不登校、いじめによるトラウマ、一人で外出できないーマンツーマン指導でたくさんの「できない」が「できる」に変わった
2023年07月07日公開 | LITALICOジュニア編集部
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日常生活の中で不安感が大きくなると動けなくなってしまったり、人とのコミュニケーションで上手くいかないことが多かったというRくんが、LITALICOジュニアに通われてからの4年間でどのように変化したのかをお母さまに伺いました。
目次
プロフィール
Rくん
年齢:14歳
ジュニア歴:4年
困りごと
- 読み書きが難しい
- 相手の表情や状況を読むことが苦手
- 自分が興味のあることだけを一方的に話してしまう
- 文法が上手く使えず、話が相手に伝わりづらい
- 気持ちの切り替えが苦手
- 不安感が強く、動けなくなってしまうことがある
- 1人での外出や買い物が難しい
通ってからの変化
- 漢字を含めて読み書きができるようになった
- 会話のキャッチボールができるようになった
- 状況や気持ちの説明ができるようになった
- 気持ちを切り替えられる場面が増えた
- 1人で外出し、買い物ができるようになった
友達関係がきっかけで、不登校に。安心して通える場所を探していた
LITALICOジュニアを利用されるまでの経緯を教えていただけますか?
小学校3年生のとき、学校で、年下のお子さんから顔を合わせるたびに傷つく言葉を言われてしまうという出来事がありました。そのことがトラウマになって、学校へ行くことが怖くなってしまったんです。PTSD(心的外傷後ストレス障害)で、精神的に不安定な状態が続きました。
不登校になってから1年ほどたった5年生のときに、どこか息子が安心して通えるところがないか、マンツーマンでの落ち着いた環境でサポートをしてくれるところはないか、と探し始めました。電車やバスを使って長時間移動することにも負担があったので、個別指導してもらえ、かつ通いやすい場所にあったLITALICOジュニアに通うことにしました。
LITALICOジュニアのことは、以前から知っていただいていたのでしょうか?
はい。実は小学校に入学する前も、LITALICOジュニア(当時の名称は、Leaf)に通わせていました。その頃はひらがなが読めなかったので、勉強のサポートをしてもらうことが目的でしたね。LITALICOジュニアは息子のことをわかってくれる先生がいますし、安心できる環境だなと感じました。今ではよく「LITALICO発達ナビ」で、発達障害についての情報を調べています。
そうだったのですね。小学校5年生だった当時、Rくんはどのようなことに困っていたのでしょうか。
元々言葉でのコミュニケーションは得意ではなく、一方的に自分が興味のある話をしてしまうことがよくありました。相手の意見を聞いたり、表情から気持ちを推測したりすることが苦手でした。
また、すべての出来事に対してネガティブな方向で捉えてしまって、動けなくなってしまうこともありました。過去に訪問看護の方と一緒にスーパーに買い物に行ってもらったのですが、レジで焦って財布を落としてしまうという出来事がありました。それがきっかけで「自分は上手くお金を支払うことができない」と思い込んでしまい、親以外と外に出ることもできなくなってしまったんです。
「大丈夫だよ。始めから上手くいく人なんていないし、練習していけばいいんだよ」と伝えても落ち着く様子はなく、私自身、息子を励ますことに疲れてしまっていました。
実際の場面を想定したトレーニングを重ねることで、“自分でできること”が増えた
授業の中でどのようなことをされましたか。
通い始めの頃は、お金を支払う練習をしてもらいました。1円玉が10枚で10円になることを硬貨を並べて計算したり、「110円だったらレジでいくら払えばいいか?」を考えて支払ったりするような感じです。実際の場面を想定して、かばんから財布を出す練習もしてくれました。
息子は生き物が好きなのですが、授業を担当してくれた先生も生き物が好きで、興味のある話題で盛り上がれたこともよかったようです。いつものように一方的に話すだけではなく、先生の話も聞いていましたね。
LITALICOジュニアに通い始めてから、日常生活の中でどのような変化がありましたか?
レジでお金を支払うことへの自信がついたからか、今では1人でレンタルビデオ屋さんに行って買い物をすることができるようになりました。以前は付き添いが必要で、1人で行くことはできなかったんです。一度1人で買い物をしてみたら、意外と平気だったとわかったようです。
コミュニケーション面は、一方的に話してしまうことは徐々に減ってきたと思います。興味のある話題だと話が止まらなくなってしまうことは今でもありますが、事前に「今、しゃべってもいい?」と聞けたり、相手の反応を見て「うん、そうだよ」とリアクションをしたりすることもあります。
ネガティブな思考になってしまうことがあると仰っていましたが、その辺りの変化はありましたか?
ありましたね。以前は、1人で家にいることができるのは最大で3時間くらいでした。気持ちが不安定になると、何度も私に電話をかけてくることもありました。家の外から聞こえてくる人の声や物音にも反応して、不安になってしまうんです。
今は、1人での留守番もできるようになってきました。自分の好きなことをして過ごしていることが多いようです。LITALICOジュニアの授業では、パニックになったときの対処法も練習してくれていて、深呼吸をしたりお水を飲んだりと、日常生活でも少しずつ自分で落ち着けるようになってきたと思います。
言葉でのコミュニケーションが取れるようになり、親子関係にも変化が
お母さまご自身は、LITALICOジュニアを利用されてからの4年間を振り返ってみていかがですか。
ペアレントトレーニングの思春期編を受けたことは、私自身が大きく変化した要因の一つだと思います。息子が思春期に入って、どのように関わっていけばいいのか今まで以上に悩むことがありました。親の手から離れていくときでもあるけれど、急に突き放すことも難しい。ペアレントトレーニングを受けることで、「どうしたら息子が安心していろんなことに取り組めるようになるか?」という視点で関われるようになりました。
例えば、1週間のスケジュールを自分で確認することで、次の日の準備をしたり起きる時間を決めたりできるようになりました。また、自分で日常の出来事をノートに書き留めることを息子にすすめたら、それもやるようになりました。日常の中の嫌だったことや困ったことも書いておくんです。
それを後日学校の先生やLITALICOジュニアの先生に伝えて、相談することも今では自分でできるようになりました。誰かを頼ったり人に弱さを見せることは、生きていく上で大切なスキルだと思っています。
親子関係も、何か変化したことはあったのでしょうか?
以前は、息子が上手く自分の気持ちを伝えられないことで、私が誤解して怒ってしまうこともありました。今は自分の意見を言葉で伝えてくれるようになったので、親子の認識のずれが減ってきたような気がします。劇的に変わったというより、ゆるやかに変化したような感じですね。
最後まで、ともに歩んでくれる場所
ご家族にとって、LITALICOジュニアはどのような場所でしょうか。
息子にとっては、安心して自分の自信をつけられるところだと思います。先生はわかりやすく見通しを立ててくれますし、自分のことをわかってくれているという感覚があるのではないかなと思います。
親にとっては、息子との関わり方を教えてくれる場所です。発達障害があり、さらに思春期を迎える中、どう関わっていけばいいか本当にわからなかったんです。精神的に不安定な時期の息子は、笑顔もなくなっていました。そんな中、LITALICOジュニアでは一緒にどうしていくかを考えてくれる。頼もしい先生に、親子とも支えられていると感じています。
最後に、お子さまについてお悩みの保護者さまへメッセージをいただけますか。
お金の支払いや人とのコミュニケーションなど、目に見える部分でできるようになったことはたくさんありますし、それと同時に精神面もすごく成長したなと思います。最終的に何かができるようになるところまでをサポートしてくれる場所はなかなかないと思いますが、LITALICOジュニアはそれをしてくれる場所です。
スモールステップで授業を組み立て、マンツーマンで指導をしてくれたおかげで、いろんなスキルが身につきました。金銭的な理由で利用を悩む方もおられると思いますが、その分の価値は十分感じられると思います。
先生からのコメント
Rくんは、文字を書くことやお話をすることが大好きなお子さんです。通われ始めた当初は読みづらい文字だったのですが、今ではとても読みやすい文字を書けるようになりました。
授業の中では、キャラクターの名前を書くなど、Rくんが好きなことを介して書く練習をしていきました。さらに文字への関心が高まるきっかけとなったのが、難読漢字です。あるとき「難読漢字って知ってる?」と聞いてみたことがきっかけで、ご自身でYouTubeを使って難読漢字を調べるようになりました。
それと同時に、言葉での表現スキルをつけるために、目の前にあるものを説明してもらう練習をしていきました。例えば、ブロックで作った自分の作品についての説明をするといったことです。今では、自身が体験したことを起承転結の流れで話せるようになってきています。
さらに、以前は相手が反応する隙がないくらいRくんが一方的に話をすることがあったのですが、今では会話のキャッチボールができるようになりました。「これって怖いよね」と伝えたら、それに対して「かなり危険ですよね」と返してくれたり。カードを見せてくれるときは、私の方に向きを変えてくれるようにもなりました。相手に配慮しながら会話を進められるようになったのは、一番大きく変わったところですね。相手と意見が違ったりイレギュラーなことが起こったりしたときは、「ま、いっか」と気持ちを切り替えられる場面も増えてきました。
これからもゆっくりといろんなことを吸収しながら、安心して日常生活をおくってほしいなと思います。Rくんには「無理しなくていいんだよ」と伝えてあげたいですね。