発達障害の種類によっては、その特徴が就学前は目立ちにくい傾向にありますが、小学生になると集団生活や学習などの場面であらわれやすくなることがあります。
この記事では発達障害の種類と特徴、発達障害の特徴はいつからあらわれるのか、そして発達障害のある子どもへの接し方や支援の事例などをご紹介します。
発達障害とは
発達障害は、生まれつきの脳機能の発達の偏りにより、日常生活に支障が出ている状態のことです。
脳機能の発達の偏りにより、「得意なこと」や「不得意なこと」などの特徴があらわれることがあります。
そのような特徴は誰にでもありますが、自分が置かれている環境と特徴が合わないときに困りごとが生じる場合があります。
困りごとにより、日常生活に支障が出ていることが「発達障害」と診断される際の目安となります。
発達障害の種類
発達障害の代表的な種類を3つご紹介します。
しかし明確に分かれているわけではなく、複数の種類の発達障害が併存することもあります。
ASD(自閉スペクトラム症)
「社会的コミュニケーションにおける困難」や「限定された興味」などの特徴が幼少期からみられることがあります。
従来「自閉症」「広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」などの名称で呼ばれてきた障害が、アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において、ASD(自閉スペクトラム症)という名称に統合されました。
ADHD(注意欠如多動症)
「不注意(集中力がない)」、「多動性(じっとしていられない)」、「衝動性(思いつくと行動してしまう)」などの特徴がみられます。
どの特徴がどの程度あらわれるかには、個人差があります。
LD・SLD(限局性学習症)
全般的に知的発達に遅れはないが、学習に必要な「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」などの能力に困難が生じている状態のことです。
一般に「学習障害」とも呼ばれています。
小学生の子どもの発達障害の特徴
発達障害のある小学生の子どもには、以下のような特徴がみられる場合があります。
ただし、特徴のあらわれ方には個人差があります。
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもにみられることのある特徴
社会的コミュニケーションにおける困難
- 自分の言いたいことを中心に話し、会話のキャッチボールが苦手
- 比喩やたとえ話、冗談を理解するのが難しい
- 相手の表情やジェスチャーなどから気持ちを読み取るのが苦手
限定された興味
- 同じ行動を繰り返すことが多い
- 特定のものや事柄に強い関心がある
- いつも決まった順序や道順を選ぶ
- 予定が変わるなどの変化が苦手
- 特定の感覚に過敏、または鈍感である
ADHD(注意欠如多動症)のある子どもにみられることのある特徴
不注意
- 忘れ物や紛失が多い
- 不注意から起こるミスが多い
- 集中するのが苦手で、よくうわの空になる
多動性
- じっとしているのが苦手
- 授業中に席を立ってしまう
- いつも身体のどこかを動かしている
衝動性
- 順番を待つのが苦手
- 先生の質問が終わる前に答える
- 思い通りにならない状況で、感情を抑えるのが苦手
- 急に道路に飛び出してしまう
LD・SLD(限局性学習症)のある子どもにみられることのある特徴
LD・SLD(限局性学習症)の特徴は、幼児期には日常生活で支障となることは少ない傾向があります。
小学校に入学し、授業で文字の読み書きや計算などをおこなうようになってから、以下のような特徴が明らかになってくる場合が多くみられます。
- 話はできるが、文章を読むのが苦手
- 文字は読めるが、意味を理解することが難しい
- 文字は読めても、正しく書くことが難しい
- 筋道を立てて話すことが苦手
- 数え間違いが多い
- 暗算が苦手
- 「繰り上がり」や「繰り下がり」の概念の理解が難しい など
発達障害の特徴はいつからあらわれる?
発達障害の特徴があらわれる時期は、子どもにより異なります。
また発達障害の種類によっても、どの特徴がいつから、どの程度あらわれるかが異なる傾向がみられます。
たとえばASD(自閉スペクトラム症)の場合は、2~3歳ごろから特徴がみられることもあります。
一方ADHD(注意欠如多動症)の場合は、5歳ごろから特徴があらわれることが多いとされます。
LD・SLD(限局性学習症)の特徴は前述のように、小学校に入学後に気づかれることが多いでしょう。
いずれの場合も、幼稚園や小学校などで集団生活をするようになると、発達障害の特徴がよりはっきりみえてくる場合が多いようです。
子どもの発達について気になる要素がある場合は、早めに専門家に相談することが大切です。
発達障害がある場合は、早期から適切な支援をおこなうことで、困りごとをある程度減らすことができると考えられているためです。
二次障害とは
困りごとを減らすことはまた、二次障害を防ぐことにもつながるでしょう。
二次障害とは、発達障害の特徴による困りごとのために起こる二次的な問題のことです。
困りごとがある状況下で強いストレスを感じる機会が増えると、心身の症状などがあらわれる場合があります。
このため、周りの大人が発達障害の特徴に早く気づくことが大切だとされています。
発達障害のある小学生の子どもへの接し方
発達障害の特徴のあらわれ方には個人差があるため、適切な接し方は子どもにより異なりますが、共通するポイントもあります。
ここでは、どの種類の発達障害にも共通する、子どもへの接し方のポイントを3つ挙げます。
スモールステップで褒める
「褒める」機会を増やすことで、子どもの自己肯定感を育てます。
具体的には、ある課題が達成できたときに褒めるのではなく、達成までの過程を小さく区切って「小さな目標(スモールステップ)」をたくさんつくります。
そして「小さな目標」をクリアするたびに褒めて、子どもが成功体験を重ねることをうながします。
「なぜできないのか」を考える
子どもが何かをできずにとまどっているときは、声をかける際に「できないこと」を責めるような言葉は使わず、「なぜできないのか」を考えてみましょう。
責められたように感じてしまう体験が重なって子どもの中にネガティブな感情が蓄積すると、二次障害につながってしまう可能性もあります。
子どもの言動を観察し、「できない理由」や「どうすればできるか」ということを考えてみるといいでしょう。
環境を整える
発達障害がある場合、子どもによっては不安が強かったり、ほかの子どもは気にならないことにもストレスを感じている場合もあります。
このため、可能な限り子どもが安心できて、落ち着いて過ごすことができる環境をつくることが大切です。
たとえば、規則的な生活パターンを守ることで子どもは「何をすればいいのか」がわかり、不安が減ることがあります。
また、何かを伝えるときは短い言葉で具体的に伝えると、子どもは理解しやすくなります。
不要なときはテレビを消す、香りの強い製品を使わない、照明の種類や強さを工夫するなど、子どもが苦手な種類の刺激をなるべく取り除くことも役立ちます。
小学生の子どもの発達が気になる場合の相談先
子どもが小学生になり、発達について気になることが出てきた場合は、以下の機関に相談することができます。
医療機関
発達障害の専門医のいる医療機関は、地域によってはすぐにかかることが難しい場合もあります。
このような場合は、まずかかりつけの小児科に相談してみましょう。
必要な場合は、専門機関を紹介してくれます。
学校
担任の先生やスクールカウンセラーに相談することもできます。
学校での子どもの様子について詳しく聞くことができるほか、通級指導教室や特別支援学級など、発達障害のある子どもに対する支援の体制についても知ることができます。
発達障害者支援センター
子どもから大人まで、発達障害のある方やその家族への総合的な支援をおこなう機関です。
さまざまな相談に応じるほか、必要に応じて関係機関につないでくれます。
保健センター・子育て支援センター
保健センターや子育て支援センターでは、子育て全般に関する相談にのってくれます。
子育て支援センターによっては、情報交換や交流の機会を提供していたり、子育てに関する講座などを催している場合もあります。
発達障害のある子どもの支援
発達障害のある小学生の子どもに対して、さまざまな支援の体制が用意されています。
小学校では通常学級のほかに、以下の選択肢があります。
- 通級指導教室:通常学級に在籍しながら、一部の授業を別の教室で受ける指導の形
- 特別支援学級:障害のある生徒を対象とする学級
- 特別支援学校:心身に障害のある子どもたちを対象とする学校
また学校以外では、通所して支援を受けることができる放課後等デイサービスや学習塾があります。
LITALICOジュニアでも、放課後等デイサービスや学習塾を運営しています。
ここでは、LITALICOジュニアでの発達障害のあるお子さまへの支援の例をご紹介します。
事例1:ADHD(注意欠如多動症)のあるしんちゃん(小学1年生)
小学1年生のしんちゃん(仮名)はADHD(注意欠如多動症)があり、「授業に集中することが難しい」などの特徴がありました。
そこでLITALICOジュニアでは、しんちゃんのもう一つの特徴である「計算問題が得意」という要素を生かした指導をおこないました。
やさしい問題から徐々に難易度が増していく一連の問題を用意し、しんちゃんが次の問題に移る前に先生が「ここに気をつけるといいね」と声をかけます。
問題と問題の間にあそびの時間をはさみ、集中して座っていられる時間をつくる工夫もおこないました。
先生の声かけが失敗を防ぐことにつながり、「難しいから嫌だ!」と集中が途切れてしまうことが減っていきました。
先生が「たくさん集中してたくさん解けるようになって、さすがお兄さんだね!」と褒めていくうち、しんちゃんは声を挙げたり、ほかのことをしてしまうことが徐々に減っていきました。
やがてしんちゃんは学校でも注意されることが減り、以前より楽しく学校に通う様子がみられるようになりました。
事例2:LD・SLD(限局性学習症)のあるさなちゃん(小学3年生)
小学3年のさなちゃん(仮名)はLD・SLD(限局性学習症)の中でも算数障害があり、数の大小の理解や、繰り上がり・繰り下がりの計算などの場面でつまづいてしまうことがありました。
また、長時間の集中が難しいという特徴もあります。
さなちゃんは耳で聞いて覚えることが得意なため、LITALICOジュニアでは、以下のような手順表をつくりました。
・「(1)引ける?引けない?」
・「(2)引けないときはとなりに10かす」
・「(3)1減らす」
…など
はじめに指導員が「引ける?引けない?」などと質問して誘導し、徐々に声かけを少なくしていくと、さなちゃんは自分で「引けないから…」と、計算の手順を声に出して解くようになっていきました。
10分ほどで集中が途切れるため、数字カードを使ったゲームを合間にはさむことで、10分間の「解いている時間」により集中できるようにしました。
問題が解ける自信がついてきたこと、また解けると指導員が褒めてくれることなどから、さなちゃんは授業中にふざけることがなくなっていきました。
一方保護者さまは、さなちゃんへの関わり方についてより深く学ぶため、ペアレントトレーニングを受講されました。
「できた行動に目を向け、褒める」など、ご家庭でもよい関わり方ができるようになってきたそうです。
発達障害のある小学生の子どもについてまとめ
発達障害のある子どもの特徴のあらわれ方には個人差がありますが、小学生になり、集団生活や学習がはじまることで特徴がより顕著になることがあります。
早期からの支援が困りごとを減らす可能性につながるため、大人が子どもの発達障害の特徴に早く気づくことが大切です。
子どもの発達について気になることがある場合は、専門機関に相談してみてください。
LITALICOジュニアでは放課後等デイサービスや学習塾を運営するほか、無料オンライン相談もおこなっています。
ぜひお気軽にご利用ください。