二語文とは、2つの単語から構成される発話のことです。
子どもが単語は話すものの、なかなか二語文を話し始めない場合は「言葉の発達が遅れているのではないか?」と心配になる保護者の方もいるかもしれません。
子どもは、二語文をいつごろから話し始めるとされているのでしょうか?
この記事では、一般的に目安とされている言葉の発達段階や、日常生活の中で子どもの言葉の発達を促す方法を紹介します。子どもの言葉の発達が心配なときに相談できる相談機関も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
二語文とは?
二語文とは、2つの単語から構成される発話を指します。
二語文は、「ぼく ごはん」などの名詞と名詞の組み合わせのほか、「ママ だっこ」「ワンワン いる」などの、主語である名詞と述語である形容詞や副詞の組み合わせなどがあります。
また、「おやつ ちょうだい」などのように、目的語となる名詞と動詞を組み合わせた文の場合もあります。
子どもは一般的には、単語のみの「一語文」を話す時期を経て二語文を話すようになります。
二語文では、2つのものの関係性を表現できるようになるため、一語文よりも相手に意図をより明確に伝えやすくなります。
このため二語文を話すようになると、子どもにとっては表現の幅が大きく広がることになります。
二語文の例
子どもがよく使う二語文には、以下のような例があります。
要求を伝える二語文
- 「ごはん いや」(ごはんは食べたくない)
- 「ママ いく」(ママのところに行きたい)
など、名詞のあとに拒否の言葉や動詞などを続けて話すことで、自分の要求を伝えます。
状態を表す二語文
- 「おはな きれい」
- 「ワンワン いた」
など、名詞と動詞や形容詞などを組み合わせて、自分の見た状態を伝えます。
動作を表す二語文
- 「ブーブー のった」(車に乗った)
など、名詞と動詞を組み合わせて、自分がおこなった動作を伝えます。
質問を表す二語文
- 「これ なーに?」
二語文を話すようになる時期は、「物には名前がある」ということを理解しはじめる時期でもあるとされます。
このため、2つの単語を組み合わせて物の名前を尋ねることも増えます。
二語文はいつから話す?
子どもが二語文を話しはじめるのは、一般的な目安としては、生後14ヶ月~2歳ごろの時期であるとされています。
しかし、その年齢になったからといって発語がない状態から急激に二語文で話しはじめるようなことはごく稀で、一般的には、二語文が出るようになるまでに子どものコミュニケーションは複数の段階を踏んで発達します。
ここでは、子どもの言葉が発達していく段階について説明します。
ただし、ここで示している時期と発達の段階は、一般的な目安です。
乳幼児期の子どもの心身の発達では、個人差が大きいことが知られています。
このため、ここで示している目安にあてはまらない場合も、すぐさま「発達が遅れている」ということではありません。
あくまでも、「このような時期に、このような段階をたどることが多い」という参考として考えてください。
2ヶ月ごろ:クーイング
クーイングとは、赤ちゃんが舌を使わずに、喉の奥から「あー」「うー」などの母音を柔らかく出す発声のことです。
赤ちゃんが機嫌のよいときに発声することが多いとされます。
6~9ヶ月ごろ:喃語(なんご)
喃語とは、赤ちゃんが発する、複数の音節からなる意味のない言葉のことです。
初期には「あーあー」「あうあう」など、母音のみの喃語が多くみられますが、次第に「まんまん」「ばばば」など、子音も含む喃語を話すようになるとされます。
9ヶ月~1歳半ごろ:指さし
自分の興味のあるものを、指で差し示すようになります。
この指さしは、自分の欲求、見たことや気づいたことを「大人に伝えたい」というコミュニケーションとしての意味を持っています。
赤ちゃんは指さしをすることで大人と関心を共有し、物の名前や欲求の意味などを理解していくとされます。
指さしは、赤ちゃんが成長するにつれて、コミュニケーションとしての意味合いなどが変化していくとされています。
詳しくは以下の記事で説明していますので、参考にしてください。
10ヶ月~1歳半ごろ:一語文
「バイバイ」「ぽんぽん(お腹)」など、単語のみの発話である「一語文」を話すようになります。
喃語が意味のない言葉の発話であるのに対し、一語文は、意図を持った言葉の発話です。
周囲の大人が、その一語に込められた意図を状況などから解釈して、適切に答えていくことでコミュニケーションが成立し、子どもの「伝えたい」という意欲も高まっていくとされています。
言葉を話し始める時期にも個人差が大きいとされており、言葉の発達がゆっくりな子どももいます。
この場合も、2歳ごろまでに一語文をいくつか話すようになることが一つの目安とされています。
14ヶ月~2歳ごろ:二語文
単語を2語つなげて発話する「二語文」を話すようになります。
一般的には、子どもが話せる語彙が50~100語程度になり、名詞以外の言葉も語彙に含まれるようになると、2つの単語を繋げて表現することができるようになってくるとされています。
子どもの言葉の発達を促すには?
子どもの発達のスピードには個人差があるため、目安とされている発達段階の通りに言葉が出ていないことが、必ずしも発達の遅れを意味するわけではありません。
しかし、そうは言っても「子どもの言葉の発達を手助けしたい」と思っている保護者の方もいるかもしれません。
子どもの言葉は、日々の生活の中で育っていくとされています。
ここでは、子どもの言葉の発達をうながすために日常生活の中でできることを紹介します。
その子なりのペースを見守りながら、言葉のやりとりを重ねていってみてください。
子どもの言葉に積極的に反応する
子どもが何かを言ったり、指さしをしたりして何かを伝えようとしているときは、周囲の大人が積極的に反応するようにしてください。
積極的に反応する母親の子どもの方が、そうでない母親の子どもよりも語彙が増え、二語の発話が始まる時期も早かったという研究もあります。
積極的に反応してくれる大人とのやりとりの中で「もっと伝えたい」という気持ちが育っていくことが、子どもの言葉の発達をうながすと考えられています。
言い間違いはやさしく直す
子どもが言い間違いをしたときは、強く指摘したり言い直しを強要するのではなく、やさしく言い直してあげてください。
強く指摘したり言い直しを強要してしまうと、子どもの中に芽生えてきた「話したい」という気持ちが萎縮してしまうことがあるかもしれません。
例えば、食事を終えたときに子どもが「いただきます」と言った場合は「ごちそうさまでしょ!」と指摘するのではなく、「ちゃんとごあいさつが言えてえらいね。食べた後は『ごちそうさま』なんだよ」と、いったん子どもの気持ちを受け止めたうえで言い直します。
楽しいやりとりの中で、正しい言葉を覚えていくことができるような会話を心がけてみてください。
先回りして話さない
子どもに、話したいのになかなか適切な言葉が見つからないような様子があるとき、大人はその言葉をわかっていても、先に言うことは避けましょう。
大人が先回りして話すことが増えると、子どもは「言わなくてもわかってもらえるんだ」と思ってしまい、「伝えよう」という気持ちが育ちにくくなることがあるかもしれません。
子どもが言いたそうな単語がわかっていても、子どもが話すのを待ってあげるとよいでしょう。
ひと言付け加えて返事をする
「一語文は話すが、二語文を話すことが少ない」という場合には、子どもが一語文を話したときに、ひと言付け加えて返事してあげてください。
例えば、子どもが「ごはん」と言ったなら、保護者の方は「ごはん、食べる?」などと答えます。
大人がこのように言葉の使い方のお手本を示すことで、子どもは語彙が増えていくとともに、動詞や形容詞などの使い方を学んでいくと考えられています。
絵本を読み聞かせる
絵本に慣れ親しんでいる子どもは、より多くの言葉を覚える可能性があるとされます。
日常生活以外にも、絵本に描かれている世界も体験することとなり、言語活動の幅も広がるためです。
また、絵本の読み聞かせでは「物を見ながら、言葉で言い表す」ことを繰り返し聞くことになるため、語彙の獲得にも役立つと考えられます。
子どもの言葉の発達が気になるときは?
子どもの言葉の発達の遅れなどが気になる場合は、以下の機関に相談することができます。
かかりつけの小児科
人間が言葉を覚えていく第一歩は、聴覚からの音声情報の入力であるとされています。
言葉の発達が遅い子どもは、耳がよく聞こえていない場合があります。
聴覚に問題がない場合は、人に関心を持ちにくかったり、コミュニケーションが苦手な特性がある場合もあります。
聞こえにくそうな様子や、コミュニケーションが苦手な様子がみられるような場合は、まずかかりつけの小児科に相談してみてください。
必要に応じて、専門機関を紹介してくれるでしょう。
市町村保健センター
地域の保健センターでは、子どもの健康や発達などについての相談にのってくれます。
また、保健センターで実施している乳幼児健診の際に相談してみてもよいでしょう。
児童家庭支援センター(子ども家庭支援センター)
児童家庭支援センター(子ども家庭支援センター)では、地域の子どもに関する発達や子育てなどについての相談を受けつけています。
児童相談所
児童相談所は各自治体に設置されており、18歳未満の子どもに関するさまざまな相談に応じてくれます。
児童発達支援センター
児童発達支援センターでは、障害のある子どもに、日常生活の基本的な動作や、集団生活への適応などのための訓練をおこなっています。
また、発達が気になる子どもに関する相談も受けつけています。
リタリコジュニアの指導事例
幼児教室・学習塾を運営するLITALICOジュニアでは、発達が気になる子どもを対象とする児童発達支援・放課後等デイサービスも提供しています。
LITALICOジュニアでの、言葉をうながす指導の例をご紹介します。
- 小学1年生のゆりちゃん(仮名)の指導事例
ゆりちゃんには、4歳のときに広汎性発達障害の診断を受けました。
※2013年に広汎性発達障害の分類がなくなり、現在は「自閉スペクトラム症」という診断名に包括されています。
ゆりちゃんはコミュニケーショんの発達に遅れがみられ、単語だけの関わりになっていました
例えば、友だちに近づいて話しかける際も「おともだち!」とだけ言ったり、タッチやハグをしてしまうような様子でした。
ゆりちゃんは動物についての知識が広く、絵を描くことも上手です。
そこでLITALICOジュニアでは、これらの得意なことを活かした「動物のお絵かき」を通して指導をおこないました。
ゆりちゃんが絵を描いている際に、先生はゆりちゃんが動詞や名詞、助詞などを覚えていけるように指導します。
例えば先生が「ゆりちゃん、次は何を描くの?」と聞くと、ゆりちゃんは「きりん!」と答えてきりんの絵を描きます。
次のお絵かきに移るときに先生が「次は“きりんが走る”だね」と伝えると、ゆりちゃんはきりんが走っている絵を描きます。
描き終えたゆりちゃんが先生と絵についてお話ししていると、絵を見ながら「きりん、はしる!」と、二語文で絵を説明することができました。
このようなお絵描きを繰り返すうちに、ゆりちゃんは動詞や名詞、助詞などの使い方のルールが分かってきたようで、「サイ食べてる」「ぱんだ、はみがきしてる」など、いろいろな二語文が言えようになりました。
ゆりちゃんは「単語だけでは相手に意図が伝わらない」ということを理解したようで、お友だちにも以前は「えんぴつ!」などと言っていたのに対し、「えんぴつかして」などと二語文での会話ができるようになりました。
二語文についてまとめ
二語文とは、2つの単語から構成される発話のことです。
子どもは、単語のみからなる「一語文」を話す時期を経て、二語文を話すようになるとされています。
子どもの言葉の発達では、個人差が大きいことが知られています。
このため、一般的に「二語文を話し始める」とされている目安の時期になっても子どもから二語文の発話がない場合でも、すぐさま「発達が遅れている」ということではない場合もあります。
もし保護者の方が不安に思うようであれば、この記事で紹介した相談機関などに相談してみるのも一つの方法です。
LITALICOジュニアでは、無料相談もおこなっています。
子どもの言葉の発達が気になっている方は、お気軽にご相談ください。
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監修者
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員
井上 雅彦
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。