高校生の子どもが不登校になって「人間関係に悩んでいるみたい」「勉強をどう進めればいいのか」と、不安や心配な気持ちになっている保護者の方もいるかと思います。
高校生の不登校の場合は、義務教育とは異なり留年や中途退学の可能性もあり、子どもの将来のために何かしたいと思っても、対応方法がわからないということもよく聞きます。
この記事では高校生の不登校の原因や保護者の対応方法、不登校になった場合の勉強の進め方や進路について紹介します。
高校生の不登校の原因や理由は?
ここでは高校生の不登校の原因や理由について紹介します。
この記事での高校生は「高等学校」に通っている生徒を指します。また、「高等学校」は全日制、定時制、通信制をあわせたものとして表記します。
不登校の定義は?
高校生の不登校の原因の前に、まず不登校の定義について紹介します。
文部科学省によると、不登校は「不登校児童生徒」とされ、
何らかの心理的・情緒的・身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの
と定義されています。
この定義では病気や経済的な理由により登校できない場合は、不登校とはみなされません。
不登校の人数は?
令和2年時点での文部科学省の調査によると、不登校の高校生は43,051人いるとされています。
小学生から高校生までの不登校の人数をあわせると約24万人となり、内訳は以下のようになっています。
- 小学生:63,350人
- 中学生:132,777人
- 高校生:43,051人
出典:文部科学省「令和2年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」101ページ
また、高校生の不登校の特徴として「中途退学」が挙げられます。
不登校の高校生のうち8,480が中途退学になっており、その割合はおよそ20%です。全体の生徒の中途退学率が約1.1%のため、不登校の高校生の中途退学率が高いことがわかります。これは義務教育である小学生、中学生の不登校にはない特徴です。
高校生の不登校の原因は?
高校生の不登校の原因として最も多いのが「無気力・不安(37.7%)」です。次に多かったのが「生活リズムの乱れ・あそび・非行(15.4%)」で、続いて「いじめを除く友人関係をめぐる問題(8.8%)」となっています。
高校生の不登校の原因は多岐にわたりますが、大きく分けて「学校」「家庭」「本人」に関するものがあり、それぞれがさらに分かれています。
出典:文部科学省「令和2年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」103ページ
高校生が不登校になる原因の割合として「無気力・不安」「生活リズムの乱れ・あそび・非行」で50%を超えるなど、本人に要因がある傾向があります。
また、小学生では「不安など情緒的混乱」が、中学生は「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が原因として多くあがりました。
ほかにも小学生・中学生に比べて「家庭に係る状況」は大きく減少しており、高校生の不登校は本人が自立していくことで生じる不安などが影響していることが考えられます。
ほかにも「進路に関する不安」が中学生の1.1%から高校生では4.9%まで上昇していて、将来についての悩みが不登校につながっている可能性もあります。
不登校の高校生の対応について
高校生の子どもが不登校になったときは、保護者もどう接していいかわからなくなることも多いと思います。そういったときにできる対応方法をいくつか紹介します。
心を支える
不登校になったことで子どもも、勉強や将来のことなどで焦りや不安を抱えていることがあります。
子どもの将来を考えると、保護者としては登校をしてほしい気持ちから促すこともあると思いますが、子ども自身も明確に理由がわからなかったり、理由がわかっていてもどうしてもいけないということがあります。
「不登校=良くないこと」としてしまうと、子どもは「自分はダメなんだと」精神的に孤立してしまう場合もあるため、まずは子どもの心の安定を目指すようにしましょう。
スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーに相談する
スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーは、学校において不登校など困りごとがある生徒の対応をおこなう専門の職員のことです。
スクールカウンセラーは不登校など困りごとがある子ども本人や保護者にカウンセリングをおこない、心のケアをしていきます。公認心理師、臨床心理士などの資格を持っている方が就いています。
スクールソーシャルワーカーは、不登校など困りごとがある子どもの支援として、学校や地域、医療機関などと連携して、周囲の環境に働きかけていきます。社会福祉士、精神保健福祉士などの資格を持っている方が就いています。
スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーはすべての高校にいるわけではありませんが、もしいる場合は相談をしてみるといいでしょう。
医療機関に相談する
学校にいかない要因として、「頭が痛い」「微熱が続く」などの身体症状がある場合があります。
また、不登校になった背景としてうつ病や発達障害が関係している場合もあります。
「無気力・不安」や「友人関係」といった裏に障害などが影響していることもあるため、気になる様子があったら医療機関を受診することも検討してみるといいでしょう。
実際不登校の小中学生と比較して、不登校の高校生が医療機関や診療所へ相談にいく割合が高くなっています。
受診先は精神的なことが関係してしているようなら心療内科や精神科などになります。
何科を受診したらいいのかわからない、という場合はスクールソーシャルワーカーに相談しながら検討していくといいでしょう。
不登校の高校生の進路について
不登校の高校生が卒業した後の進路について紹介します。
進路先としては「大学・短大」「専門学校」「就職」などがあります。
大学・短大、専門学校
「大学・短大」「専門学校」進学するには高校卒業の資格が必要になります。
不登校の高校生の中には中途退学する子どももいると紹介しましたが、中途退学した場合にも「高等学校卒業程度認定試験(略称:高卒認定試験)」に合格することで、大学や短大、専門学校の受験をすることが可能になります。
ほかにも高卒認定試験に合格することで
- 一部の国家資格や公務員試験を受験することができる
- 高校卒業が募集条件の職場に応募できる
と就職につながる条件を満たすことが可能となります。
高卒認定試験は毎年2回実施され、令和4年では8月と11月におこなわれました。試験会場は全国にあり、希望すればどこでも受けることが可能です。
高卒認定試験を受けるには受験案内を入手し、出願期間内に郵送で応募することが必要です。詳しくは文部科学省のWebサイトを参照ください。
就職
不登校の高校生の進路として就職もあります。就職活動は一人で進めていくこともできますが、困ったときに活用できる支援機関がありますので、いくつか紹介します。
地域若者サポートステーション
地域若者サポートステーションは通称サポステと呼ばれている、34歳までの就職をサポートする支援機関です。
サポステは厚生労働省委託の支援機関で全国にあり、就職についての相談や各種講座を提供しています。
トレーニングには「コミュニケーション講座」「ビジネスマナー講座」「就活セミナー」といった、就職活動だけでなく職場でのコミュニケーションなどを含めて学んでいくことができます。
利用条件は就学中でないことですが、子どもが高校卒業後に就職で悩んだ際には相談してみるといいでしょう。
わかものハローワーク
わかものハローワークは基本的に34歳までの方が利用できる、就労支援機関です。一部のハローワークの中に設置されています。
わかものハローワークには専門の就職支援ナビゲーターと呼ばれる職員がいて、正社員を目指す方へ向けて職業相談・職業紹介、書類の添削、セミナーへの参加など、就職に関するさまざまなサービスを提供しています。
単に求人を紹介するだけでなくさまざまなサポートを受けることができるため、こちらも就職で困ったことがあるときに検討してみるといいでしょう。
不登校の高校生の勉強はどうする?
不登校の高校生が現在の学校以外で勉強を進める際に利用できる施設や方法を紹介します。
教育支援センター
教育支援センターは主に学校を長期で休んでいる学生に対して、在籍している学校以外で学習の機会などを提供する場所です。
基本的に小中学生を対象としていますが、一部に高校生も受け入れているセンターもあります。
在籍している学校の校長先生が認めるなど要件を満たすと、教育支援センターの活動を出席として扱うことができます。
フリースクール
フリースクールで学習するという手段もありますが、フリースクールは小中学生を対象としており、高校生が対象となる場所は現状少なくなっています。
また、フリースクールの活動が出席扱いになるのも、高校とフリースクールが提携している必要があるなど小中学生よりも条件は厳しくなっています。
家庭教師
家庭教師の中には不登校の高校生を対象としたコースを利用するのも方法の一つです。
詳細は各家庭教師ごとに異なりますが、個別で勉強を教えるだけなく進級・進学についての相談やコミュニケーションの練習、家族との連携など幅広くサポートをしている場合があります。
ほかにも不登校の高校生を対象とした学習塾もあります。個別授業や少人数授業、オンライン授業をおこなっている学習塾もありますので、子どもにあいそうな場所があれば検討してみてもいいでしょう。
学習塾のLITALICOジュニアでは「不登校サポートプログラム」として、保護者向けのプログラムを提供しています。
ご家庭と子どもの状況に合わせたサポートプランを一緒に考えていきます。教室だけでなくオンラインでの参加も可能なので、不登校の子どもとの関わりでお悩みの方はぜひご参加ください。
別の高校への転校・編入
現在の学校が合わないため不登校となっている場合は、別の高校へ転校や編入して勉強をする方法もあります。
全日制高校
朝から授業がある高校のことです。高校ごとに校風や授業スタイルなどは異なるため、在籍している高校の雰囲気があわずに不登校となった場合などは、検討してみるといいでしょう。
定員に空きがない場合や試験を受ける必要があるといった転校・編入するための条件がありますので、事前に確認するようにしましょう。
通信制高校
通信制高校は基本的に送られてくる課題をもとに自宅で学習を進め、レポートを提出することで単位を得ていく学校のことです。
学校によって異なりますが、登校するのは月に数日で人と関わる回数が少ないため、人間関係で悩んで不登校になった場合には向いているといえるでしょう。
全日制の高校と比べて定員などの条件が厳しくない傾向があります。
定時制高校
定時制高校は一般的に夕方や夜間に授業を受ける学校のことです。
通信制高校と異なり校舎に通って授業を受ける必要がありますが、朝起きることが難しくて不登校になった子どもには通いやすくなっています。また、日中働きながら通うことができるといった利点もあります。
全日制と同じく編入するには定員に空きがあるなどの条件があります。
高校生が不登校から復帰する際に大切なこと
不登校から高校に復帰する際に大切にしたいことを紹介します。
大切なのは「段階を踏む」ということです。ここでは在籍している学校に復帰するための段階を紹介しますが、転校や編入するなど環境を変える場合にも共通していえることです。
学校の関係者と相談する
高校生が不登校からの在籍校に復帰することは非常にエネルギーがいることです。要因が解消していても、不登校になっている期間に学校に対する苦手意識が強まっていることもあり、いきなり全日授業に参加しても、心身がついていかないことがあります。
高校生の子どもが復学を望んでいる場合は、まずはスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーに相談をして、無理なく登校できるような計画を立てていきましょう。
保健室など安心できる場所に登校する
不登校の高校生の中には、ほかの生徒がいる教室に入るのに抵抗を感じることもあります。
こちらもいきなり教室で授業を受けるのではなく、「保健室」「相談室」など、安心できる場所に通うことを目標にしていくといいでしょう。
校舎に入りづらい場合は、「学校が見える場所まで行く」「校門まで行く」など細かい目標を設定し、段階を踏むことも大事です。
受けやすい授業から参加する
授業への参加する場合も、まずは「好きな授業だけ受ける」「1時間だけ受ける」といった段階を踏んでいき徐々に伸ばしていきましょう。
こういった段階は高校生の子どもの精神状態によって変わってきます。一度全日授業に参加できても、次の日にまた学校にいくのが難しくなることもあり得ます。一喜一憂せずに見守っていくことも大事です。
高校生の不登校に関する相談先や支援について
ここでは高校生の不登校に関する相談先を紹介します。
教育支援センター
教育支援センターは市区町村や都道府県の教育委員会が設置している、不登校の子どもへの支援をおこなう機関です。
「集団生活への適応」「基礎学力の補充」などのために相談受付や助言などをおこなっています。
主に小中学生が利用できる施設ですが、高校生が利用できる場合もあります。
児童相談所
児童相談所は児童福祉法にもとづき設置されている機関で、高校生を含む18歳未満の子どもに関するさまざまな相談を受け付けています。
児童福祉司・児童心理司・医師・保健師などの専門的なスタッフがいて、不登校のなやみなどの相談に対して助言やほかの関係機関の紹介などをおこなっています。
精神保健福祉センター
精神保健センターは、地域の住民の精神的な健康に対する相談の受付や各種支援をおこなっている機関です。高校生に対する相談も受けつけています。
不登校の背景として精神疾患や発達障害が関係している可能性を考えていて、医療機関の受診を検討している場合は相談をしてみるといいでしょう。
民間の支援機関
民間でも不登校の高校生に対する相談の受けつけや支援をおこなっている場所があります。
先ほど紹介した通信制高校の中には「不登校相談窓口」が設定されている学校があります。転校や編入を考えている場合には相談をしてみるのも一つの手段です。
ほかにも民間・公的問わず「親子相談会」など、高校生などの子どもが不登校の保護者向けに相談や交流ができる場所もありますので、お住まいの地域にないか探してみてもいいでしょう。
ほかにも発達障害の特性が不登校に影響している場合は、子ども一人ひとりの特性にあわせたサポートをしている学習塾を活用することもできます。
LITALICOジュニアでは学習や対人関係などで悩んで不登校になった高校生に向けて、コミュニケーションや学習方法などの学びを提供しています。
また、受験の面接や論文対策や予定管理方法など子どもの自立に役立つスキルの習得をサポートもおこなっています。
「高校生になってから不登校になった」「学習の遅れが気になる」といった方はぜひ一度ご相談ください。
高校生の不登校についてまとめ
高校生の不登校は義務教育と異なり中途退学もあり得ることから、本人も保護者も焦ってしまうこともあると思います。
家庭で解決しようと抱えてしまうと、辛くなってしまうこともあるかもしれません。不登校の高校生が受けることができる支援は、学校内、公的機関、民間機関とさまざまあります。
また、勉強の進め方も機関の利用や転校・編入、不登校の高校生向けの家庭教師や学習塾などを利用することができます。
元の学校に戻る以外の選択肢もありますので、本人の気持ちを尊重した対応を心がけながら、紹介した支援も活用も視野に入れて高校生の子どもに合った方法を探していくことが大事です。