母子分離不安とは、子どもが保護者と離れることに不安を覚えることです。名称から母親が対象と思われがちですが、保護者の性別などは関係なく起こり得ます。
子どもが「保育園の前で別れると泣いてぐずってしまう」「家の中でも一人になるのが不安でずっと離れない」といったことでお悩みの方もいるのではないでしょうか?
この記事では母子分離不安の原因や対応方法、悩んでいるときの相談先を紹介します。
母子分離不安とは?
母子分離不安とは子どもが保護者など愛着をもっている人から離れる際に、強く不安を感じることをいいます。
母子分離不安のある子どもは、家庭の中だと「親が少しでも見えなくなると泣いてしまう」「親と一緒の部屋でないと眠れない」といったことがあります。
幼稚園や学校では「園の入り口で別れるときに泣いて離れようとしない」「一人で学校にいこうとしない」といった場合があります。
母子分離不安は子どもが小さいときにはよく見られる現象で、それ自体は珍しいものではありません。
また、「母子分離不安」という名称にはなっていますが、母親以外にも子どもが愛着をもっている人から離れるときに生じる可能性があります。
母子分離不安が多くみられる時期
母子分離不安はどのような時期によく見られるのかを紹介します。
母子分離不安自体は多くの子どもに見られるもので、MSDマニュアル家庭版の分離不安の項目には
「生後8カ月頃から始まり、生後10カ月~1歳半に最も強くなります。」
と記載があります。
多く見られるのは乳児期
乳児は成長に従って身近な保護者を認識するようになり、その保護者と離れる状況になると不安や恐怖を覚えるようになります。
その対象が母親が多かったということで、現在も母子分離不安という言葉が使われています。
母子分離不安はおよそ生後8ヶ月からはじまり、10ヶ月から1歳半くらいが強く、2歳になるころには減っていくと言われています。
2歳から3歳ごろになると子どもは、見えなくても保護者は存在しているという「対象の永続性」を学習しはじめ、保護者が離れていっても「いずれ戻ってくる」と感じることができるようになって不安や恐怖の減少へつながります。
母子分離不安の原因
ここでは母子分離不安の原因を年齢別に見ていきましょう。
乳児期の原因
乳児期の母子分離不安は子どもの発達段階の1つとして起きるといわれています。この時期は保護者の存在を認識し、一緒にいると安心できるということを学んでいく時期です。
乳児期にはまだ「目の前からいなくなった人が戻ってくる」といった感覚が身についておらず、保護者の姿が見えなくなると不安で泣いてしまうということがよく起こります。
1~2歳ごろの原因
子どもの発達によって、保護者の姿が一時的に見えなくてまた戻ってくるということが理解できてくると不安は減少するといわれています。
しかし、一度母子分離不安が見られなくなっても、子どもの性格や環境などによって一時的に不安感が高く出ることもあります。
3歳ごろからの原因
3歳以降にも一時的に母子分離不安が見られることがあります。その原因として多いのが環境の変化です。
園や学校に入るといった環境の変化が、子どもにとってストレスになり、母子分離不安が見られる場合があります。
ほかにもペットが亡くなったり、転居をしたりといった子どもにとってストレスを感じることがあったときに母子分離不安が現れることもあります。
環境が変わるなどによって戸惑うことは大人でも同様に起こりうることで、こういった場合の母子分離不安は一時的な場合が多いといわれています。
ただ、母子分離不安自体は医学的な診断名ではありませんが、1ヶ月以上続いていて子どもがひどく苦しんでいる、日常生活にかなりの支障が出ている場合などは「分離不安症」へとつながる可能性もありますので、のちほど紹介する支援機関への相談や小児科や児童精神科の受診も検討するといいでしょう。
母子分離不安の対応はどうすればいい?
子どもに母子分離不安がある場合の対応方法を紹介します。
乳児期
この時期の子どもは保護者の姿が見えないと激しく泣くなど、母子分離不安が見られることは珍しくありません。
毎回構っていると泣き癖がつくと心配する方もいますが、子どもが泣いているときは抱っこしてあげるようにしましょう。保護者と一緒にいると安心できると子どもが安心できるような対応が大切です。
また、乳児期後半には離れるときには「すぐもどるね」など子どもが安心する言葉をかけてあげることも大切です。保護者がすぐに戻ってくることを伝えましょう。
3歳ごろまで
母子分離不安はおさまってくる時期と言われていますが、子どもの性格はさまざまで状況によっても変わってきます。保護者から離れたがるときもあれば、しがみついて離れないときもあります。
母子分離不安によって園に預ける際に泣いてぐずってしまうなどが多い場合に、自立を促すために叱ってしまうと、子どもが不安定になることもあります。個人差や状況によって母子分離不安が起こることがあると思いますが、子どもが安心できるような対応をしていくことが大事です。
母子分離不安のある子どもを園に預ける場合などには以下のような方法があります。
- 誰かに一時的に小児の世話を頼む場合には、その小児が見慣れた人物にする
- 小児を預ける相手におもちゃ、ゲームや別の方法で小児の注意をそらしてもらうよう頼む
- 離れる前に小児の啼泣に反応しないようにする
- 落ち着いて安心感を与える
- 離れる際には決まったやり方で離れるようにし、小児の不安を和らげる
- 離れる前に授乳し昼寝をさせる(空腹または疲労している場合、分離不安が悪化しうるため)
母子分離不安について保護者だけで解決しようとせずに、園の先生に協力してもらうなどして、子どもの不安を減らしていきましょう。
母子分離不安について相談できるところはある?
母子分離不安など子育てに関するお悩みがあるときの、相談先を紹介します。
子ども家庭支援センター
子ども家庭支援センターとは、18歳未満の子どもとその家庭に関する相談を受けつけている場所のことです。
母子分離不安など子育てに関する悩みに対して、他の関係機関と連携しながら対応にあたっています。
自治体によって名称が異なることがありますので、ご確認のうえご利用ください。ここでは東京都のページを参考に載せておきます。
児童相談所
児童相談所は18歳未満の子どもに関する悩みの相談を、本人、家族、学校などから受けつけている相談機関です。
母子分離不安など子どもに関するさまざまなお悩みに対して、児童福祉司・児童心理司・医師・保健師などの専門スタッフが相談の受けつけや助言などの支援をおこなっています。
LITALICOジュニアへのご相談も受けつけています
LITALICOジュニアは発達の遅れが気になる子どもに向けた幼児教室や児童発達支援事業所を展開しています。
母子分離不安がある子どもをはじめ、子ども一人ひとりの性格や興味関心に合わせて最適な学びとなるように、その子に合ったステップを用意し安心して学習できるようにサポートをおこなっています。
「家族が見えないと泣き出してしまう」「集団での学習が苦手」といった母子分離不安についてのお悩みがある方は、ぜひ一度ご相談ください。
母子分離不安のまとめ
母子分離不安のある子どもは「保護者から離れると泣いてしまう」「一人で学校にいけない」といったことがあります。
母子分離不安は子どもの発達の一部であり、次第に減少していくと言われています。
母子分離不安が長く続いていて、子どもが苦しんでいたり生活に支障が出ている場合は、家庭だけで抱えずに子育てに関する支援機関に相談をしてみるといいでしょう。
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監修者
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員
井上 雅彦
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。