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学校に行けない状態が続く「不登校」の子どもは、年々増加傾向にあります。

 

しかし、その原因や理由はさまざまであるため、子どもが学校に行かなくなったときに「どのように対応すれば良いのかわからない」と家族が困ってしまうパターンもよく見られます。

 

今回は「不登校」という言葉の定義や原因(理由)、ひきこもりとの違いについて解説していきます。

 

また、不登校の子どもへの対応方法や、支援機関も合わせてご紹介します。

不登校の定義は?

「不登校=学校を長期間休むこと/学校を継続的に休むこと」というイメージを抱かれがちですが、文部科学省では以下のように定められています。

 

なにかしらの心理的・情緒的・身体的・あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しない、あるいはしたくてもできない状況にあり、年間30日以上欠席した者(病気や経済的な理由によるものを除く)

文部科学省「不登校の現状に関する認識」

 

令和3年度(2021年度)のデータによると、小学校・中学校における不登校児童の人数は24,490人で、過去5年、人数および割合は増加傾向にあります。

 

不登校とは?定義や原因、対応や支援について解説します

「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」(文部科学省)を加工して作成

不登校とひきこもりの違いは?

不登校とひきこもりは、言葉の意味が似ているようで異なります。

 

まず、厚生労働省のの「ひきこもり支援施策について」によると、ひきこもりとは「仕事や学校に行かず、家族以外の人とほとんど交流することなく、6ヶ月以上自宅に引きこもっている状態」のことを指します。

 

不登校の場合、定義の対象となるのが学校に通う児童生徒であるのに対して、ひきこもりの場合、年齢は関係ありません。

 

また、不登校の子どもは、学校には行けずとも、フリースクールや塾に通ったり、友達と会ったりできる場合もあるため、必ずしも「不登校=ひきこもり」とは言い切れません。

不登校やひきこもりで起こりやすい症状や経過について

「不登校」や「ひきこもり」は、状態を表す言葉であり、病気を意味するものではありません。しかし、体や心の症状が生じることもあります。

 

「不登校」や「ひきこもり」でよく見られる症状

体の症状

  • 発熱
  • 頭痛
  • 吐き気
  • 腹痛
  • 食欲がない
  • 全身の倦怠感
  • めまい など

精神症状

  • イライラ
  • 無気力
  • 集中力低下
  • 不眠
  • 憂うつ感 など

また、不登校やひきこもりの原因に、心の病気が隠れていることもあると言われています。

 

「不登校」や「ひきこもり」の経過

厚生労働省のWebサイトは「不登校」や「引きこもり」の経過について以下のように説明しています。

 

  • 体の症状
    まずいろいろな体の症状が現れ、元気がなくなります。
  • 精神症状
    学校に行けないことへの葛藤や周りからのプレッシャーでイライラしたり、落ち込んだりして、ときには乱暴になることもあります。
  • 無気力状
    次第に情緒的には落ち着いてきますが、その後無気力に過ごす時期が続きます。

 

このように、まず体の症状が現れ、次に精神症状、その後無気力状態になる経過をたどるパターンが多く見受けられるとされています

不登校の原因・理由

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子どもが不登校になる原因については、学校教職員が回答した調査の結果を文部科学省が令和3年度(2021年度)のデータ内で公開しています。

 

不登校の原因・理由

 

令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(文部科学省)を加工して作成

このデータからみる不登校の原因は、小学校・中学校合計で一番多いのは「無気力・不安(49.7%)」、つづいて、「生活リズムの乱れ・遊び・非行(11.7%)」「いじめを除く友人関係をめぐる問題(9.7%)」です。

 

ただし、不登校の原因・理由が同じであっても、不登校になったきっかけや、一人ひとりがもつ特性や能力は異なります。そのため、子どもが不登校になったときの対応もひとつではなく、その子にあった対応を考える必要があります。

子どもが不登校になったときの対応について

子どもが不登校になったとき、家庭でできる対応について、タイプ(不登校のきっかけ)別に解説していきます。

 

ただし、不登校のタイプは必ずしもぴったりあてはまったり、はっきり分かれたりするものではなく、いくつかのタイプが複合している場合も見られます。

 

まずは、子どもの様子を観察したり、話を聞いたりして、どのような状況であるのか判断したり、気持ちに寄り添った対応を考えてあげることが大切です。

人間関係タイプ

いじめやいやがらせを含む人間関係のトラブルが不登校の原因となっているタイプです。

 

例えば、クラスメイトや先生との関係や、部活動での上下関係などが挙げられます。

 

本人は「学校へ行こう」と思ってはいるものの、上手く問題を解決できずに、登校できない状態が続いています。この場合、学校と協力しながら、要因そのものを解消することが重要です。担任の先生だけでなく、部活動の顧問、スクールカウンセラーも相談先の一つです。

 

まずは、事情を把握するために、子どもとゆっくり話す機会を作ることが大切です。

 

ただし、話したがらない場合は無理に聞こうとせず「味方である」ということを伝えて、本人が自分から話すまで待つようにしましょう。

無気力タイプ

無気力タイプは、日々のあらゆる物事に対して無気力になっています。

 

また、無理に学校に行かせることによって、状態が悪化してしまうこともあります。

 

本人でも無気力感の原因をはっきりと言葉で説明できないこともあるため、無理に原因を聞こうとすることは避けた方が良いでしょう。

家庭では、子どもの話に耳を傾け、寄り添った姿勢を見せることが重要です。

 

まずは、担任の先生やスクールカウンセラーに相談することや、また、本人の希望次第ですが、無理のない範囲で習い事に通うことや意欲が持てるような活動の機会をつくることで、無気力感が和らぐ可能性もあります。

不安タイプ

情緒的に混乱しており、漠然とした不安から不登校になるタイプです。

 

なかには、本人は「登校したい」と思っているものの、朝になると体の不調が出てしまい、学校へ行けないパターンも見られます。

 

不安の要因はそれぞれありますが、これまで親や先生の期待に応えようと頑張った結果、疲れやストレスが限界になってしまうような場合や、失敗経験を繰り返したり、周りと自分を比較してプレッシャーや不安を強く感じてしまうような場合などもありますので、そういった時には、無理をさせず、本人のペースを大事にしたり、しっかり休息させることも大切です。

 

また、必要に応じてカウンセラーや心療内科などの医療機関へ相談しましょう。

遊び・非行タイプ

問題行動を起こすグループに入っていたり、学校に行く意味を見出せなかったりするタイプです。

 

このタイプにあてはまる場合は、学校のほか、専門機関にも相談するのがいいでしょう。例えば、下記の支援機関があります。

  • 児童相談所
  • 教育支援センター
  • 少年センター(警察)

 

法務少年支援センターには、非行や心理の専門家が対応してくれる相談ダイヤルも設置されています。

また、メール相談にも対応しています。

子どもが不登校になると、周囲の大人はきっかけや原因を探ろうとするものです。しかし、きっかけは子ども自身もうまく説明できなかったり、一つではないことも多々あります。

 

「いやなこと・つらいこと」が「楽しいこと」より多くバランスが取れなくなったとき、子どもは不登校になっているかもしれません。

 

ここではタイプにわけて分かりやすく解説しましたが、まずは、子どもの様子を観察したり、話を聞いたりして、どのような状況であるのか判断したり、気持ちに寄り添った対応を考えてあげることが大切です。

不登校の子どもへの支援機関

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不登校の子どもや家族のための支援機関をご紹介します。

公的な支援機関

公的な支援機関としては、下記があります。

  • 教育支援センター(適応指導教室)
  • 教育相談所(教育相談室)
  • 子ども家庭支援センター
  • 児童相談所
  • 精神保健福祉センター など

 

教育支援センター(適応指導教室)

適応指導教室では、不登校の子どもへ向けて、無理なく集団生活へ馴染めることを目指したり、不安定な気持ちを落ち着かせたり、基礎的な学力の補充、生活習慣の改善などの相談や指導をおこなうことで、学校への復帰を支援します。

適応指導教室は学校に相談し、利用することができます。

教育相談所(教育相談室)

市区町村の教育委員会が設置する施設です。

不登校を始め、子どもの学校生活や性格・行動に関することなど幅広い相談について、心理士や教職経験者やソーシャルワーカーなどのスタッフに相談したり、カウンセリングを受けることができます。

 

子ども家庭支援センター

子ども家庭支援センターは、子育てと家庭に関するさまざまな悩み事について相談することができます。

児童相談所

児童相談所では、障害の判定をして障害者手帳を発行したり、虐待や非行についての相談を受けてアドバイスや支援をしています。

 

どの支援機関に相談すれば良いのかわからないという場合、まずは在籍する学校や自治体の相談機関に相談してみるとよいでしょう。

 

また、子どもの精神面に関して不安がある場合は、メンタルヘルスに関する相談にのってくれる「精神保健福祉センター」の利用も検討してみましょう。

フリースクールなどの民間団体(施設)

民間施設の一つが、不登校の子どもたちが通えるフリースクールです。各施設によってカリキュラムや支援内容は異なりますが、一例としては下記が挙げられます。

  • 個別学習
  • 団体学習
  • カウンセリング
  • 相談
  • 社会体験
  • 自然体験 など

 

また、発達障害のある子どもが不登校になっている場合は、一人ひとりの特性や困りごとに合わせた学習を提供している教室に通う方法も選択肢の一つです。

 

例えば、LITALICOジュニアの「パーソナルコース」では、受験や進学に向けた授業をおこなうだけでなく「人間関係を築くのが苦手」「学校を休みがち」などの困りごとを含めて、幅広くサポートしています。

 

体験授業も開催しているため、まずはお気軽にお問い合わせください。

不登校から復帰する際に大切なこと

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不登校の状態になると、本人や家族は「早く学校に行かなくてはいけない」と焦ってしまうかもしれません。しかし、無理な登校は精神的な負担となり、再び学校に行けない状況が続く原因となる可能性が考えられます。

 

ここでは、不登校から復帰するときに意識したいポイントについて解説します。

心をしっかり休ませてから登校する

不登校と聞くと、ネガティブなイメージを持つ方も多いですが、一つの考え方としては「心のエネルギーの充電期間」です。

 

まずは、焦らずにゆっくりと休息をとれるようにしましょう。家の居心地を悪くしないことを心がけ、心の休養を最優先にしてください。

不登校の状態にある子どもの中には、学校の枠組みの中で生活すること自体に苦しさを感じている場合もあります。そのため、エネルギーが回復して復帰を考えられるようになってからも、必要な環境調整を学校と相談するなど、今後も子どもが無理なく通えるような環境づくりをしていくことが重要です。

少しずつ登校に慣れる

子ども本人がまた学校に行ってみようと思っても、担任の先生やスクールカウンセラーなどとそうお段しながら子どもにあった方法で少しずつ登校に慣れることを意識しましょう。

 

例えば、復帰方法の例として「放課後生徒がいない時間に登校する→お昼ごろから登校する→朝の決まった時間に登校する」など、少しずつステップアップして心と体を慣らしていく方法などが挙げられます。

 

本人が希望する方法を尊重しながら、一歩一歩、復帰へと近づくことが大切です。

不登校とは?のまとめ

不登校とは、なにかしらの理由により長期間学校に行けない状態が続いていることを表す言葉です。

 

子どもによって不登校になる原因や理由は異なるため、気持ちを聞いてあげたり、支援機関に相談したりしながら、焦らずに対応することが大切です。

 

また、休息後も段階を踏んで、少しずつ登校になれていくといいでしょう。

  • 初川先生

    監修者

    臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち

    初川  久美子

    臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。