学校に行けなくなったことをきっかけに、心を閉ざすようになった息子―自分の感情と向き合うスキルを身につけ、楽しい気持ちで過ごせる時間が増えた!
2024年08月20日公開 | LITALICOジュニア編集部
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そんなTくんは、中学2年生の夏休みからLITALICOジュニアの利用を開始。先生との信頼関係を築いていく中で、少しずつ自分の感情と上手に向き合い、気持ちを言葉で表現できるようになっていきました。約2年が経過した今では、家族と楽しく会話できる時間が増え、前向きな気持ちで過ごせるように。現在は通信制高校に通いながら、自分のペースで学習を進めているそうです。
今回は、Tくんのお母さまに、教室に通い始めたきっかけやTくんとご家族に起きた変化について伺いました。
目次
プロフィール
Tさん
年齢:高校1年生
ジュニア歴:2年
困りごと
- 中学2年生頃から学校に行きたくないという気持ちが強くなった
- ネガティブな発言が増え、希死念慮もみられた
- 自分の気持ちをうまく言語化できなかった
- 家族と楽しく会話することが難しかった
通ってからの変化
- 自分の気持ちを言語化する力が身についた
- ネガティブな言葉を発することが少なくなった
- 自分に合った気分転換の方法が見つかった
- 家族とのコミュニケーションが少しずつ増えてきた
中学に行けなくなり、気持ちが不安定になっていた息子
LITALICOジュニアに通うようになったきっかけについて教えてください。
中学に入学後、しばらくは問題なく学校に通えていた息子ですが、次第に「学校に行きたくない」と口にするようになりました。中学2年生になると、部屋で布団をかぶって「学校には行かない」と「自分なんていないほうがいい」などと訴えることが増えて…。
そんな息子に対して、私は毎日学校に行くように声をかけ続けることしかできませんでした。毎日声をかけていれば、いつか学校に行けるようになると信じていたんです。しかし、息子は学校に行けるようになるどころか、食欲もだんだんと落ちていきました。息子のために何をしてあげたらよいのか悩み、インターネットで不登校について調べていたところ、たまたま検索結果に表示されたのがLITALICOジュニアでした。
当時、Tくんは学校に行きたくない理由について何かお話をされていましたか?
当時、息子は学校に行きたくない理由を私たちに話すことはありませんでした。もともと、自分の気持ちを言葉で表現するのが苦手だったこともあり、ひたすら「行きたくない」「嫌だ」としか言わなかったんです。
息子が学校に行きたがらないことに関しては、スクールカウンセラーの先生にも相談しました。ただ、息子自身がそのスクールカウンセラーの先生に心を開かなかったため、これだと思える解決策がなかなか見つからず…という状況が続いていました。
質問の仕方を変えることで、息子の本音が見えてきた
LITALICOジュニアの体験授業を受けていただいた際、Tくんの反応はいかがでしたか?
授業が終わった後に「どうだった?嫌だった?」と息子に聞いたところ「別に」という答えが返ってきました。もし嫌だと感じていたら、はっきりと拒否反応を示すはずなので、この言葉を聞いた時には「きっと通える」と思いました。「お母さんも一緒に行くからね」と声をかけながら、教室に通い始めたのを今でも覚えています。
LITALICOジュニアの授業ではどんなことに取り組みましたか?
まずは、先生と一緒にあそびながら、感情のコントロール方法を学びました。たとえば、一緒にボードゲームやカードゲームをする時、先生は手加減なしでプレイし、勝つと少し大げさに喜ぶリアクションを見せます。これにより、相手が勝って喜ぶ様子を目にすることに慣れ、気に入らないことがあっても悔しさを自分の中でコントロールできる状態を目指しました。教室では、あそびやゲームを通じて、対人関係に必要となるさまざまなスキルを身につけていきました。
また、授業では、1週間の生活を振り返る時間も設けていただきました。先生が「今週はどれくらいごはんを食べられた?」「どれくらい寝られた?」「楽しかったことはあった?」といった質問をしてくださり、息子は1点から7点までの点数で自分の調子を答えます。低い点数の項目があると、先生は「どうしてごはんがあまり食べられなかったんだろう?」「どうすれば楽しくなるかな?」と声をかけながら、息子と一緒に原因や解決策を考えてくださいました。日々の生活や心の状態を点数で表す取り組みのおかげで、私も息子の状態をより把握しやすくなりましたし、何をするべきなのか、具体的なアクションを考えやすくなったと感じています。
先生とのお話の中で、お母さまが「参考になった」と思ったアドバイスはありますか?
先生からは、息子とのコミュニケーションについてさまざまなアドバイスをいただきました。特に役立ったのは、2択の質問によって息子の考えや気持ちを引き出す方法です。
たとえば「何で学校に行きたくないの?」という聞き方だと、自分の気持ちを説明するのが苦手な息子は黙りこんでしまいます。ですが、たとえば「何で行きたくないの?先生が嫌なの?お友だちが嫌なの?」と聞くと「友だちが嫌なわけないじゃんか」と咄嗟に答えるんです。この答えを聞いて「先生とうまくいっていないのかな」と想像することができました。この2択の質問を使った会話は、息子にとても合っていたと感じています。
息子と話を続けるうちに、息子は高圧的に感じられる担任の先生の指示の仕方に萎縮していたこと、大人数が集まる環境が苦手であることが分かりました。また、しばらく学校を休んでいるうちに授業を理解できなくなり、余計につらい気持ちになっていたことも分かったんです。LITALICOジュニアの先生からいただいたアドバイスのおかげで、息子が学校に行きたくない理由や、これまでなかなか話してもらえなかった本音が少しずつ見えてきました。
感情のコントロールが上手になり、家族の会話も増えた!
LITALICOジュニアに通い始めてから、Tくんの成長を実感できることはありますか?
怒って大きな声を出すことや「消えたい」といった言葉を発することがなくなったことは、一番大きな変化です。以前は、息子のネガティブな発言によって家全体にどんよりとした空気が流れていたのですが、今ではそんなことはありません。
また、ゲームで負けるなど、何か気に入らないことが起きた時には大声を出したり暴れたりしていた息子ですが、今は「外に散歩に行ってくる」と言って出かけるなど、自分で気分転換をできるようになったんです。
感情をコントロールする力がついたのですね!
そうなんです。これまでは、私がなだめれば反発し、そっとしておくと「何で無視するんだよ」と怒る息子の対応に難しさを感じていたので、私も気持ちが楽になりました。
最近では、家族みんなで一緒に食事をしながら会話をしたり、ボードゲームやカードゲームで遊んだりするなど、息子と一緒に楽しく過ごせる時間も少しずつ増えています。
この間は、息子が外出する時に「買いたいものを買ってきていいよ」とお小遣いを渡したら、コンビニで妹のためにお菓子を買ってきてくれたこともあり、とても驚きました。ぶっきらぼうに「これ、妹の」と言って机に投げていましたが、きっと照れ隠しだと思います。
子どもの気持ちを受け止めることの重要性を学んだ
LITALICOジュニアに通い始めてから、お母さまご自身に起きた変化はありますか?
息子との関わり方が大きく変わったと思います。以前は、息子のできない部分を目にしては、自分の経験を基準にして「こうしなきゃダメ」と強く言ってしまうこともありました。
しかし、LITALICOジュニアの先生から、子どもの気持ちを受け止めることの大切さを学んでからは、まず息子の気持ちを受け止めることを意識するようになりました。息子にアドバイスをする場合も「それはそうだね」と共感してから「こうするといいんじゃない?」とアドバイスする。このような声かけを続けていくうちに、息子も少しずつ私に対して心を開いて話をしてくれるようになったと感じています。
素晴らしいです!きっとお母さまとのコミュニケーションによってTくんの気持ちも前向きに変化しているのでしょうね。
ありがとうございます。私だけではなく、家族みんなが変わらないと意味がないと感じたので、家族にもLITALICOジュニアで学んだコミュニケーション方法を積極的に共有するようにしました。夫は最初のほうこそ戸惑っていたものの、すぐに理解を示してくれるようになりました。
しかし、一番苦労したのは、同居しているおじいちゃん、おばあちゃんの理解を得ることでした。特におじいちゃんは息子に対して悪気なく「お前は何で学校に行かないんだ」と言うことがあるので悩みました。世代による価値観の違いはあって当たり前なのですが、息子はやはりつらそうにしていたのでなんとかしたくて…。「責めるような声のかけ方はやめてほしい」とお願いし続けた結果、今はそういった発言を控えてくれるようになりました。
このような家庭内の課題について頭を悩ませた時にも、LITALICOジュニアの先生はじっくりと私の相談に乗ってくださいました。家族全体のコミュニケーションが改善したのは先生のおかげだと思っています。
LITALICOジュニアで過ごす時間が、日々の原動力に
Tくんは現在高校生になったとのことですが、進路はどのように決定したのでしょうか?
息子が自分のペースで授業を受けられそうな通信制を探し、いくつかの高校を2人で見学しました。息子自身が「ここがいい」と思える高校に進学してほしいという思いもあり、最終的には見学した高校の中から通いたい高校を本人に選んでもらいました。
現在の学校生活はいかがですか?
普段は自宅で授業を視聴しています。本来は、週に1回のホームルームの日に教室に行く必要があるのですが、息子は40人が集まる教室の空間に圧倒されてしまい「行きたくない」と言い出して。先生に相談したところ、Zoomでのホームルーム参加も認めてくださったんです。
課題やレポートの提出については、先生とのマンツーマンの時間を設けてもらい、週に1回、1時間程度は学校に通えています。Tなりのペースではありますが、前向きに学生生活を送っているので少しホッとしています。
お母さまと学校の先生の連携が素晴らしいですね。お母さまとTくんにとって、LITALICOジュニアはどんな場所ですか?
私にとっては全幅の信頼を置ける場所です。息子との関わり方に悩んだ時、具体的な対応方法を提案してくださったり、親身に相談に乗ってくださるLITALICOジュニアの先生方には本当に感謝しています。
Tにとっては、自分の気持ちを言語化する手助けをしてくれて、さらにどうしたらいいかを一緒に考えてくれる場所になっているのではないでしょうか。学校に行き渋ることはある息子ですが、LITALICOジュニアには「行きたくない」と言ったことはありません。家族のほかに自分と向き合ってくれるLITALICOジュニアという場所が、息子にとっては日々の生活の原動力になっているのだと思います。
先生からのコメント
教室に通い始めた当初、自分の気持ちをうまく表現できず、「学校が嫌だ」「自分なんていないほうがいい」といったネガティブな言葉を発することが多かったTくん。教室では、まずTくんの気持ちを代弁しながら受け止めることを心がけました。
またTくんのご家族には、ご家庭でのポジティブなコミュニケーションを増やせるよう、Tくんの好きなゲームや漫画について一緒に話をしたり、Tくんがかわいがっているペットのお世話を一緒にしたりすることを提案し、ご協力をいただきました。
ご家族から「理解してもらえている」と感じられたことで、徐々に周りの人に心を開くようになったTくん。今では、家族と笑顔で食事を楽しめるようになっただけでなく、外出先では妹のためにお菓子を買ってくるなど、思いやりのある行動もみられるようになりました。
これからもさまざまな困難に直面することがあると思いますが、身近な場所に味方がちゃんといることを忘れず、ぜひいろいろなことにチャレンジしてほしいです。Tくんの成長をこれからも一緒に見守っていけたらうれしいです。