視覚優位・聴覚優位とは?特徴や子どもの困りごとと対処法を解説します

視覚優位とは、耳から入ってくる情報よりも、目から入ってくる情報の方が処理をしやすい脳の特性のことです。反対に、目から入ってくる情報よりも耳から入ってくる情報の方が処理をしやすい特性は「聴覚優位」と呼ばれます。

 

視覚優位も聴覚優位も、脳が「どのように入ってきた情報を処理するのが得意なのか」という特性です。これは「認知特性」と呼ばれ、誰にでもあるとされています。

 

この記事では、視覚優位と聴覚優位それぞれの特性のある子どもの特徴や、子どもの視覚優位や聴覚優位の特性が強い場合に起こりうる困りごとと対処法について説明します。

視覚優位とは?

視覚優位とは?

視覚優位とは、耳で聞く情報よりも、目で見る情報の方が処理、理解、記憶をしやすい特性のことです。

 

例えば何かを覚えるとき、視覚優位の特性がある人は、言葉や音で聞くよりも、図や絵、写真や動画を見た方が覚えやすい傾向にあります。

 

九九を覚えるときは、視覚優位の特性がある人は、九九の表を図表として丸暗記するという覚え方をすることがあります。

 

また、物事も映像という形で記憶している場合が多いようです。例えば「海」という言葉を聞いたときには、脳裏に広々とした海の映像が浮かびます。

認知特性とは

視覚優位は、「認知特性」の一つです。

認知特性とは、脳に入ってくる情報を、どのように処理するのが得意なのかという特性のことです。

 

認知特性は、人によって異なります。研究によりさまざま分け方がありますが、主に以下のような認知特性があると言われています。

  • 視覚優位:視覚からの情報処理が得意
  • 聴覚優位:聴覚からの情報処理が得意
  • 身体感覚優位:身体感覚からの情報処理が得意

認知特性は、程度はさまざまに異なりますが、誰にでもあるとされています。

 

したがって認知特性があることは、いいことでも悪いことでもありません。自分の認知特性を知り、それに合った生活や学習の工夫をするというやり方で活用するといいでしょう。

ASD(自閉スペクトラム症)と視覚優位の関係

ASD(自閉スペクトラム症)のある人の中には、視覚優位の特性を持つ人が多い傾向があると言われています。

 

しかし、ASD(自閉スペクトラム症)のある人の中にも、聴覚優位の特性がある人もいることもわかっています。

したがって、ASD(自閉スペクトラム症)のある人はすべて視覚優位であるというわけでもないようです。

視覚優位の特徴とは?

視覚優位の特性のある子どもには、以下のような特徴が見られる傾向があります。

  • 人の顔や一度行った場所をよく覚えている
  • 図鑑や百科事典など、絵や図の多い本を読むのが好き
  • 口頭での指示は理解しにくいが、文字や絵で提示された指示は理解しやすい

視覚優位の特性のある子どもは、見たものを映像や動画として鮮明に記憶しています。

このため、会った人の顔や行った場所などもよく覚えていたり、好きなキャラクターなどを何も見ずに描くことができたりします。

聴覚優位とは?

聴覚優位とは?

聴覚優位とは、目で見る情報よりも、耳で聞く情報の方が記憶や処理、理解をしやすい特性のことです。

 

聴覚優位の特性のある人は何かを覚えるとき、図や絵、写真などを見るよりも言葉や音で聞いた方が覚えやすい傾向があります。

 

九九を覚えるときは、ひたすら唱えて暗記した人が多いでしょう。また外国語を学ぶとき、ネイティブの人の発音を聴いただけでうまく発音できたりします。

聴覚優位の特徴とは?

聴覚優位の特性のある子どもでは、以下のような特徴が見られる傾向があります。

  • 歌詞をすぐ覚える
  • 口頭での指示を理解しやすい
  • 記憶と音が結びついている

聴覚優位の子どもは、聴覚からの情報処理が得意なため、歌詞をすぐ覚えたりすることがあります。

 

また記憶と音が結びついているため、顔を見ただけでは誰なのか思い出せなくても、声を聞くとはっきりと思い出すこともあります。

視覚優位・聴覚優位の子どもの困りごとと対処法

視覚優位・聴覚優位の子どもの困りごとと対処法

多くの子どもは、視覚優位や聴覚優位の特性はあっても、視覚と聴覚の両方をうまく使いこなしています。

 

しかし、視覚優位や聴覚優位の特性が特に強い場合は、生活において以下のような困りごとが起こることがあります

視覚優位の子どもの困りごとと対処法

子どもが保護者の方や先生などの言うことを聞いていないように見える場合、実は「聞いていない」のではなく、聴覚からの情報処理が苦手なために、きちんと理解できていない可能性もあります。

 

絵に描いて説明したり、注意事項をメモに書いて渡したりすると、すんなりと理解できるかもしれません。

 

また、子どもがなかなか宿題をやろうとせず、気が散っている様子が見られるときは、視覚からの刺激が多すぎて混乱してしまい、集中できない状態になっているのかもしれません。

必要でないものが視界に入らないように部屋を片付け、視覚からの刺激を減らすと集中できるようになる場合があります。

聴覚優位の子どもの困りごとと対処法

聴覚優位の特性が強い子どもは、漢字の読みを機械的に覚えたり、書き取りをする際に「見て、覚えて書く」ということが難しい場合があります。

このような場合の工夫として、聴覚からの情報を利用することができます。

 

ある漢字の読みを覚えたい場合は、音読みと訓読みの両方が組み込まれた短文をつくって暗記することで、音読みと訓読みを一度に覚えます。

 

例えば「伝」という漢字の読みであれば、「りっぱな仕事をした人の一生をを伝(つた)える本を伝記(でんき)と言う」という短文をつくって暗記します。

 

また、書きを覚える場合は、書き方を声に出して唱えながら書いていきます。

 

例えば「走」という漢字であれば、「土」「ト」「人」という、すでに知っている3つの文字に分けて、「ツチ、ト、ヒト」と唱えながら書いていくことで覚えやすくなります。

子育てや学習についての相談先

子どもに視覚優位や聴覚優位の傾向があり、どのようなサポートをしていけばいいのか知りたい場合は、以下のような機関に相談することができます。

  • 子ども家庭支援センター
  • 児童相談所
  • 児童発達支援センター

自治体の子育て相談窓口

多くの市区町村は、Webサイトに、地域の子育てに関する相談窓口の一覧を掲載しています。

お住まいの市区町村のWebサイトを確認してみてください。

学校での相談先

視覚優位や聴覚優位の特性のために学校の授業で困りごとが起こっており、サポートの方法を知りたかったり、学校に配慮をお願いしたい場合などには、担任や学年主任の教員などに相談してみてください。

 

また、スクールカウンセラーに相談するという方法もあります。

スクールカウンセラーは心理についての専門的な知識を持っているため、教員に相談する場合とは異なる助言が得られるかもしれません。

視覚優位・聴覚優位についてまとめ

視覚優位・聴覚優位についてまとめ

視覚優位や聴覚優位は、「入ってくる情報をどのように処理するのが得意なのか」という脳の特性である「認知特性」の一つです。

 

視覚優位の特性のある人は視覚からの情報を処理しやすく、聴覚優位の特性のある人は聴覚からの情報を処理しやすい傾向があります。

 

認知特性は誰もが持っているとされますが、子どもの視覚優位や聴覚優位の特性が強い場合は、これらの特性が日常生活や学校の授業などで困りごとにつながってしまう可能性もあります。

 

特性に沿った工夫の仕方がわからなかったり、学校で配慮をしてほしい場合などには、専門機関や学校の教員などに相談してみてください。

発達が気になる場合のサポートについて

児童発達支援・放課後等デイサービスを運営しているLITALICOジュニアでは、視覚優位や聴覚優位などの個々の特性に合わせた支援もおこなっています。

 

さまざまな困りごとのある子どもに対する豊富な指導実績があり、無料相談もおこなっています。

視覚優位や聴覚優位などの子どもの特性のほか、発達などについても気になることがあれば、お気軽にご相談ください。