赤ちゃんが「ハイハイをする様子がない」「なかなか歩き始めない」などで不安を感じている方もいると思います。
ハイハイや歩くといった日常生活の土台となる体の動きは「粗大運動」と呼ばれています。
粗大運動の発達には目安がありますが、個人差も大きくなっています。
この記事では粗大運動の説明や、微細運動との違い、粗大運動の発達の目安や促すための方法、不安があるときの相談先などを紹介します。
粗大運動とは?
赤ちゃんの発達に関係して「粗大運動」という言葉を見聞きすることがあると思います。
なかなか言葉だけだとイメージがしづらいですが、粗大運動とは日常的に使用する動きのことを指しています。
具体的に言うと粗大運動とは、「座る」「立つ」「歩く」「走る」などの身体を大きく使った、生活するうえで必要となる動作のことです。
赤ちゃんの粗大運動の発達として、生後3か月ごろから寝返りを打ち、その後ハイハイやつかまり立ちを経て、1歳前後から歩きはじめるとされています。
詳しい粗大運動の発達の目安は後ほど紹介します。
微細運動とは?粗大運動との違いは?
粗大運動とともに使われることが多い「微細運動」は、手や指先を使った動作のことを指して使われる言葉です。
立つ、歩くなど身体を大きく動かすのが粗大運動で、飲食や字を書くなど細かい動きが微細運動といわれます。
微細運動にはガラガラを振る、箸やフォークなどの食器を使う、クレヨンを持って絵を描く、積み木遊びをすることなどが含まれます。
目安としては生後3ヶ月くらいで「ガラガラを振りはじめる」、生後1年くらいになると「コップから水を飲む」「クレヨンを握って殴り書きをする」といった微細運動ができるようになるといわれています。
粗大運動との違い
粗大運動と微細運動は言葉が似ていることもあり、違いがイメージしづらいという方もいるのではないでしょうか。
違いとしては、粗大運動は「立つ」「歩く」など身体を大きく使った動きのことを指して使います。
一方の微細運動は、「箸を持つ」「絵を描く」など手や指を使った繊細な動きについて使う言葉です。
発達についても違いがあり、基本的には大きく身体を動かす粗大運動の後に、手先などを使った微細運動が発達していくといわれています。
粗大運動の発達の目安は?
ここでは月齢や年齢に応じた粗大運動の発達の目安を紹介します。子どもの発達は一人ひとり異なりますので、あくまで目安として参考にしていただければと思います。
赤ちゃんの粗大運動の発達の目安
首がすわり手足を動かす 生後3~4ヶ月ごろ
生後3~4ヶ月ごとになると、赤ちゃんの首が座ってきます。腕や足も自分の意思で動かせるようになってきて、うつぶせの状態から胸を上げるといった動作もできるようになってきます。
寝返りやお座りをする 生後3~7ヶ月ごろ
首がすわるのと並行して、生後3~7ヶ月ごろには寝返りが始まり、何か支えがあるとお座りもできるようになってきます。お座りができるようになると、それまで地面と近かった視野が高くなり、視界も広がってきます。
ずりばい~はいはいをする 生後6~11ヶ月ごろ
生後6ヶ月~11ヵ月ごろには腹ばいのまま腕や足の力を使って移動するずりばいが始まります。また、手のひらと膝を床につき、四つん這いで移動するハイハイも始まります。
ずりばいを経ずにハイハイをはじめる赤ちゃんもいます。
つかまり立ち~伝い歩き 生後8~12ヵ月ごろ
生後8か月~12ヵ月ごろにかけて、何かにつかまった状態で立ち上がるつかまり立ちや、つかまったものを伝って歩く伝い歩きをし始めます。それから徐々に支えがなくても立っていられる時間が伸びていきます。
歩く 12か月前後から
12か月ごろから、支えがなくても一人で歩くことができるようになってきます。行動範囲が広がっていき、緩やかな傾斜や階段の上り下りができるようになるなど足腰やバランス感覚の発達も見られてきます。それに伴って手も自由に使えるようになるなど、できることが増えていきます。
粗大運動の発達を促すには?
赤ちゃんの発達は個人差が大きいものです。
粗大運動についても、目安となる時期と我が子の様子を比べて不安になる方もいらっしゃるかもしれません。ここでは粗大運動の発達を促すための方法を紹介します。
お座りのころ
お座りを始めたころはまだバランスが取れず不安定なため、クッションなどを使って姿勢を保てるような工夫をしてみましょう。
初めのうちは長時間お座りをしていると、赤ちゃんの腰にも負担がかかってしまうため、少しずつ時間を伸ばしていくようにしましょう。
ずりばい・ハイハイ
赤ちゃんが移動できるようになったら、少し離れた場所にお気に入りのおもちゃを置いてみるなど、あそこまでいってみたいと思えるような取り組みをしてみましょう。
その際は床に落ちている物を片付けておくことが大事です。赤ちゃんは手に取ったものを口に入れることが多いため、物が落ちていない状態にしておきましょう。
つかまり立ち・伝い歩き
赤ちゃんがつかまれるものを設置したり、伝い歩きするためのスペースを空けておくようにしましょう。
また、つかまり立ちや伝い歩きをしているときは転んでしまう可能性もあるため、常に目を離さないようにしましょう。
立つ・歩く
ハイハイのときと同じようにおもちゃを少し離れた場所に置いて、歩きたいという意欲を引き出してあげましょう。他にも赤ちゃんの手を取って少し歩くのを手伝ってあげるといった方法もあります。
赤ちゃんが歩きはじめると行動範囲が広がります。階段の前には柵を設置するなど、動き回っても危険がないように注意しておくことが大事です。
赤ちゃんの発達が気になる場合は?
赤ちゃんの発達は身体面だけでなくさまざまな要素が絡んでいます。
一人ひとり個人差がありますので粗大運動が目安から遅れているといっても、それが直ちに障害や疾患につながるわけではありませんが、不安がある場合は以下の場所に相談してみるといいでしょう。
保健センター
保健センターは地域の住民に対して健康や衛生についての保健サービスをおこなう場所です。乳幼児の健康や子育ての悩みなどを電話や訪問によって受け付けています。
1歳6ヶ月検診時に粗大運動などの身体機能についても検査をおこないますので、気になる場合はそこで相談をしてみてもいいでしょう。
かかりつけの小児科
かかりつけの小児科でも、粗大運動など発達に気になることがあったときに相談する方法もあります。
普段からその子を見ているため、粗大運動だけでなくこれまでの発達の様子なども含めて総合的に判断をしてくれます。
自治体の相談窓口
各自治体のWebサイトには、子育てや発達の遅れが気になる場合の相談窓口が掲載されていることがあります。粗大運動についても相談することが可能です。
例えば千葉県船橋市のWebサイトには、運動発達に遅れがある子どもへの機能訓練をおこなっている施設も掲載されています。
お住まいの自治体のWebサイトの確認や、市役所の障害福祉窓口へ問い合わせてみるといいでしょう。
児童発達支援センター
児童発達支援センターは障害のある子どもにたいして、日常生活や社会生活に必要なスキルなどを身につけるためのプログラムの提供をおこなっています。
児童発達支援センターを利用するには自治体に申請して「通所受給者証」の交付を受ける必要がありますが、相談だけならすぐにできる場合があります。
粗大運動などの運動機能についてのプログラムを実施している場所もありますので、詳しくはお近くのセンターへお問い合わせください。
LITALICOジュニアは、児童発達支援事業所として発達の気になる子どもの学習や運動のサポートをおこなっています。
粗大運動などの運動機能については「見る・聞く・さわる・なめる・かぐ」などの五感を使った、子どもが楽しみながら取り組めるプログラムの提供もおこなっています。
通所受給者がなくても利用できるコースもありますので、「なかなか歩き始めない」など不安がある方はぜひ一度お問い合わせください。
粗大運動についてまとめ
粗大運動は、座る、立つ、歩くなどの日常生活の基礎となる身体の動きのことです。
関連して使われる言葉として微細運動がありますが、こちらは食器を使ったり絵を書いたりといった、手や指を使った細かい動作のことです。
粗大運動などの発達にはある程度の目安があり、そこから遅れが見られると不安になるかもしれません。
赤ちゃんの発達には個人差が大きくありますが、気になる場合は抱え込まずに1歳半検診の際やそのほか相談できる場所に相談しながら対応していくといいでしょう。