ディスレクシアとは?診断や原因、対処法や相談先を解説します

ディスレクシアは文字の読み書きのみに難しさを感じる状態を指す学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の一つで、読み書き障害や識字障害と呼ばれることもあります。

 

ディスレクシアのある子どもは、文章を読むのが苦手、漢字の書き取りでつまずくといった困りごとを感じることがあります。

 

しかし、ディスレクシアは周囲の人にとっては「分かりにくい」「気付きにくい」障害であり、二次的に学校不適応や心理的な問題に繋がる可能性があります。一方で、環境調整や工夫次第で困りごとを軽減することができます。

 

この記事では、ディスレクシアの症状や原因、診断基準と共に、ご家庭でできる工夫やディスレクシアに関する相談先を紹介します。

ディスレクシアとは?

ディスレクシアとは?

ディスレクシアとは、知的な困難や全体的な発達の遅れはないものの、文字の読み書きに限定した困難がある状態のことを指し、多くの場合、診断上は学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)に含まれます。日本では、ディスレクシアの他に、読み書き障害、難読症、識字障害とも呼ばれます。

 

ディスレクシアの特徴としては、「音読だけが苦手」「似た文字をよく間違える」などがあります。

幼少期から兆候があっても、読み書き以外に困りごとがみられないので、子ども本人も困りごとに気付かなかったり、説明しにくく、周囲から見ると「なんとなく読むのを嫌がる」程度にしか見えないことがあります。

ディスレクシアの症状・特徴とは?

ディスレクシアのある子どもの困りごとは、読むことに困難がある「読字障害」、書くことに困難がある「書字障害」があり、ほとんどの場合併存しています。それぞれの特徴をご紹介します。

 

ただし、ディスレクシアの症状は人によって大きく異なるので参考程度にご覧ください。

 

【読字障害】

  • 自分で絵本などを読もうとしない
  • 文字を一つ一つ拾って読む(逐次読み)
  • 読み飛ばしや、推測しながら不正確な読み方をしてしまうことが多い
  • 文章を読んでいるとすぐに疲れる(易疲労性)
  • 話すスピードと比較して、読むスピードが極端に遅い

 

【書字障害】

  • 特殊音節(小さい「っ」のような促音、「ゃ ゅ ょ」を含む拗音など)の間違いが多い
  • 「わ」と「ね」、「人」と「入」のように似た形の文字の間違いが多い
  • 「お」と「を」のように発音が同じ文字の誤りが多い
  • 画数の多い漢字を間違いやすい
  • 文字を書くとき、反対向きに書いてしまう(鏡文字)

 

ディスレクシアのある子どもは、初めて見る文章の場合は特に読むのに時間がかかります。また書くことにも困難があるため、テストでいい点を取りにくい傾向があります。

 

しかし、読み書き以外の困りごとがない場合が多く、ディスレクシアがあることに本人も周囲の人も気付かず、本人の努力不足だと判断されてしまい、辛い思いをすることがあります。

ディスレクシアの見え方の例

個人差はありますが、ディスレクシアのある方の見え方の例をいくつかご紹介します。

  • 文字が2重に重なって見える
  • 文字が反転して見える(鏡文字)
  • 読んでいる文章がねじれたり歪んで見える
  • テレビのノイズのようなものが重なって見える

 

紹介したのは一例ですが、ディスレクシアがある子どもには教科書や本が上記のように見えている可能性があります。

このような見え方をすることで「読みたくない」「読めなくはないがとても疲れる」と拒否感が生じてしまうことがあります。

ディスレクシアの原因は?

ディスレクシアの原因は?

ディスレクシアを含む、学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の原因ははっきりと分かっていませんが、ディスレクシアのある子どもは脳の部位に何らかの機能障害や偏りがあり、読むこと・書くことに困難が生じるのではないかと言われています。

 

「文字を読む」というのは一見単純な行為でも、実は以下のような複雑な脳の処理プロセスを経ています。

  1. 文字を目で追う
  2. 単語や文節のまとまりをつくる
  3. 文章を音に変換する
  4. 意味と結び付けて理解する

 

現在はディスレクシアの原因として、上記のプロセスをおこなう機能に障害があることが最も有力な仮説とされています。しかし、医学的な検査を行っても分からないほどの小さな困難の積み重ねや相互作用があり、実証は難しいとされています。

ディスレクシアの診断について

ディスレクシアの診断について

医学の診断基準では、ディスレクシアという診断名はありませんが、「ディスレクシアの症状・特徴とは」で解説したような特徴がある方は学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)と診断されることが多いです。

 

診断では、問診で赤ちゃんのときから今までの成育歴、既往症、現在の困りごとなどヒアリングします。また、心理検査で全体的な発達水準や行動特性などについて調べたり、脳波検査や頭部のCT、MRIでてんかんや脳の器質的な問題がないか検査することもあります。

 

それらの結果を総合的に見て学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)かどうかが診断されます。

ディスレクシアの診断・検査はどこで受ける?

読み書きや識字に困難があると感じても、原因や具体的な対応方法を専門医以外が判断することは難しいため、子どもがディスレクシアかもしれないと感じたときは、専門医の受診をすることが大事です。

 

専門医がいる医療機関については、お住まいの地域の保健センターや児童発達支援事業所、かかりつけの小児科などに相談してみましょう。

ディスレクシアの対処法やできる工夫は?

ディスレクシアの対処法やできる工夫は?

子どもにディスクレシアの疑いがあるとき、まずは本人の困りごとを把握することが重要です。そのうえで、その子に合った対策をすることが必要です。

ここでは場面ごとにできる対処法や工夫についてご紹介します。

家庭でできる対処法・工夫

家庭でできることとしては、以下のような工夫があるので、子どもの困りごとや状況に合わせて試してみるといいでしょう。

  • 本人が読む前に一度読み聞かせる
  • ことばの区切りに / (斜線)を入れる
  • プリントなどは大きく印刷し、文字や行間を大きくする
  • 読む行に定規をあてたり、他の行を見えなくする
  • 漢字のマスを大きくして練習する

 

また学校では想像以上のストレスを感じている可能性があるので、家庭では適度にリラックスできる時間をつくるのも大切です。

学校でよくある困りごと・合理的配慮の例

ディスレクシアのある子どもが学校で困ることの例としては以下があります。

  • 初めて見る文章の音読
  • 漢字の書き取り
  • 黒板の文字をうつす
  • メモを取る

 

家庭だけで全ての対策をすることは難しいので、担任の先生やスクールソーシャルワーカー、カウンセラーと以下のような対策ができるか相談してみるといいでしょう。

  • プリントなどは拡大コピーしてもらう
  • 読むときに虫眼鏡を使わせてもらう
  • 授業などで音読をする必要がある場合は事前に知らせてもらい、一度読み聞かせたり、家で練習する
  • 板書を取る代わりに黒板の写真を撮らせてもらう

 

受験での合理的配慮の例

現在大学受験などでは、ディスレクシアのある子どもは配慮を受けることができます。

 

具体的には、以下のような配慮を受けられる場合があります。

  • 別室での受験
  • 問題用紙の拡大
  • 定規やマーカーを持ち込んでの受験

 

将来的に試験を受ける際は、子どもが安心して試験に望めるように、テストセンターや大学に子どもに必要な合理的配慮を申請することを検討するといいでしょう。

ディスレクシアに関する相談先や支援は?

ディスレクシアに関する相談先や支援は?

子どもにディスレクシアがあるかもしれないと感じたときは、一人で抱え込まずに専門家に相談してみましょう。相談することで、子どもや保護者の方が受けられる支援や改善策を一緒に探すことができます。相談先としては以下のような場所があります。

  • 保健センター
  • 市役所の子育て支援課や福祉課
  • かかりつけ小児科
  • 総合病院の地域連携室など
  • 児童発達支援事業所・放課後等デイサービス

 

ディスレクシアは児童発達支援事業所などの専門機関でトレーニングを受けることにより、困りごとが軽減すると見込まれています。

 

LITALICOジュニアでは、各地で児童発達支援事業所・放課後等デイサービスを運営しており、ディスレクシアの子どもへの指導事例も豊富にあります。

 

LITALICOジュニアでは、ディスレクシアのある子どもが負担を減らして学べるように、複数の学び方や教材を用意し、一人ひとりに合った学び方を一緒に探していきます。

 

「うちの子はどのような対応が必要か知りたい」「学校の勉強についていけなくて困っている」「子どもが勉強をやりたがらない」など学習に関する相談も受け付けております。まずはお気軽にお問い合わせください。

ディスレクシアについてまとめ

ディスレクシアについてまとめ

ディスレクシアとは、読み書きに著しい困難がある状態のことを指す、学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の一つです。

 

周囲から気付かれにくい障害であり、専門的なサポートも重要になりますが、工夫や支援次第で困りごとを軽減することができます。

 

ご家族だけで抱え込まず、専門機関などを利用しながら子どもを適切にサポートできる環境を整えていきましょう。