3歳頃になると、子どもの世界がどんどん外に広がり、友だちとの関わりも増えます。
この時期、「周りの3歳の子どもに比べて、言葉の発達が遅い」と不安になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
言葉の発達は個人差が大きいため、3歳になっても言葉が遅いからといって、必ずしも何か問題があるとは限りません。とはいえ、保護者としては心配になってしまいますよね。
そこで本記事では、3歳児の言葉の発達の目安や、発達を促すためにできること、悩んだときに利用できる相談先などについてご紹介します。
3歳児の言葉の発達の目安は?
言葉は年齢が上がるにつれて発達していきます。
しかし、言葉の発達には個人差があり、少しずつ話し始める子どももいれば、3歳以降のある時期から一気に話し始める子どももいます。
ここでご紹介するのは、あくまで目安なので参考程度にご覧ください。
3歳の言葉の発達の目安としては、以下のようなことができるようになると言われています。
※以下で挙げられているのは、日本語を母語として日本語に触れてきた子どもの例となります。
- 「〇〇持ってきて」など、簡単な動作の指示に応える
- 大小、長短、色がわかる
- 「飲む」「歩く」のような生活で使う動詞を使う
- 名前・年齢など簡単な質問に答える
- 「おはよう」「おやすみ」など、挨拶をする
- 「どうぞ」「ありがとう」など、やりとりをする
- 「お腹がすいた」「暑い」など、自分の状況を言葉で伝えられる
2歳から3歳の間に、単語の数が徐々に増え、3歳から4歳頃にかけて、述語や代名詞、助詞などの文法を使って、おもちゃを指さして「あれがほしい」など言葉を複雑に構成できるようになっていきます。
また、3歳頃になると、自分から大人の話を聞くようになり、意味を理解しようとする意識も芽生えていきます。
今まで見慣れてきた物事にも一つひとつ疑問や興味がわき、3歳頃は「これなに?」「なんで?」などの質問が多くなります。
3歳児の言葉の遅れ|原因や理由は?
3歳児の言葉の遅れの原因として考えられる理由をご紹介します。
ただし、特に原因や理由が見当たらないけれど、言葉の遅れが見られるというような場合もあるので、保護者だけで原因を判断しようとせず、気になる場合は医療機関で相談しましょう。
言葉の理解ができていない
言葉に遅れがある場合、周囲から言われている言葉が理解できていないため、言葉そのものが出てこないという可能性があります。
言葉の意味を理解できるようになってはじめて語彙として蓄積されていくので、まずは言葉の意味をしっかり理解することが大切です。
言葉の理解をしているかは、例えば複数の動物の絵を見て「犬はどれ?」と聞いたら犬を指させる、といった方法で確かめることができます。
言葉の意味は理解しているが表出していない
言葉の表出の遅れ以外に気になるところがなく、周囲への関心もあるという場合、特定できない要因により言葉が遅れているという可能性もあります。
周囲より言葉の発達が遅れていた場合でも、他に全く異常がなく、言語表出のみ遅れている子どもは、急に言葉が発達し正常範囲に到達することも少なくないようです。
耳の聞こえの問題
言葉が聞き取れていない場合には、耳の聞こえに問題がある可能性があります。
言葉はまず耳で聞いて理解する必要があります。1歳半検診、3歳児検診でも聴力の検査が行われますが、音に反応しないなど、耳の聞こえが心配な場合は医療機関で相談してみると良いでしょう。
発達障害や知的障害(知的発達症)の可能性
言葉が遅れている場合、発達障害や知的障害(知的発達症)の可能性もあります。
発達障害にはASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、SLD(限局性学習症)があります。困りごとは子どもによってさまざまですが、言葉の遅れやこだわりの強さ、コミュニケーションの困難さなどにより、社会生活で生きづらさを感じることがあります。
ただし、言葉の発達が遅いというだけで発達障害であると判断することはできません。
もし、「発達障害かもしれない」と思う場合には、発達障害に関連する相談機関で相談することをご検討ください。
3歳児の言葉の発達を促すためにできること
3歳児の言葉の発達を促すために、保護者ができる対応や取り組みを紹介します。
ただし、言葉の発達のスピードは子どもによってさまざまなので、子どもの成長の様子を見ながら無理のない範囲で行いましょう。
子どもが興味のあるものを言葉で説明する
子どもが興味を持って何かを見ているときに、そのものについて話しかけることで、耳から入ってきた情報を、子どもの記憶に蓄積させることができます。
例えば、走っている電車を見ている子どもに対して、「電車きたね」「はやいね」などというように、その物の名称や状態を言葉で説明しましょう。
子どもの言葉を引き出す質問をする
保護者は、言葉で言われなくとも子どもの様子から、「これが欲しいのかな?」「○○をしてほしいんだな」と子どもの気持ちが理解できることも多いのではないでしょうか。
だからといって先回りして保護者が子どもの気持ちを言ってしまうと、子どもが言葉を使う機会が減ってしまいます。
子どもの言葉を引き出すためには、「うん/ううん」で答えられる質問からはじめていき、言語発達段階に応じて「どうしたの?」「何がほしいの?」と質問していくようにすると、子どもが言葉で要求を伝えるきっかけができます。
同年代の子どもと関わる機会を増やす
保育園や幼稚園に入って、急に言葉が発達したという子も多くいます。
親子間では言葉で言わなくても伝わっていたことが、自分で言わないと相手に伝わらない環境になり、自分の意思を言葉で伝えられるようになることがあるようです。
周りの子どもたちが、言葉でやりとりしながら遊んでいる様子を見ることは、子どもの言葉の発達を促す良い刺激になるようです。地域の児童館や公園に遊びに行くと、同年代の子どもと関わることができます。
保護者にとっても、同年代の子どもを持つ保護者と話す機会ができ、悩みを相談できたり、良い気分転換になるかもしれません。
ただし、発達障害の疑いがある子どもの場合、集団にはいることが困難な場合があるので、そういった場合は、発達障害に関連する相談機関でその子に適した環境について相談すると良いでしょう。
絵本を読み聞かせする
日常の会話の中で出てくる言葉には限りがあります。
絵本には日常ではあまり出てこない言葉や言い回しなどが出てくるので、絵本を活用することで子どもの語彙力を広げることができます。
また、絵本に描かれた絵と、読み聞かせで聞こえてくる言葉が結びつくことで、言葉の理解も深まります。
絵本の読み聞かせは、子どもとのコミュニケーションのきっかけにもなるのでおすすめです。
3歳児の言葉の遅れに対する指導事例
LITALICOジュニアは言葉の遅れなど、発達の気になる子どもの学習塾を運営しています。
ここでは、3歳児の言葉の遅れに関して、LITALICOジュニアで行なった指導事例をご紹介します。
子どもの様子と困りごと
- 乗り物・シャボン玉が好き
- 言葉の模倣やオウム返しはできるが、やりとりは難しい
- 友達の遊びについていけない
指導事例
「〇〇貸して」→「どうぞ」→「ありがとう」などの物の貸し借りのやりとりを、子どもが好きな乗り物のパズルを使って練習しました。
最初は「〇〇貸して」と言う前に、自分が欲しいものに手を伸ばしてしまっていました。
そこで、先生が先に「飛行機貸して」と言った言葉を、オウム返しで「飛行機貸して」と真似できたら、飛行機のピースを渡すようにしました。
「ありがとう」の言葉も同じように、先に先生が「ありがとう」と言い、オウム返しで「ありがとう」を真似して言う練習から始めました。
真似して言うことができたら、先生がシャボン玉を吹いて、「どういたしまして!」と返事をします。
こうしたやりとりを繰り返しながら、先生が先に言葉を言う回数を、徐々に少なくしていきました。
「〇〇貸して」という前に手が伸びたときには、「く」と最初の文字のヒントを伝えると、それまでのやりとりを思い出して、「くるま貸して」と自分から要求ができるようになりました。
このように、言葉で「〇〇貸して」と伝えたら、自分の欲しいものがもらえる、ありがとうと伝えたらと、シャボン玉で遊べる、先生が笑顔で「どういたしまして!」と言ってくれるというような嬉しい体験を積み重ねることで、言葉でのやりとりを習得していきました。
この事例のように、LITALICOジュニアでは子ども一人ひとりに合わせて工夫しながら指導をおこなっています。
また、子どもの好きなものや興味のあるものを使いながら、子ども自身が自発的に「やりたい!」「知りたい!」と思えるように授業を進めていきます。
LITALICOジュニアの授業に少しでもご興味がある方、子どもの言葉の遅れが気になる方は、ぜひお気軽にご相談ください!
子どもの発達についてお悩みの場合の相談先
子どもの発達について相談できる場所をいくつかご紹介します。
子育て支援センター
子育て支援センターは、育児相談や援助、子育てに関する情報提供を行なっています。
基本的に予約は不要で費用もかかりません。
同年代の子どもの保護者と交流や情報を交換できる場でもあるので、ぜひ利用してみてください。
保健センター
保健センターは、地域住民に対して、総合的な保健サービスを提供する施設です。子育てに役立つさまざまなサービスも受けることができます。
また、保健センターでは、1歳半健診や3歳児検診も行われています。検診は、赤ちゃんの病気の早期発見や予防、順調に発達しているかどうかを確認します。
保健センターは都道府県のサイトから探すといいでしょう。一例として東京都の保健センターの一覧をご紹介します。気になる方は以下サイトからご確認ください。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害のある本人とそのご家族をサポートすることを目的とした機関です。
関係機関と連携しながら、さまざまな相談に応じ指導と助言を行います。
各センターの事業内容は地域によって異なるので、詳しい事業内容については、お住まいの地域の発達障害者支援センターにお問い合わせください。
LITALICOジュニアのご利用もご検討ください
LITALICOジュニアでは、一人ひとりのニーズや特性に合わせたオーダーメイドの授業でお子さまの成長をサポートをしており、言葉の遅れが気になる子どもへの指導事例も豊富にあります。
言葉の遅れのある子どもだけでなく、「友達とトラブルになりやすい」「思い通りにならないとかんしゃくになる」というようなさまざまな困りごとを抱える子どもの支援もしています。
「子どもの発達についてなんとなく気になる…」「何かサポートを受けたほうが良いのかな?」という方向けに、無料相談も行なっています。ぜひお気軽にお問い合わせください。
3歳児の言葉の発達についてのまとめ
言語の発達には個人差があり、子どもによって発達のスピードはさまざまです。
本記事でご紹介した言葉の発達の目安も、あくまで一般的な話なので、他の3歳児の様子と比較して遅れていたとしても、必ずしも何か問題があるというわけではありません。
成長の仕方は一人ひとり違うので、ゆっくり見守ることも大切です。しかし、そうはいってもやっぱり心配という場合もあると思います。
そんなときは、先ほど紹介した相談先やかかりつけ医などで相談してみると良いでしょう。
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監修者
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員
井上 雅彦
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。