赤ちゃんに話しかけたり、授乳したりするときになかなか目が合わない場合は「もしかして、目の病気があるのかな?」「発達が遅れているのかな?」と不安になる保護者の方もいるかもしれません。
そもそも、新生児と目が合うのは一般にいつごろからとされているのでしょうか?
この記事では、新生児と目が合う時期の目安や子どもの視覚の発達の段階、新生児と目が合わない原因を説明するほか、不安な場合に相談できる機関も紹介します。
新生児と目が合うのはいつから?
新生児とあまり目が合わないために、心配になっている保護者の方もいるかもしれません。
この時期に目線が合わなかったとしても、過剰に発達障害を疑ったり、視力の悪さを心配する必要はありません。
生まれたばかりの赤ちゃんは、ほとんど目が見えていないとされているためです。
新生児期も、まだ物の輪郭がぼんやりと見えている状態であり、「目の前のものが動くのがわかる」程度の視力しかないとされています。
ところで、「新生児」とはいつまでの時期を指すのでしょうか?
「母子保健法」という法律が定めるところによると、「新生児」とは、出生後28日未満の赤ちゃんを指します。
また、1歳未満の赤ちゃんは「乳児」、1歳から小学校就学までの子どもは「幼児」と呼ばれます。
赤ちゃんと目が合い始めるのは、生後2ヶ月ごろからであるとされています。
このころになると、授乳しているときなどに、赤ちゃんがこちらの顔をじっと見るようなことが起こり始めるでしょう。
子どもの視覚の発達について
赤ちゃんの視機能は生まれた直後には未完成で、8歳ごろまでの時間をかけて発達していくと考えられています。
生後すぐは目の構造も未完成で、大人の状態に完成するのは4歳ごろであるとされています。
また、ものを見るときには、脳でも視覚情報の処理がおこなわれます。
このため赤ちゃんの視機能は、目と脳の発達にともなって段階的に発達していきます。
ここでは、子どもの視覚の発達の段階について説明します。
ただし、子どもの発達のスピードには個人差があります。
ここに示す段階は、あくまでも一つの目安と考えてください。
生後すぐ〜1ヶ月ごろ
生まれた直後の赤ちゃんの視力は、「光覚弁」であるとされます。
光覚弁とは、暗い部屋で、目の前で照明を点滅させたときに、明暗が判別できる視力のことです。
生後1ヶ月目ごろから、視機能は急激に発達していくとされます。
生後1ヶ月半ごろからは、1ヶ所をじっと見つめる「固視」がみられるようになります。
見えている範囲は、20~30cmぐらいだとされています。
2ヶ月ごろ
前述のように、このころから目が合うこともあります。
動くものを目で追う「追視」ができるようになり、首を動かせるようになるにつれて視野も広がっていきます。
両方の目でものを見ることができるようになるのもこの時期で、視線がそろうようになってきます。
3ヶ月ごろ
0.05ぐらいの視力があるとされ、30cm以上離れたところにある物も見えるようになります。
二次元だった視野が、このころから三次元になります。
縦抱き抱っこを喜ぶようになると、手を伸ばして物を触ろうとすることがあります。
これは「奥行き」の知覚が成立し、立体的な世界を知覚していることを示すとされます。
6ヶ月ごろ
物をじっと見つめるようになります。
また、誰かが顔を覗き込むと、目線をしっかりと合わせて見つめ返すことができるようになります。
1歳くらい
0.2~0.3程度の視力があるとされます。
遠くの物は見えておらず、誰かが指差しをしても、赤ちゃんが見るのはその指先であることが多いでしょう。
この時期から視機能は急激に発達していき、発達のピークは1歳6ヶ月ごろであると考えられています。
その後も、発達のスピードは遅くなりますが、8歳ごろまでゆるやかに発達していくとされています。
3歳くらい
3歳0ヶ月では約半数、3歳6ヶ月では約8割の子どもが1.0の視力に達するとされています。
新生児と目が合わない原因は?
赤ちゃんと目が合わない場合は、可能性として以下のような原因が考えられます。
ほかのことが気になっている
保護者の方が赤ちゃんをあやしているとき、ほかに気になるものが赤ちゃんの視界に入っており、単にそちらを見ているのかもしれません。
他者の視線が苦手
他者からの視線をどう感じるかは、赤ちゃんにより異なります。
保護者の方が赤ちゃんをじっと見つめても目が合わない場合は、もしかするとその赤ちゃんは強い視線が苦手なのかもしれません。
このような場合は面と向かい合うのではなく、顔が横並びや斜め並びになるような位置で声かけをしてみるのも一つの方法です。
目や視力の異常
新生児期には視線がまだ揃っていないことが多く、生後2ヶ月ごろから視線が揃うようになります。
しかし、4ヶ月を過ぎても視線が揃っていないようであれば、斜視の可能性も考えられます。
斜視とは、物を見る際に片目は正面を向いているのに、もう片方の目が違う方向を向いており、左右の視線が揃わない状態のことです。
発達障害の影響
「発達障害」に分類される疾患の一つであるASD(自閉スペクトラム症)では、「目が合わない」という症状がみられることがあります。
しかし、ここまで「目が合わない原因」を複数挙げてきた通り、目が合わないことが必ずしもASD(自閉スペクトラム症)に結びつくわけではありません。
ASD(自閉スペクトラム症)のある赤ちゃんが示すことの多い特徴としては、目が合わないことのほかにも「あやしても笑わない」「あまり泣かない」などがあります。
これらの特徴もあてはまるため、診断を受けることを考える保護者の方もいるかもしれませんが、ASD(自閉スペクトラム症)を含む発達障害は、一般に3歳ごろ以降でなければ確定的な診断はできないとされています。
3歳ごろ以前の時期は、発達障害のない赤ちゃんであってもさまざまな特徴を示すことが多いためです。
3歳を過ぎても依然として目が合わないだけでなく、ASD(自閉スペクトラム症)のほかの特徴もみられるようであれば、受診を検討してみてもよいかもしれません。
発達のスピードの違い
前述の通り、子どもの発達のスピードには個人差があります。
時期ごとに、一般に目安とされている発達の指標はありますが、子どもがその通りの発達をしていないと思われる場合でも、必ずしも心配する必要はない場合も多くあります。
新生児と目が合わなくて不安なときは?
「新生児と目が合わなくても、すぐさま心配することはない」と言われても、それでも不安に思う保護者の方もいるかもしれません。
このような場合は、以下のような機関に相談することができます。
病院
まず、かかりつけの小児科や眼科を受診して相談してみるとよいでしょう。
必要な場合は、専門の診療科のある病院を紹介してくれます。
保健センター
「病院を受診するほどではない気がするが、相談はしてみたい」という場合や、どこに相談すればよいかわからない場合は、まず地域の保健センターに相談することができます。
子どもの健康や子育ての悩みなどについて幅広く相談を受けつけており、必要に応じて専門機関の紹介もおこなっています。
自治体の子育て窓口
自治体によっては、子育てに関する各種の相談窓口をホームページで紹介している場合があります。
お住まいの自治体の情報を確認してみてください。
民間の支援機関
幼児教室や学習塾を運営するLITALICOジュニアでは、発達が気になる子どもを対象に、言葉の発達を促すプログラムやコミュニケーションの練習など、一人ひとりに合わせた指導をおこなっています。
対象年齢は0歳からで、発達が気になる赤ちゃんに対しても早期から支援をおこなうことができます。
気になる様子がある場合は、お気軽にご相談ください。
新生児と目が合うのはいつから?についてまとめ
新生児期には、赤ちゃんはまだ目がぼんやりとしか見えていないとされるため、赤ちゃんと目が合わなくても心配ない場合が多いとされています。
赤ちゃんと目が合い始めるのは、一般の目安としては生後2ヶ月ごろからだとされています。
しかし子どもの発達のスピードは個人差が大きく、目安とされている時期に示されている状況とは違っていても、すぐさま「発達が遅れている」とは判断できないことも多くあります。
もし保護者の方が心配であれば、この記事で紹介した相談機関に相談してみてください。