまは、本人の努力不足や性格のせいだと周りから思われ、自己肯定感が下がり、抑うつ状態になるなどのリスクもあります。
お子さまが日常生活で困っている場面がみられるということであれば、発達障害のあるお子さまが過ごしやすくなるための工夫を試してみるといいでしょう。
忘れ物が多いということであれば、以下のような工夫をしてみるのもいいかもしれません。
- なくしやすいものに電子タグをつける
- もらった資料をいれておく書類ケースをつくっておく
- 持ち物や提出物をスマートフォンでチェックして管理する
進路選択に関しては、イメージと現実のギャップが生じやすいので、どんな場所かイメージをもちやすいように、オープンキャンパスに事前に行ってみるのもいいでしょう。
ちなみに、受験時に合理的配慮を受けるには、診断が必要になる場合や、これまでの合理的配慮の実績が求められる事が多いので、今回のケースでは受験時に合理的配慮を受けることは困難かもしれません。
もし発達障害の診断を受けられている方は、これまで学校で受けた合理的配慮の内容や、受験時に配慮してもらいたい内容をまとめておくといいでしょう。
Q:中学生の子どもが発達障害かもしれないと思っています。まずはどこに相談すればいいですか?発達障害のある中学生だとたとえばどんな支援を受けられますか?
A.
たとえば発達が気になる中学生が利用できる通所サービスとして、放課後等デイサービスがあります。
放課後等デイサービスとは就学児向けの発達が気になる子ども向けの通所支援のことです。
ソーシャルスキルトレーニングや学習、自己管理などお子さまに必要なスキルの獲得やスキル向上をサポートしてもらうことができます。
放課後等デイサービスのほかにも、発達支援をおこなう塾もあります。LITALICOジュニアには、放課後等デイサービスのほかに、パーソナルコースという9ヶ月の短期集中コースで個別指導を受けることができる塾があります。
中学生は、これからのライフステージを考える重要な時期です。お子さまに自立心が芽生えるものの、まだまだ解決したい課題があるという保護者の方も多いです。パーソナルコースではお子さまの「やりたい」という気持ちを引き出しながら、保護者の関わり方についても手厚くサポートします。人間関係の築き方や、学年相応ではない学習のフォロー、進路や将来、不登校についてなど幅広く対応しています。
LITALICOジュニアの中学生指導事例をご紹介します
LD・SLD(限局性学習症)と診断されている中学1年生の健太君(仮)は、中学校に入ってから急に数学が難しくなり、だんだんと学習意欲も下がってしまいました。
※学習障害は現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名となっていますが、最新版DSM-5-TR以前の診断名である「LD(学習障害)」といわれることが多くあるため、ここでは「LD・SLD(限局性学習症)」と表記します。
健太君はLD・SLD(限局性学習症)の中でも算数障害がみられ、検算や計算の順序、割合の単元などが苦手でした。それでも小学生の頃は教科書を見ながらなんとかついていけましたが、中学校に入った途端に数学が嫌になってしまいました。
LITALICOジュニアでは、健太君に適した計算方法がないか一緒に探すことから始めました。
そこで、野球が好きな健太君はスポーツニュースでプロ野球結果をチェックする際、「貯金、借金」という表現に馴染みがあることから、+を「貯金」、-を「借金」と表現し、貯金と借金の量を図に描きながら学習しました。
「-7+2」であれば「借金7から貯金2を返す」と表現したところ、「借金が多いからまだ借金(マイナス)が残っている。」「7-2で5個残ってるから、答えは-5だ。」と答えることができました。現在では貯金、借金の図を描きながら健太君自身で見直しまでできるようになりました。
このようにLD・SLD(限局性学習症)の子どもにとって数の概念の捉え方はさまざまです。数字や記号が実生活のイメージと結びつきやすいように、健太君の興味のある分野の言葉で表現したり、数量を具体的、定量的な図で表すことに気をつけて授業をすることで、数学への理解が深まりやすくなりました。
発達が気になる子どもが通える教室「LITALICOジュニア」
LITALICOジュニアは放課後等デイサービスや発達支援の塾を各地で運営しています。
学習やコミュニケーションスキルなど幅広くお子さま一人ひとりに合わせてサポートしています。
LITALICOジュニアのパーソナルコースでは、すぐに体験できる教室もございますので気になる方はぜひお気軽にお問い合わせください。
「思春期の子どもとの関わり方に悩んでいる」「子どもの発達がきになるけどどこに通うのがいいか分からない」といった方に無料相談もおこなっております。
まとめ
この記事では発達障害の中学生にまつわる質問に回答しました。
LITALICOジュニアでも無料相談をおこなっているので、子どもの発達など気になることがあればお気軽にお問い合わせください。