赤ちゃんを抱っこをしていると、背筋を伸ばし、のけぞるような姿勢を見せることがあります。
「反り返り」とも呼ばれているこの動きは、赤ちゃんの成長のなかで見られるごく自然な動きです。
しかし、場合によっては、病気が隠れている可能性もあるため、「この子はなぜ、反り返りをするのだろう?」や「反り返りをする子は、発達障害の可能性が高いのだろうか?」など、疑問や不安を抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は赤ちゃんが反り返りを見せる原因や、反り返りと発達障害の関連性について解説していきます。
また、反り返りをする赤ちゃんに困っている方へ向けて、対処法もご紹介します。
赤ちゃんの反り返りとは?
赤ちゃんの「反り返り」とは、抱き上げたときに背中をピンと伸ばして足をつっぱらせたり、体をよじったりするような動きを表現するときに使われる言葉です。
反り返りがあると、コミュニケーションのひとつであるはずの抱っこがしにくくて困ったり、「なぜこの子は嫌がるようなそぶりを見せるのだろうか」と、周囲が不安になったりすることもあります。
しかし、赤ちゃんの反り返りや抱っこを嫌がる動きは、意思表示のひとつであり、成長の過程でよく見られることと言われています。
赤ちゃんが反り返る原因とは?
赤ちゃんが反り返りを見せる原因として、考えられる要素について解説していきます。
不快に感じている
赤ちゃんが反り返りの動きを見せながら泣いたり、何かから逃れるようなそぶりを見せたりしているときは、不快に感じている可能性があります。
不快感による反り返りの理由としては、下記が挙げられます。
- 抱き方が気に入らない
- 抱っこが不安定で怖い
- 抱っこをしている人の服がチクチクして痛い
- 抱きかかえられて暑くなってしまった
- (食事中の場合)食べるのを拒否している
- (入浴中の場合)顔に水がかかって嫌
- (入浴中の場合)温度が熱いと感じている など
また、ハイハイやつたい歩きができるようになった頃には、抱っこをされることで、自分の行動が制限されることを嫌がっているのかもしれません。
もしも、赤ちゃんが特定の状況下(抱っこ中・入浴中など)に反り返りを見せるのであれば、思い当たる原因がないかどうか、あらためて考えてみましょう。
身体を動かしている
赤ちゃんには、心や身体が発達してくるにつれて「自分の意志で身体を動かしたい」という欲求が芽生えはじめます。例えば、ベッドの上に寝転がっているときに、寝返りの練習をするため、腰をよじるような動きを見せることがあります。
このとき、赤ちゃんによっては大きく反り返るような姿勢になることがあるため、初めて目にしたときに、びっくりしてしまう保護者の方もいらっしゃいます。
その他、見たいもののある方向へ、体を向けようとして、反り返りのような姿勢になることもあると言われています。
病気によるもの
赤ちゃんの反り返りには、病気が隠れていることもあります。
そのうちのひとつが、「脳性まひ」です。脳性まひは、赤ちゃんがお腹の中にいるときに、なにかしらの原因により脳に損傷が起こり、成長に遅れが出てしまう病気です。
そして、この脳性まひがあると、本人の意思とは関係なく反り返りの姿勢になってしまいます。しかし、脳性まひの場合、現れる症状は反り返りだけではありません。
例えば、ミルクや母乳を飲むときにむせやすかったり、なかなか首がすわらなかったりするなどの症状があると言われています。
脳性まひかどうかは、医療機関でしか判断できないため、気になる症状がある場合は、かかりつけの医師や小児神経科・小児科へ相談しましょう。
赤ちゃんの反り返りと発達障害について
発達障害のひとつである自閉スペクトラム症のある赤ちゃんに、反り返りが見られることがあります。
しかし、前の項目でお伝えした通り、反り返りそのものは成長の過程で見られる動きのひとつでもあるため、反り返りがあるからといって、発達障害と判断することはできません。
ASD(自閉スペクトラム症)とは?
ASD(自閉スペクトラム症)とは、「対人関係を上手く築きにくい」と「こだわりの強さがある」といった特徴を持つ発達障害のひとつです。
厚生労働省の情報によると、おおよそ100人に1人いる割合だと報告されています。
ASD(自閉スペクトラム症)の原因は、はっきりとはわかっていませんが、生まれつき、脳の機能になにかしらの不具合があるために起こると考えられています。
決して、親の育て方や環境が原因で生じるわけではありません。
また、ASD(自閉スペクトラム症)の症状が見られる場合、多くは生後2年目(月齢12~24ヶ月)の間に周囲から気付かれると言われています。しかし、時期は前後することもあります。
ASD(自閉スペクトラム症)のある赤ちゃんに見られる症状
ASD(自閉スペクトラム症)のある赤ちゃんに見られる症状をいくつかご紹介します。
- 顔を近づけても目が合わない
- 抱っこを嫌がる
- あまり泣かない
- あやしても笑わない
- 反応が乏しい
- 親の後追いをしない
- 偏食気味である
- 寝つきが悪い・すぐに目を覚ましてしまう など
また、2~3歳頃になると、下記の症状が目立つこともあります。
- 名前を呼びかけても反応しない
- 触られることを嫌がる
- 言葉の遅れが見られる
- 言葉の話し方が不自然(棒読み・大人びた言い回しなど)
- 対人関係が上手くとれない(受け身過ぎる・一方的過ぎるなど)
- 一人で遊ぶことを好む
ただし、症状の現れ方や程度は、人それぞれ異なります。
また、上記いずれかの症状に当てはまるからといって、必ずしもASD(自閉スペクトラム症)であるとは言い切れないことも理解しておきましょう。
ASD(自閉スペクトラム症)のある赤ちゃんが反り返りやすい理由
ASD(自閉スペクトラム症)がある方のなかには「感覚過敏」を伴っている方もいらっしゃいます。
感覚過敏とは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚など、さまざまな感覚に対して敏感であり、それに苦痛や不快感が伴う状態のことをいいます。
感覚過敏は「ASD(自閉スペクトラム症)のある赤ちゃんが反り返りやすい」と言われている理由でもあります。
感覚過敏の中でも、皮膚の感覚が過敏な赤ちゃんの場合、特定の温度や力加減、肌触りを不快に感じたり、肌に触れられることそのものを嫌がったりすることがあります。
そのため、抱っこをしている人が着ている服の肌触りや、ボタンなどに反応して、反り返りの姿勢になってしまうことがあります。
LITALICOジュニアでは、感覚過敏がある子どもやASD(自閉スペクトラム症)がある子どもへの指導実績も豊富にあります。
一人ひとりの特性にあわせた指導方法で、学習や日常生活に困りごとがある子どもへ支援をおこなっています。
通所受給者証がなくても利用できる幼児教室もありますので、「子どもがASD(自閉スペクトラム症)かもしれない」「子どもに感覚過敏があるかもしれない」という方はぜひ一度お問い合わせください。
赤ちゃんの反り返りの対策や対処法は?
赤ちゃんの反り返りが多く、困っている方へ向けて、対策や対処法をご紹介します。
抱っこを嫌がる場合
抱っこを嫌がり、反り返りの体勢になる場合の対策法を見ていきましょう。
抱っこの仕方を変える
赤ちゃんにとって抱っこの仕方が心地良くなかったり、抱っこが安定していなかったりする場合は、抱き方を変えることで、反り返りが落ち着くかもしれません。
赤ちゃんによって、横抱き・縦抱きなど、抱き方の好みがあるため、いろいろ試してみましょう。
また、赤ちゃんの背中が丸くなるように、包み込むように抱く方法もおすすめです。
具体的には、お腹の中にいる赤ちゃんの体勢をイメージして、背中がカーブを描くように抱っこします。赤ちゃんが安心しやすい抱っこ方法とも言われています。
抱っこをしている人の洋服を気にする
赤ちゃんの抱き方を変えても反り返りの体勢になるときは、抱っこをしている人の洋服が原因となっている可能性が考えられます。
もしも、服の素材にチクチク感があったり、ボタンやタグが赤ちゃんの体に当たったりしている場合は、別の服に着替えてから抱っこして、反り返りをするかどうか見てみましょう。
仰向けで寝るのを嫌がる場合
仰向けの状態のときに、反り返りを見せる場合、「寝返りの練習をしている可能性がある」ということを覚えておきましょう。そのうえで、仰向けで寝るのを嫌がり、反り返りの体勢になってしまうようであれば、下記の方法を試みましょう。
横向きで寝かせる
仰向けで寝るのを嫌がる赤ちゃんの場合、横向きの体勢にしてあげることで、落ち着きを見せることがあります。
ただし、厚生労働省は、乳幼児突然死症候群(SIDS)を防ぐために、1歳になるまでは、仰向けで寝かせることを推奨しています。うつ伏せ寝は、窒息などの危険性が高まるため、赤ちゃんが苦しくならないように、顔は横に向け、必ず保護者がそばで見守ることが大切です。
背中の不快感を取り除いてあげる
赤ちゃんが仰向けの状態で反り返りの姿勢になる原因のひとつとして、背中の不快感が挙げられます。例えば、背中に汗をかいていて、気持ち悪いと感じているパターンが考えられます。
このような場合は、汗を拭いてあげて、服を着替えさせることで反り返りをしなくなるかもしれません。
また、いつものベッドとは異なる場所に寝かせようとしたときに、背中に感じる感触を嫌がり、反り返りを見せることもあります。
赤ちゃんの反り返りについてまとめ
赤ちゃんの反り返りは、成長の過程で見られるごく自然な動きです。理由はいくつかあり、「嫌だ」という意思表示や、寝返りの練習が考えられます。
ただし、脳性まひや発達障害などの病気の症状として、反り返りが見られることもあります。
そのため、反り返り以外にも気になる症状がある場合は、乳幼児健診のときに相談したり、かかりつけの小児科を受診したりするようにしましょう。