子どもが特定の物事に強いこだわりを見せ、どう対処すればいいかわからなくなっている保護者の方もいるかもしれません。そこでこの記事では、そもそも「こだわり」とはどういう状態なのか、子どものこだわりの理由や、「困るこだわり」への対処法などについて説明します。

「こだわり」とは

子どもの言動を見ていて、「こだわり」を持っているように見える場合があるかもしれません。

そもそも、「こだわり」とはどのような状態なのでしょうか?

 

「こだわり」は広い意味で使われている言葉ですが、この記事では「複数の選択肢がある中で、特定のパターンや事物を高頻度で選択する状態」と定義して説明します。

 

たとえば電車に乗るとき、「いつも同じ車両に乗る」状態などがあてはまるでしょう。

 

しかし、他人からは複数の選択肢があるように見えても、「本人にとっては、実は選択肢がない」ために、その選択肢を選んでいる場合もあります。

たとえば、「先頭車両にしか乗りたくない」人もいるかもしれません。

 

選択肢がない、または狭まる理由には「ほかの車両はいつも混んでいる」など、ほかの選択肢に妨害要因がある場合もあれば、「その車両が降車駅ホームの階段に近い」など、その選択肢に好ましい要因がある場合などもあります。もちろん「なんとなくそう思う」というふうに、言葉にできない理由である場合もあります。

 

つまり「こだわり」は「その人特有の選択パターン」であり、子ども・大人を問わず誰にでもある状態像だといえます。

 

もちろん「何にこだわるか」や「こだわり」の対象が多いか少ないか、またその強弱は個人により異なります。

対処が必要な「こだわり」とは

単に「同じ選択肢を選ぶ」状態そのものは、困るわけではありません。

その選択が可能な環境であり、問題が起こっていない場合は対処の必要はないでしょう。

 

しかし、こだわりがあることによって二次的に困りごとが生じている場合は、対処することが望ましいといえます。

その選択が現実的に難しい場合や、選ぶことによる負担が大きい場合などは困りごとにつながりやすくなります。

 

また、その選択ができないときに強い不安や興奮などが生じ、日常生活に影響をおよぼしている場合などにも、対処できるといいでしょう。

子どものこだわりの例

子どもにみられることのある「こだわり」には、以下のような例があります。

物事の手順やルール、生活パターン

いつも決まった手順や生活パターンなどを選択し、パターンが変わると不安になる場合があります。

 

決まったルートでないと目的地に移動できなかったり、決まったあそび方や流れでないと怒ってしまうなどの場合があてはまります。

 

また、初めての場所に行くのを拒む子どももいます。

場所、物の配置

部屋の中で決まったものが決まった場所にないと不安になり、別の場所へ移動してあったものを元の位置に戻そうとする場合などが該当します。

服装や食べ物など

いつも同じ服を着たい、同じ食べ物を食べたいなどと主張する場合があります。

「1番」でないことを許容できない

何でも「最初にやりたい」と主張しているようにみえる子どももいますが、実は「1番」でないことが許容できないために、「先にやる」ことを選択している場合があります。

 

たとえば友だちとおもちゃで一緒にあそぶのではなく、自分ひとりで先におもちゃであそびたがる場合などがあります。

子どものこだわり行動の理由

子どもにみられる「こだわり」の背景には、以下のような理由があると考えられます。

不安や緊張を避けるため

不安や緊張を感じやすい子どもは、新しい選択よりも「いつもと同じ選択」をする頻度が高くなることがあります。

 

たとえば服装や食べ物へのこだわりは、「同じものだと安心する」という理由が背後に存在する場合があります。

不安を落ち着けるため

緊張したり不安を感じたときや、興奮したときに「自分が好きな行動」をとることで心を落ち着けようとしていることも考えられます。

 

たとえば自宅で長時間ゲームをしており、なかなかやめない場合は、実はその日に学校で嫌なことがあり、ゲームに没頭することで不安なことを考えないようにしている可能性もあります。

ほかの選択肢が選べないため

ほかの選択肢が強い不安や不快感をともなうため、選べない状態になっている可能性もあります。

 

たとえば服装のこだわりは、感覚が過敏であり、ほかの衣類は刺激が強いので、いつも着ており刺激に慣れている服を選ばざるをえない状態になっている場合があります。

 

食べ物のこだわりも、特定の食べ物の食感やにおいが苦手であるために、食べ慣れている食材を選んでいる可能性も考えられます。

スキルや経験の不足

ほかの選択肢になっているものを実際に体験したことがないので、「それを選ぶとどうなるか」という予想ができないために選ばれない場合や、普段と違うものを選んでうまくいった経験がないために、結果として特定のものを選ぶということもあります。

 

たとえば、「自分の順番を待つ」「我慢する」という行動がまだ難しい場合は、「友だちと一緒にあそぶ」という選択肢を選んだとしても、「うまくいかない」「楽しくあそべない」といった事態が起きる可能性は高いでしょう。

 

また、過去に友だちとあそんだ際にまったく楽しくないわけではなかったとしても、楽しかった瞬間や場面などを周囲の大人などに伝えることができたり、共有できた経験がないと、本人の中では「うまくいかなかった」という認識になり、より選ばれなくなることにつながりやすくなります。

子どものこだわりが強い場合の対処法

前述のように「こだわり」自体は誰にでもあり、悪いことではないため、一律になくすべきものではありません。

よい「こだわり」は、うまく生かすと将来プラスに働く可能性もあります。

 

たとえば「1つのことに熱中するこだわり」は勉強や仕事において集中力を発揮したり、長期間継続できる能力につながる可能性があります。

特定の物事を繰り返しおこなうことが得意な面は、そのことに対する学びを深め、知識を広げていくことにもつながります。

 

また物事の手順やルール、生活パターンへのこだわりは、物事において失敗するリスクが少なかったり、規則正しい生活を送ることなどに役立つでしょう。

 

日常生活上問題がない「こだわり」は受け入れる一方、「困るこだわり」が強く、そのことで日常生活に支障が出ている場合は対処するといいかもしれません。

保護者の方が「何を」「どこまで」許容して、どこまでは子どもに任せるかということを線引きし、一気にではなく1つずつ、困りごとにつながらないように対処していくことが重要です。

 

こだわりの内容や程度などによっても異なりますが、一般には以下のような対処が考えられます。

こだわりを「なくそう」としない

こだわりには、理由があります。

「理由」に対処することなく無理にやめさせようとすると、子どもは混乱したり、時にはこだわりがかえって強くなる可能性も考えられます。

 

こだわり自体に対処するのではなく、こだわりの理由となっている緊張や不安、不快感などの原因をまず見つけましょう。

 

「原因を軽減する工夫をおこなった結果、こだわりも減っていく」という流れが望ましいといえます。

見通しを持たせる

初めての場所に行くときや普段とは違うスケジュールがあるときなど、普段と異なる行動をする場合は、「次に何が起こるのか」が予測できない不安がこだわりの理由となっている可能性があります。

この場合は、子どもが「先の見通しが持てる」ような対応をおこないます。

 

たとえば、いつもと異なる道順や交通手段を使う必要がある場合、変則的な予定がある場合などには、あらかじめそのことを子どもに伝えておくことで、子どもは心の準備をすることができます。

 

また、1日や1週間のスケジュール表を子どもと一緒に作成するのもいいでしょう。

いつもと違う予定については、「水曜日はおばあちゃんの家へ行こうね」などと早めに伝えておきます。

 

可能であればおばあちゃんの家の写真を見せたり、何日もかけて繰り返し説明することなども、子どもが見通しを持つことに役立つでしょう。

代替案を用意する

服や食べ物などへのこだわりは、なんらかの理由があって子どもがその服や食べ物を「選んでいる」ことを受けとめましょう。

 

そのうえで、服の場合は色や柄、素材が似ている服など、子どもが許容できる範囲で別の服も取り入れてローテーションするのも1つの方法です。

食べ物の場合は、足りない栄養素は別の食材などで補う工夫をしてみましょう。

 

また、アニメなどのキャラクターを利用する方法もあります。

抜き型や、キャラクターが描かれているパッケージの食品なども利用してみてください。

ルールを決める

子どもが「選んでいる」ことを受けとめるといっても、お気に入りの服が小さくなってしまったときなど、「切り替えなければならないとき」はあります。

 

この場合は、「服は替えるもの」ということを、「ルール」として教えます。

「なぜ替えなければいけないのか」ということを理解させるよりも、「ルール」として根気よく教えましょう。

パニックになったとき

こだわりに対処するとき、子どもの不安や緊張が高まり、パニック状態になってしまうこともあるかもしれません。

 

このとき、不安や緊張を感じる状況に子どもを慣らそうとするのは逆効果だと考えられています。

 

こだわりの対象から離れて、安全で落ち着ける環境で子どもが落ち着くのを待ちましょう。

このとき、子どもが自分自身を叩いたりなどして、怪我をしないように注意してください。

子育てに悩んだときの相談先

子どものこだわりへの対処が難しいときや、そのほかにも子育てについて悩むことがある場合は、以下の機関に相談することができます。

 

  • 医療機関
  • 保健センター
  • 子育て支援センター
  • 児童相談所
  • 自治体の子育て相談窓口

発達が気になる子どもの学習塾

LITALICOジュニアは、0歳からの赤ちゃんから高校生までの子どもを対象に、児童発達支援や放課後等デイサービス、幼児教室や学習塾を運営しています。

 

一人ひとりの特性や成長のステップなどに合わせて個別の指導計画を作成し、最適な学びを提供するほか、保護者さまへのサポート環境も充実しています。

 

また、無料オンライン相談もおこなっています。

 

子どものこだわりへの対処法に迷うときや、そのほかにも悩むことがある場合は、お気軽にご利用ください。

こだわりが強いお子さまへのLITALICOジュニアでの指導例

3歳でLITALICOジュニアに通い始めたTくんは、気に入らないことがあるときに床に頭を打ちつけてしまう、自動ドアを自分の手で閉めたがる、誰も乗っていないエレベーターじゃないと乗りたくない、というようなこだわりがあり、お母さまも対応に困っていらっしゃいました。

 

そこでLITALICOジュニアでは、かんしゃくが起こる前に事前に見通しを伝えること、こだわりが出る前に説明をすることなどを授業で練習しました。そしてできたときには褒めることを徹底しておこないました。

 

お母さまは教室で学んだことを自宅でも実践してくださいました。たとえば、困ったときのヘルプが出せるように、こんな風に助けてっていうんだよ、ということを伝えました。 

 

時間をかけて、言葉で説明したり交渉をしたりといったコミュニケーションができるようになると、年長になる頃には、気持ちの切り替えもできるようになっていました。

 

この成長事例をさらに詳しく知りたい方は以下からご覧ください。

子どものこだわりが強い場合についてまとめ

「こだわり」はその人特有の選択パターンであり、誰にでもあるため、悪いものではありません。

しかし子どもの「強いこだわり」が日常生活に支障をきたしている場合は、対処することが望ましいでしょう。

 

こだわりに対処すべきかどうか、またどう対処すればいいのかわからない場合は、相談機関を利用して専門家の意見を求めることができます。

 

LITALICOジュニアでも無料オンライン相談をおこなっていますので、ぜひご利用ください。