幼稚園で周りの子との違いを実感ー言葉の遅れや概念の理解は「好き」をいかした授業で大きく成長
2023年07月21日公開 | LITALICOジュニア編集部
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プロフィール
Sくん
年齢:6歳
ジュニア歴:2年2ヶ月
診断名:自閉スペクトラム症・ADHD
困りごと
- 言葉の発達が遅く、3歳で2語文中心
- 「なぜ」「いつ」など、抽象的な言葉がわからない
- 衝動的に走り出す
- 友だちのおもちゃを勝手にとってしまう
通ってからの変化
- 語彙が増え、長い文で会話ができるようになった
- 5W1Hの理解が進み、自分から質問できるように
- 言葉で交渉したり、相手の提案を受け入れたりすることができるように
経験豊富なプロに相談できる場所が欲しかった
LITALICOジュニアに通うきっかけから教えてください。
LITALICOジュニアのことは、子ども発達支援センターの母子通園で知り合ったお友だちから聞いて知りました。当時、息子は幼稚園の年少さんで、多動性や衝動性が強く出ていました。言葉の遅れも気になっていて、私自身が「療育に携わるいろいろな人の意見を聞きたい」と相談できる場所を渇望していた時期でした。体験レッスンでは、先生方の声かけや子どもとの関わり方、すべてに感動し、 年少さんの冬からLITALICOジュニアに通い始めました。
発達支援センターでの療育も続けながら、LITALICOジュニアの利用もスタートなさったんですね。
通っていた発達支援センターは小集団で友だちとのやりとりを学んでいくスタイルで、授業は母子同室で行います。一方、LITALICOジュニアは、先生とのマンツーマンなのが大きな違いですね。子ども一人ひとりの苦手や困っていることに合わせた授業を組み立てていただけます。それぞれにスタイルが違うので、並行して通うことを決めました。
発達支援センターに通い始めたのはいつごろからですか?
息子は30週で生まれた早産児だったので、発達は遅れていて当たり前、という感覚で育児をしてきました。正期産で生まれていたら、もっと早くに気がついたかもしれませんね。「修正月齢で考えても言葉の発達が遅すぎるのではないか」と気になり出したのが、2歳前ごろです。2人目の出産後、新生児訪問などでお話した保健師さんに「上の子の発達が心配で」と相談して、教えてもらいました。実際に療育に通い始めたのは、2歳半ごろからです。
おうちでもポジティブな声かけができるように
LITALICOジュニアに通う前のSくんはどんな様子でしたか?
息子は自閉スペクトラム症とADHDの診断を受けているのですが、当時、最も気になっていたのは言葉の発達の遅れです。幼稚園に入園したとき、流暢におしゃべりをするお友だちのなかで2語文しか話さない息子をみて、違いを強烈に実感しました。遊び方も興味を持つものもコミュニケーションのとり方も、すべてがほかのお子さんとは違う。そんなふうに感じていました。
また、衝動性や多動性も強くて、お出かけ先ではベビーカーからおろすことができないほど。息子が1歳8ヶ月のときに妹が生まれてからはなおさら、パッと飛び出したり、走り出したりしたときにとっさに追いかけられない場面も増え、自由に歩かせてあげるのが難しくなりました。でも、本人はいろんなものに触りたくて仕方がないから、ストレスがたまりますよね。今思うと、大変でした。
LITALICOジュニアの授業で印象に残っているものはありますか?
まず、最初のペアレントトレーニングで「子どもを否定しない」声かけを教わったことは、強く心に残っています。これは、子どもとの関わりのなかの大事な基本ですよね。それまでは「走らないで!」「触っちゃダメ!」という言葉のオンパレードだったのが、「歩こうね」「見るだけにできて、すごい!」とポジティブな声かけに変換できるようになりました。もちろん完璧ではなくて、今でもつい否定的な叱り方をしてしまうこともあります。でも、そんなときもすぐに冷静さを取り戻して基本に立ち返ることができるのは、あのペアトレのおかげだと思います。
LITALICOジュニアでのSくんの様子はいかがでしたか?
毎回、とても楽しそうでした。通うのを嫌がったことは一度もないです。LITALICOは大好きな先生と楽しく遊べる場所。息子が好きな乗り物やプラレールでの遊びのなかに、学びの要素を盛り込んでくださるので、ストレスなく前向きに取り組めていましたね。
たとえば、息子には立場によって表現が変わることの理解が難しくて、「〜をする」という能動態、「〜をされる」という受動態の使いこなしがひとつの課題だったんです。それを先生は、ミニカーでの遊びのなかに「青い車がタクシーを追いかけてる!」「タクシーが青い車に追いかけられてるね」といったひとコマをさりげなく入れてくれて。
遊びのなかで目で見てわかる状況をつくりながら教えてくださったことで、どんどん理解が進んでいきました。授業をモニタリングする私にとっても、「息子が好きなことで練習すれば興味をもって聞いてくれるんだ」という学びに。お散歩中に「パトカーが追いかけてるよ!」と声をかけたりと、日常生活での実践にもつながりましたね。
特性に合わせた手法で、無理なく言葉の理解を促して
Sくんの言葉の発達を実感したエピソードがあったら、ぜひ教えてください。
抽象的な概念の理解が難しいというのは、自閉スペクトラム症の特性のひとつとして知られていますよね。息子もまさにその通りで、たとえば「なぜ?」という言葉がわからなかったんです。「なぜ」って、目の前に起きている事象ではなく、それが起きた理由を尋ねる言葉ですよね。
あるとき、公園で一緒に遊んでいた男の子に息子が砂をかけてしまったことがありました。もちろんいけないことだと教え、一緒にあやまることはできます。でも、もし彼の行動の理由がわかったら、「これがいやだったんだよね。でもいやなときには砂をかけるんじゃなくて、いやだってお話すればいいんだよ」と教えることができるはず。
それで「なにがいやだったの? なんで砂をかけちゃったの?」と聞くのですが、彼は質問の意味がわからない。「なぜ」の理解ができないと、今後、ますます困るシーンがふえてしまう、という不安が大きくなりました。
先生に相談すると、曖昧な概念を目に見える事象に変換するといい、というアドバイスをいただきました。たとえば、目の前で転んでみせて「いたた! なんでお母さん転んじゃったのかな? あ、この石につまずいたからだね」というふうに、「なぜ」が使われる具体的なシーンを何度も繰り返し見せていくんです。すると、年長さんの終わりごろには、「お母さん、これはなんで?」と自分から質問ができるまでに! 初めて質問が出たときの感動は忘れられません。
質問ができるようになると、お話の幅もより一層広がりますね。
そうなんです。「なぜ」だけでなく、「いつ・どこで・誰が・何を・どうやって」という5W1Hを使った表現もできるようになったことも大きな成長です。
大好きなプラレールを使いながら、「誰が電車乗ってる?」「誰が何に乗っている?」というように、遊びながら楽しく学べる授業を設定していただいたことで、自然と言葉の理解が進んでいったように感じます。自分の言いたいことをより正しく伝えられるようになりましたね。
親子関係での変化はありましたか?
初回のペアトレ直後から、子どもへの声かけが大きく変わりました。子どもとの関わり方を学べたことが、大きな財産だなと感じます。
ペアトレ、そして毎回の授業で先生方の対応を見ていると、ハッとさせられるような声かけがたくさんあるんです。日々の授業が私にとっての勉強だったし、毎週のインプットがあったからこそ日常でもいかしやすかったと思います。継続的に通って、子どもの成長に応じた先生方の関わり合いを間近で見ることができたのは、すばらしい刺激でした。夫もいっしょにペアトレを受け、夫婦で同じ価値観を共有して子育てができたのもよかったですね。
もしLITALICOジュニアを利用していなかったら、息子は否定されるような言葉をたくさん浴び続けていたかもしれません。親子関係はまったく違ったものになってしまっていただろうな、と思います。
SくんにとってのLITALICOジュニアはどんな場所だったと思いますか?
安心できる、居心地のいい場所だったと思います。大好きな先生がいて、大好きなおもちゃがあって、いっしょに遊ぶことができて。息子は、自分が好きなものを相手と共有するのが好きで、やさしく話を聞いてくれる先生といっしょに遊ぶのが楽しくてしかたない様子でした。
お母さまにとってLITALICOジュニアはどんな場所ですか?
私にとっては、ほっとできて、話を聞いてもらえて、悩みを共有できて、共感してもらえて、子どもの成長を一緒に喜んでもらえて……。ひとことではとても言い表せない、あったかい場所です。
親子ともにLITALICOジュニアという場所があったことが、精神的な安定につながっていたと感じます。特性のある息子に寄り添ってくださる先生に、息子も心を許して楽しい時間を過ごしました。同時に、それは私の心も救ってくれたと、2年あまりの通塾を振り返って改めて思います。
小学校に入学したSくん、環境の変化も大きいと思いますが、最近のご様子はいかがですか?
癇癪やこだわりは相変わらずありますし、試練です(笑)。でも、がんばっています!
先生からのコメント
通所当時のSくんは、ほしいものがあったときに「かして」とは言うものの、相手の様子を確認せずに物をとってしまう様子がありました。「いま、これをやりたい!」「これは絶対にやりたくない」というこだわりも強く、それが叶えられない場合に、大人が説明してもイメージがわかず、「何をいってるんだろう?」葛藤している場面も見受けられました。
そこで、まずは「〜したい」と指導員の真似をして、相手を見て適切に要求を伝える練習をしました。
また、動詞の語彙を増やして「今何している?」と聞かれたときに、「歩いている」「持っている」「寝ている」など言葉で状況を伝える練習もあわせておこないました。
年中さんの秋ごろになると、言葉で要求を伝えたり説明することがぐんと上手に!就学に向けて相手の気持ちも考えながら、要求を伝えたり交渉したりといったことができるよう練習を重ねました。
たとえば「貸して」と言われたとき、「あとちょっと待ってね」など、今では相手の要求も受け止めた上で交渉できるようになりました。
100%自分の思った通りにならなくても、指導員の提案を聞いて50%のところで折り合いをつける、ということができるようになったのも、大きな成長です。
実は、「こだわりを妥協する」ことは、特別目標にしていたわけではありません。でも、授業のなかで「順番にやろう」「交換しよう」という提案を受け止めたり、「ちょっと待って」という練習をするうちに、どんどんSくんの相手を受け止めるキャパシティが広がっていったと感じています。
小学校では、初めてのことがたくさん待っていますね。環境の変化はずっとついて回るものだと思います。Sくんのペースで受け止め、学校生活をポジティブに楽しめるといいなと思っています。
お母さま、お父さまは、LITALICOジュニア通所時から、Sくんに合わせたサポート法を常に考えてこられました。それは小学校でも生かせるものが多いと思います。むずかしさを感じたときには、ぜひ気軽にLITALICOジュニアに相談しにきてくださいね。