ダウン症のある赤ちゃんの特徴や成長、診断・検査について解説します

出生前の検査などで「ダウン症」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?

 

ダウン症の赤ちゃんには染色体の数が他の人と異なることによって、発達の遅れや、消化器系の疾患などの合併症が見られることがあります。

 

以前は寿命が短いことが指摘されていましたが、現在では医学の進歩などによりダウン症の方の平均寿命も伸びてきています。

 

この記事ではダウン症の赤ちゃんの特徴や成長、診断や検査についても紹介します。

ダウン症とは

ダウン症とは

ダウン症は正式名称を「ダウン症候群」といい、1866年にLangdon Down(ラングドン・ダウン) によって初めて報告されたことからその名称がつけられました。21番目の染色体が関係することから、「21トリソミー」とも呼ばれます。

 

この記事では「ダウン症」という名称で統一して紹介していきます。

 

ダウン症は染色体の突然変異などによって生じます。ダウン症の方は筋肉の緊張の弱さや発達の遅れが見られたり、心疾患や消化器系の疾患など合併症を伴うことがあります。

 

ダウン症は染色体の突然変異によるものなので、基本的には遺伝するものではありません。

 

以前は寿命が短いことが知られていましたが、ここ20~30年で飛躍的に平均寿命が伸び、多くのダウン症の方が学校生活や社会生活を送ることができるようになりました。

ダウン症のある赤ちゃんが生まれる確率について

ダウン症のある赤ちゃんが生まれる確率について紹介します。

 

ダウン症の赤ちゃんは20代の女性が出産する場合は、1000人に一人未満の割合で生まれてくるという調査結果があります。

 

また、年齢を重ねることによってダウン症の赤ちゃんが生まれる可能性は増えていくと現時点では言われています。高齢出産と呼ばれる35歳で出産する場合は約400人に1人の割合でダウン症の赤ちゃんが生まれるとされています。

 

ただし、先述の通り遺伝子の突然変異によるものなので、年齢だけですべてが決まるわけではありません。

 

また、ダウン症は生まれてからだけでなく、出生前検査で判明することがあります。検査することによって、結果に関わらず具体的な対応方法がわかり、生まれてからの準備を整えることにもつながります。

 

出産に際して不安に思うこと自体は自然なことです。検査は必ず受けるものではなく、それぞれの考え方もあると思いますが、検査を受けることも一つの選択肢としてとらえておくといいでしょう。一人で抱え込まずに、相談できる人やサービスなどを頼っていくことも大事です。

ダウン症のある赤ちゃんの特徴とは

ダウン症の赤ちゃんや子どもにはどういった特徴があるのか紹介します。ダウン症の赤ちゃんに限らず、子どもは一人ひとり性格や特徴は異なりますので、一つの参考にしていただければと思います。

 

ダウン症の赤ちゃんの特徴としては

  • 言葉など発達の遅れがある
  • 心臓や呼吸器系などに合併症がある
  • 身体的な特徴がある

といった傾向があります。

言葉など発達の遅れがある

ダウン症の赤ちゃんや子どもには、運動、知能、ことば、社会性など日常生活や社会生活において、発達がゆっくりである傾向があります。

 

他にも合併症や身体的な特徴によって、「言葉が発しづらい」「相手の言っていることが聞き取りづらい」「身辺自立に関するスキルの獲得に時間がかかる」といったことが起こる場合があります。

 

こういった特徴や困りごとは同じダウン症の子どもでも個人差があるため、その子どもに合った環境で学んでいくことが大事になります。

心臓や呼吸器系などに合併症がある

ダウン症の赤ちゃんや子どもには眼の疾患、難聴、甲状腺機能低下症などといった合併症が起こる場合があります。

 

その影響もあり、以前は寿命の短さが見られましたが、先ほども紹介したように現在ではダウン症の方の平均寿命は大きく延びています。

 

これらの合併症はダウン症の赤ちゃん全員が発症するわけではありません。また、あったとしても症状は個人差が大きいものとなっています。

身体的な特徴がある

ダウン症の赤ちゃんや子どもは筋肉の緊張が低いことや、顔や身体の形に特徴が見られることがあります。

 

筋肉の緊張が低いとは、全身の筋肉が柔らかくなっている状態のことを指し、筋肉の張りが弱く、体がぐらぐらとするといった特徴がみられます。

 

また、ダウン症の赤ちゃんや子どもの顔には、鼻が低めで、目と目の間が広く見え、少しつり目がちであるといった特徴が見られることもあります。

 

これは、顔の中心部の骨の発達と、周囲の骨の発達する速度が異なるためではないかとされています。

 

こういった特徴には個人差があり、また赤ちゃんの頃にはわからず、1歳半検診などの際にはじめて気づかれることもあります。

赤ちゃんのダウン症はいつわかる?

赤ちゃんのダウン症はいつわかる?

赤ちゃんのダウン症の検査ができる時期について紹介します。

 

ダウン症の検査は「出生後」におこなうほか、「出生前」からおこなうことも可能です。

 

出生後の場合は、赤ちゃんや子どもの血液を採取するといった検査方法があります。出生前については検査方法によって、方法や検査可能な時期が異なりますので、詳しく紹介していきます。

出生前の診断・検査について

ダウン症の検査は妊娠10週目からおこなうことが可能です。

 

出生前のダウン症の検査は大きく分けて

  • 非確定的検査
  • 確定的検査

の2種類があります。

 

確定的検査は診断を下すことができますが、流産のリスクもあるため、まずは非確定的検査をしてから確定的検査をおこなうという流れになります。

非確定的検査

超音波検査

超音波検査はいわゆるエコー検査と呼ばれる検査で、妊娠10週目あたりからおこなわれます。超音波を使って子宮内や胎児の様子を観察して、気になる所見がないかを確認していきます。

 

新型出生前診断(NIPT)

新型出生前診断(NIPT)は妊娠9~10週目以降の妊婦から血液を採取して、そのDNA分析することで、胎児の染色体について調べることができる遺伝学的検査のことです。

 

母体血清マーカー検査

母体血清マーカー検査は、妊娠 15 週~20 週の妊婦から採取した血液をもとにして、血液中のホルモンやたんぱく質の量などからダウン症の可能性などを測る検査です。

確定的検査

羊水検査

羊水検査は妊娠15週目以降に、妊婦の腹部に注射器を指して採取した羊水によってダウン症かどうかなどを判断する検査方法で、ダウン症の確定診断に使われています。

 

ただし、注射器を腹部にさすことになるため、0.2%~0.3%の流産リスクがあるといわれています。

 

絨毛検査

絨毛検査は妊娠 11~14 週以降の妊婦の腹部に針を刺し、採取した組織を分析する検査方法で、こちらもダウン症の確定診断に使用されます。絨毛検査は0.1%の流産リスクがあるといわれています。

出生前検査に悩む場合

出生前検査はリスクもあることなどから、不安に思う方もいると思います。

 

遺伝カウンセリングといって、妊婦やそのパートナーからの悩みや不安などを聞いたり、適切な情報を伝えるサポートがあります。

 

遺伝カウンセリングは臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーといった資格を持つ人が担当しているため、検査について気になることがある方は相談をしてみるといいでしょう。

ダウン症のある赤ちゃんの成長について

ダウン症のある赤ちゃんの成長について

ダウン症のある赤ちゃんの成長や支援、相談先について紹介します。

 

ダウン症の先天的な「染色体異常」自体への治療というものはありません。代わりに、先天的・後天的に合併症がある場合に、合併症への治療をおこなっていきます。

 

また、発達の遅れが気になる場合は「療育」によって、その子に合った環境で学習を進めていく方法もあります。

 

ただ、ダウン症の赤ちゃんは発達がゆっくりな傾向がありますが、そもそも発達の様子は個人差が大きくあります。ダウン症という名称だけでなく、その子自身の性格や特徴を見たうえで長い目で見守っていくことが大事です。

療育

療育とは、日常生活などで困りごとがある子どもへ、一人ひとりの発達の状態に合わせて、現在の困りごとの解消や、スムーズな集団生活への適応を目指した支援のことです。

 

療育は「療育センター」「児童発達支援事業所」「放課後等デイサービス」などで受けることが可能です。場所によって対象や内容が異なりますので、詳しくは相談や見学をおこなってから利用するといいでしょう。

進路について

ダウン症の子どもが日本の学校で学ぶうえで選択肢となる制度に「特別支援教育」があります。

 

特別支援教育とは、学びに困難のある子どもが自立し社会参加するために必要な力を身につけるために、個々の特性などに合った教育をおこなうことです。

 

特別支援教育には「特別支援学校」「特別支援学級」「通級」といった種類があります。詳しくはリンク先をご参考ください。

相談先

ダウン症の子どもの悩みについて相談できる機関がありますので、紹介します。

 

公益財団法人日本ダウン症協会

ダウン症の相談先として「日本ダウン症協会」があります。

ダウン症に関する知識の普及啓発、情報の提供、ダウン症の方とその家族に対する相談支援などをおこなっています。

 

相談は電話で受け付けているほか、地域によっては対面でおこなっている場合もあります。

お住まいの自治体で相談窓口

他にも地域での子育てに関する相談窓口はさまざまあります。自治体のWebサイトに掲載されている場合がありますので、近くに相談できる場所がないか探してみるといいでしょう。

児童発達支援・放課後等デイサービスを運営しているLITALICOジュニアでは、ダウン症の子どもへの指導事例もあります。早い時期から子どもに合った環境の中で学ぶことで、今後必要となるスキルを早い段階から身につけることができます。

子どもについての悩みや心配ごとについて、無料で相談もできますのでお気軽にお問い合わせください。

ダウン症のある赤ちゃんについてまとめ

ダウン症のある赤ちゃんについてまとめ

ダウン症とは正式名称を「ダウン症候群」といい、先天的に染色体の数が異なることで、発達の遅れが見られたり、心疾患など合併症を伴うことがある状態のことです。

 

ダウン症の赤ちゃんや子どもに見られる傾向はありますが、実際には性格や環境などを含めて個人差が大きくあります。

 

ダウン症とひとくくりにするのではなく、合併症の治療などをおこないながら、その子に適した環境を整えていくことが大事です。

 

ダウン症の検査は妊娠中からおこなうことができますが、出生前検査には不安がつきものです。一人で抱え込まずに、遺伝カウンセリングなども活用しながら、どういった選択をするか決めていくといいでしょう。

  • 玉井浩

    監修者

    大阪医科薬科大学 小児高次脳機能研究所 LDセンター顧問/大阪医科薬科大学 小児科名誉教授

    玉井 浩

    小児神経学をベースに、小児期から成人期に至るまで医療・教育・福祉にわたる総合的な診療と支援を実践している。また、日本ダウン症協会の代表理事として、家族支援、公益事業や国際連携もおこなっている。