家庭や園、学校などで子どもが「授業中に立ち歩いてしまう」「話を最後まで聞けない」「すぐ別のことに気を取られる」など、落ち着きがない様子が多く困っている方もいると思います。このような落ち着きのなさの背景には環境や子どもの特性などさまざまなことが考えられ、それにより対応方法も異なってきます。
今回は要因として考えられることや対応方法、落ち着きのない子どもへの指導事例を紹介します。
子どもの落ち着きがない要因として考えられること
まずは、授業中などに子どもの落ち着きがない場合に考えられる要因を紹介します。
要因としてさまざまなことが考えられ、授業がその子にとって退屈だったり、小学校に入学したばかりで環境に慣れていなかったりといった環境的な要因やトラウマなどの過去の体験の影響によることもありますが、ここでは主に子どもの特性などが要因となっている場合について紹介します。
一つのことに集中が続かない
落ち着きがなくなる要因として、一つのことに集中が続かないことが挙げられます。授業を聞いていたり、課題に取り組んだりしていても、次々とほかのことに注意が移ってしまうことがあります。その結果、先生の話と関係のない行動をするなど、落ち着きがない様子が見られることがあります。
周囲に刺激に反応しやすい
子どもが周りの動きや音、光など周囲の刺激に反応しやすい特性があることも、落ち着かなくなる要因になり得ます。先生の話を聞く場面でも、別の音が聞こえてくるとそちらに反応し、つい動いてしまったり先生の話を聞き洩らして状況と合わない行動をするなど、落ち着かない様子が見られることがあります。
じっとしているのが苦手
落ち着かなくなる要因として、じっとしていることが苦手という特性があることも挙げられます。ずっと同じ姿勢でいると気持ちが落ち着かずに体を動かしたいという欲求が強く、授業中に立ち上がったり歩き回ったりといった様子が見られることがあります。
※上記は一例です
落ち着きがない子どもへの対応方法
子どもが落ち着きがないこと自体は自然なことです。大人であっても状況や体調などにより落ち着きがなくなる経験をしたことも多々あるでしょう。
ただ、子どもの落ち着きのなさが日常生活や園、学校での活動に影響を及ぼしている場合は対応が必要かもしれません。ここでは、子どもが落ち着いて取り組みやすくする対応方法の例をいくつか紹介します。
周囲の刺激を減らす
周りの刺激に敏感なため落ち着きがない場合には、周りの環境を整えて刺激となる物を減らす方法があります。周りの動きに気を取られてしまう場合には、
- 机の上に必要なもの以外出さないようにする
- カーテンを閉めて外の動きが見えないようにする
- 一番前の席にしてもらい目に入る情報を減らす
などの方法があります。また、音など耳から入る刺激に敏感な場合は、イヤーマフをするなどの方法があります。園や学校で使用したい場合には担任の先生などに相談してみるといいでしょう。
見通しが立つように伝える
集中が続かない場合には、これからおこなうことを見通しが立つように伝えることで落ち着いて取り組めるようにする方法があります。
見通しを伝える際には、「何を」「どのような方法で」「どのくらいの時間おこなうか」を明確にするなどポイントを抑えることが大事です。また、イラストや直接場所を示すなど視覚的に分かりやすいように伝えると理解しやすくなるといわれています。
例えば「このプリントの1ページ目に」「計算問題を上から解いていく」「30分間」など、具体的に伝えます。それと「終わった後は校庭で体を動かしていい」など終了後についても伝えておくといいでしょう。
取り組む内容を細かく分ける
集中が続かない場合には、取り組む内容を細かく分けて伝える方法もあります。例えば何かに30分続けて集中することが難しくても、内容を10分ずつに分けて取り組むことで集中しやすくなります。その際は、一つの項目が終わったら小休憩を取るなどメリハリをつけるといいでしょう。
ルールを明確にする
取り組み内容だけでなく、分からないことがあった際などのルールも明確にしておくと集中しやすくすることができます。例えば「分からないことは先生に質問する」「質問手を挙げて許可をもらってから話す」などを事前に決めておきます。そうすることで、ほかのことに気が散って授業の進行が分からなくなった際などにも、するべき行動が分かり落ち着いて取り組みやすくなります。
ルールも一つずつ具体的に決めておき、最初は「手を挙げる」ことから始めるなど段階を踏んで身につけてくといいでしょう。
事前に感覚欲求を満たしておく
体を動かしたいという欲求が強くじっとできない場合には、事前に欲求を満たしておく方法があります。学校に行く前に軽く運動をしておくことや、土日に五感や体を使ったあそびをしておくことで、動きたいという欲求が満たされ落ち着いて取り組みやすくする方法です。
また、子どもにとって適度な刺激となるグッズを用意する方法もあります。凸凹がついていて握った感覚を楽しめるグッズなどが市販されています。このようなグッズを学校に持ち込む場合は、事前に担任の先生などに相談するようにしましょう。
落ち着きがない子どもの指導事例
ここでは落ち着きのない様子が多く困りごとがあった子どもへの、LITALICOジュニアでの指導事例を紹介します。
Fさん(年中)の指導事例【先生の指示を聞き逃して状況と合わない言動をする】
指導のポイント
- 名前を呼ばれたら先生の目を見る練習
- 「相手の感情を読み取る」練習をして、状況判断スキルを身につける
- 一対一で話を聞くことができるようになってから集団活動で話の聞き方を練習
年中のFさんは園で先生の指示を聞き逃して状況と合わない言動をするなど落ち着きのなさが見られ、怒られても改善することが難しく保護者がLITALICOジュニアに相談し利用することになりました。
LITALICOジュニアではまず本人の様子や保護者の話などからFさんの落ち着きのなさの要因を探り、そもそも相手が自分に話しているという状況を読み取ることが苦手と判明。そこで、状況に適した行動につなげるため「名前を呼ばれたら先生の目を見る」という練習から始めていきました。そのあとは、「名前を呼ばれた際に話を聞く姿勢」をイラストを使ったクイズ形式で出題し、実際に指導員がFさんの名前を呼ぶことで練習していきました。
そこから次は、「相手の感情を読み取る」練習をして状況判断スキルを身につけていき、一対一で話を聞くことができるようになってからはほかの子どももいる集団活動で話の聞き方の練習も行いました。
LITALICOジュニアに通い始めた当初は、何かに夢中になっていると名前を呼ばれても気づかなかい様子でした。しかし、練習を繰り返していくうちに徐々に自身が呼ばれたことに気づき、相手の目を見て話を聞くこともできるようになり、状況に合わせた言動ができるようになっていきました。
Jさん(年長)の指導事例【先生が話しているときにも立ち歩いたり部屋を出たりする】
指導のポイント
- 行動する前に「手を挙げる」「~してもいいですかと許可をもらう」という練習
- 「2つできたら1回休憩を取り好きに動いていい時間にする」「踏んで刺激を得られる物を足元に用意する」など適切に刺激を得られる環境をつくる
年長のJさんは先生が話しているときにも立ち歩いたり部屋を出たりすることが多く、静かにしている場面で友だちに急に話しかけるという場面もよくありました。ADHD(注意欠如多動症)の診断を受け、今後の学校生活を心配した保護者がLITALICOジュニアに相談し利用することに。
Jさんは思ったことを衝動的に行動に移すことが多かったため、LITALICOジュニアでは「手を挙げる」「~してもいいですかと許可をもらう」という練習をすることになりました。初めの頃はなかなか手を挙げることができず、突然話し始めた際は指導員が手を挙げるしぐさをしたり、「こういう場面ではどうするんだっけ?」とヒントを出したりしながら取り組んでいきました。
また、指導中は「2つできたら1回休憩を取り好きに動いていい時間にする」、「踏んで刺激を得れる物を足元に用意する」など、Fさんが刺激を取り入れながら取り組めるように工夫をしました。
マンツーマン指導で身についた後は集団活動でも実践していき、小学校に上がる前には手を挙げて「~してもいいですか?」と発言することができるようになり、衝動的に話し出すことは少なくなっていきました。
LITALICOジュニアの指導
指導例で紹介したように、LITALICOジュニアでは子ども一人ひとりの困りごとやその要因に合わせてオーダーメイドの指導を行っています。
通所受給者証をお持ちの方が利用できる「児童発達支援」「放課後等デイサービス」と、通所受給者証をお持ちでなくても利用できる「幼児教室」「学習塾」があります。
子どもが「落ち着きがなくて困っている」「これからの学校生活で不安がある」などで困っている方は一度お問い合わせください。
まとめ
子どもが園や学校で落ち着きがなくなる要因には環境面や子どもの特性など、さまざまなことが考えられます。子どもの特性としては、一つのことに集中が難しい、気が散りやすい、じっとしているのが苦手などが要因となり得ます。
子どもに落ち着きがないこと自体は自然なことですが、それが生活に影響を及ぼしている場合には対策が必要となるかもしれません。対策としては、周りの刺激を少なくすることや見通しが立つように取り組み内容を伝える、取り組みを細切れにし適度に休憩を取るなどがあります。ご家庭で対応するのが難しい場合には、LITALICOジュニアに一度ご相談ください。