集団行動が苦手な子どもの特徴や対応方法を解説します

子どもが保育園や幼稚園に通い始めると、保護者の方は「ご飯は最後まで食べられたかな?」「トイレはきちんとできているかな?」など、さまざまな悩みごとや心配ごとが生まれるかと思います。

 

なかでも、保育園や幼稚園は多くの子どもが通う場所なので、「ほかの子どもと上手に遊べているか」「けんかはしていないか」など、子どもが集団行動をできているか気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。さらに、小学校に上がってからは集団行動が必要となる場面も増えるので、今のうちに集団行動ができるようになっていてほしいと思われている保護者の方も多いかもしれません。

 

この記事では、集団行動が苦手な子どもの特徴や原因、保護者や周りの人ができる工夫について詳しく解説します。

集団行動が苦手な子どもの特徴

集団行動が苦手な子どもの特徴

集団行動が苦手な子どもの特徴について、どのような場面で苦手が現れやすいかを、就学前と就学後に分けてご紹介します。

 

保育園や幼稚園では、問題なく集団行動ができていたとしても、小学校に上がってから苦手が現れることもあります。どのような場面で苦手を感じるかは、子ども一人ひとり異なるので、その子に合わせた対処や工夫ができると、安心して集団の中で過ごせるようになります。

就学前の集団行動が苦手な子どもにみられる様子

就学前の集団行動では、以下のような様子がみられることがあります。ここでは幼稚園・保育園での場面を想定してお話します。

  • おやつや着替え、移動をするとき先生の声掛けに反応しない
  • 参観日にダンスを踊らなければいけないのに、一人だけよそ見をしていたり保護者の元へ行ったりする
  • 友達や先生を叩いたり、友達が遊んでいるおもちゃを奪ったりしてしまう
  • ルールや順番が守れない
  • 友達の輪に入らず、ひとりで遊ぶことが多い

就学後の集団行動が苦手な子どもにみられる様子

就学後は就学前の環境に比べて、班行動や部活動など、集団での活動が増えます。

就学後の集団行動では、以下のような様子がみられることがあります。

  • 自分から話しかけて友達の輪に入って活動することが苦手
  • グループ学習でほかのメンバーと馴染めず孤立してしまう
  • マイペースに行動し、友だちと協力して活動することが苦手
  • 先生の指示に従わず、ほかの作業をしている

集団行動が苦手と感じる要因は?

集団行動が苦手と感じる要因は?

子どもが「集団行動が苦手」と感じる要因について解説します。

 

集団行動が苦手な要因は「集団に参加した経験が少ない」「先生の指導が威圧的」「過去にいじめられた経験がある」など、子どもによってさまざまな可能性が考えられ、複数の要因が重なっている場合もあります。

 

また、要因の一つとして「発達特性(発達の偏り)」が影響している場合もあります。

 

上記でお伝えしているように、集団行動が苦手だからといって、すべての子どもに「発達特性(発達の偏り)」の影響があるわけではありませんが、今回の記事ではそういった要因から集団行動を苦手と感じている場合について説明します。

苦手と感じる要因として考えられること

考えられる要因として、以下のような内容があります。

 

集団行動する理由がわからない

なぜ集団行動しなければいけないのか、その理由が理解できず、単独行動をとったり周りと違った行動をしたりすることがあります。

 

どういう言動をしたら良いかわからない

会話に入るタイミングが難しかったり、会話の流れについていけなかったり、集団の中でどういう言動をすれば良いのかわからなくなってしまうことがあります。

 

意思疎通が苦手

自分で意思を伝えたり、相手の意思を読み取ったりすることが苦手なことから、相手が「なぜ怒るのか」「なぜ嫌がるのか」などの感情をイメージすることが難しく、集団での行動やコミュニケーションをスムーズにおこなえないことがあります。

 

周りに興味がない

周囲の人や物事に興味を持てず、集団で行動しなければいけないときに遅れてしまったり、指示を聞かずほかのことに取り組んでしまったりします。

 

感情コントロールが苦手

感情のコントロールが苦手で、気に入らないことがあると癇癪(かんしゃく)を起こしたり、黙り込んでしまったり、強い言葉で相手を責めたりしてしまうことがあります。一度感情的になるとクールダウンしにくく、集団行動が難しくなります。

不安や緊張が強い

相手の気持ちを推測したり、感覚が過敏なことが影響したりして、周りからどう思われているのか気になったり、人から見られることを恐れたりすることで、集団行動のときに強い不安や緊張に襲われ、スムーズに行動できなくなってしまいます。

 

聴覚過敏など感覚過敏がある

聴覚過敏などの感覚過敏があると、大きな音や声にストレスを感じやすくなります。そのため、人が集まるところを避けるようになり、集団行動をとることが難しくなってしまいます。

集団行動が苦手な子どもへの対応方法と大切なこと

集団行動が苦手な子どもへの対応方法と大切なこと

集団行動が苦手な子どもへの対応方法や工夫、大切にしたいポイントについて解説します。

対応方法

集団行動が苦手な子どもへの対応方法には以下のようなものがあります。

 

子どもによって特性や性格、得手不得手が異なるので、学校や園の先生と相談しながら、子どもに合った対応方法を取り入れるようにすると良いでしょう。

 

視覚的な情報で伝える

言葉で伝わらないときは、視覚的な情報で伝えるとわかりやすい場合があります。

 

例えば、口頭で「トイレに行って」と指示するのではなく、トイレの絵を描いた「絵カード」を使って視覚的な情報を与えたり、一日のスケジュールを口頭で伝えるのではなく、イラストで一連の流れが分かるよう工夫したりします。

 

指示や見通しだけでなく、ルールや役割においても、視覚的な情報で伝えるとよいでしょう。

 

休憩スペースを作る

集団行動や活動の合間に、休憩時間を確保するようにし、休憩専用のスペースを作りましょう。休憩スペースでは休むだけでなく、自分の好きなこともできるようにします。

 

そうすることで、集団で過ごすことにストレスを感じやすかったり、混乱しやすい子どもにとっては、休憩スペースで過ごす時間が気持ちの切り替えをおこなう空間・きっかけになります。

 

好きなグッズを持たせる

不安が高い子どもの場合は、子どもが普段から気に入っているぬいぐるみや、好きなものを持たせることで、集団活動するとなった場合も、落ち着いて行動をとりやすくなります。お気に入りのものがすぐそばにあることが安心感につながり、お守りのような存在として活用できるでしょう。

 

感覚過敏への対策をおこなう

聴覚過敏などの感覚過敏により、集団行動が難しい場合は、イヤホンやイヤーマフなどを使ったり、光に敏感な場合は光が当たりにくい席に変えてもらったりと対策をおこないましょう。そうすることで、感覚過敏によるストレスが軽減し、集団行動に対するハードルが低くなります。

 

少人数の集団から慣れる

初めから大人数で行動することを求めるのではなく、まずは少人数の集団から慣れるよう環境を整えましょう。

 

少人数の集団で行動することで、子どものストレスや不安感を軽減でき、本人へのサポートもしやすくなるでしょう。少人数での集団行動に慣れてきたら、少しずつ人数を増やし様子を見るようにしてください。

 

気の合う子どもと同じグループにしてもらう

集団行動をとる中で周りが知らない人だけだと、どうしてもコミュニケーションが難しかったり、集中力が続かなかったりしてしまいます。気の合う友だちや頼りになる友だちと同じグループにすることで、心細さや不安・緊張感を取り除きやすくなるため、リラックスして集団行動をとれるようになります。

 

大人も一緒に入ってサポートする

必要に応じて、大人も集団の中に一緒に入ってサポートするようにします。例えば、班活動で自由に班のメンバーを決めるとなったとき、班に入れていない子どもがいたら、一緒にメンバーを募集している班を探したり声掛けをサポートしたりしましょう。

 

集団行動の練習をする

集団行動を練習する方法の一つに、ソーシャルスキルトレーニング(SST)があります。ソーシャルスキルトレーニングでは、対人関係や集団生活を営みやすくするためのスキルを養います。例えば、集団生活での過ごし方をロールプレイングやゲームで練習します。

対応する際に大切なこと

集団行動が苦手な子どもに対応するときに、大切にしたいポイントは以下の通りです。

 

否定語ではなく、肯定語をつかう

集団行動が苦手な子どもの対応をするときは、否定的な言葉は避け、肯定的な言葉を使うようにしましょう。そうすることで、子どもは言葉の理解がしやすくなり、自分がとるべき行動を認識しやすくなります。

 

例えば、廊下を走ったときに「走っちゃダメ」と否定語で伝えるのではなく、「廊下はゆっくり歩こう」と肯定語で伝えます。

 

出来たことをほめる

集団行動をとる中で、何か出来たことがあればほめるようにしましょう。どんなに小さなことや当たり前なことでも、都度ほめるようにすることで、子どもは達成感や自信を持ち、「自分はできる」「がんばるぞ」と次の行動を起こしやすくなります。

 

長い目で見守る

集団行動が苦手な子どもに対応するときは、すぐに結果を求めず、長い目で見守るようにしましょう。焦って結果を求めてしまうと、子どもにとって失敗体験になる可能性があります。

 

子どもは一人ひとり成長スピードが異なるため、その一人の子どもの特性や性格、得手不得手に寄り添って、成長を見守るようにしましょう。

集団行動が苦手な子どもに関する相談先

集団行動が苦手な子どもに関する相談先

集団行動が苦手な子どもや、発達が気になる子どもに関する相談先を紹介します。

子育てに関する相談先

子ども家庭支援センター

子ども家庭支援センターとは、子どもと家庭の総合相談窓口として、電話やファックスで相談に乗ったり、直接話して相談に乗ったりしてくれます。また、子どものショートステイや一時預かり、児童虐待に関する相談にも対応しています。

 

児童相談所

児童相談所とは、児童福祉法に基づいて設置されている機関の一つです。家族や保護者だけでなく、子ども本人、学校の先生、地域の方など、誰からの相談・通告を受け付けています。児童福祉司や児童心理司、医師、保健師などの専門スタッフが在籍しており、さまざまな相談に応じています。

 

自治体の子育て相談窓口

自治体では、子育ての相談窓口をさまざま設けています。

 

例えば、川崎市だと妊産期の健康に関すること、子どもの発達・療育などに関すること、子育ての不安や家族の悩み・虐待・DVに関すること、子どもの権利や男女平等に関わる人権に関することなどいろいろあります。

学校生活に関する相談先

教育相談センター

教育相談センターでは、臨床心理士などが、カウンセリングやプレイセラピーなどをしながら、子どもに関する困りごとや心配ごとに寄り添って、一緒に考えていきます。友人関係やいじめ、不登校の悩み、子どもの性格・行動、発達障害など、さまざまな内容を受け付けています。

 

スクールカウンセラー

学校には、心の専門家であるスクールカウンセラーが配置されていたり、学校巡回カウンセラーが訪問したりします。学校生活での困りごとや悩みがある場合は、子どもが通う学校のスクールカウンセラーに相談してみることも可能です。

発達が気になる場合の相談先

市町村保健センター

市町村保健センターは、地域保健に関する事業をおこなう施設です。地域保健法に基づいて多くの市町村に設置されており、各種相談の実施やデイケア、健康に関する教室の実施などを、保健師や栄養士、歯科衛生士などが対応します。

 

児童発達支援センター

児童発達支援センターでは、児童発達支援をおこなうほか、保育所等訪問支援や障害のある子どもやその家族へ援助・助言をおこなう地域の中核的な支援機関としての役割を担っています。また、就学児を対象とした放課後等デイサービスを併設している施設もあります。

LITALICOジュニアでは、子ども一人ひとりのニーズや特性に合わせて、学習やソーシャルスキルアップをメインとした授業で成長をサポートをしています。専門家や大学教授監修の、専門性の高い教育プログラムが用意されており、利用者8,000名以上・全国100教室以上と多くの指導実績を通して培ったノウハウに基づき、満足度の高いサービスを提供しています。

 

保護者の方へのサポート環境も充実しているので、子どもの発達や成長が気になる方は、ぜひ一度気軽にお問い合わせください。

集団行動が苦手な子どもについてまとめ

集団行動が苦手な子どもについてまとめ

集団行動が苦手な子どもには、感情のコントロールが苦手だったり、不安や緊張が強くなりやすかったり、意思疎通が苦手だったりと、さまざまな要因があります。

 

子どもによって要因が異なるので、子ども一人ひとりの特性や性格、得手不得手に寄り添った対応をすることが大切です。

 

対応をするときに大切にしたいポイントを意識しながら、この記事で紹介したことをぜひ参考にしてみてください。

  • 監修者

    鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員

    井上 雅彦

    応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。