お役立ちコラム
不登校への支援や相談先について【専門家監修】
2023.03.29公開 / 2024.08.11更新

子どもが不登校の状態にあるとき、どのように支援していけばよいかわからなくなる保護者の方も多いかもしれません。
文部科学省が示している方針では、不登校の状態にある子どもの支援における目標は、必ずしも学校への復帰だけではないとされています。
では、不登校の状態にある子どもに対してはどのような形の支援があるのでしょうか?
この記事では、不登校の状態にある子どもに対する支援のあり方や、公的・民間の支援機関や相談先を紹介するほか、保護者の方の不登校の状態にある子どもへの支援において大切なことについても説明します。


この記事を書いている会社:
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不登校への支援はどんなものがある?

「不登校の状態を改善するには、不登校の原因への対処が必要」と思うかもしれません。
しかし子どもが不登校になる原因は多岐にわたり、特定するのが難しい場合もあります。
原因が一つではなかったり、「無気力・不安」などの漠然とした感情であったりするほか、本人にも原因がよくわからないこともあります。
このため、子どもの状態をよく見きわめて、適切な支援をおこなっていくことが大切です。
不登校への支援
不登校の状態にある子どもへの支援については、文部科学省が基本的な考え方を示しています。
その中の一つに、「学校に復帰する」という結果のみを目標にするのではなく、「子どもが自らの進路を主体的にとらえて、社会的に自立する状態を目指すこと」が挙げられています。
不登校となった原因を把握し、学校になじめない要因の解消に努める必要がある一方で、社会的な自立へ向けて進路の選択肢が広がるような支援をすることも大切であるとしています。
具体的には、子どもの希望を尊重したうえで、場合によっては教育支援センター(適応指導教室)や不登校特例校、タブレット端末などの「ICT(情報通信技術)」を活用した遠隔での学習支援などが挙げられています。
例えば東京都大田区の取り組みでは、タブレット端末で授業の様子を配信する「オンライン授業」をおこなったことで、不登校の状態にある生徒にもクラスの受容的な雰囲気が伝わり、学校復帰へつながった事例があります。
不登校への支援で「出席扱い」になる場合
不登校の状態にある児童・生徒がICTを活用して自宅学習をおこなう場合や、学校外の公的機関や民間施設において相談や指導を受ける場合は、一定の要件を満たせば、学校の指導要録上は「出席扱い」になることがあります。
「出席扱い」となる要件には主に以下のような項目が挙げられていますが、最終的には校長の判断となります。
- 保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること
- 教育委員会などが設置する教育支援センター(適応指導教室)などの公的機関に通うことが困難な場合で、本人や保護者の希望もあり適切と判断される場合は、民間の相談・指導施設も考慮される
- 学校外の公的機関や民間施設における学習の計画や内容が、その学校の教育課程に照らし「適切」と判断される場合
- ICTなどを活用した学習活動を出席扱いとするのは、基本的に当該児童・生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談や指導を受けられないような場合に行う学習活動であること
公的な支援や相談先
ここでは、不登校の状態にある子どもとその保護者が利用できる公的な支援や相談先を紹介します
在籍している学校での相談先
子どもが不登校の状態にあるときは、学校側と連携して対処していくことが不可欠です。
担任の教員のほかにも、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどにも相談することができます。
スクールカウンセラーは、公認心理師や臨床心理士の資格など、心理についての専門性を持っています。
一方スクールソーシャルワーカーは、社会福祉士や精神保健福祉士の資格など、社会福祉に関する専門性を持っています。
このため、教員とは異なる視点からの助言をもらうことができる場合もあります。
教育支援センター(適応指導教室)
不登校の状態にある子どもへの支援をおこなうために、教育委員会が設置している施設です。
施設により支援内容は異なりますが、学習支援やカウンセリングなどをおこなっています。
【関連ページ】
教育相談所(教育相談室)
都道府県や市区町村が設置する施設で、教育に関するさまざまな悩みや問題についての相談に応じています。
【参考】
子ども家庭支援センター
都道府県や市区町村により設置されている施設で、地域の子どもの福祉に関するさまざまな相談に応じるほか、児童相談所とも連携して支援をおこなっています。
自治体により名称が異なり、「児童家庭支援センター」と呼ばれている場合もあります。
【参考】
児童相談所
児童福祉法にもとづき、各都道府県や政令指定都市に設置されている施設です。
子どもに関する相談に応じ、子どもやその家庭の問題に対して適切な援助をおこなうことを目的としています。
【参考】
精神保健福祉センター
精神保健福祉法により各都道府県に設置が定められている機関で、地域住民からの心の健康に関する相談に応じ、支援をおこなっています。
「もしかして、精神疾患や発達障害の特性があって不登校の原因になっているのではないか?」などと思うときは、まだ医療機関を受診するのはハードルが高いかもしれません。
そのような場合は、まず精神保健福祉センターに相談することができます。
民間の支援や相談先
民間の施設でも、不登校の状態にある子どもが利用できる以下のような支援をおこなっています。
フリースクール
不登校の状態にある子どもに対し、学習活動や教育相談、体験活動などをおこなっている民間施設の総称です。
さまざまな規模や活動内容のフリースクールが存在しており、基本的には有料で、一定期間、学校のように通って学習やさまざまな活動をおこないます。
医療機関
不登校の状態にある子どもには、頭痛や腹痛、発熱や疲労感、不眠や食欲不振などの身体症状や、不眠や無気力、憂うつ感などの精神症状が現れていることがあります。
このような場合には、小児科や児童精神科などの医療機関を受診するとよいでしょう。
まず症状を緩和し、子どもが感じている苦痛を取り除くことが不登校への対処の第一段階になります。
民間のカウンセリング施設
民間のカウンセリング施設の中には、不登校に関する相談も扱っているところがあります。
カウンセラーの資格やカウンセリング形態、支援の範囲などは多種多様ですが、主に子どもや保護者の方が自分自身の力で立直っていくきっかけをつくったり、気持ちや考え方を整理していくサポートをしてもらったりすることができます。
家庭教師
不登校の状態にある子どもを対象としている家庭教師もいます。
自宅に来てもらい、自分のペースで学ぶことができる家庭教師の利用は、学業の遅れが気になる場合の選択肢の一つです。
学習塾
「登校はまだできないが、学習塾には行っている」という子どももいます。
幼児教室・学習塾を運営するLITALICOジュニアでも、人間関係や学習における困りごとなどで不登校になった子どもを対象に、学習や自立のための学びを提供しています。
学習支援や将来の自立に向けた予定の管理方法など、幅広いスキルの取得の支援をおこなっています。
無料相談もおこなっていますので、ぜひお気軽にご利用ください。
不登校の子どもへの支援で大切なこと

保護者の方が不登校の状態にある子どもを支援する場合は、基本的に以下のような点に気を配ることが大切であるとされています。
心を支える
子ども自身も、学校に行けない状態になっていることに悩んでいる場合があります。
また、人間関係や学業のつまずきなどの明確な原因がある場合もあれば、子ども自身も原因がよくわからず、混乱している場合もあります。
子どもに学校に行かない理由を問いただすのではなく、今の状態を否定せずに話を聞いて、まずは子どもの心に寄り添うようにしてください。
「家族が理解してくれている」と子どもが感じて精神的に安定することが、保護者の方ができる支援の第一歩となります。
抱え込まず相談する
不登校には「こうすれば必ず改善する」という模範的な対処方法はなく、子どもの状態に応じて対処していく必要があります。
保護者の方も手さぐりで対処方法を探していかねばならず、どうすればよいかわからなくなってしまうこともあるかもしれません。
そのようなときは家庭だけで対処しようとせず、この記事で紹介している支援機関にも相談してみてください。
第三者や専門家の力を借りることで、新たな視点を得ることができるでしょう。
支援機関を活用する(教育機関の保証)
不登校の期間が長くなり、ほとんどの時間を家で過ごしていると、学業の遅れが気になったり、世間から孤立したかのような感覚になってしまうかもしれません。
教育支援センター(適応指導教室)や学習塾など、この記事で紹介している支援機関を活用することは学業の遅れを取り戻すだけでなく、「子どもの居場所を確保する」という意味もあります。
子どもの心のエネルギーの回復にあわせて、無理なく取り組めそうな支援を選んでみてください。
復帰する際は段階を踏んで慣れていく
子どもが学校に再登校することになったときは、いきなり元の学校生活に戻すのではなく、徐々に慣れていくようにしてください。
長く休んでいた子どもの再登校には多くのエネルギーを使うだけでなく、不安も大きいでしょう。
保健室や図書室で過ごす「別室登校」や、好きな教科だけ、または午前中だけ登校するなど、さまざまな再登校の仕方があります。
担任の教員と相談して、新しい生活に徐々に慣れていけるように工夫してみてください。
【関連ページ】
不登校への支援についてまとめ

不登校の状態にある子どもの支援では、学校への復帰のみを目標にするのではなく、子どもの進路の選択肢が広がるような支援をすることも視野に入ります。
公的機関や民間の機関の中にも、子ども本人や保護者の方からの相談を受けつけていたり、不登校の状態にある子どもの支援をおこなっているところがあります。
子ども本人の状態にあわせて、無理なく取り組めそうな支援を選んでみてください。
LITALICOジュニアでも、不登校の状態にある子どもへの支援をおこなっています。
ご相談も受けつけていますので、お気軽にお問い合わせください。
【参考】
- 文部科学省「不登校児童生徒への支援について」
- 文部科学省「5 小・中学校の長期欠席(不登校等)|平成 30 年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」
- 神奈川県「スクールソーシャルワーカーについて」
- 文部科学省「スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー による教育相談体制の充実」
- 文部科学省「教育支援センター(適応指導教室) に関する実態調査」結果
- 文部科学省「不登校への対応について」
- 文部科学省「(別記1)義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」
- 文部科学省「フリースクール・不登校に対する取組」
- 内閣府「主な青少年相談機関の概要」
- 東京都教育委員会「一人1台の学習者用端末を活用した不登校児童・生徒への効果的な支援事例の御紹介」
- 上越市「教育相談所」
- 厚生労働省「児童虐待防止対策」
- 東京都福祉保健局「精神保健福祉センターとは」
- 日本小児心身医学会「(16)不登校の早期対応」
- 厚生労働省「『ひきこもりや不登校』というサイン|こころもメンテしよう」
- 講談社「登校しぶり・不登校の子に親ができること (健康ライブラリーイラスト版) 」
- ナツメ社「一生涯にわたる安心を! 障害のある子が受けられる支援のすべて」
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監修者
井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。