「片付けをするように呼びかけても、なかなか片付けられない」「学校からもらった大事な書類をよくなくすので、先生に注意されてしまった」など、子どもが片付けられないことや、物をよくなくすことについて、気になっている保護者の方も多いのではないでしょうか?

 

また、それによって親子関係が悪化したり、学校などで周囲に迷惑をかけているのではと不安になったりしている方もいらっしゃるかもしれません。

 

今回の記事では、子どもが片付けられない時にまず考えたい視点や、具体的な関わり方のポイントについてもお伝えします。

「片付けられない」と「発達障害」との関連性とは

「片付けられない」と一言で言っても、その理由は一人ひとり異なります。何らかの特性が関係していることもありますが、周りの環境の影響なども少なくありません。

 

そのため、「片付けられないのは発達障害かもしれない」「物をすぐになくすから、うちの子はADHDなのでは」という声を聞くこともありますが、必ずしも発達障害が理由だとは限らないのです。

 

一方で発達障害、中でもADHDの特性にある「注意欠如」や「衝動性」などが原因となり、片付けられないことや物忘れなどに繋がっている場合も考えられます。

 

そのため、子どもが片付けられないと悩んでいる時には、まずはその理由や背景について、よく観察してみることが大切です。

子どもが片付けられない時に考えられる理由やその背景

まずは、子どもが片付けられない際にどのような理由が考えられるのか、その背景には何が関係しているのか、いくつか例を説明します。

片付け方や片付けをする場所が分からない

何度も「片付けなさい」と伝えているにもかかわらず、片付けられない場合には、そもそも片付け方や、どこに片付けをしたらいいのかが分からずに困っている場合があるかもしれません。

 

特に、発達障害のある子どもの中には、曖昧な表現で指示をされたり、口頭であれこれ一度に指示を出されたりすると、理解できないことがあります。

 

また、指示をする大人によって言っていることが変わったり、前回と違う指示をされたりすると混乱してしまい、片付けようと思っていたのにできなくなってしまうこともあります。

片付けの途中で興味関心が逸れてしまう

片付けを始めたものの、途中で別のものに興味関心が逸れてしまい、気が付いたら別のことをしていて、なかなか片付けられないという場合もあります。

 

特に、発達障害のある子どもの場合には「一つのことへの集中が長続きせずに気が散りやすい」という特性がある場合があります。

 

一方で、気になることや好きなことへは集中しすぎてしまい、切り替えが難しいという場合もあるので「それまでしていた遊びの続きが気になってやめられない」ということもあるかもしれません。

片付けをした後の見通しが立っていない

片付けをした後の見通しが立っていないために、片付けられないという場合もあります。

 

片付けをした後にどうなるのか分からないため不安に感じる場合もあれば、「今楽しい時間を過ごしているのに、片付けをしたらそれが終わってしまうのが嫌」という理由で、片付けられないという子どももいます。

片付けられない子どもへの対応や関わり方のポイント

片付け方や、片付ける場所を明確にする

片付け方や場所が分からなくて片付けられない場合には、それらを具体的に伝えるようにしましょう。

 

例えば「あそこにおもちゃを片付けてね」など、こそあど言葉で伝えるだけでなく「茶色の棚の一番上の段にまとめて入れてね」など、明確に指示を出してあげたほうが分かりやすい場合があります。

 

その際、伝える内容が人やタイミングによって異なると混乱してしまうこともあるため、指示はコロコロ変えないように気をつけましょう。

 

また、以下の写真のように、言葉やイラストで「何をどこに片付けるか」が一目で分かりやすくしてあげると、子どもが自分自身で片付けをしやすくなるかもしれません。

 

また、以下の写真のように、言葉やイラストで「何をどこに片付けるか」が一目で分かりやすくしてあげると、子どもが自分自身で片付けをしやすくなるかもしれません。

 

片付け=嫌なことという認識を変える

片付けられない子どもが、「片付け=嫌なこと、面倒なこと」だと認識している場合、片付けをすること自体のハードルが高くなっている可能性も考えられます。その時は、まずハードルを細分化し、スモールステップを設定してあげるといいでしょう。

 

<スモールステップの例>

  1. 最初は大人がある程度のところまで一緒に片付けをしてあげる
  2. そのあと子どもが一人でできる範囲のところを片付けてもらう
  3. 一人で片付けができたら褒める

このように、「片付けをしたら褒められる(ご褒美がもらえる)」といううれしい体験を積んでいくことで、片付けをしたくないという認識を変えていくことができるかもしれません。

 

また、言葉や物でご褒美を与えるだけではなく、子どもにとって片付けという行為自体を楽しくするのもいいでしょう。

 

<楽しく片付けをする工夫>

  • 保護者と競争をしながら片付けをする
  • 子どもの好きな音楽をかける
  • 子どもの好きなシールを貼ったオリジナルのお片付け箱を作る など

しかし、何が「うれしい」や「楽しい」と感じるかは、お子さま一人ひとりさまざまです。そのため「どんなご褒美や工夫をしたら、片付けたいと思えるか」をまず知ることから始めることが大切です。

見通しを立てる

見通しが立っていないため、片付けられないという場合には、スケジュールを事前に伝えてあげたり、やるべきTODOを可視化してあげるといいでしょう。

 

その際、言葉で伝えてあげるだけでいいのか、写真やイラストなどを使って可視化してあげたほうが分かりやすいのかは、一人ひとり異なります。どうしたら子どもが理解しやすいかを観察したり、実際に子どもに聞いてみてもいいかもしれません。

 

片付けられない子どもの事例紹介

A君の特性、プロフィール

  • 小学1年生、男の子
  • 家のおもちゃや学校の教科書などを片付けられない
  • 気持ちの切り替えが苦手
  • 口頭で指示をされるよりも、目で見た情報のほうが理解しやすい
  • 電車が大好き

起きていた困りごと

  • おもちゃで遊びだすと夢中になってしまい、終わりの時間になっても止めることができない
  • (家庭では)部屋の片付けができず、おもちゃや教科書などが散乱している

LITALICOジュニアでの指導内容をご紹介

<事前に予定を可視化する>

まずは、LITALICOジュニアに到着してから帰るまでの予定を、A君と一緒に事前に確認するようにしました。

A君は口頭で指示をされるよりも、目で見た情報のほうが理解しやすく忘れにくいため、一目で見て分かるイラストを使って予定表を作成しました。

 

事前に予定の確認を一緒にしていたことにより、「そろそろ〇時になるね。次はどうするんだったっけ?」と声かけをすることで、A君が自分から次の行動に移すことができるようになりました。

 

<片付けられた後のご褒美の設定>

A君が片付けられない背景に、「片付け=面倒なこと、やりたくないこと」だと認識していることが影響していました。そのため、最初はLITALICOジュニアの指導員が一緒になって片付けを進めて、徐々に一人でできる部分をお任せするようにしました。

 

一人で片付けができた後は、A君の大好きな電車のシールをゲットできるというルールを作り「片付けができた後にご褒美がもらえる」ことで、自発的に片付けることができるようになりました。

ご家庭でのアプローチ

LITALICOジュニアの指導だけではお子さまにアプローチできる時間に限りがあるため、保護者の方向けにペアレントトレーニングを実施しました。

 

A君の場合、LITALICOジュニアで実践している内容を保護者さまに共有し、ご家庭でも実践できそうな工夫や、褒めるポイント・伝え方のコツなどを一緒に確認しました。

 

授業のたびに、ご家庭でのアプローチについて指導員と振り返りをおこなうことで、LITALICOジュニアの中だけでなく、少しずつご家庭の中でもA君が自分自身で考えて行動ができるようになっていきました。

 

その結果、A君が褒められる機会も増えていき、自信をつけていきました。

子育てに悩んだ時の相談先

「片付けられない子どもに対して強く当たってしまい、親子関係を上手に築くことができない」「片付けられないことで、子どもに発達障害があるのではないかと不安」など、子育てに悩んでいる場合には、以下の機関に相談することができます。

子ども家庭支援センター

子ども家庭支援センターは、市区町村が運営している機関です。子どもと家庭に関する相談窓口として、児童相談所と連携し、18歳未満の子どもの子育てに関する悩みについて相談することができます。

 

ほかにも、子育てサークルや地域のボランティア育成などもおこなっており、子育て中の方が一人で悩まないようにさまざまなサポートをおこなっています。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、発達障害に関する総合的な相談窓口です。発達障害の診断を受けていなくて、保護者の方が「うちの子は発達障害なのではないか」とお悩みの場合でも、相談に乗ってもらうことができます。

LITALICOジュニア

LITALICOジュニアでは、お子さま向けに学習塾や放課後等デイサービスを運営するほか、保護者の方向けに「ペアレントトレーニング」プログラムの提供もおこなっています。

 

ペアレントトレーニングとは、子育てに関する悩みやイライラを解消して、お子さまと保護者の方が良好な関係を保ちながら、楽しく生活するためのヒントや考え方について学ぶプログラムです。

 

ご家族内での実践を目的としたプログラムで、ご家族さまごとに個別で提供しており、これまでに受講された方からは満足度97.7点と高評価をいただいています。

 

「子どもが片付けられなくて困っている」「ついつい子どもに対して強く当たってしまう」など、子育てに関するお悩みがある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

子どもが片付けられない時についてまとめ

子どもが片付けられない場合でも、一人ひとりその理由は異なります。そのため、「発達障害なのではないか」と心配になることもあるかもしれませんが、まずは片付けられない理由や背景をよく観察してあげることが大切です。

 

また、できないことにフォーカスするだけではなく「どうしたらできるようになるか」と視点を変えてみることで、子どもへの関わり方が変わったり、ヒントが見つかったりする場合もあります。

 

子どもに対して、どのような関わり方をしたらいいのか分からず悩んでいる場合には、今回ご紹介した相談機関などを活用してみるのもいいでしょう。

 

LITALICOジュニアでも、保護者の方をサポートする「ペアレントトレーニング」プログラムを実施しているので、気になる方はぜひお問い合わせください。