2歳児の癇癪の原因は?対応や指導事例、相談先を解説します

癇癪(かんしゃく)とは一般的に「床に寝転がり手足をバタバタさせる」「大声で泣きさけぶ」「物を投げる」など、激しい感情の表出や興奮を伴う混乱状態のことを言います

 

子どもは成長とともにできることが増え、2歳ともなると外の世界への好奇心や欲求も高まり、体の使い方も覚えて行動範囲が広がります。

 

その分癇癪が激しくなって、どう対応したらいいのか迷っている方もいるのではないでしょうか?

 

この記事では2歳児の癇癪の原因や対応、支援機関での指導事例、癇癪の相談先などを紹介します。

2歳児の癇癪の原因は?

2歳になって癇癪が激しくなった、という悩みがある方もいると思います。

 

一般的に2歳児は「イヤイヤ期」や「魔の2歳」と呼ばれ、成長の過程で癇癪などが目立ちはじめる時期と言われています。

 

癇癪は子どもの欲求不満が感情の爆発となって現れてたり、不安や怒りからくる混乱状態が行動となって現れているとされています。たいていは1歳になる前から始まり、2歳〜4歳が最も多く、5歳をすぎると減っていくと言われています。

 

2歳前後で癇癪を起こすことが増えてきて、激しさも増してくることから、保護者もどう対応したらいいのか悩んでしまうということもあるでしょう。

 

子どもは2歳前後で外の世界への好奇心が強くなりはじめます。また、体の使い方も覚えて行動範囲も広がり、言葉が発達して自分の意志を伝えることができるようになっていく時期でもあります。

 

ただし、まだ脳機能も未発達のため、因果関係や見通しの理解が不十分で、他者の視点から考えることが難しい状態です。子どもは物事がなぜそうなっているのか理屈がわからないため、自分のやりたいことができないなど、思い通りにならないこともでてきます。そうしたときに感情の処理がまだうまくできないことが、癇癪へつながる要因としてあります。

 

そのため子どもが「自分の気持ちを伝える方法を学ぶこと」や、周りが「見通しが持てるように環境を整える」ことが大事になってきます。

 

癇癪の回数が多かったり、激しいことから発達障害と関係しているのではと考える方もいます。

 

発達障害と癇癪は別のものですが、発達障害の特徴が背景としてあることで癇癪が起こりやすくなっている可能性はあります。

 

例えば、ASD(自閉スペクトラム症)の「相手の立場になって考えるのが苦手」な傾向があり、コミュニケーションがうまくいかないことがストレスとなって癇癪につながるということが考えられます。

 

また、ADHD(注意欠如多動症)の「衝動性」よって、気になることがあるとすぐ行動に移してしまうことが多く、それをほかの人から制限されたり訂正されたりすることがストレスとなり、癇癪を起こしやすくなるという可能性もあります。

 

ただし、子どもは癇癪を通して「相手の立場になって考える」「時には我慢も必要」といったことを学んでいる最中だと言えますし、発達にも個人差があるため「癇癪が激しい=発達障害」と関係付けるのは難しいと言えます。

 

そのほかにも発達の遅れなどで気になることがある方は、医療機関や支援機関に相談してみるといいでしょう。

2歳児の癇癪はどう対応する?

2歳児の癇癪はどう対応する?

先程の章でもお伝えしたとおり、癇癪は自我の芽生えであって、成長において必要な過程でもあります。

 

といっても癇癪が激しくて、自傷や他害につながるなどの可能性もあるため、はげしい癇癪が続くようであれば、子どもが自分の感情の伝達やコントロールができるようサポートをしていくといいでしょう。

 

対応方法として

  • 癇癪を起こさなくても済むような対応
  • 癇癪を起こしたときの対応

を紹介します。

癇癪を起こさなくても済むような対応

まずは癇癪を起さなくても済むような対応を紹介します。

 

見通しを立てる

子どもは楽しんでいたことを「いきなり中断させられた」と感じるときに、癇癪を起してしまうことがあります。

 

そのため事前に遊ぶ時間や、その日することを伝えておくことで、子どもが見通しをつけることができて、切り替えがうまくいくようになっていきます。

 

その際は言葉で伝えるだけでなく、時計の絵を使って時間を伝えたり、予定表を作っておくなど視覚的に示していくことも大切です。

 

気持ちを伝えるツールを使う

子どもが自分の気持ちを伝えられず困っている様子がある場合は、感情の書かれた「絵カード」などのツールを使っていくことも効果的です。

 

絵カードは「楽しい」「怒っている」などの感情が描かれているカードで、子どもが自分のその時の感情を言葉で伝えられないときにカードを指さして他の人に伝えることができます。

 

こういったツールを活用していくことで、子どもが癇癪以外にも感情の表現方法があると学ぶことにつながります。

 

気持ちの切り替え方法を決めておく

事前に気持ちの切り替え方法を決めておくことも、癇癪を起こさずに済むための方法の一つです。

 

例えば「好きなにおいをかぐ」「好きなお茶を飲む」「廊下に出て一人になる」などの方法です。

 

ほかにも「抱っこやハグをしてもらう」「ふとんにくるまる」など、身体的な心地よさを感じると感覚が満たされて不安が軽減する、という経験を重ねる方法もあります。

 

子どもが癇癪を起さずに、気持ちの切り替え方法を実行できた時はその場で褒めるようにすると、段々と気持ちの切り替え方法が身についていきます。

癇癪を起こしたときの対応

事前に対応方法を決めていても、癇癪を起こすことはあると思います。そういったときの対応方法も紹介します。

 

安全を確保する

子どもが癇癪を起したときは、まずは安全の確保を優先しましょう。

 

鋭利なものや硬いものがあれば遠ざけるようにして、壁に頭を打ち付けるような場合にはクッションを挟むなどして怪我の危険性を取り除いていくことが大事です。

 

落ち着くのを待つ

安全を確保したら、子どもが落ち着くのを待ちましょう。子どもが混乱している最中に、ほかの刺激を加えると余計に混乱することにつながってしまいます。

 

家庭ではそのまま待つ、お店などの場合は外に連れ出すなどして子どもが落ち着くのを待ちましょう。

 

また、少し落ち着いてきたタイミングで子どもの興味のあることなどで「気をそらす」ことで、気持ちの切り替えができる場合もあります。

 

落ち着いたら褒める

子どもが落ち着くことができたら、「一人で落ち着けたね」「物を投げなかったね」など具体的に褒めるようにしましょう。

 

具体的に伝えることで子どもは「この方法でいいんだ」と学んでいくことができます。

時間がたつと忘れてしまうため、落ち着いたタイミングで伝えることが大事です。

子どもの癇癪の指導事例

ここでは、発達の遅れが気になる子どものサポートしている学習塾であるLITALICOジュニアにおける、子どもの癇癪への指導事例を紹介します。

 

癇癪の背景は子どもによって異なりますので、事例がそのまま当てはまるわけではありませんが、ご家庭での子どもとの関わり方の参考にしていただければと思います。

 

イヤイヤ期の子どもの指導事例

ここでは「嫌なことがあると癇癪を起こし、床や壁に頭を打ちつけたり物を投げたりする。」という子どもの指導事例を紹介します。

 

指導方法

 

指導員がぬいぐるみをつかって、子どもが苦手な状況をごっこ遊びで再現し「ぬいぐるみさんはどうしたらいいのかな?」と問いかけるなど、子どもと一緒に拒否の方法を練習をしていきます。

 

拒否の方法をスムーズに言えるようになったら「ぬいぐるみさんが落ち着いて遊べるようになったね」と声をかけて、子どもが拒否の方法を自然と学べるようにします。

 

そのあとに子どもとごっこ遊びとして子どもが「少し嫌だと感じる状況」を設定し、拒否の練習をしていきます。

 

練習方法として指導員が「絵カードを示す」「手で×マークをつくる」「首を振る」など、頭を打ちつける以外の拒否の方法を提示していきました。

 

そして子どもがいずれかを実行できたら、ご褒美として好きな遊びをするという形でおこなっていき、子どもが癇癪以外で拒否の意思を示すスキルを身に着けていきました。

 

同時に、保護者に対しても上記の指導内容を別室でモニタリングしてもらい、ご家庭での子どもとの関わり方の参考にしてもらいました。

LITALICOジュニアでは、癇癪がある子どもに対して指導をおこなっていくとともに、「ペアレントトレーニング」でご家庭での子どもとの関わり方もサポートしています。

 

子どもの癇癪で困っているという方は、ぜひ一度お問い合わせください。

子どもの癇癪についての相談先は?

子どもの癇癪についての相談先は?

子どもの癇癪で悩んでいるときに、相談できる支援機関を紹介します。

 

子育て支援センター

子育て支援センターは、児童福祉法に定められた地域子育て支援事業の一つで、地域の子育ての活性化などを目的として設置されています。

 

市区町村ごとに公共施設や児童館などの中に設置されていることが多く、乳幼児の子どもとその親が交流をもつことができるほか、育児について相談をすることができます。

児童相談所

児童相談所は児童福祉法に基づいて設置される行政機関で、都道府県や政令指定都市などに設置されています。

 

児童福祉士やソーシャルワーカーなどの専門スタッフが、18歳未満の子どもに関する相談に応じていて、地域の支援機関との連携や紹介などもおこなっています。

児童発達支援センター

児童発達支援センターは、障害のある子どもに身近な地域でさまざまな支援をおこなう機関です。癇癪の背景に発達障害などの可能性がある場合は相談を検討してみてもいいでしょう。

 

児童発達支援センターでは、相談のほか児童発達支援事業所・放課後等デイサービスといったサービスを提供しており、発達障害のある子どもなどへ日常生活や自立に必要な知識やスキルの取得、集団生活への適応のためのプログラムなどをおこなっています。

LITALICOジュニアでは「スタンダードコース」として児童発達支援事業所・放課後等デイサービスを運営しています。

 

その他にも幼児教室・学習塾として、診断の有無に関わらずどなたでも通える「パーソナルコース」も提供しています。

 

どちらのコースも子どもの特性に合わせた教材や、スキルの習得具合に応じたステップを設定するなど、一人ひとりに最適な学習を提供しています。

 

ご家庭での子どもとの関わり方をサポートする「ペアレントトレーニング」も実施しています。子どもの癇癪で困っている、発達が気になるという方はお気軽にご相談ください。

2歳児の癇癪のまとめ

2歳児は外の世界への興味や好奇心が強くなるとともに、行動範囲も広がっていきます。

その中で思い通りにならないことなどがあると、癇癪という形で感情が爆発することがあります。

 

癇癪を通して子どもは自分の意志の伝え方などを学んでいくため、成長に必要な過程ではありますが、その回数や激しさに困ってしまうという保護者も少なくありません。

 

子どもの成長や適切な関わり方をしていくことで癇癪は減っていくと言われていますが、ご家庭だけでは対応が難しかったり、気になることがあるときは支援機関に相談することも検討してみるといいでしょう。